表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/338

再会と衝突

偶然の出会い

とある日の午後、エリアスは硫黄を納品するために、プラハにある著名な錬金術師の研究所を訪れました。硫黄の需要は錬金術の世界で高く、彼の硫黄は質が良いと評判を得ていたため、ここにも定期的に足を運んでいたのです。

研究所に入ると、そこには見覚えのある姿がありました。金襴の衣を纏い、落ち着いた立ち振る舞いで談笑するのは、かつての兄弟子、レオナルド・アウリウス。

「エリアス。」

レオナルドが気づき、短く名前を呼んだ。彼の声には、かつての親しみがわずかに残っているようにも聞こえたが、どこか距離感を伴っていました。

エリアスは軽く頷いて応じました。「レオナルドさん。こんなところで会うとは思いませんでした。」

________________________________________

話題が賢者の石へ

二人はその場の空気に促されるように、軽く世間話を交わしたが、ふと沈黙が訪れます。エリアスは納品の作業を終え、立ち去ろうとしたが、思い切ったように足を止めました。

「……レオナルドさん、一つだけ聞きたいことがあります。」

レオナルドが眉を上げ、こちらを振り返ります。「なんだい?」

エリアスは少し言いにくそうに目を伏せながら続けました。「……辰砂を、グレゴリウス様に処方した件です。あれは本当に安全なのですか?」

レオナルドの表情が一瞬だけ硬くなりました。「何を心配しているんだ?」

「事実として、水銀は危険な物質です。」エリアスはゆっくりと口を開いた。「師匠の言葉を覚えていますか?『事実と理論が喧嘩をしたら、事実が勝つ』と。もし辰砂が危険なものだとしたら、どんなに理論がそれを賢者の石だと語っても、それは事実には勝てない。」

________________________________________

レオナルドの反論

レオナルドは少し鼻で笑うようにして答えました。「エリアス、君の心配は杞憂だ。事実として、辰砂はほとんど水に溶けない。飲用したとしても、体内に留まることなく排泄される。だから、危険はないんだ。」

「……でも。」エリアスは反論するように視線をレオナルドに向けます。「もし辰砂が燃やされたらどうしますか?そのときは毒性の強いガスが発生します。誰かが誤って火に近づけたら……」

その言葉を聞くと、レオナルドの目が冷たく光りました。「エリアス、そんな仮定の話に何の意味がある?貴重な賢者の石を燃やすような馬鹿者がいるとでも?」

「でも……」エリアスが言いかけたが、レオナルドは手を振って遮ります。

「君は実用的な研究をしているようだが、視野が狭すぎる。辰砂がもたらす恩恵を見逃しているだけだよ。それに、私の研究と結果がすべてを証明している。あとは君がどう解釈するかだ。」

________________________________________

別れ

そのままレオナルドはエリアスに背を向け、軽く手を挙げて去っていきました。研究所の静寂の中に残されたエリアスは、彼の背中を見つめながら小さくため息をつきます。

「……理論と事実がぶつかり合うとき、どちらが本当に勝つのだろうか。」

エリアスは再び硫黄の袋を確認し、そっと研究所を後にしました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