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空から届けてくれたような気がした

  クーラーの効いた部屋のベッドの上に放り投げられているスマホの上で別れるとき、これまで何人ものキャラクターを運んだ、そんな彼らが口を揃える「曲がり角」を俺は初めて目にした。直角の先は光に溢れていた。「恐れるな」とでも言っているようだった。これまでの俺がそうだったように「運び屋」には角も光も見えない。レ・ルーココのどっちの目にも見えないらしい。眠れない夜や起きられない朝よりも遥かに遠いい場所に行くんだ、と俺は思った。

  ミコ キーラレインは、自分には見えない角っこで、互いの骨を感じるくらい強く抱きしめてくれた。


  茶髪の作者は、少女らしい華奢な背をこちらに向けていて、タンスの前で荷づくりをしているようだった。取っ散らかる勉強机の上には赤いスポーツカーのトイが置かれている。 

地上の車種は良く知らないけれど、きっとアレに乗って今まで暮らしていたのとは違う世界にある「カーマンライン」から誰かを運ぶんだな、と思った。

 「別れのキスくらいしろよ」ベアハッグのような強いハグを解いたミコ キーラレインは言うと、光以上羽未満の軽いキスをした。突然のキスよりもその驚異的な軽さに、げっ、マジかよ、と思った。

  俺よりも背の高い彼女の唇は、ジェットタイプのヘルメットで走り続けるバイク乗りだけあって、小石のように固かったけれど、そんなことは言わなかった。俺は違う文句を言うべきだったのかもしれない・・・・・・。

  「待っててね。必ずこっちに呼ぶから。だから俺は最後の恋人なんかじゃないよ。ミコはこっちで好き放題に恋をするんだ。我がままで誰よりも浮かれて、悲しいことなんて何一つない生き方をするんだ。呼んだはいいけど、もし仮にミコと出会えなくても、俺はレ・ルーココの美しさがある世界にいられたらそれだけでいい・・・・・・少しだけ背を高くしてもらって」ハハハ。



 

 17歳の今年の夏、幼いころから調子の上がらない「赤いエンジン」をリペアする決断をした少女と母親の当初の懸念は、胸を開くリスクではなく費用だったが、父親の遺した左ハンドルをいよいよ手放したことで解決していた。


 ・・・・・・少女は昨日の雨上がりスマホへ走り書きした一文を点滴の麻酔が始まる前に読み返してみた。入院中に初めての小説を書くつもりでいる彼女は、書き出しが一番の難関だ、と言われていたが、そうでもなかった。まるであのときのお姉さんが空から届けてくれたような気がしたほどだった・・・・・・。


 なにも戦争や革命を運んでいるわけじゃない。「素人」のキャラクターが専門だ。


 うん、悪くないぞ。少女はそう思った。


 


 この物語は、本来なら創作上の「キャラクター」をコンセプトにした(つもり、ではあるのだが)「シェリー」の系譜上に位置する作品にしようとしたのだが、書き進めているうちに、全体の長さも含め、おそらくは意図した「位置」を違えてしまった。最もなる要因は「ケガレ」云々だろう。

 筆が未熟だから「差別意識」という、根本的な心情は書き切れていないのは承知している。それでもぼくはたとえば「即配便」によりアプローチしてみました。


 尚、「ケガレ」云々は「日本の歴史をよみなおす 綱野義彦 著/筑摩書房」を参考にしました。


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