レ・ルーココについて 4
裸に小鳥のエプロンをかける保育士役だった高級ラウンジガールも、父親と同じ歳の学者のプロポーズを断った助手もレ・ルーココだった。同学年の父親から猛反対された学者は、助手の実家の家業をここぞとばかり陥れようとしたと言われている。もちろんその時はまだ、歳の差が20歳以上もある「若い男」に出世を約束して、固い爪の手を出すような怪しげな女学者の新説を肯定し同調する声は多くなかったので、青年の実家や同業者へのダメージは微々たるものだった。
でもしかし一人の高級官僚の性癖が露見したスキャンダルの結末に記された「差別」のインパクトは、少なくとも次の世代まで余韻を残した。
決して表向きだけでもなかった、レ・ルーココに抱く尊敬と感謝は、無条件で全面的とも言えなくなっていったのだ。
生活に余裕が出てきた人々は逆にケチになり、ひょっとすると無いのかもしれない「魂」にお金をかけるのはどうなんだろう? と思い始めてしまったのだ。そこに現れたのが、先述した半官半民の葬儀屋だ。そしてそりの合わない親の反対を無視してその商売にも一口乗っていたのがゲレーテだった。行動力だけはある彼は、立場が似るボンボンのボンクラ共を掻き集めると「新世代青年会議」なる組織を立ち上げ、父親や自分より「力」のある権力者たちに利用され、こちらとしても上手く利用する魂胆だったが、どのみち誰かの靴を舐めるような青年はほぼ全員から、そして何もかもを裏切られてしまったのだった・・・・・・。