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外伝 カテドラル

黒影を倒してから三日が経過し、剣達は未だに戦士としての活動をしつつも、一時の安息を得ていた。

その日、クロノス社の一室にてメビウスは興味深く眺めていた。

視線の先には水色に発光する激龍の欠片があり、首飾りに繋がれていたそれを剣が手に紐を乗せるように持ち上げながら見させていた。

これも全て、メビウスに要因があった。

メビウス「本当に凄いな、それ…見てわかる程に絶大な力が放ってるから」

剣「それ、さっきも聞いたぞ…というか、見てたらわかるだろうな」

目を輝かせながら感心するメビウスだが、何度も聞いているので剣は少々呆れていた。

メビウス「だってさー、離れたところでも感じた異常なエネルギーを秘めてたんだよ?」

メビウスは欠片について、その凄さを面白そうに語った。

剣「…わからないでもないが、それを俺に言ってどうする」

メビウスの意見に同情はしていたが、困っていた。

激龍の凄さは剣自身も理解しており、お陰でクロノス社の面々を闇から解き放つ事が出来た。

更に地水火風等の属性へと…具体的には性質を変化させれて、敵の攻撃や能力を無に還す…つまりは、無効化や発動を強制的に一時的ながらも禁止する事も出来た。

激龍神『私は満更でもないがな』

対して激龍神は静かに喜んでいた。

それはメビウスが賞賛しているからもそうだが、人間…正確にはメビウスを面白そうに思っていた。

すると、剣が急に立ち上がり、部屋を出ようと扉に向かって歩を進めた。

メビウス「剣?」

剣「巡回してくる」

その行動に疑問を思い、首を傾げるメビウス。

剣がその疑問に答えると、部屋を出た。


剣がクロノスの街の中を歩き回りながら辺りを見渡していた。

『この件について、専門家の…』

今、世間では激龍について話題が持ちきりであった。

先に述べた通りの激龍の力について議論を交わされていた。

専門家『やはり、この力は有効的に活用していくべきだと思いますね。かつてのヘリオス事変で多くの被害を出し、今も尚苦しめられているのですから』

ニュースキャスター『その場合、現クロノス社についてどうなるのでしょう?』

専門家『私的ですが、撤廃されると思います。あの英雄の息子 邪光 剣が激龍を使えるのですから、社会に役立てないと…』

建物から映し出されるモニターからそんなやり取りが流れ、音声が街中に響いていた。

剣「激龍を世間の為に使うかどうかか…」

そのニュースを見て、剣は眉を顰めた。

激龍神『どうした?あまり快く思っていなさそうだな』

その心境を激龍神は読み取っていた。

剣「当たり前だ、神様の力を使って世界平和など…あまりにも傲慢で身勝手が過ぎる」

呆れた様子で理由を述べた。

剣「確かにガロンもそうはしていたが、あれは自分の意志で選んだものだ。誰かが決めていい訳じゃない」

それを切り替えようと再び足を踏み出した。

激龍神『わかった、理解しよう。選ばれた者、力を手にした者…それは例外なく自らの意志で決めるべきだ』

地上を回り終えた後、剣は路地裏に入る。

大地を蹴ると、壁を使って登りながら建物の上を飛び移り始めた。

その中で激龍神は話を続けた。

激龍神『だが、別に私はどうなろうと構わない。それが非人道的なものだとしても、この宇宙を護れるものであるならばな…』

その返答は何処か含みがあるようなものであり、剣ははっきりしないもののそれを感じ取っていた。

剣「激龍神、本当にそれでいいのか?」

激龍神『宇宙の守護神にして希望の光にして人類の味方である私だが、どうであれ、私は選ばれし者にとって力だからな…別に私が兎や角言うつもりも介入するつもりもない』

剣の問いに激龍神はそう返した。

何処か諦めた様子ながらも満更でも無さそうにも見え、まるで自己犠牲のように思えた。

すると、剣は足を止めて着地した。

剣「激龍神、俺は…」

何かを言おうと、それに対して答えを自らの意志を提示しようとした。

「邪光 剣さんですね?」

その時、剣の背後に黒いスーツにサングラスを付けた男が現れた。

剣「そうだが…貴方は?」

男の存在に気が付いた剣は振り返った。

男の服装を見て、剣は何者なのかを瞬時に見抜いた。

剣「もしかして、カテドラルの?」

男「如何にも、ケレフ・カナーン。カテドラルの護衛だ」

それは見事に当たっており、護衛の男 ケレフが迷うこと無く剣に手錠をかけた。

剣「…これは?」

突然の事に表には出てはないが、困惑しており、手錠について訊いた。

手錠は見事にロックがかかっていて、解こうにも解けなかった。

ケレフ「邪光 剣、貴方を連行する。勿論、危害を加えるような者ではご存知ではありますが、念には念をです。大変申し訳ありませんが、ご理解とご協力の方をよろしくお願い致します」

