第伍話 「赤キ獅子と緑の科学者」
この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
ある日の真夜中、警報が鳴り響き、点滅する赤い光がビルといった建物を照らしていた。
そんな中を一人の男が音も光も興味無さげにただ向かうべき場所へと一直線に進んでいた。
「ようやく解放された。もう二度とあんなところにはいたくないね」
緑メッシュの赤紫髪に黄色眼の容姿をした至る所にベルトを巻いたロングコートの男がそんな愚痴を零していた。
そう、この男は脱獄犯の一人 エドバルド・ルドン。
彼は元々芸術家であったが、クオリティを求めるがあまり街で大きな爆破や殺人を起こし、ヘルズケージに収監されていた。
しかし、そんなヘルズケージで爆発が起こった。
これはエドバルドが仕組んだモノでは無かった。
「動くな、CSFだ」
エドバルドに呼びかける声が後ろから聞こえてきた。
エドバルドが振り返ると、そこにはCSFの隊員が銃を彼に向けるように構えていた。
それだけでなく、エドバルドを包囲し、他のCSFの隊員が武器を構えていた。
エドバルド「何?僕はさっさと帰って作らなきゃいけないんだ」
エドバルドは面倒くさそうな様子でCSFの隊員に向けてそう言った。
まるで自分は関係ないと言わんばかりに
CSF隊員A「大勢の人間を殺し、街を破壊したお前はもう一度捕えなければならない!実力を行使してでもだ!」
CSFの隊員達は徐々にエドバルドに接近していた。
エドバルド「…とても面倒だ。もうあんなところにはいたくないんだ」
エドバルドは懐から紙を取り出し、それを上空に投げ出した。
エドバルド「お願いだ、こいつら全員殺してくれ」
エドバルドがそう言った次の瞬間、宙に舞う紙が広がるように展開する。
なんだと思い、CSFの隊員は空を見上げる。
次の瞬間、見上げたCSFの隊員達の首に縄が巻かれ、上に引っ張られた。
何故、首を絞められているのかわからず一人のCSFの隊員は空を覆った紙を凝視する。
絞める縄の先には紙があり、そこから出ている事がわかった。
だが、あまりにも非現実的な出来事である為、CSFの隊員は上手く理解できないまま窒息し、力が抜けるように吊るされたまま死んだ。
エドバルド「案外呆気ないな、正義組織も」
エドバルドはCSFの隊員全員が死亡した事を確認すると、振り向いてすぐさま前進した。
すると、能力が解除されたのか空を覆う紙は消滅し、吊るされていた隊員達もそのまま地面に叩きつけられた。
場面は変わり、クロノス社にある研究室。
暗い部屋で周りに光るフラスコや造られたであろうアイテムが置かれ、机の上には幾つものの紙の資料が散らばるように広がっていた。
その中で椅子に座っていたGという文字が刻まれた緑色の帽子を被っていた白衣の青年 グリンは机につっ伏すように寝ていた。
その中でグリンは夢を見ていた。
一個人が行うにしては、あまりにも多く、過度な仕事を終えたグリンはそのまま寝ていた。
「グリンー!いるかー?」
扉を勢いよく叩き、グリンを呼ぶ大きな声が篭もりながらも研究室に響いた。
グリン「…レオか……」
それはグリンを目覚めさせた。
そして、扉の向こうにいる人物が知り合いのレオである事を理解した。
レオ「グリン!なぁ!グリン!!」
扉を叩く音は止まず、徐々に強まっていく。
それと同時進行にグリンの怒りが蓄積されていった。
グリンは早足で扉に向かい、勢いよく開ける。
グリン「うるさいわ!扉壊れるわ!」
グリンは大きな声でレオを怒鳴った。
レオ「あ!そいつは悪かった!ごめん!」
グリンの目の前にいる赤と銀のハーフの逆立った髪に黒のバンダナを巻いた活気そうな青年 レオは素直にグリンに対して謝罪した。
グリン「…いいよ、次からは気を付けてね」
グリンは若干、不機嫌そうな表情を浮かべながらそう返した。
レオ「わかった!てか、今日は珍しいな!こんな時間までに寝てるなんて」
グリン「そんなに寝てた?」
レオの発言に疑問を持ったグリンは自身の手首に装着していた腕時計を見た。
腕時計は10:00を指しており、いつもレオに教えている9:30より30分過ぎていた。
グリン「…ほんとだ。しかし、寝てたなんてよくわかったね。」
真偽を確かめ終えたグリンはレオにそんな事を訊いた。
