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第拾玖話 「水都市の当主と暗黒の破壊者」

この物語はフィクションです。

実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

巨大な水都市 アトランティス。

発展した文明に優れた高度な技術、飢餓や争い、犯罪も無い治安の良さ。

仮称にはなるが、アトランティスは水都市の世界に存在していた。

その都市にある豪華な屋敷の一室にて

アトランティスを統治する当主である一人の男が椅子に腰掛けていた。

机の上に置かれた水晶玉に波紋が現れると、男はそれに反応し、顔を向けた。

男「どうやら、来たみたいだ…別世界からの客人が」

男は自室を出て、何処かへと向かった。


その頃、剣とブラック、牙禅、そしてレオは激龍の欠片を探す為にアトランティスの中を歩いていた。

水都市の世界にも戦士が訪れていたのだ。

剣「珍しい街並みだな」

ブラック「…まだ慣れていないのか?」

ブラックは辺りを見渡す剣を見ながら訊ねた。

剣「前に着いたところが創造世界のパラレルワールドだったからな」

牙禅「左様か、我らのところはあまりにも発展し過ぎていた。正直に言って、衝撃的だった」

ブラック「…愕然として放心状態にいたからな」

そんな会話を繰り広げる中、レオは不満そうな表情を浮かべていた。

剣「レオ?どうした?」

後ろにいたレオに身体を向けると、首を傾げた。

他の二人もそれに反応し、レオを見た。

レオ「いや…みんな、堅苦しいからなんか嫌だなーって改めて思ったつーか、なんつーか…」

いつものレオらしさはなく、三人に釣られているからか微かに暗くなっていた。

それを聞いた三人は顔を見合せた。

活発で明朗なレオと冷静故に暗い三人では明らかに対称的で、あまりにも温度差があった。

剣「そういう事か、すまない」

レオ「いや、謝る必要なんかねぇよ…俺の方こそ、わがまま言っててごめん」

理解した故に謝る剣に対してレオは頭を掻きながら、そう返した。

レオ自身も勝手な事を言っていると自覚していたので、剣達に対して申し訳なさを感じていた。

牙禅「…兎にも角にも、早く欠片を探そう」

気を取り直していこうと言わんばかりに牙禅は瞬間移動して、この場から姿を消した。

ブラック「それもそうだな…」

ブラックも引き抜いた双剣を構えながら歩を進めた。

剣「…言われてみれば、確かにな」

レオ「だろ?」

二人の様子を見て、剣は呆れた表情を浮かべながらレオに同情した。

「もしかして、他所の世界から来た方々?」

そんな二人に語りかける声が流れた。

聞こえた剣とレオは疑問と警戒を抱きながら振り返った。

そこには青髪に金色の眼を持った凛々しい容姿に丈の長い青のスーツに眼鏡を身につけた平静な男がいた。

剣「誰だ?」

二人は警戒して身構える。

だが、剣は武器を持っていないし、殺気が感じられないという事から敵では無いと察知すると、レオを止めた。

ランス「初めまして、私はここアトランティスの大統領にしてメルクリオ当主のランスと申します。」

男 ランスは意気自如に二人の前で紳士の如く頭を下げた。

剣「大統領?そんな方が頭を下げるとは一体…?」

それを見た剣は困惑した様子でランスに訊ねた。

すると、ランスは口角を上げてこう答えた。

ランス「如何なる者でも礼儀は弁えるべき…そうですよね?戦士の皆様」

それを聞いた剣とレオは驚く。

剣「何故それを?」

レオ「お前!やっぱ暗黒世界のヤツか!」

当然、二人は警戒する。

剣は鞘に納めた太刀に手をかけ、レオは握りしめた拳に炎を纏わせる。

構え方は異なれど、得体の知れないし底の知れないランスを睨んでいた。

