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信念を試される依頼

1677年の夏、エリアスは研究室で黄鉄鉱の成分解析に集中していました。すると、教会からの急ぎの使者が彼を訪ねてきます。教会の依頼担当者であるマルケルス・セントゥスが、自ら依頼を持って現れたのでした。

「エリアス殿、これは緊急の依頼です。」と、マルケルスは丁寧ながらも焦燥感を隠せない声で言いました。「我が教会は、国内産銀鉱石の価値を再確認する必要があります。国家や教会の政策に関わる重要な研究です。短期間で結論を出していただきたい。」

エリアスは眉をひそめました。緊急性を理解しつつも、短期間での研究にどれほどの正確性を保証できるか懸念があったからです。

「どの程度のデータを求められていますか?」エリアスは慎重に尋ねました。

「教会に有利な結果が必要です。」マルケルスは言葉を選びながら続けます。「国内産鉱石が高価値であると示すことが重要なのです。」

エリアスの中で、緊張が高まりました。「事実を曲げることを要求されているのか?」という疑念が頭をよぎる。しかし、彼は口には出さず、静かに頷きました。

実験の開始

エリアスは研究に取り掛かかりました。鉱石のサンプルを分析し、その純度や含有成分を詳細に調査するため、精密な手法を用います。夜通し作業を続け、ついに結果を得ました。

しかし、結果は明らかに教会にとって望ましいものではありません。国内産の鉱石には銀の含有量が少なく、価値は期待を下回るものだったのです。

対立の瞬間

エリアスは翌日、マルケルスに実験結果を提出しました。マルケルスは報告書を読むなり顔を曇らせました。

「エリアス殿、これは…本当にこれが最終結果なのですか?」マルケルスの声は、期待を裏切られた感情をにじませていました。

「はい。これが真実です。」エリアスは毅然と答えた。「銀の含有量は低く、純度も不十分です。」

「だが、教会はこの結果を受け入れるわけにはいかない!」マルケルスは声を荒げました。「あなたはもう少し…柔軟な解釈をすることはできなかったのか?」

エリアスは冷静に答えます。「私は教会や国家に仕えることを尊重しています。しかし、実験結果を偽ることは、私の信念に反します。それに、この結果を変えたところで真実は変わりません。」

マルケルスはしばし沈黙した後、深いため息をついた。「分かりました。だが、この結果が我々に与える影響を、あなたは理解していますか?」

「理解しています。」エリアスは静かに答えました。「それでも、事実を曲げることはできません。」

その後の影響

結果的に、教会とエリアスの関係は一時的に冷え込みました。マルケルスは別の錬金術師に再検証を依頼する動きを見せたが、最終的にはエリアスのデータが正確であると認めざるを得ませんでした。

この一件は、エリアスの信念を揺るぎないものとして周囲に知らしめると同時に、教会との関係に微妙な緊張を生じさせます。しかし、エリアスは自らの選択に後悔ありません。「真実を曲げることなく提示することこそ、自分の仕事だ」と、彼は自らを納得させました。


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