扉は叩いていたとしてもレオは研究室に入っていない。
つまり、今の時間帯でレオはグリンの様子を視認する事は出来ないはず。
レオ「ただの勘だ!」
レオは明るく活発な感じでそう答えた。
レオは生まれつき勘が良い為、彼が考える事は百発百中である。生涯一度も外した事など無かった。
グリン「本当、凄いよね。レオの勘ってあまりにも当たりすぎるから、正直に言って怖いよ」
グリンはレオの勘の良さに唖然としていた。
グリン「あ、そうそう。今日の勉強会は短めにやるよ」
レオ「お!マジか!?」
グリンがそう伝えるとレオは嬉しそうに目を輝かせた。
グリン「今日は例の代物が来るからね」
グリンはその理由を述べた。
レオは何の事なのかわからず、理解できない表情を浮かべながら首を傾げた。
そんな時だった。
『戦士のレオとグリンはすぐに隊長室に収集してください。繰り返します…』
突如としてクロノス社内にアナウンスが流れる。そしてそれは二度繰り返された。
グリン「…レオ、今日は無くなりそうかもね」
レオ「だな!」
一方その頃、場所は変わってクロノスの街にある美術館。
他の建物に比べて何倍も大きく、西洋風な外観をしていたその美術館に一人の男 エドバルドが近付いてきていた。
「脱獄犯か!」
美術館の監視と警備を行っていたCSF隊員がエドバルドに向けて銃を構えた。
エドバルド「ここにもいるんだね」
エドバルドはベルトに付いていた絵筆を取り出し、懐から紙を取り出すとそのまま紙に何かを描いた。
CSF隊員B「動くな!貴様の能力はわかっているのだぞ!」
CSF隊員がエドバルドにそう警告するが、エドバルドは気にする様子も無く、ただ紙に何かを描いていた。
エドバルド「撃つ気でしょ?わかってるから」
エドバルドがそう言った後、絵筆をしまい、描いていた紙を先程まで絵筆を持っていた手に持ち替えた。
エドバルドが紙をCSF隊員に見せる。
紙に描かれていたのは弾丸。
そして次の瞬間、紙から弾丸が勢いよく放たれる。
CSF隊員B「弾丸か!」
CSF隊員はすぐさま横に転ぶ様に回避する。
しかし、ここで予想外な事が起こる。
弾丸が裂けるように開くと、そこから無数の弾丸が扇状に拡散した。
CSF隊員B「なんだと!?」
CSF隊員は予想外の出来事に驚愕する。
そして、そこから続けて回避する事も出来ぬまま全身に弾丸が直撃。
CSF隊員はそのまま前に倒れた。
エドバルド「邪魔者が消えたか」
エドバルドは殺めたCSF隊員を他所にそのまま美術館の中へと入っていった。
場面は戻ってクロノス社。
レオとグリンは隊長室におり、いつも通り椅子に居座る未来隊長の前にいた。
グリン「脱獄犯を発見したけど、対処出来ないから僕達が出るという事ですか」
グリンは先程、未来隊長から告げられた内容を要約してそれを言葉にした。
未来「そういうこと」
未来隊長がそう返した直後、一人の男が隊長室の扉を叩いた。
未来「ん?入っていいよ」
未来隊長は何だと思いながら、扉の向こうにいる人に対してそう伝えた。
「失礼します。」
そう言った後、扉が開き、その姿を現すように室内に入ってきた。
紺色の髪に青眼の凛々しい容姿に青のラインが入ったロングコートのような黒装束を身に纏った眼鏡の男がそこにいた。
未来「ウィングドホースのロイドか、どうしたの?」
未来隊長はその男の事を知っていた。
ロイド「新しい情報を得たので、伝えておこうかと」
ロイドと呼ばれる男は未来隊長に歩み寄ると片手に持っていた一枚の紙の資料を手渡した。
レオ「なぁ、ウィングドホースってなんだ?」
レオはグリンにそう訊いた。
グリン「ウィングドホースはクロノス社に所属する五人の幹部で構成された部隊の事で、その実力は僕達戦士と同じか将又それ以上だと言われている」
グリンはレオにウィングドホースについて説明した。
グリン「そして、あの人はその一人で、名前はロイド。調査や潜入捜査などを行い、月の影蛇とも呼ばれている。」
グリンはロイドについてもレオに教えた。
ロイド「説明は以上でよろしいですか?」
ロイドはグリンに対してその確認を取った。
グリン「すみません、問題ありません。」
グリンはそう返した。
未来「成程ね」
手渡された紙に記された文章を黙読していた未来隊長はそんな言葉を口にした。