ランス「それは違います。その証拠にここの空は暗雲に覆われていないでしょう?」

だが、ランスは焦る事無くそう答えた。

剣「言われてみれば…」

それを聞いた剣は納得した。

思えば、暗黒世界の面々は全て暗雲があって存在し、虐殺や破壊の限りを尽くしていた。

これには何か理由があるのだろうと剣は察していたが、なかなかわからなかった。

レオ「けど、それが何の関係があるんだよ!?」

剣が抱いていた疑問を代弁するようにしてレオは訊ねた。

その問いにランスは何一つ態度を変える事なくして、話を続けた。

ランス「暗黒世界は陽の光に弱い、それ故に暗雲で遮っている」

剣達にとって知らない事を知っていて当然であるかのように話すランスに二人は驚く。

剣「何処で、その情報を?」

その中で剣がまた訊いた。

ランス「ついてきて、これから君達が知らない事を私の知る限りで全て話す」

そう言うと、ランスは歩を進めた。

微かに不審に思うが、暗黒世界などについて知り得れると考えた剣とレオはランスの後についていった。


しばらく歩いていると、三人は他の建物よりも巨大で豪華な屋敷にへと足を踏み入れた。

「おかえりなさいませ、ランス様。そして、ようこそ他世界からの来訪者御一行様」

扉を開けると、その先には執事らしき男おり、剣達に対して頭を下げた。

男は赤髪に黄色眼の容姿に丈の長いスーツを着ていた。

ランス「デクステラ、彼らにおもてなしの準備を頼む。後、もしかしたら他の二人来るかもしれないからそれもよろしく。黒い肌に反転目の悪魔と獣耳を生やした青バンダナの青獣族の子をね」

執事の男 デクステラはランスが提示した多くの指示を承ったと言わんばかりにお辞儀した。

デクステラ「かしこまりました」

すると、デクステラは迅速に移動し、多数の従者達に指示をした後、取り掛かった。

レオ「命令、多くないか?」

レオはデクステラを心配に思いながらランスに対して問いかけた。

ランス「大丈夫、あの程度ならデクステラは難無くこなせれるよ」

ランスの言う通り、デクステラには嫌な表情を一つも浮かべておらず、それどころか頼ってくれている事に快く思っていた。

ランスもデクステラの事を信頼していた。

デクステラが準備に取り掛かっている中で剣とレオはランスの後を追うようにして長い廊下を歩いていた。

剣「そうだ、俺は…」

ランス「知っているよ」

自己紹介をしていなかったのを思い出した剣は口を開くが、ランスが遮るように返した後、話し続けた。

ランス「邪光 剣、創造世界の正義組織クロノス社に所属する戦士のNo,1で焔の剣士と呼ばれている。そして、レオは同じ組織に所属している戦士でNo,7で赤獅子と…」

見事に誰なのかを当てたという出来事に二人はまた驚かされた。

レオ「なぁ?なんで俺達の事について知ってるんだ?俺も剣もお前の事なんか知らねぇし、前に会った事すらもねぇのによ」

不審に思いながらもレオはランスに訊いた。

ランス「そうだね、敢えて言うなら答えはこの中にあるよ」

すると、足を止めたランスは目先にある扉を開けた。

そこはランスの自室にして事務室のようなところであった。

広々とした内装と明らかに高級そうな机と椅子の周りに常軌を逸する程の本棚に囲まれ、その中には幾つものの本が並べられていた。

また、机の上には紙の資料が塔のように重ねられていて、その横には水晶玉が置かれていた。

剣「ここは…」

ランス「ここは僕の部屋。そして、数多の世界を記した本が眠る場所」

ランスが室内に入った事で二人も釣られて、室内を見渡しながら入っていった。

そして、ランスは一冊の本を手に取り、それを開いた。

ランス「邪光 剣は焔と呼ばれる能力と太刀を駆使して戦う。幼少の頃に父親 斬希は仮面の男に殺されて以降、復讐と斬希の約束の為に戦士となった。また余談だが、剣の好物はマグロで、逆に冷たいものが苦手」

