第弐拾壱話 「目醒める龍神の光」
この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
時は遡り、剣とメビウスはゲートを通り抜けて、目的地にたどり着いていた。
剣「ここが、暗黒世界…」
そこは空が黒い闇に覆われた更地、辺りには人も建物も何も無かった。あるものを除いて…
二人は周囲を見渡しながら歩いて進んでいく。
メビウス「こんなところ、よくまぁ過ごせるな…」
どんな暮らしをしているのか想像もつかなかった。
そんな中であるものが目に入ると、メビウスは目を見開きながら足を止めた。
剣「ん?メビウス?」
疑問に思った剣も足を止め、唖然とするメビウスが向いている方へと目を遣る。
剣「…何故、此処にあるんだ?」
すると、剣も有り得ないと言わんばかりに驚いた。
二人が見たもの…それは黒くて大きい建物であった。
人工物であり、形状などからして創造世界のものだと剣とメビウスは理解した。
メビウス「ね、ねぇ…剣?俺の認識が間違ってなければだけど、あれって…」
剣「いや、間違いない。消えたはずのヘリオス社の本拠地だ…!」
二人はその建物を知っており、ヘリオス社の本拠地である事を確信した。
メビウス「けど、なんであれがあそこに…」
本拠地に歩み寄り、近くにあった瓦礫へと目を遣る。
そこには看板があり、黒い太陽に赤い単眼というヘリオス社を象徴するエンブレムが刻まれていた。
剣(今まで倒してきたヤツらはあそこから創られてきたというのか?どうであれ、俺達とは何か関係がありそうだ)
剣もそのエンブレムを見ており、暗黒世界について益々、疑念を抱き始めた。
それと同時にヘリオス社と関わりがあるのだと徐々に理解してきた。
「これはこれは、戦士の御二方…よくぞ此処へと参られました」
落ち着いた声色で語りかけながら剣とメビウスに近付く人物がいた。
彼が敵だと瞬時に判断した二人は振り向き、戦闘態勢に入った。
剣「誰だ!?」
切先を男に向けながら何者かと訊ねた。
男は赤い瞳を持った反転目に特殊な耳、白髪が特長の容姿に黒と白が入り交じった執事服に白の手袋を履いていた。
ゼノ「これは大変申し遅れました。私は暗黒四天王が一人にして破壊者様に仕える従者のゼノです」
緊迫する剣に対して男 ゼノは礼儀正しく名乗った。
メビウス「…なんか今までのヤツらと比べたら随分と整ってんな、アンタ」
冗談交じりに言うが、ゼノから帯びている尋常ではない程の殺気をメビウスは感じ取っていた。
当然、それは剣も同じであり、緊迫する理由はそこにあった。
ゼノ「お褒めいただき光栄です」
その冗談を聞いたゼノは微笑む。
ゼノ「さて、ご察しではあると思いますが…」
だが、その微笑みはすぐに消え、冷たい眼差しを二人を向ける。
ゼノ「御二方は此処で死んでもらいます」
右手を上げると、真っ直ぐ伸ばした指先を剣に翳すようにして振り下ろされた。
メビウス「剣!」
嫌な予感がしたメビウスは瞬時に剣を抱え、音速で移動するようにして姿を消した。
次の瞬間、球体のような黒い何かが剣のいた空間を横切った。
剣「今のは?!」
メビウス「わかんないけど、あのゼノってヤツの能力なのは確か!」
メビウスが足を止めると、剣を降ろす。
そのまま二人はゼノに対して再度構えた。
ゼノの周りには後ろに伸ばした四つの角と口だけの黒い化け物が複数おり、渦巻くようにして回っていた。
ゼノ「捕食者、私の眷属にして私の能力…」
ゼノが口を開いて、化け物について語った。
メビウス「わかりやすい説明どうも」
緊迫した状況下でもメビウスは笑みを浮かべながら剣に目を遣る。
それに気付いた剣もメビウスの目を見て、彼の思いを汲み取った。
互いに意思疎通すると、三度ゼノに目を向けた。
メビウス「ではここで問題ー、戦士の中でも多数の敵を倒す事が得意な戦士はだーれだ?」
すると、メビウスがゼノにクイズを出した。
ゼノ「ん?はて、それは知りませんね」
ゼノが首を傾げた。
次の瞬間、メビウスは音速でゼノの懐に入った。
そして、目にも止まらぬ速さで青い拳をアッパーのように振り上げ、ゼノを吹き飛ばした。
メビウス「正解は俺だよ!イケ男!」
その隙に剣は走り出し、黒影がいると思われるヘリオス社の本拠地へと向かった。
ゼノ「させるものですか…!」
だが、それを阻もうとゼノは数体の捕食者を送り込んだ。
メビウス「そいつはこっちのセリフだ!」
させないと言わんばかりにメビウスは瞬時に走り出し、捕食者よりも先に現れる。
捕食者を捕らえると投げ飛ばしたり、拳を打ち込んだり、蹴り飛ばしたりした。
そうして剣に襲いかかる捕食者は全て打ち倒した。
メビウス「なぁ、ゼノ!アンタの能力と俺の能力、どっちが強いか勝負しよーぜ!」
そして、メビウスは煽るような口調と笑みで人差し指をゼノに向ける。
ゼノ「困りましたね」
空高く吹き飛んでいたゼノは数体の捕食者によりゆっくりと降りながら、つま先から綺麗に着地する。
ゼノ「破壊者様の命は戦士達を止める事…なのに、一人行かれてしまうとはとんだ失態です。それも組織においてNO.1となりますと」