ケレフは剣に対して淡々と説明した。

そうしていると、ケレフと同じ服装の者達が剣を包囲していた。

剣「…了解した。だが、仲間に関しては手を出すな」

見渡しながらその人達を確認すると、剣はケレフにそう頼んだ。

ケレフ「そのつもりですので、ご安心ください。我々は現段階では正義組織に敵意はありません。」

ケレフは了承し、剣にそう伝えた。


未来「何!?剣が政府に連行された!?」

クロノス社の隊長室にて未来隊長は唐突に告げられた事に理解出来ず、珍しく声を張り上げていた。

『すまない。外野の人達が騒がしく尚且つなかなか決まらないものでね…』

どうやら未来隊長は誰かと連絡をとっていた。

彼の前にして机の上にはパネル状のホログラムが浮遊しており、それでやり取りをしていた。

未来「それって…」

男の話から未来隊長は剣が連れていかれた理由を察知した。

『当の本人から話を聞けば良いと判断した。彼の意志を尊重してあげる為にもね』

未来隊長「だとしても!…激龍は道具などではありません!」

『道具?持ちうる力を使って平和維持、悪人やら罪人を裁く君達が言うか?』

男は平然としながらも馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに嘲笑っていた。

未来「僕達は…!」

『安心したまえ…決定するまでは危害を加える事はしない。最も、彼の意志、選択次第ではあるがね』

訴えようとする未来隊長だったが、男によって遮られた。彼の意志を尊重し、その旨について保障しながら


未来『…絶対ですよ?』

「安心したまえ、ではまた」

クロノス社から何処か豪華でしっかりとした感じの一室へと場面は変わる。

その中で未来隊長とやり取りしていた男は通信を切り、外の景色を眺めていた。

男「激龍、か…この身が震えあがる程の代物だな」

言葉とは裏腹にその態度は落ち着いていたものだった。

男は赤いネクタイが特徴の黒スーツを着ており、彼を象徴するであろう黄金の仮面をつけていた。

「カテドラル様、邪光 剣を無事に連れてきました」

男 カテドラルに銀髪に灰色の瞳を持った黒スーツの男が報告しに来た。

カテドラル「御苦労様、すぐに向かおう」

それを耳にすると、カテドラルは歩き出しながら一室を出た。


レオ「なんだよそれ!?」

戦士室にて剣を除いた戦士達は未来隊長から告げられた情報を聞いて愕然としていた。

その中でレオはカテドラル含む政府の意味や理由が理解できず、彼らの行動を信じられなかった。

グリン「ふざけてる…聞いてからやるって言っても、いくらなんでも神様の力を人間が使うって、冒涜的で傲慢が過ぎる」

グリンは怒りを顕にしていた。

牙禅「悪逆非道、不快極まりない…」

当然、それは牙禅も他の面々も同じであった。

フレア「けどよ、変に動けねぇよな…」

だが、フレアは違っており、落ち着いていた。

ブラック「そうだな…結果的に決めるのは剣自身だからな…」

ブラックもフレアと同じでそう言っていた。

メビウス「ブラックはまだしも、フレアは珍しいな」

フレア「おいそれ、どういう意味だ?」

フレアの反応にメビウスは愕然と唖然としており、当の本人が少し機嫌悪そうに訊き返した。

メビウスからしてフレアは何でもかんでも怒る人という認識でいた。しかし、先の暗黒世界についてやアクアの死などを得て成長したのだと何処かで感じ取った。

ライト「僕は、勿論、剣さんを信じますけど…大丈夫なんでしょうか?」

そう言うライトだが、微かに不安を抱いていた。

もし仮に激龍を世界平和に貢献しようとするものならば、激龍神は勿論の事、剣の身に何かされるのではないか?またそれを拒絶した場合も同じであった。

未来「…今は剣を信じて、見届けよう。無闇に暴動を起こす訳にはいかないからね」

だが、未来隊長はこの場にいる戦士を安心させる為に、落ち着かせる為にもそう伝えた。

自身も疑心暗鬼にはなっている、内心では不安で満ち溢れている、そんな状態の中でもだ。


その頃、剣は国会におり、二人の護衛により連行されていた。

殺害されない為に太刀は他の護衛に預けられ、手錠により両手を拘束されていた。

今、剣が身に付けられている手錠は特殊なもので、能力を強制的に封じるものであった。