すると、文を読んでいた未来隊長の目がレオとグリンの方へと向けた。
未来「レオ、グリン。C市街地区の美術館に向かってくれないか?そこに脱獄犯がいる。」
未来隊長はレオとグリンにそう伝えた。
レオ「おう!わかったぜ!」
グリン「了解しました。」
レオは元気よく、それとは対称的にグリンは落ち着いた感じでそう返した。
少しして隊長室を出たレオとグリンは美術館に向かおうとしていた。
しかし、そんな時であった。
グリン「レオ、申し訳ないけど、先に行ってて良い?」
グリンはレオにそう頼んできた。
レオ「準備と対策すんだろ?良いぜ!」
そう言うとすぐさまレオは四足歩行で走り出した。
グリン「さて、届いているかな?」
グリンはレオを見送ると、そのまま自身の研究室に向かった。
しばらくして、C市街地区の美術館にたどり着いたレオは四足歩行から二足歩行へと体勢を立て直した。
レオ「ここか!」
レオは美術館を見上げながらそう言う。
ふと、目を下ろすと一人の死体となったCSF隊員が美術館の扉前にて倒れていたのが目に入った。
レオ「おい!大丈夫か!?」
レオは走って、そのCSF隊員に駆け寄る。
しかし、何も返ってこない。
レオ「やられちまってるのか…!」
レオはCSF隊員の死を悔やみながらも、美術館の方へと視線を向け、そのまま進む事にした。
美術館の中はとても広く、壁には並ぶように絵画が飾られ、至る所には彫刻された木や石などで造られた像といった芸術作品が設置されていた。
レオ「これが美術館なのか?よくわかんねぇのがあるなぁ」
レオは辺りを見渡しながら、思った事を口にした。
「君はわかっていないね」
ふと、男の声が美術館の中を響かさせた。
レオ「誰だ!もしかして、脱獄犯か!?」
レオは大声でそう訊いた。
「脱獄犯?違う、私は芸術家だ!後、美術館は静かにだ!」
脱獄犯である事を否定し、芸術家である事を伝えるエドバルド。
レオ「お前も人の事言えねぇだろ!」
レオはエドバルドの言葉に応じず、大声で反論した。
エドバルド(なんなんだ、アイツは!品性のかけらもない!)
エドバルドはレオに対して嫌悪感を抱いていた。
エドバルド「兎にも角にも、君は芸術を何もわかっちゃいない」
エドバルドがそう言い放った次の瞬間、一部の絵画から出てくるように立体的な人型の何かが現れた。
その人型は赤と黒の二色で構成されており、少し歪な形をしていた。
レオはそれを見て、敵意があると察知してすぐさま戦闘態勢に入った。
エドバルド「さて、獣よ。ここで芸術の素晴らしさを知れ!」
エドバルドがそう言った次の瞬間、人型の何かがレオに襲いかかる。
レオ「獣じゃねぇよ!」
一体の歪な人の攻撃をレオは回避した直後、拳を振るった。
レオ「げっ!?」
だが、そこに殴った感覚は無く、気持ち悪いと言わんばかりの弾力に襲われた。
一方で歪な人はそのまま後ろに退く。攻撃は通じているように見えた。
レオ「なんだよこれぇ、気持ち悪ぃ!」
レオはあまりの異常な出来事に対して不気味に思い、ドン引きしていた。
その拳には赤と黒の色が微かに付着していた。
エドバルド「私の能力は絵を実態化させるモノだ。そして、彼は私の芸術作品『残酷』だ。」
エドバルドは自身の能力について話をし、目の前にいる歪な人型の存在 『残酷』についても説明した。
レオ「なんで残酷って名前なんだ?」
レオはそんな事を訊いた。
エドバルド「わからないか?赤と黒は残酷な色、そして人は生物の中で残酷な生き物。故に残酷なのだよ」
エドバルドは『残酷』という名の由来を述べた。
レオ「…よくわかんねぇな」
レオは何を言っているのだと言わんばかりに理解できない表情を浮かべていた。
レオ「俺は両親に捨てられて、一人の人間に親代わりのライオンを殺されたし、注射された後に変な力を貰っちまった。」
レオは真剣な表情を浮かべながら過去の事を述べた。
それは嘘偽りの無い事実であった。
物心が着く頃にレオは実の両親から捨てられた。
土砂降りの雨の中でだ。
その中でレオは両親を探しに進んだが、足を踏み外して、川の中で溺れそうになった。
そこをライオンに拾われ、レオはそのまま育てられた。
故にレオはライオンのような四足歩行だったり、知識を身につけようとグリンと共に勉強会を開いたりしていた。