自身の失態に悔いながらゼノは片手で顎を撫で、負傷した箇所が再生していく。
しかし、その言葉に焦りは無く、平然としていた。
メビウス「んだよ?アンタらの親玉はそこまで頼りない程に弱いのか?」
メビウスは笑みを浮かべながらゼノを煽った。
ゼノ「いえ、それは剣様の方が一番にご理解されていると思いますよ。何せ、破壊者様ですからね」
撫でていた手を後腰に回して、もう一つの手で手首を掴んだ。
メビウス「何が言いたいのさ?」
何かを警戒したメビウスは身構える。
ゼノ「後の事はご想像にお任せいたします。さて、先程の勝負についてですが、良しとしましょう」
ゼノはメビウスに手の甲を見せると、周囲にいた数多の捕食者が動き回る。
ゼノ「底の無い、終わりの無い戦いを御所望でしたら…ね」
それを聞いたメビウスは内心焦るも、その気持ちを押し殺しながらゼノに立ち向かった。
その頃、剣はヘリオス社内へと足を踏み入れていた。
剣「この場所に入ったのは良いものの、黒影は何処にいるんだ?」
鞘から引き抜いた太刀を手に、警戒しながら辺りを見渡す。
「私が、導こうか…?」
すると、何処からか声が聞こえた。
剣「誰だ!?」
片手で耳を抑えながら驚いた様子で訊ねた。
当然、周囲を見渡すが声の主はいなかった。
「直ぐに分かる…」
内側から聞こえる声がそう言うと、剣の懐にあった欠片が水色に光り始めた。
直後、それは一直線に放たれた。
光線は階段を伝って、見上げた先の中央で止まった。
剣「まさか…」
半信半疑ながらも剣はその線を道標と察し、辿っていく。何度も階段を昇っていき、廊下を突き進んだ。
そうして辿り着くと、剣の前には巨大な門があった。
剣「ここに、ヤツがいるのか」
そう判断した剣は意を決して太刀を掲げながら全身に焔を纏った。
剣「焔技 火斬翔!!」
勢いよく太刀を振るい、焔の斬撃を飛ばす。
それにより門は爆発しながら吹き飛びながら破壊された。
そのまま剣は沈黙を貫きながら一室に足を踏み入れた。
黒影「なんも壊す必要あった?」
剣の目の前には黒影が玉座の上で体育座りしながら携帯ゲーム機で遊んでいた。
剣「お前の野望もここで終わりだ!暗黒の破壊者 黒影!」
剣は切先を翳しながら、黒影に冷たい眼差しを向ける。
黒影「野望?別に僕には何も無いんだけどな…」
黒影は剣に臆する事無く、堂々とゲームをしていた。
剣「ならば、何故お前は、何の為に破壊を行う!?何故、創造主の意のままに動いている?!」
剣も態度を変えずに、続けて問いかける。
その中で黒影は創造主という言葉を耳にした途端、ボタンを弄る手を止めた。
黒影「創造主…そうだね、僕はその人の傀儡にして手そのものだからね」
問いに答え、虚ろなジト目で剣を見る。
直後、地面から数体のダークアイとあらゆる動物を模した暗黒の獣が現れた。
黒影「邪光 剣、あのお方は君を気に入っている…どんな力なのか、僕に見せて」
そう言うと、ダークアイと暗黒獣は動き出し、剣に襲いかかる。
剣「焔技!」
落ち着いた動作で刃を後ろに向けて、腰を低くして構えた。
次の刹那、剣の姿が消えた。
その事実にダークアイと暗黒獣は困惑し、立ち止まって辺りを見渡した。
ダークアイ達の群れの真ん中に剣が再び姿を現した。
剣「嵐火宴!!」
一回転するようにして焔を纏った太刀を振るうと、剣を中心に焔の竜巻が現れた。
竜巻はダークアイと暗黒獣を巻き込むと、高く飛ばしたり、焼き尽くした。
その中で狼を模した暗黒獣が剣に飛びかかる。
剣「ハァッ!」
剣が焔を纏った太刀を振り上げた事により暗黒獣は一刀両断された。
続いてダークアイが走り出し、長く鋭く赤い爪を振るった。
だが、剣は後ろに跳んで攻撃を回避した。
それを追うようにダークアイと他の二体が飛びかかる。
剣「焔技…!」
着地した直後、剣は太刀を脇構えの体勢に入る。
次の刹那、焔を纏った刃を薙ぎ払うように振り上げ、三体のダークアイを両断した。
剣「焔刃一閃!」
斬られたダークアイは黒い塵となって消滅していき、血飛沫の如く火花が散った。
その頃、メビウスはゼノが生み出した数多の捕食者に追われていた。
メビウス「ったく!多いし、しつこいな!!」
逃れようと光速で走るが、それでも捕食者との距離は縮まらないどころか距離が狭まっていく。
この状況にメビウスの頬に汗が流れる。
捕食者が口を大きく開けると、すばしこい脚を食らおうと襲いかかる。
メビウス「俺の個性、潰してくんじゃねぇよッ!」
踵を返したと同時に地面を蹴り上げながら跳ぶと、捕食者の顎から免れた。
ゼノ「なんとも面倒ですね!手間取らせずにその身を捧げなさい!!」
ゼノは両腕をクロスさせると、捕食者はメビウスの両サイドに並び、壁となった。
メビウス「おいおい!何するつもりだ!?」
無機質に機械のように動く無数の捕食者とこれから起こる出来事にメビウスは嫌な予感がしていた。
ゼノ「グルージャアラス!!」
その言葉と共にゼノは両手を握り締めた。
次の瞬間、捕食者達はメビウスを挟むようにして襲いかかる。
メビウス「あっぶね!」