ケレフ「貴方なら問題ないと思いますが、くれぐれも失礼のないように」

剣「…了解した」

ケレフが耳打ちをすると、剣はそれに応じた。

そうして辿り着いて巨大な扉の前に立った。

それが開かれると、剣は扉に通ずる室内へと足を踏み入れた。

扉の先は広々とした空間であり、多種多様なオブジェが至る所に置かれていた。

その中心には黄金の仮面を被ったスーツ姿の男 カテドラルが高価な椅子に腰をかけていた。

剣(あれが、カテドラル…)

居座っている男がカテドラルである事を剣は理解した。

彼の威厳はとてつもないものであり、正にこの世界の王と錯覚する程のものであった。

カテドラル「よく来てくれた、邪光 剣」

黄金の仮面から出た声は籠っていたが、はっきりと耳に届く程のものであった。

カテドラル「…では、これより第50377回目の世界会議を始める。議論内容は激龍による社会貢献だ」

静かにはっきりと声を張り上げると、カテドラルはガベルを叩いた。

カテドラル「尚、この議論は多数決によるものでは無く、邪光 剣の意志一つである。その事を念頭に置いておくように」

そうして、警告するようにして再び告げた。

「では、私から失礼します!激龍を有効的に使うべきだとここで断言します!」

すると、ここにいないし、誰でもない、知らない声が流れてきた。

剣が目を遣ると、そこには石像があった。

石像「かつて犯罪組織 ヘリオス社が行ってきた所業は現代に大きな影を残した!そしてその問題は未だに解決していない!人智を超えた力である激龍にはあらゆる攻撃や能力を無に還す能力と性質を変化する擬似能力を兼ね備えている!つまり、その問題を解決する事が出来る!これを活用しない理由がない!その訳がない!」

石像から繋がっている人物は自身の主張を述べた。

まるで演説のように声を張り上げていた。

「私は反対であります」

今度は石像と向かい合っている振り子時計から声が聞こえた。

感情的に話す石像とは対称的に振り子時計は落ち着いた口調で話していた。

振り子時計「ヘリオス社が大きな影を残したのは事実ですし、それが現在進行形で問題になっているのも承知しています。しかし、神の力である激龍を使うというのはいくら何でも冒涜的で無礼であると私は思います…」

「冒涜的!?無礼!?この問題を引き伸ばしにする方が一番の問題だ!」

淡々と述べる振り子時計の主張を否定する声が聞こえた。

それは白い瓶に入った花の絵画であり、ヒステリックな感じであった。

花 オダマキの絵画は振り子時計の意見を途切らせて、自身の主張を交えて批判とも取れる文句を言っていた。

カテドラル「…ケレフ」

絵画から流れる声に不快と思ったのか、カテドラルはケレフの名を呼んだ。

ケレフ「かしこまりました」

カテドラルの意図を読むと、手にしていたリモコンを絵画に翳してそのスイッチを押した。

次の瞬間、絵画が爆発を起こした。

剣「爆発…!?」

突然の事に驚く剣、この場で爆発が起こるだなんて想定すらしていなかったのだから

先の爆発により絵画から声が聞こえなくなった。

カテドラル「結論を出すには話し合いの中で、色んな意見を取り入れ、整理してからだ。遮ってまで他者の意見を否定し、己の主観が全てと口にするのは滑稽…故に嫌いだ。そんな輩はこの場には相応しくない」

仮面でその素顔は見えずとも、溢れ出る程の静かな怒りを剣や周囲のオブジェは感じ取っていた。

カテドラル「シェパード、あの絵画を処分せよ」

シェパード「御意」

辺りに広がった静寂を断ったのはカテドラルであり、彼の指示に銀髪の黒スーツの男 シェパードが承ると、迅速に絵画を取り外してそのまま撤収した。

カテドラル「さて、ガリレオ…続けたまえ」

ガリレオ「は、はい…」

皆が唖然とする中、カテドラルは振り子時計の人物 ガリレオに続けろと指示すると、当の本人は我に返って、途切れた主張を述べ続けた。

ガリレオ「…冒涜的で無礼であると私は思います。そもそも我らには正義組織がいます。彼らは若いながらも懸命に犯罪者や犯罪組織などが引き起こした事件やテロなどを解決してくれました。それに地球外からの侵略者 暗黒世界さえも見事倒してくれました。そんな彼らに無礼である事と、神様の力を人の為に使うのは如何なものだと、寧ろ傲慢であるとしか言えません」