ライオンに育てられてから数年後、一人の科学者に拾われた。その代わりとして親代りであったライオンの命は奪われた。
それからレオは檻の中で幽閉されていて、しばらくしてその科学者に注射器を刺され、レオ自身にも能力が宿った。
レオ「けど…」
レオの両手足に炎が発現する。
レオ「俺は人間が全員残酷なヤツとは思わねぇ!俺を思ってくれるヤツがいた!!」
レオはエドバルドの人間が残酷である事を否定した。それはグリンや他の戦士達の影響が一番大きかった。
エドバルド「芸術は理屈とか根性で語れるモノでは無いのに…」
エドバルドは絵筆を片手で持ち、その筆先を上に向けて掲げると、筆に付いていた塗料が浮き出て、自我を持つように、与えられた目的を成し遂げるかのように美術館の中を飛び散っていった。
いくつかの塗料は絵画や彫刻された像といった立体的な芸術作品に取り憑く。
すると、絵画からは絵の中から出てきて、実態を持ち。
彫刻された像等はひとりでに動き始めた。
レオ「敵が増えた!」
レオは両足に炎を纏いながら、力強く構えた。
幾つものの芸術作品はレオを囲い、徐々に迫りつつあった。
レオ「とりあえず、気持ち悪くねぇヤツから!」
レオは炎纏う拳を彫刻された像に向けて振るう。
像は亀裂を生じながら粉々に砕けていった。
そんなレオに背後から絵画から出てきた敵が襲いかかる。
レオは蹴りで対応した。
そのまま敵は後ろに吹き飛ぶ。
その敵は全身が燃え上がり、煙を発生させていた。
レオはそれを見て不思議に思った。
レオ「アイツ、炎でなんとかなるのか!よし!このまま行くぜ!」
なんとかなると考えたレオは次々と敵を倒していった。
炎を纏ったままの殴りや蹴りを繰り出し、敵を一網打尽にした。
しかし、それでも敵はまだまだいた。
このまま次に来る敵を倒そうと突き進んだその時だった。
レオ「ぐっ…!」
レオが突然、前のめりに倒れ始めたのだ。
レオ「な、なんだよこれぇ…!」
レオは上手く息ができず、立ち上がることすらままならなかった。
意識が朦朧とし、手足が痺れて力が入らなかった。
エドバルド「馬鹿な人だ。品も無ければ知能も無い。絵画から出てきたヤツらは絵の具の塊。」
ガスマスクで口元を隠すエドバルドはレオの方へと人差し指を向けた。
エドバルド「絵の具を燃やせば有毒ガスが発生する。」
エドバルド「今日の風は強く無い、そして君がいるところは少し進んだ場所で外と接していない。それに、美術館にはスプリンクラーといったモノは芸術作品に損傷を与える為、無い。」
エドバルドは自身の策略をレオに説明した。
そうしている中、苦しんでいる故に動けないレオに自我を持った芸術作品達が迫りつつあった。
エドバルド「さぁ、凡人よ。このまま芸術の素晴らしさの前にひれ伏せ」
エドバルドが死刑宣告をする。
レオ「クソッ…!」
レオはもう駄目だと思っていた。
レオの頭上を何かが通り過ぎた。
それは無色透明の液体を含んだガラスの瓶。
次の瞬間、銃声が鳴り響く。
すると、瓶が四方八方に破裂する。それにより液体は落ちていき、辺りに燃え盛っていた炎を鎮火した。
エドバルド「なっ!?なんだと!?」
「どうせこうなると思ったよ。」
レオの背後から声が、声の主であろう人の歩く音が聞こえた。
その発言はまるで先を見越していたかのようなものであった。レオは咄嗟に振り返る。
グリン「備えあれば憂いなしってね」
そこにいたのは白衣を身に纏ったグリンであった。
レオ「グリン!」
レオはグリンが来た事に対して、安心のあまり歯を見せるような笑みを浮かべ、そして彼の名を呼んだ。
グリン「大丈夫?」
グリンは安否の為、レオに呼びかけた。
レオ「悪ぃ。少しミスった…」
グリン「仕方が無い」
レオの返しにグリンは腕時計から一つの薬品を取り出すと、そこから一個の錠剤を出した。
グリン「飲んで、苦くないよ」
グリンの指示通りにレオはそれを口の中に入れた。
レオ「おぉ!治った!!」
すると、レオは元通りの状態になった。
レオに飲ませた薬は有毒ガスを分解し、治療するモノ、いわゆるガス用解毒薬であった。
エドバルド「厄介なヤツが来たか」
エドバルドはひと目で嫌だとわかる表情を浮かべた。
グリンは目の前にいる迫りつつある動く芸術作品らを観察する。
グリン「ねぇ、レオ。エドバルドの能力はなんだった?」
ふと、そのままの状態でグリンはエドバルドの能力についてレオに訊いた。