だが、メビウスは瞬時に跳んで捕食者達から離れた。
メビウス「随分と従順な動物(?)だな!」
直後、メビウスは右手を下にいる捕食者達に向けて照準を合わせた。
ヤツらを倒さなければこの状況を切り抜けれないと判断したからだ
メビウス「ハンドショット・アイアンフィスト!」
次の瞬間、突き出した右手を纏っていたガントレットが光速で放たれた。
ガントレットは捕食者の一体に直撃した瞬間、爆発を起こした。
メビウスのガントレットには爆弾としての機能も施されており、これは最終手段として残していたのだ。
爆炎にのまれた捕食者達は跡形もなく消し飛んだ。
メビウス「流石は十六夜!要望通りだ!」
機嫌のいい表情を浮かべながらメビウスはゼノの方へと身体を向け、左手を翳した。
握りしめていた手が開くと、掌から光が収束されていく。
メビウス「アイアンフィスト・フラッシュバーン!」
すると、掌から光弾が撃たれた。
その反動でメビウスは微かながらも後ろに飛んでいた。
ゼノ「ボルカルメス!」
そう唱えると捕食者達は隊列を組み、ゼノを覆う肉壁となった。
光弾は肉壁となった捕食者達に直撃し、爆散した。
メビウス「ホント、その捕食者ってヤツがマジでめんどくさい…」
ゼノの能力に対して愚痴る中、メビウスの横から捕食者が迫り来る。
口を大きく開けるように食らおうとするが、メビウスは片手で捕食者の角を掴んで、その動きを止めた。
メビウス「なァッ!!」
言いかけた言葉を言い出しながら、その鉄拳で捕食者をぶん殴った。
あまりの強度と威力により捕食者は塵となって消滅した。
ゼノ「ラルガセルピエンテ!」
片腕を伸ばすと、捕食者達が並んで触手の如く伸びて、メビウスに迫り来る。
すぐにメビウスはガントレットを装備した腕を差し出した。
捕食者はその腕に噛み付くが、牙が装甲に食い込むだけで、肉には達していなかった。
メビウス「どうせなら切り札として、とっておきたかったけどな!」
メビウスはガントレットに念ずると、すぐに外して、降下しながら距離を取る。
無事に着地した次の瞬間、メビウスの周りを囲うように数多の捕食者が現れた。
ゼノ「メディオシールクオ!」
翳した手を握りしめると、捕食者達は圧縮するようにメビウスに接近し始めた。
メビウス「くっ…!」
流石にマズいと思ったのか、メビウスは背を低くしながら光速で走り出す。
ゼノ「消えた…」
その速さはゼノが消えたと錯覚する程だった。
しかし、当の本人は落ち着いた様子で辺りを見渡す。
メビウス「じゃ、ないんだよな!」
ゼノの背後に現れたメビウスは回し蹴りを繰り出す。
だが、ゼノは片腕で防御をした。
ゼノ「光速…にしては、大した事じゃなさそうですね」
余裕があるように煽ると、その腕から口のようなものが浮かぶ。
なんとそこから捕食者が現れた。
メビウス「くっ…!」
牙が脚に食い込み、苦痛で顔が歪む。
ゼノ「さて、今度はこちらのターンです!」
続けてゼノはもう片方の手でメビウスの脚を掴むと、そのまま投げ飛ばそうとした。
メビウス「このまま『はいそうですか』って、納得いく訳ねぇだろ!」
だが、メビウスが地面に両手をつけた直後、身体を旋回させて逆にゼノを投げ飛ばした。
ゼノ「想定しております!」
メビウスから離れたゼノは体勢を立て直し、身体から捕食者を出して、メビウスに襲わせる。
メビウス「オラオラァッ!」
青く光り染まった両手を光速で振るって尽く拳で打ちのめす。
しかし、一体を仕留め損ねてしまった事により片腕を食われてしまった。
メビウス「ぐっ…!鮫かよ!」
咬合力に対して例えながら文句を言うと、ソニック・スターを呼び出し、手足を噛み続ける捕食者を瞬時に叩きのめした。
当然、捕食者達は消滅したが、歯型のような傷跡から血が流れていた。
メビウス「こりゃあ、痛ぇ…なぁ?マジで何をどうしたらこんなに咬合力鍛えられんだ?石でも食ってる?」
冗談交じりに訊くが、その内では危機的状況であると察しており、微かに焦りを見せていた。
何故ならゼノは無傷な上に最大速度である光速をも見抜いていた。
それだけにとどまらず、メビウスの周りには大量の捕食者達が囲っていた。端からそのつもりは無いが、逃げる事も厳しかった。
ゼノ「私の眷属 捕食者は速力、洞察力といった観察眼、適応力、そして咬合力にも長けている。その力は数秒もしないうちに食いちぎられる程なのです」
ゼノはその問いに淡々と、余裕を含めながら述べた。
メビウス「アンタ、盛り過ぎだろ…」
答えを耳にして笑みを浮かべるが、笑えないと心から思っていた。
その頃、邪光 剣は黒影が生み出した敵を尽く一掃し、全てを断ち斬っていた。
剣「後はお前だけだ、黒影!」
再び剣が刃の切先を翳し、鋭い眼差しでそう告げた。
すると、黒影は携帯ゲーム機を懐にしまった直後、立ち上がったまま玉座から降りた。
黒影「やっぱ、本当に強いね。邪光 剣…!」
剣に感心しつつも、敵意を見せ、両手を広げて構えながら一歩ずつ前に踏み出す。
その中で黒影の両手に灰色のオーラが発現し、炎の如く燃え盛る。
剣(間違いない、あれに触れれば死…!)