そうしてガリレオの話は終えた。

カテドラル「わかった。一先ず、ここで両者の意見を聞けた訳だ」

議論を一時停止させたカテドラルは剣を直視した。

カテドラル「さて、邪光 剣。君の意志はどうだ?」

そして、そう訊ねた。

全員が剣の意見を聞こうとしている為、オブジェから音声が流れる事は無かった。

カテドラル「彼らはこのように意見を述べていて、事前に投票した結果、賛成派の声が占めている。だが、この件を決めるのは剣、君の意志だ。その一言でこの議論は決まる。」

直後、辺りに沈黙が広がる。

そんな沈黙を剣が発した一言で破られた。

剣「俺は、激龍を社会の為には使いません」

その答えは否定であった。

直後、賞賛の拍手とは対称的の怒号と罵声が室内に鳴り響き、混沌と化していた。

カテドラル「静粛に!」

そんな異様とも言える光景の中でカテドラルはガベルを叩き、全員を落ち着かせた。

カテドラル「…その理由を聞こうか」

剣「激龍は宇宙の守護神です。それを自分達の世界だけを護らせてもらおうだなんてあまりにも身勝手であると思います」

「ならば、この世界はどうするつもりだ!?」

剣の意見に異議を唱える声が鳴り響くと、それに続いて他の者達も賛同して剣を批判した。

カテドラルはガベルを叩いて彼らを黙らせようとした。

剣「俺達、正義組織が護ります!」

だが、剣の張り上げたその一声で全員が黙った。

カテドラルも剣の勇姿を目の当たりし、手にしていたガベルを置いた。

剣「だけど、護るだけじゃない。救ってもみせます!俺達に出来るだけの限りでやれる事を尽くていきます!」

赤く鋭い瞳は疾っくの疾うに覚悟しており、勇気と決意に満ちていた。

剣「それが俺達にやれる事、正義組織としての使命です!」

その言葉の直後、カテドラルは拍手をし始めた。

カテドラル「流石だ。理由はハッキリしている上にその意志も真っ直ぐだ。歪み穢れた野望などではない」

剣を賞賛すると、ガベルを叩いた。

カテドラル「この議論の結果、激龍は社会の為に使わない!この街は!世界は!正義組織の者達に任せる事にした!!」

カテドラルの結論に全員が拍手を送った。

それからというものの、剣は手錠を外され、太刀も返してもらい、クロノス社の本拠点に戻ろうと街中を歩いていた。


時間帯は既に夕暮れであり、夜になるのもそう長くは無かった。

激龍神『それが貴様の意志か、邪光 剣』

剣が本部に戻ろうと歩を進める中で激龍神が語りかけてきた。

その声色は相変わらず余裕があり、満更でもない様子であった。

剣「そうだ、これが俺の意志だ」

激龍神『敢えて訊くが、本当に良かったのか?私の力さえ使えば世界平和など容易い上に人類にとって利益が出る。寧ろ、使って良かっただろうに』

剣の答えに激龍神はまるで試しているかのように訊ねた。

剣「さっきも言ったはずだ、俺達の世界は俺達で護っていく。そして、救っていくと」

その問いに剣は以前変わりなく答えた。

剣「俺達がやらなければならない事に対して、神様に頼りっきりになるのは良くないからな」

剣の言葉を聞いて、激龍神は微笑んだ。

激龍神『…面白い、やはりお前を選んで正解だったな。その意志、尊重しよう。思う存分に私を使うがいい。社会による支配や強制でも誰の為でも無く、己が意志のままに、な…』

激龍神のその言葉に剣は微かに反応を見せ、欠片を見ようと下を向く。

剣「…なぁ、激龍神。お前の事はなんと呼べばいい?」

首飾りである欠片に目を遣りながら名を訊ねた。

激龍神『名前か…』

それを聞いて激龍神は考え込むと、思い出したかのようにして閃いた。

アスト『かつて選ばれし者の中で私の事をこう呼ぶ者がいた、”アスト”と…』

激龍神は自身の事をアストと、そう名乗った。

剣「了解した。これからもよろしく、アスト」

アスト『こちらこそだ、邪光 剣』

そのやり取りの後、剣は夕日に向けて帰還していった。

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