レオ「絵を実態化させる能力って言ってた!」
レオはそう答えた。
グリン「ありがとう、そして良かった」
グリンは微笑みを浮かべながら感謝の言葉で返した。
グリン「能力の源は青い粒子のコズミック・コア。そして、それは人によってモノによって異なり、それらを象徴するものとなる。」
グリンはそう言いながら、懐から先程投げた瓶とは別のものを投げた。
その瓶が芸術作品達の上空に位置した時、グリンはリボルバーの付いた拳銃を構え、その瓶に照準を合わせる。
そして次の瞬間、勢いよく弾けた音と共に銃口から弾丸が放たれた。
弾丸は瓶に直撃し、中に入ってあった液体が落ちてきた。
その液体が彫刻された像や絵画から出てきた絵の具の塊にかかり、濡れる。
彫刻された像には何の変化も起きなかったが、絵の具の塊は溶けていった。
エドバルド「なっ!?何をした!?」
エドバルドは予想外の出来事に驚いた。
グリン「酸素系漂白剤だよ、絵の具を落とすにはこれが効くんだってさ」
グリンは答えを提示した。
グリン「あ、そうそう。さっきの火は消化器と同じものを使ったよ。」
追記として先程の火を消した液体についても説明をした。
エドバルド「対策を講じて、ここに来たのか!」
先程まで落ち着いていたエドバルドが冷や汗をかき始めた。
グリン「そういう事。レオ、絵の具は僕に任せて、像とか殴れるものは頼んだよ」
グリンはレオにそう指示した。
レオ「おう!」
レオは両手両足に炎を纏い、戦闘態勢に入りながらそう返した。
そして、レオは一歩を踏み出し、彫刻された像に向かって勢いよく走り出した。
レオが一体の像に飛びかかり、勢いよく拳を振るう。
燃え盛るその拳は像の顔面に直撃し、亀裂を生じ、残骸が飛び散りながら倒れる。
そして、そのまま機能しなくなっていった。
絵の具の塊である敵がいない状況下、レオにとっては無敵に等しかった。
一方で絵の具の塊はグリンが酸素系漂白剤が入った瓶と拳銃を駆使して尽く対応していった。
そうして最後の一体の像をレオは拳で叩き壊した。
レオ「全部倒した!」
グリン「アイツのところへと向かおう」
全てを殲滅した二人は走りながらエドバルドの方へと向かった。
そんな中でレオはグリンにある事を訊ねた。
レオ「来たのか!それ!」
グリン「あぁ、来たよ。」
グリンは拳銃をレオに見せた。
グリンが持っている拳銃はリボルバーが付いていて、銃口の形状がハンドガンのモノであった。
これはグリンと武器などを製造する企業が協力して生み出したもの。
元よりグリンは能力を持たない人であれば、特殊な体質を持っているわけでもなかった。
どうしてもみんなの力になりたいという思いで出来たのがこの拳銃 「ベルデゾロ」であった。
レオ「すっげぇな!それ!普通にかっけぇ!」
レオはグリンの銃を見て、あまりのカッコ良さに大興奮していた。
グリン「僕でも扱えれるよう調整されているからね」
グリンはレオにそう伝えた。
調整をするのに何度も繰り返し、時間を費やした訳だが、その結果が今こうして上手くいっていた。
グリン自身、それに安堵していた。
何故、グリンが戦士として闘うのか?
それには訳があった。
かつてグリンの父は科学者であった。
名はスプルス。誰よりも研究に没頭していた男であった。
スプルスはこの身を捧げてもいいという程に研究に励んでいた。
それ故にグリンの事、家族の事に関しては目にもくれなかった。
それに呆れた母親はスプルスと離婚。
しかし、グリンは母親では無く、父 スプルスと共にいる事にした。
誰でもない、グリン自身が選んだ事であった。
そう、グリンは幼いながらも研究に興味を持ち始めたのだ。
グリンはスプルスの背中を追うように研究をし始めた。
それがきっかけかスプルスはグリンに科学のありとあらゆる知識や研究などを教えた。
基礎的な事、応用的な事、そして大事な事。
そうしていって、少しの年月が経ったある日の事だった。
スプルス「グリン、今日からうちに住まうことになった子達だ。気にしないでやってくれ」
スプルスはグリンとは他の子供達を家に入れ始めた。
全員、肌が汚れていて、衣服も品が無く、傷や汚れがあった。
スプルス「さぁ、入ってきなさい」
その人達をスプルスは一室に入れていた。
グリン(なんで、僕と同じか近い子が?)