灰色のオーラを前に剣はより警戒心を高め、刃先を構えた。
次の瞬間、黒影が大地を蹴り上げ、剣に急接近した。
剣「火斬翔!」
瞬時に剣は太刀を振るいながら焔の斬撃を飛ばすと、距離を取ろうと後退する。
だが、黒影は焔の斬撃をなんと素手で触れた。
オーラに当たると焔の斬撃は灰色に変わり、砂の如く崩れていった。
剣「成程な…お前の能力は崩壊、触れた万物を破壊するもの。そして、お前が抱く闇は虚無、そうだろ?」
剣は焦りながらも冷静となり、黒影から距離を取りながら止め処なく刃を振るい、何度も焔の斬撃を放つ。
だが、斬撃は黒影に触れる度に次々と朽ちていき、臆せずに突き進む。
そうして黒影は間合いに入ると、剣の頭を掴もうと手を伸ばす。
剣「陽炎!」
危機と察知した剣は瞬時に全身が焔に包まれて、姿を消した。
結果、触れる事が出来ずに灰色のオーラを帯びた手は空を切った。
剣「灯火の太刀!」
刹那、剣は黒影の背後に現れ、焔纏う刃を振るった。
だが、黒影はそれを瞬時に察知し、顔を少し動かす様にして軽く避けた。
そして、再度剣に手を伸ばす。
剣「火閃!」
大地を蹴り上げ、超高速で後退した。
黒影「崩枯怨!」
逃がさんと言わんばかりに両手を突き出し、渦巻く灰色のオーラを放った。
剣「焔技 守!」
剣の正面に渦巻く焔が現れ、盾となって立ち塞がる。
オーラに触れた瞬間、焔は消滅した。
その隙に剣は背を低くして回避すると、瞬時に踏み込んで黒影に再接近した。
剣「焔技 夜桜!」
刹那、太刀を振るい黒影の胴体を斬った。
黒影「うわああああああ…!!」
黒影は断末魔を上げる。苦しそうに悪魔の様な咆哮で…
黒影「やられ、た…とでも思ったの?」
だが、叫びはすぐに止み、何事も無かったかのように振り返った。
直後、剣が手にしていた刃が崩れた。
剣「くっ…!」
その事実を前に剣は愕然とし、太刀が使えなくなった事に悔しさが零れた。
勿論、太刀が無くとも徒手空拳で対応する事は可能だが、触れたら即死の黒影には通用しない。
黒影「選ばれたとは思っていたけど、まだ目覚めてはいないみたいだね」
呆れながらも安堵していた黒影は懐から携帯ゲーム機を取り出し、その中にあるボタンを指一本で押した。
すると、黒影の周囲に数多の人影が現れた。
剣「何故、お前らが…!?」
それを目の当たりにした剣は驚愕し、戦意喪失しかけそうになった。
なんと人影の正体はブラックと牙禅、グリン、ウィングドホースの面々、そしてCSFの隊員達であった。
黒影「今さっき、クロノス社を支配したんたよね。まぁ、逃げちゃった子達もいるんだけど」
黒影はスライドパッドを上に押し出した。
すると、それに応じるかのようにして全員は剣に接近して襲いかかる。
剣「ぐっ…!よくも皆を!」
何とかしようにも破壊された太刀ではどうしようも無いし、操られている味方を傷付けたくないと躊躇い、どうしようも無い気持ちになる。
だが、このまま諦めて何もしない訳にもいかないと思った剣は太刀を放り投げると、徒手空拳の構えに入った。
そんな剣に雷郷が襲いかかり、光る巨大な刃を振り下ろした。
瞬時に剣は真横に躱すと、彼の鳩尾に発勁を食らわせた。
あまりの衝撃と威力に雷郷は白目を向けながらうつ伏せに倒れた。
剣「あの様子からして偽物みたいだが、やり切れないな!」
続けて襲いかかるクロノス社の関係者に剣は背負い投げなどで対応した。
黒影「相当嫌だと思うよ、大事な大事な仲間だものね」
憐れむような言葉とは裏腹に黒影は容赦なく携帯ゲーム機のボタンを押す。
すると、近くにいた隊員達が剣に対して銃口を向けて連射する。
剣「陽炎!」
瞬時に剣は全身に焔を纏い、姿を消した。
剣「弾!」
黒影の近くに剣が焔と共に現れると、彼に人差し指を向けながら焔の弾丸を撃った。
だが、黒影と剣の間に牙禅が現れ、片手に纏った波動に触れた事で焔の弾丸は打ち消された。
剣「牙禅…!」
そんな牙禅の目はまるで死んでいるかのように虚ろであった。
剣は意を決して、牙禅に拳を振るおうとした。
牙禅「やめ、てくれ…」
だが、牙禅の口から苦しそうに助けを乞うような声が零れた。
剣「なっ…!」
ハッタリではあるものの効果は抜群であり、剣が躊躇った事で一瞬の隙をみせた。
すると、薬液の入った瓶が剣の左肩に直撃する。
剣「ぐっ…!」
硝子の破片が突き刺さり、広がった液体は蒸気を発しながらその部位を焦がす。
次の刹那、牙禅は回し蹴りで剣の右腕に食らわせると、勢いよく吹き飛ばした。
剣「ぐはっ…!」
そのまま剣は壁に打ち付けられ、うつ伏せになる。
瞬時に立ち上がろうとするが、気が付けばCSFの隊員達は銃口を剣に向けていた。
