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レ・ルーココについて 5 それは美しい二つの玉

 果たして一族の長となり、死んで久しい父親との親子関係と会社経営に苦しむ長い人生の中で最初に生まれた孫に「ハバ」と名付けたゲレーテが、人生の夢を実現し得ていたのか否かは、俺には分からない・・・・・・まぁ、それはどうあれ「はしご」を上り小銭を持て余していた、若かりし頃の「ゲレーテ セゾン」もまた、とあるレ・ルーココに熱を上げた末に玉砕したと言う。そしてこのバカはスキャンダル史に残る先輩を倣い復習する決意を固めた。それは「丸ごとパック」を後押しすることにもなり、もっと多くの舐めるべき靴が増えるかもしれなかったからだ。


 革とエナメルの味覚を知る、青年実業家はレ・ルーココたちを再びこう呼んだのだ。


「ケガレ」


 あいつらは汚れて死んだ奴らを専門に仕事してきた連中だ。存在しない可能性だってなくはない「魂」をネタにボッてきやがったんだ。あいつらこそが先祖代々「穢れて」いやがるに違いないんだぞ。いいか? よく聞けよ、あんな連中と一回でもヤッてみろ。お前は今日から「甲ケガレ」だ!!


 この言動は余りに激しすぎた。むしろ親方思いの親殺し状態になってしまい、強欲と化していた権力者たちもさすがに困惑した。自分の親や祖父母の魂が「穢れ者」たちの手で扱われ葬られた等とは思いたくなかったし、そもそも彼らにも素敵な愛人がいたのだ。そんなわけで駆け上っていた彼のはしごは一瞬で外されたわけだ。

 運命的な女と出会い、希望の息子か夢の娘を愛してみたいと、今は願うだけの未来まで真っ逆さまに落下していった若造の尻を、今度は自分たちが拭かざるを得なくなった「連中」は、かなり使える頭のいいブレーンと、優秀なコピーライターに賤称「ケガレ」のカウンターを考えさせた。そこで考案されたのが「二つの美しい玉」という意味の「レ・ルーココ」だった。キャッチ―な新名称が世間に広がるとさわやかな風が吹いた。

 自分の心の奥底にもゲレーテのような奴らと同じ「差別意識」があったのかもしれない、と戸惑っていた多くの善良な市民は、突然に吹きだしたさわやかな風の風下で、ここ最近孤独な抵抗をしなければならなかった密かな自問自答にオフィシャルな「蓋」をすることにためらいはなかった。一方では、ブレーンが発案したカラーコンタクトの開発も時を同じく成された。

 以来我々は彼らのことを「レ・ルーココ」と呼び、アルトのように悪気がなくてもスラングとしてこっそりと、あるいは誰かを見下したい奴は相手が同じ「ダック」人だろうがなんだろうが堂々と「ケガレ」と呼ぶのだった。

 突然「レ・ルーココ」とキラキラ呼ばれ始めた彼らの多くは逆に無用のトラブルを避けるべく、若者のおしゃれ目的に開発されたとする使い捨てカラーコンタクトを使い、両目の色が合うように片目にだけつけるのだった。





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