この時のグリンは上手く理解できず、スプルスに対して、何も言わなかった。
スプルス「グリン、今日は珍しいよ。ライオンに育てられたんだってさ」
そして別の日、スプルスは新しい子供を連れてきた。
今まで来てた事は違って、瞼を閉じながら寝ていた。
グリンはその少年を目にした瞬間、他の子達とは何かが違う事に気が付いた。
勿論、肌が汚れていたり、衣服も傷がついていたりとしてはいるが、手を見れば爪は異様に伸びており、足にいっては裸足ではないか。
その少年 レオも一室に入っていった。
グリン(父さんはいない、今だ…)
グリンはスプルスの隙を伺って、いない時にその部屋の中に入っていた。
その先にあった階段を静かに降りていった。
グリン「これって…」
そこでグリンは衝撃的な光景を目の当たりにする。
そこに広がっていたのは奥行きのある地下部屋であり、両サイドには檻があり、真っ直ぐな道のりを作っていた。
グリンはレオがいる檻を見つけると彼の元へと駆け寄った。
グリンはスプルスの隙を伺って、いない時にその部屋の中に入っていた。
その先にあった階段を静かに降りていったところ、グリンは衝撃的な光景を目の当たりにする。
そこに広がっていたのは奥行きのある地下部屋であり、両サイドには檻があり、真っ直ぐな道のりを作っていた。
グリンはレオがいる檻を見つけると彼の元に駆け寄った。
檻の中にいたレオは横になって寝ていた。
グリン「君、大丈夫?」
グリンはレオに声を呼びかける。
レオ「…んー……」
レオの目が開く。
意識がはっきりとした次の瞬間、レオは檻にがっつくように掴みかかる。
大きな鉄の音が鳴り、グリンはそれに驚いた。
レオ「おい!誰だお前!父さんと母さんに何をした!」
レオは反抗的な目でグリンを睨みながら怒号を上げていた。
グリン「お、落ち着いて…僕は父さんじゃない」
グリンは必死にレオを宥めた。
グリンの言葉が届いたのだろう、レオは落ち着き、檻から手を離す。
レオ「お前、アイツの事をなんだと思ってるんだ?」
グリン「え?アイツって、父さんの事?」
レオのいきなりの問いに困惑してしまったのだろう、グリンは質問で返してしまった。
レオ「そうだ!アイツの事、どう思ってるんだ!!」
レオは大きな声を粗げ、再度質問を投げかけてきた。
グリン「…ごめん」
グリンはそう答えると、レオから離れるように地下の部屋から出ていった。
翌日、グリンはスプルスに料理をあげるように頼まれた。
グリンは一通り孤児達に食料を配り、レオにも渡した。
だが、レオはそっぽ向いて寝ていた。
そして、グリンは昨日の問いに答えた。
グリン「父さんの事なんだけど、前までは普通だった。尊敬していた。けど、今は怖い。急に狂い壊れている気が…するんだ……」
グリンがそう言うと、レオは目を覚まし、起き上がる。
レオ「…なぁ、お前なんて呼ぶんだ?」
レオはグリンに名を訊いた。
グリン「…グリン、それが僕の名前」
グリンはそう名乗った。
レオ「そっか、俺はレオ!ライオンに育てられたんだ!」
レオも自分の名を言った。
グリンとレオ、二人の交流はこの時から始まった。
食事を配る時、スプルスが留守の時、いない時にグリンはレオと話をした。
レオがライオンに育てられていた時の話、面白い研究の話と色んな事を話した。
そうして数週間後、グリンは夜になった為、自室に戻って寝ようとしたその時だった。
「ぎゃあああああああああ!!」
突如として子供の悲鳴が聞こえた。
グリン「地下から…!レオ!」
グリンはそれが地下から聞こえたものだとすぐさまわかると、急いで地下部屋へと向かった。
そしてたどり着くと、グリンはある光景を目にした。
スプルス「お前が最後だ!大人しくしろ!」
レオ「嫌だ!怖いぞ!」
それはレオがスプルスに襲われているものであった。
他の子供達は横になって倒れていた。
そして、スプルスの手には注射器があり、その中には青い粒子 コズミック・コアが入っていた。
子供達が倒れているのはあれが原因なのだとグリンは瞬時に理解した。
グリン「父さん!やめて!」
そうしてグリンはスプルスを押し飛ばした。
レオ「グリン!」
グリン「それは後!早く!」
そのままレオの手を取り、急いで逃げようとする。
しかし、スプルスはグリンに向けて注射器を振るった。
レオ「危ねぇ!!」
それに気付いたレオは身を呈してグリンを庇った。
レオ「ぐあっ!」
そのまま注射器はレオの腕に刺さり、中にあったコズミック・コアがレオの体内に入っていった。
グリン「レオ!」
スプルス「やっとだ!さぁ!楽しみだぁ!」
心配し、レオの名を呼びかけるグリンを他所にスプルスは嘲笑うような笑みを浮かべながらレオを楽しそうに、興味津々に見ていた。
グリン「父さん…お前!!」
怒りを覚えたグリンはレオに刺さっていた空の注射器をスプルスの足に突き刺した。