その中心にはブラックがおり、赤い矢を番えていた。
剣「マズイな…!」
この結果を招いてしまった事に剣は自身の行動を悔いて、仕組んだ黒影が許せなかった。
黒影「その隙が仇となったね。じゃあね、焔の剣士さん」
絶体絶命の状況に陥っている剣を見届けながらボタンを押す。
それに応じてブラックは矢を放ち、CSF隊員達は引き金を引いた。
剣「まだだ!まだ、諦めて!たまるかァァァ!!」
だが、それでも剣の意志は折れておらず、転げ落ちていた壊れた太刀を手に握りしめながら力強く構えた。
すると、剣の懐にあった激龍の欠片が光出した。
黒影「何だって…?」
水色に光るそれに黒影は目を見開いた。
周囲にいたブラック達も光から逃れようと後退った。その中の数人の隊員は黒い塵となって消滅していった。
剣「これは、激龍…!?」
激龍の光は周囲を照らしながら剣を包み込んだ。
その頃、メビウスは捕食者達から逃れようと走り回っていた。
メビウス「こりゃあ、まずいね…」
噛まれた箇所から血が流れ、捕食者に食われたりとかなり危機的な状態であった。
その時、一体の捕食者がメビウスの脚を食いちぎった。
メビウス「ぐっ…!」
あまりの痛みで顔が歪み、強制的に走るのを止められると、勢いよく地に伏せた。
ゼノ「私の方が上手でしたね…さて、そろそろトドメをさしてあげましょう」
そんな彼を前にゼノは両手を突き出すと、捕食者達はゼノの前に集まっていく。
それは一つの塊となり、大きな捕食者へと形を成していく。
ある程度完成すると、ゼノは片手を下ろし、もう片方の手を上げた。
ゼノ「では、お別れです!」
掲げた手を勢いよく振り下ろすと、巨大な捕食者はメビウスに突進してくる。
メビウス「動け…!」
危ういと思ったメビウスは強く念じながら両腕で立ち上がろうとする。
だが、食いちぎられ、噛み付かれたその肉体は血を噴き出しており、限界に達していた。
メビウス「まだ、だろ…!もっと…!速く…!なれるだろ…!」
両脚が青く光ると、オーラが炎の如く燃え上がり、稲妻が迸る。
メビウス「光よりも速く!アイツを、限界を超えろ…!」
未だに足掻く意志に呼応するように青かった両脚が黒に染まる。
メビウス「うおおおおおお!!!」
声を張り上げ、メビウスは立ち上がる。
巨大な捕食者はメビウスに突っ込み、地を削りながら食らった。
ゼノ「所詮は人間、呆気ないものでしたね…」
メビウスがいた場所を見ながら足掻いても無駄だったと吐き捨てる。
そのままゼノは振り返って黒影の元へと歩き進んだ。
メビウス「呆気ねぇだと?随分な言われようだな」
空間に木霊する声を耳にしたゼノは驚愕し、辺りを見渡す。
メビウス「何処見てんだよ?俺はここだぞ」
ゼノが振り返ると、そこには食われたはずのメビウスがいた。
だが、メビウスの全身は闇より黒く、青い輪郭と目を持ち、それが静かに光るものへと変わっていた。
食いちぎられた足も、噛み付かれた傷跡も元から無かったかのように治っていた。
ゼノ「その姿は…!?」
ゼノは微かに焦りながらもメビウスから離れようと瞬時に後ろに下がる。
すると、ゼノの背中に何かが当たり、肩に手を置かれた。
メビウス「一段階進化したってところかな、どうした?遅く見えるよ?」
そこには余裕そうに煽るメビウスがおり、一瞬にして背後に回っていたのだ。
ゼノ「ルナクレシエンテ!」
愕然とするゼノはメビウスの手を振り払うようにして振り返ると、弧状に並ぶ捕食者を飛ばした。
メビウス「オラァッ!」
瞬きする間もなく懐に入ったメビウスはゼノの頭に拳を打ち込んだ。
ゼノ「なんだ?食らい損ねたというのか?」
殴られた箇所を片手で抑えながらメビウスを見ようとする。
だが、ゼノが視認する前にメビウスは脇腹に蹴りを入れる。
次に顔面に向けて拳を突き出し、もう片方の拳で鳩尾を打ち込む。
目にも止まらない程の速さでメビウスは静かに且つ激しくゼノを殴り続ける。
ゼノ「この速さ…!神の域に達している!私は愚か捕食者でさえも、無理…!!」
覚醒したメビウスの真髄を前にゼノは諦めていた。
メビウス「オラァッ!!」
トドメの一撃と言わんばかりにメビウスは握りしめた拳をゼノの心臓に叩き込んだ。
それは息の根を止める程の威力で、彼の身体は塵となって消滅した。
全身を纏っていた黒い闇は青い稲光と共に消え、メビウスは元の姿に戻った。
メビウス「…っと、なんかスゲェ事になったな」
そう言うとメビウスは自身の体を見て、動かした。
メビウス「神速…あれで再生能力も速くなったのかな?」
何故、治っていたのか?その原因は覚醒した能力 神速によるものではないかと推察した。
メビウス「って、そうしてる場合じゃないよね。さっさと行かないと…」
