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ガレージ葬 4 コパのキック合戦

 式の最後に喪主のスケールが言葉を詰まらせながら父親に対する、私生活に於いての強烈な文句と、どれだけ愛していたかを述べた。当たり前のことだが、アルトだって車やバイクをいじるだけの人生でしかなかったわけではなく、時間が来てシャッターを閉めた後の、あるいは開けている間も、彼の内面には誰にも語らない、自分自身への怒りや、失望などがあったようだ。思っていた以上に出来の悪かった父親の話は、反って参列者の涙を誘ったのだったが「籍を残している私は財産放棄する予定なので、もし仮に皆さんの中に父への支払いが残っている方がいるのであれば、もう存在しなくなりますので、その旨よろしくお願いします」と言ったときは一人残さず掌を返したように喝采が起きた。さすが旧車乗りだと思った・・・・・・いよいよリフトから葬儀屋の「車」へとシャトルが運ばれた。「車」がガレージに横付けされ、白い内装のハッチバックが開くとみんなが担ぎたがった。俺にもその気持ちはあったけれど、もっとずっと強い気持ちと腕力がありそうな者たちが8人で担いだ。じぁな、とかバイバイ、とか声を掛けられハッチバックは閉じられた。そのときナイラーは目を閉じた。

「葬儀屋」が制帽を脱ぎ、短いけれども、死者や遺族、そして参列した我々へ丁寧な言葉で式の終わりを告げた。そんなわけでこれから向かう公営の「送り場」へ移動する段になったのだが、おそらく式の間ずっと思い詰めていたのだろう、誰かが突然提案したのだ。

 「最後にあいつのコパのエンジンも掛けてやろうぜ」

 ・・・・・・ああ、こうやって葬式ってやつは、どこかなんとなく終わるんだよな、と思っていた我々は、残りの支払いを免除されたときと同じくらい盛り上がり、むしろバイク乗りははしゃいだ。

 店の裏に片付けられていたコパを表に押してくると「キック合戦」は始まった。予定外の出来事に葬儀屋は肩をすくめた・・・・・・でもコパはなかなか始動しなかった。いつだってメンテナンスが行き届いていただろうに、今日のコパは余程機嫌が悪いのか、もしかしたら悲しんでいたのかもしれない。ビンテージバイクの参列者が上着を脱ぎ、ネクタイを緩め、俺が俺が、と代わるがわる何回もキックしては汗をかくだけで難儀し続けた。見かねた車の旧車乗りが、オラオラ言い出して試してもコパは咳き込むだけで吠えない。

 今からセルモーターをつけた方が早ぞ、とヤジが入り、押し掛けして諦めろ、と誰かが妥協案を言った。

 「もうそろそろ、お時間ですし」葬儀屋が苦笑いすると、スケールは参列者にも葬儀屋にも申し訳なさそうな、今日一番悲しい表情だ。初めに言い出した奴はどれだけ立場をなくしたことだろう。


「ぼくおいで」ナイラーは、いつの間にかオイルライターごとキープしていたスライダースを箱から一本抜き、新たに火をつけて少年に言った。

 母親の隣で終始「無」を体現しているかのような・・・・・・こっちの子が本当は死んでるんじゃないのか? ・・・・・・くらい・・・・・・ともすれば日常に退屈しきった、あるいは亡霊として生きる孫の「フラジオ」を手招き、なかなか手こずるコパの前に出て行った。すると信じられないのだけれど葬儀屋の「車」のハッチバックが勝手に開いた。

 




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