スプルス「がっ!!痛いっ!畜生…!!」
スプルスは痛みのあまり苦痛な表情へと変わった。
グリン「レオ!」
レオ「うぅっ…」
その隙を伺ってグリンは苦しそうなレオを連れて家を出ていった。
話を戻して、現在。
レオとグリンは遂にエドバルドを見つけた。
グリン達の目の前にはキャンバスを載せたイーゼルと向き合うように椅子に座っているエドバルドであった。
エドバルドは片手に持つ絵筆でそのキャンバスに何かを描いていた。
グリン「ここまでだ!エドバルド・ルドン!」
グリンはエドバルドに銃を向けていた。
エドバルド「美術館では静かに、わからないのか?」
エドバルドはレオとグリンを睨むように見ていた。
グリン「君に言われたくないね。人様の芸術をこんなにも蔑ろにするなんて許せないし、そんな君を芸術家なんて呼ぶにはあまりにも烏滸がましい!」
グリンは真剣な表情を浮かべながらエドバルドに向けてそう吐き捨てた。
エドバルド「烏滸がましいだと?ふざけた事を、君にはこの芸術の素晴らしさがわかるか!」
エドバルドは片手に所持していた絵筆を握り潰した。そしてそのまま粉砕した絵筆を投げ捨てた。
エドバルド「君達が目にして来た芸術作品は全て平凡でつまらん!だが私は違う!今までの何よりも素晴らしく、美しい!君達にも見せてやろう!」
エドバルドはキャンバスをレオとグリン達に見せる。
そこにあったのは爆破する街並みで赤い人々がムンクの叫びのような表情を浮かべながらこちらに向けて手を差し伸べていたりと助けを求めていた絵であった。
レオ「これの何処が素晴らしいんだ!」
レオは気味悪く思い、嫌な表情を浮かべながら身構えた。
エドバルド「君にはわからぬさ!この『惨劇』を読み取ることなどできない!」
エドバルドはレオに向けてそう吐き捨てた。
グリンはエドバルドが壊した絵筆を見ていた。
グリン「…やっぱり、君は芸術家に相応しくない。」
一息吐いた後、グリンはエドバルドに向けてそう言い放った。
エドバルド「なんだと?」
エドバルドの頭に血管が浮き出て、怒りを露わにする。
グリンはそれに臆する事無く、真っ直ぐな眼でエドバルドを見た。
グリン「芸術だけじゃなく、絵筆も壊した。そんなヤツが芸術家なんて、はっきり言って恥だね!」
グリンは言い切った。
エドバルド「科学者であるアンタが芸術を語るなァ!!」
エドバルドは怒号を飛ばした。
次の瞬間、エドバルドが見せた惨劇という名の絵が浮き出て、その中にいた赤い人達が列をなして、流れるように一直線に走り出してきた。
レオは横に移動して、グリンは上空に飛ぶように回避した。
エドバルド「この作品は平穏にして平凡過ぎるのが嫌だと思う故に生み出した最高傑作だ!」
エドバルドの愚痴が怒りと共に放たれた。
それを他所にグリンは酸素系漂白剤が入った瓶を列並ぶ赤い人達に向けて投げ、それに向けて銃弾を放った。
弾丸の直撃により瓶は破裂し、液体は広がった。
濡れた赤い人達は溶け出していった。
だが、絵画から赤い人達は止むこと無く流れ続けていた。
グリン「そういう感じか!」
グリンは自身の判断が誤った事を悔いたが、それよりも先にこの危機的状況をどう切り抜けるかを考えていた。
レオ「うぉりゃあああああ!!!」
レオは走りながらエドバルドに接近し、炎の拳を振るった。
エドバルド「品の無いヤツが!私に触れるな!!」
エドバルドはその拳を難無く避けた。
レオ「オラァ!」
だが、レオは拳を振るった勢いでそのまま回転し、キャンバスを蹴り壊した。
すると、キャンバスから流れ出る赤い人達は途切れた。
グリン「ありがとう!レオ!!」
グリンは赤い人達のうちの一体の頭を踏み、再度跳んだ。
グリンは拳銃のベルデゾロを構え、エドバルドに照準を定める。
グリン「そこだ!」
ベルデゾロから弾丸が放たれた。
レオから離れるように後ろに退いていたエドバルドはグリンが撃った弾丸の存在に気が付くと、手にしていた絵筆で渦を描いた。
弾丸がエドバルドの近くにまで接近していた次の瞬間、それは渦巻に飲み込まれていった。
そして、そのまま弾丸は明後日の方向へと飛んでいった。
弾丸が逸れたと思った時、エドバルドの背中に熱くて強い衝撃が走った。
それはなんと炎を纏うレオの拳であった。
レオ「忘れてたな!俺の事を!!」
エドバルド「品の無い獣がァッ!」
エドバルドはそのまま殴り飛ばされ、顔面に激突する形で壁に激突した。
エドバルドはそのまま地面に倒れるも、なんとか起き上がろうとしていた。
エドバルド「おのれェ…!何故、わからない!?天才の私が手掛けた作品は最高にして至高のはずだ!」
エドバルドは怒鳴るような感じでそうほざいていた。
すると、そんなエドバルドにベルデゾロの銃口が突きつけられた。
グリン「エドバルド・ルドン、君の野望もここまでだ」
グリンはエドバルドにそう宣告した。
エドバルド「この餓鬼が…」