我に返ったメビウスは剣の元へと向かおうと一歩踏み出そうとした。
だがその時、全身に重い疲労が襲いかかる。
それによりメビウスは膝から崩れ落ちながら前のめりに倒れた。
メビウス「やっぱ、デメリットはデカいか…慣れてないっぽいし…」
動こうにも動けず、助けにいけれない出来事に困っていた次の刹那、剣のいる建物の上から眩い水色の光が暗黒に覆われた世界を照らし出し、烈風が吹き荒れる。
メビウス「おいおい!?何さ!?なんか凄い事に…!」
あまりの威力にメビウスは圧倒されていて、これから起こる事に予測出来なかった。
時は遡り、光に飲まれた剣の瞼がゆっくりと開く。
剣「ここは…?」
そう思いながら辺りを見渡す。
そこは先程とは大きく変化した場所であり、一言で表すと宇宙空間だった。
真っ黒だが暗くなく、青い光が微かに辺りを照らしていた。
周りには幾つものの世界が自転をし、その奥には数多の星が散りばめられていた。
剣「…まさか、ここは……」
『その通りだ、邪光 剣』
何かを悟った剣に誰かが神々しい威厳のある声で語りかけた。
それを聞いた剣はふと、面を上げた。
剣「貴方が…」
声の主であるその姿を目の当たりにした剣の目が大きく見開いた。
そこには緑の瞳を持ち、水色の光で構成された身体が特徴の巨大な龍がいた。
『如何にも、私は激龍神…貴様が持つ欠片に眠り、宿りし、この宇宙の守護神である』
龍は自身を激龍神と名乗ると、人より大きな顔を地に伏せながら剣に近づけた。
剣「激龍神、様?もしかしてここは…?」
剣は激龍神に今いる場所について訊ねた。
激龍神『私に敬語は不要だ、邪光 剣。如何にも、ここは欠片の中、貴様の精神世界に干渉して構築したものだ』
激龍神は剣に自身に対する態度を改めよと促すと、この空間について説明した。
剣「…了解した。激龍神、俺は今…どうなって?」
激龍神の言葉通りにした剣は続けて現在の状況について訊ねた。
激龍神『案ぜよ、貴様はまだ死んではおらん。例えここで時が進もうとも外界は止まったままだ。つまり、これから殺される事も無い』
平然とした態度で淡々と答えた。
剣「…何故、俺を?」
そんな激龍神を前に剣は神妙な面持ちで訊ねた。
激龍神「至極単純な事だ、貴様は私に選ばれた。その不屈で燃え尽きぬ焔の如き意志が…この私を呼び覚ましたのだ」
激龍神は離れるように頭を起き上がらせる。その瞳には剣が映っていた。
激龍神『さて、貴様はどうする?邪光 剣。その意志で私に何を願う?私をどう使う?』
激龍神は剣に問いかけた。まるで試すかのようにして
剣「…そんなの、決まっている。護りたい!闇に呑まれている皆を救いたい!それが、俺の願いだ!」
激龍『欠けた刃でか?それで何が出来る?』
剣「それでもだ!俺は戦士として…親父との約束の為、そして、俺の意志で決断した!!」
激龍神の意地悪な問いに剣はその意志を突き通した。
激龍神「…良かろう」
それを聞いた激龍神は微笑むと、突っ込むようにして剣に彼の中に入っていった。
龍だったその姿は縦長いひし形の欠片へと戻り、首飾りとしてその形を成した。
剣「激龍神…!」
目の前で起こった出来事に剣は驚きのあまり目を見開いた。
激龍神『邪光 剣、貴様に力を授けてやろう。さぁ、共に戦おう!護る為に、救う為に、己の意志として!約束された父の願いとして!』
剣「…了解した!」
身体の内側から激龍神の声が鳴り響く。
その声に剣が意を決したので再び前を向くと、欠けた刃を構えた。
刹那、首飾りの宝石から水色の光が放たれ、再び包まれていった。
そうして現在、黒影達の前には剣がおり、全身に纏う水色の光が太陽のように照らされ、静かに且つ激しい烈風が吹き荒れていた。
黒影「天敵が目覚めた…!滅ぼさなければ!」
黒影は瞬時に走り出し、剣に触れようとする。
だが、光に触れた途端にその手は弾かれ、烈風が更に強くなった事により黒影は吹き飛ばされた。
剣「俺の仲間を…皆を返してもらうぞ…!」
眩い光の中で剣は立ち上がり、欠けた刃を振るう。
すると、それに応じるように烈風は止み、光は収まった。
黒影「その姿は…!」
黒影はその目に映る剣を前に戦慄した。
その姿にこれといった変化は無いが、全身からは水色のオーラ 激龍が光として辺りを照らし、焔の如く燃え盛っていた。
負っていた傷は再生し、欠けていた刃も元通りになっていった。
剣「黒影!お前の無益な破壊、ここで断ち斬る!」
そして、切先を翳したまま鋭い目で黒影を睨んだ。
この状況に、剣を前に黒影は危機を感じて警戒心を高めながら破壊の力を発現させようとする。
黒影(何?出ないだと?まさか、これが激龍の力…!)
