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辰砂の公開実験

公開実験の準備

裁判が進む中、ユリウス・アウグストゥスは、辰砂が危険な毒性を持つことを証明するために、エリアスに公開実験を依頼しました。エリアスは一度慎重に依頼を検討し、水銀の毒性についての科学的真実を示すべきだと考え、実験を受け入れることにしました。

晴れた午後、プラハの広場に特設された実験場には、裁判所の関係者、錬金術師、市民たちが集まり、緊張感の漂う中で公開実験が始まりました。

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実験の開始

エリアスは台の上に立ち、用意した実験器具と辰砂の容器を群衆に見せながら、はっきりと話し始めました。

「これから行う実験は、辰砂の毒性を科学的に証明するものです。この物質が人体にどのような影響を与えるか、実験を通してお見せします。十分な注意を払ってご覧ください。」

群衆のざわめきが静まると、エリアスは容器に入れた辰砂の粉末を火にかけました。容器が熱されるにつれて、赤黒い辰砂は煙を放ち始め、その煙が風に乗って周囲に広がりまた。

「これは水銀蒸気と亜硫酸ガスが発生している状態です。この煙が人や動物にどのような影響を与えるかを、今からご覧に入れます。」

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ニワトリの反応

エリアスは、慎重に用意した小さな籠を煙のそばに近づけました。中にはニワトリが入っており、初めは落ち着きなく動き回っていたが、煙を吸い込むにつれてその動きが急激に暴れます。そしてしばらくすると今度は動きが次第に鈍くなっていきました。

「ご覧ください。煙に含まれる有毒な成分が、動物の体に速やかに作用しているのです。」

エリアスの声が響く中、ニワトリの呼吸は苦しそうに荒くなり、ついにはぐったりと動かなくなります。

群衆からはどよめきと驚きの声が上がり、実験の結果を目の当たりにした人々は、辰砂の毒性を目の当たりにした衝撃を隠ませんでした。

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エリアスの結論

煙が徐々に消えていくのを確認し、エリアスは火を慎重に消しました。その後、群衆に向き直り、静かに語り始めました。

「辰砂は確かに錬金術において重要な物質とされています。しかし、このように熱することで強い毒性を放つことは明白です。人体がこの煙を吸い込めば、重大な健康被害を引き起こす可能性があります。」

彼は一瞬言葉を切り、群衆を見渡した後に続けた。「科学の目的は、真実を明らかにすることです。私の示した事実は、この物質が慎重に取り扱われるべきものであることを示しています。」

この光景は、レオナルドの破滅の決定的瞬間であるかに見えました。辰砂は毒であると。しかしながら…

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反応とその後

群衆はざわつきながらもエリアスの証言に耳を傾け、裁判の行方に対する期待と不安を抱えて解散していきました。

ユリウスの反応:

ユリウスは満足げにエリアスに近づき、感謝の意を伝えました。「君のおかげで、辰砂の危険性を裁判で証明するための強力な証拠が得られた。」

レオナルドの反応:

一方、レオナルドはその場にいなかったのですが、公開実験の結果が彼にとって不利になることを知り、次第に追い詰められていく感覚に苛まれました。彼は心の中で葛藤しながらも、自らの研究と信念を守るために徹底抗戦することを決意しました。

エリアスの内心:

エリアスは、自身の実験が持つ意味の重さを改めて感じ取っていました。「これで辰砂が危険だという事実は示された……だが、これが全てではない。これ以上の不幸を招かないためにも、慎重に進むべきだ。」


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