エドバルドは懐から絵筆を取り出そうとした。
その時、銃声が鳴り響き、ベルデゾロの弾丸がエドバルドの脳天に直撃した。
そう、グリンがエドバルドの攻撃を阻止したのだ。
そのままエドバルドは息を引き取った。
グリン「もうこれ以上、君のエゴで何もかも奪わさせないし、汚しはしない。」
グリンは心苦しく思いながらも真剣な表情でそれを隠し、そう言い放った。
それからしばらくして、駆けつけたCSFの隊員達によってエドバルドは連行されていった。恐らくそのまま何処かへと埋葬されるのだろう。
エドバルドによって内装が荒らされた美術館はクロノス社が負担して、全て修理した。
エドバルドの件から翌日の事、グリンは自室である研究室に篭もり、瓶といったアイテムを作成し、ベルデゾロの手入れを行っていた。
グリンはベルデゾロを見つめながら過去の事を思い出していた。
それは狂ったスプルスから遠くに離れようとレオと共に逃げていた事であった。
その日は暗い雲が夜空を覆っていた。その中をレオとグリンは必死に走っていた。
その道中でレオが足を止め、うずくまった。
レオは苦しいと言わんばかりに唸り声をあげていた。
レオ「うっ、ううぅぅぅぅぅ…!」
グリン「レオ!?どうしたの!?」
グリンの片手がレオの背中に触れようとした次の瞬間、物凄い熱気に触れて、当たった。
グリン「熱ッ!レオ!?」
グリンは熱いと思い、手を引っ込める。だが、すぐさまレオの方へと顔を向けた。
グリンの眼に映ったのは衝撃的なものであった。
幼いレオの身体から炎が発現し、燃え盛っていたのだ。
そう、先程のスプルスの注射器に含まれていたコズミック・コアが能力として変化を遂げて、炎として発現したのだ。
レオ「うぅぅぅぅぅぅ…!!」
先程よりもレオは苦しそうな様子を見せていた。
それに呼応するかのように炎も激しさを増していた。
グリン「どうしよう!レオが!レオが燃えちゃう!」
グリンはこの状況に焦っていた。
突然の異常な事態に対応出来ず、どうすればいいのかと必死に考えていたその時だった。
レオに冷たい水がかかった。
そのおかげかレオから放たれていた炎は姿を消した。
「大丈夫、しばらく安静にすれば収まると思うよ」
すると、グリン達にそう言葉をかける声が聞こえた。
グリンがその声の方へと顔を向けた。
そこにいたのは一人の少年 未来隊長であった。
未来「君達にお願いしたい。僕の仲間として戦士になってくれない?」
未来隊長は幼いグリンと対等の大きさで話し、そうお願いを申した。
そう、これが未来隊長との出会いであった。
その後は戦士としてレオとグリンは活動し始めたのだ。
グリン「懐かしい事、思い出しちゃったな…」
グリンはふと、そう呟いた。
レオ「おーい!グリーン!いるかー?」
レオが大声で外からグリンを呼びかける。
グリン「いるよー、今行く」
グリンはレオに勉強を教える為にベルデゾロを机に置き、研究室を後にした。
一方その頃、場面は変わって別の場所。
コンクリートに囲まれた暗い闇の中から誰かが歩いていた。
それは一直線に、ただ真っ直ぐにと
その誰かが広々とした一室にたどり着き、足を止めた。
一室もコンクリートに覆われていて、至る所にソファと机、タンスや等身大の鏡などが置かれていた。
そこを照らすように正方形状の窓が一つ置かれていた。
「来ましたか、ラグナ」
椅子に座り、目の前にある机の上にあるありとあらゆる発明品と一つの液晶モニターと向き合っていた男がそのまま後ろにいた、先程まで歩いていた足を止めた男 ラグナと呼ばれる人物に話しかけていた。
ラグナは三つの角を生やした特殊な仮面をつけ、上下共に赤い服の上に黒のロングコートを羽織っていた。
ラグナ「あぁ、何人か脱獄犯を集めた。本当ならあと一人、連れていきたかったが、殺られちまったしな」
ラグナは無線から話しかけてるようなノイズがかかった声でそう言った。
すると、椅子に座っていた男はラグナの方へと向き直った。
「エドバルドの事か…それで、何人だ?」
男の問いにラグナは後ろにいる人達を見て、男の方へと向いた。
ラグナ「五人だ」
ラグナはそう答えた。
すると、男は下卑た笑みを浮かべた。
「そうか」
男はラグナに指をさした。
「ラグナ、君に命ずる。来るべき厄災の宴、その前座として君を抜擢したい。良いかい?」
男はラグナにそう指示した。
ラグナ「わかった。んじゃ、好き勝手に暴れてくるぜ」
そう返すと、ラグナは集めた脱獄犯達を掻い潜って、そのまま去った。
「ねぇ、厄災の宴って何?」
すると、脱獄犯達の中の一人が男にそう訊いた。
「失礼。では、話をしよう」
男は椅子から立ち上がり、少し歩を進めた。
そして、男は冷徹な目を向ける。
「厄災という名の殺戮について…」
その後、彼らは恐ろしい事を引き起こそうとしていた。
その事を剣といった戦士達は皆、まだ誰も知らない。
次回
「水と熱」