しかし、先程の激龍が模した烈風によりそれは使えなかった。
黒影「邪光 剣を仕留めろ!手段は問わない!迅速に徹底的に殺せ!!」
黒影は周囲にいたブラック達に声を張りながら指示を飛ばした。
承った全員が剣に襲いかかり、その中でCSFの隊員達は銃口を向けて連射する。
迫り来る弾丸の中、剣は静かに手にした刃を横に向けた。
剣「激龍 烽煌斬!」
刹那、それを一閃するようにして薙ぎ払うと、焔を模した激龍が弧状の斬撃を形成し、勢いよく素早く飛んだ。
斬撃は弾丸を打ち消し、CSFの隊員達を貫通する。
見事に受けたCSF隊員達は斬られると同時、焼き尽くされるようにして激龍に包まれながら塵となっていった。
黒影「ヤツを貫け!ブラック!!」
焦りを見せる黒影の指示に虚ろな目を浮かべるブラックは応じ、弓を構え赤い矢を番えた。
だが、剣は放たれる前に接近し、ブラックの懐に入った。
剣「激龍 焔牙!」
そのまま剣は水色に光り、焔の如く燃え盛る激龍を纏った刃を振り下ろした。
深く斬られたブラックは激龍の焔に身を包まれながら消滅した。
すぐさまグリンが瓶に入った薬品を剣に向けて投げつけてくる。
構えた太刀を円を描くと、激龍の泡沫が五つ現れた。
剣「激龍…!」
唱えながら刃を掲げると、泡沫は先の尖った氷の破片へと変化する。
剣「凍爪尖!」
振り下ろされた刃に応じて、氷の破片は動き出した。
破片が瓶に直撃して割れると瞬時に中の液体を凍らせた。
その出来事にグリンは戦慄のあまり後退るが、剣は切先を突き出したまま瞬時に接近した。
剣「激龍 一角閃獣!」
牙突のようにして繰り出された刃がグリンの心臓を貫いた。
突き刺されたグリンは光に包まれて消滅した。
黒影「こうなれば!畳み掛けろ!数で押し切れ!」
黒影の指示で牙禅とウィングドホースの四人、CSF全隊員が剣に襲いかかる。
最早、彼らに理性など無く、従順な獣の如く迫る。
だが、剣は手にしていた太刀を鞘に納めるとその瞼を閉じた。
剣「激龍…」
深い意識に沈む中、牙禅達が間合いに入った。
次の刹那、勢いよく目をかっぴらいた。
剣「咆哮!!」
すると、激龍を帯びた烈風が吹き荒れ、周囲にいた牙禅達を瞬きする間もなく塵にとなって消えた。
黒影「流石は僕達の天敵である激龍!かなりヤバいね…!」
破壊の力が戻った黒影は焦り混じりの殺意を抱きながら剣に手を翳した。
黒影「滅吠髏麈!」
そこから灰色のオーラが勢いよく放たれ、狼のような頭部が形成されると、それが襲いかかる。
剣は右手に持つ太刀を左に向けて構える。
剣「ハァッ!」
勢いよく振るうと、放たれた激龍により灰色のオーラが打ち消された。
黒影「効かないか!ならば魔王になって!」
破壊の力では今の剣を殺せないと判断した黒影は瞬時にその身を闇に包んだ。
蠢くようにして変わったそれは紫色のマントと二本の角、紫の単眼が特徴の巨躯の怪物へと姿を成した。
剣「巨大化か、先程よりも力が増している」
剣は魔王となった黒影を前にしても平然としたまま太刀を構えた。
黒影「征け!我がしもべ達よ!!」
黒影の指示により今まで剣達が戦ってきた暗黒の住民達が地面から出てきた闇と共に現れた。
その直後、住民達は剣に向かって襲いかかる。
剣「たたっ斬る!」
だが、剣は一体また一体と瞬時に相手し、一振だけで住民達を尽く殲滅していった。
その隙にガーゴイルは背後に回っており、口から水が勢いよく放射した。
剣「ハァッ!」
だが、剣は既に予見しており、高く跳んでそれを回避した。
噴射した水は目の前にいたケルベロスに直撃し、その身体を貫いた。
剣「激龍…!」
再度、刃先を構えると刀身から激龍の風が竜巻の如く旋回する。
剣「風月燕!」
刃を振るうと、激龍の斬撃がガーゴイルに向けて飛んできた。
素早く来たそれがガーゴイルを両断すると、続けて来た無数の斬撃に斬り刻まれ、粉々となって散った。
止め処なく、グリフォンが直剣を手に飛行しながら襲いかかる。
剣「激龍…!」
そんなグリフォンに剣は脇構えに入る。
間合いに入った次の刹那、剣は勢いよく振り上げた。
剣「昇雷!」
稲妻が迸り、雷の如く縦に両断されたグリフォンはそのまま消滅した。
黒影が創り出した住民を全滅させると、当の本人が灰色のオーラを放ち、それが剣に襲いかかる。
だが、剣は激龍を帯びた片手で受け止めると、そのオーラを無に還した。
黒影「お前を喰うてその命脈を絶ってくれる!!」
悪魔のような巨大な頭部に姿を変えた黒影は口から灰色の瘴気を溢れんばかりに放出させながら剣に襲いかかる。
そのまま剣は黒影に丸呑みされるように食われた。
剣「激龍 疾風旋刃華!」
次の刹那、黒影を覆っていた闇は剣が四方八方に放った激龍の斬撃により振り払われた。
その身が高く飛び、宙を舞う。
黒影「馬鹿な!これだけの力を持ってしても…!為す術が無いだなんて…!」
ありったけの力を持ってしても、破壊の力を最大限に出したとしても無力に終わり、黒影は剣を見上げたまま彼に宿る激龍を前に絶望した。
剣「激龍!!!」
その中で剣の全身から稲妻が迸ると、急降下しながら空間を走り、燃え盛る激龍の焔が纏う刃を構えた。
黒影「こんなの…!無理ゲーで、クソゲーじゃないか…!」
刹那、刃が振るわれ、黒影の胴体か上下に両断された。
剣「万火葬雷!!」
直後、黒影は激龍の焔に身を包まれた。
剣は綺麗に着地すりと、黒影の残骸は地に打ち付けられた。
剣は太刀を一振した後、静かにそれを鞘に納めた。
剣「無に還り、眠れ…と、言いたいところだが」
黒影の方へと振り向くと、なんの迷いも無く指パッチンをした。
刹那、黒影を燃やしていた激龍が消えた。
黒影「な、何を…?」
突然の事に黒影は理解出来ず、困惑していた。
剣「お前から情報を炙り出す。創造主についてな」
剣は黒影に近付くと、刃先を首に翳した。
黒影「…馬鹿だね」
すると、黒影は自身の片目に手を突き刺した。
剣「!?何を!?」
黒影の行動に驚く剣だが、それを他所に黒影は充血したかのような赤い目が特徴の黒い球体を取り出した。
その正体は黒影の生命活動を維持する為の核であった。
黒影「僕は、破壊者…!四天王を従える…!されど、あのお方に仕える存在…いや、駒に過ぎない…!」
黒影は核に灰色のオーラを送り込んだ。
それを受けた当の本人の全身に鼓動が鳴り響き、窒息するような苦しみに襲われるものの、平然としながら笑みを浮かべた。
黒影「邪光 剣…激龍に選ばれ、その力に目覚めた貴様の明日が楽しみ、だ…」
黒影の瞳孔に赤い輪郭が光を放ち、口調や雰囲気が一変した。
その言葉を最期に彼の身体は崩れていき、跡形もなく消滅した。
剣「黒影じゃない。今のは、まさか…」
黒影の変異、その違和感を剣は感じ取っており、疑問ながらもその正体に勘づいていた。
しかし、それが事実か否かはまだなんとも言い難いものだった。
その時、腕時計から着信音が鳴り響いた。
剣「こちら邪光 剣、そちらは無事か?」
すぐさま剣は腕時計を顔に近付け、応答を呼びかけた。
未来「問題無いよ、本部を覆っていた闇も晴れた」
すると、そこから未来隊長の声が流れた。
淡々としながらも穏やかな声色であり、それを聞いて剣は事実であると安堵した。
剣「それは、激龍の力によるものですか?」
未来「だね、間違いない。どうやら君に目覚めたみたいだね」
剣の問いに未来隊長はそう確信した。
メビウス「剣!大丈夫かー?」
そうやり取りをしている最中、メビウスが剣に駆け寄ってきた。
未来「メビウスも無事みたいだね、直ちに本部に帰還してきて」
そう指示すると、二人の近くに創造世界に通ずる青い亀裂が現れた。
剣「了解」
メビウス「隊長?後で話したい事あるけど大丈夫そ?」
通信を切ろうとしたが、メビウスの頼み事により遮られた。
未来「ん?大丈夫だよ」
メビウス「どーも、ありがとうね」
困った様子も無く未来隊長が答えると、メビウスは嬉しそうな安らかな笑みを浮かべた。
そうして、通信は切れた。
メビウス「んじゃ、さっさと戻りますか」
二人は青い亀裂へと向かい、メビウスは真っ先にその中に入っていった。
続けては入ろうとする剣だが、足を止めて振り返った。
剣(言ったのは黒影だった。しかし、あの口調や雰囲気は黒影じゃなかった。それに何故、暗黒世界にヘリオス社のアジトが…まさかな)
この世界に足を踏み入れてからあった疑念を抱きながらも剣はその考えを後にし、青い亀裂に入って、この場を後にした。
暗黒世界篇、完
次章、暗黒創造主篇