その本に記されていた内容を読み上げた。

よく見るとその表紙には創造世界というタイトルとその下には世界を示す地球のような絵或いは画像があった。

剣「成程、本に全て記されていて、その内容を全て記憶しているという事か」

ランス「正解だけど、少しハズレかな…」

そう言うと、ランスは頁をめくった。

ランス「レオ、両親に捨てられ、ライオンに育てられたが、一人の科学者に親代わりのライオンと居場所を奪われた。その息子であるグリンに助けられ、今では戦士として活動している。別世界でルナという人物と遊園地で遊んでいたみたいだね」

先程まで静かに聞いていたが、別世界でやっていた事を話し出したので、レオは驚く。

同じく聞いていた剣は唖然として、レオを見た。

レオ「な、何言って…」

剣「レオ?どういう事だ?」

焦りながらも誤魔化そうと笑みを浮かべるレオに剣は困惑した様子で事情を訊いた。

だが、ランスがすぐに事情を説明した。

ランス「ルナは元人間のアンドロイド、膨大で荒廃して、人のいない世界に独りだったので精神的に辛いだろうと思い、連れていってくれたという訳だ」

レオ「そ、そうなんだ!悪ぃ!許して!」

レオは両手を合わせ、勢いよく瞑って剣に謝った。

剣「少し驚いただけだ、何も責めるつもりも咎めるつもりなどない」

すると、剣はレオの肩に手を置いた。

剣「気持ちはわかるが、焦るつもりも罪悪感に駆られる必要も無い。そうなるのも仕方がない。寧ろ誇りに思っていいと俺は思うぞ」

微笑みながら剣は言い聞かせた。

それを聞いたレオは安堵し、一息ついた。

レオ「良かったぁー…」

焦りがなくなり、緊張が解けた。

ランス「答えの方だけど、正確には今も記し続けているという事…この世界の技術によって創り出した代物なんだ」

二人のやり取りを遮るランスに剣とレオは彼の方を向いて、切り替えた。

剣「ランスさん、色々と教えてくれないか?」

話を変えて、剣はランスを真っ直ぐに見つめながらそう頼んだ。

ランス「良いよ、というか元よりそのつもりだったからね」

すると、ランスは先程の本をしまうと、他の本を手に取った。

剣「まずは何故、暗黒世界は各世界を侵攻しているんだ?」

その問いを聞きながらランスは本を開き、こう答えた。

ランス「ヤツらの目的はご覧の通り、全ての世界を破壊する事」

剣「破壊?」

ランス「暗黒世界は闇…つまりは負の感情を原動力に生きている。例えば君達が最初に会ったゴルゴン改めフェイトンはヘリオス社の首領 アザトースに対する歪んだ信仰と間違った認識により闇に染った。次に戦ったゴブリンは初の人殺しでどう逃れるか、免れるかを考えた中での不安といったのが具体的な例だね」

剣「…己の負を晴らす為、その恨みを撒き散らす為に破壊を?」

ランス「それもそうだけど、もう一つ目的があるんだ」

眉を顰める剣を他所にランスは頁をめくった。

ランス「暗黒四天王の頂点に立つのが暗黒の破壊者と呼ばれる者だが、それよりも上に立つ存在がいる」

剣「そいつは誰なんだ?」

ランス「マスターダーク、暗黒の創造主で愉快な狂気さ」

剣「そいつの目的はなんだ?」

ランス「全ての世界を自分のものにする為…まぁ、領土侵攻といったところかな」

淡々と述べているランスの持つ本に剣は目を遣る。

剣「…その本には随分と詳しい事が書いてあるんだな」

ランス「この本は現在(イマ)より先の未来については記せないし、書き換える事も出来ないからこれは予想になるけど、恐らく会うのは遠くないだろうね」

そして、その本を閉じた。

レオ「俺から訊きてぇんだけど、なんで世界は分離したんだ?元々は大きくて一つだけの世界だったみたいなんだけどさ」

ランスは別の本を開いた。

ランス「これについては何個か説があって、有力なのは二つ。一つは神々の争いによって分離した。もう一つはその中の一柱が世界を分離させた。他にはその世界の住民がやったというのもある」

レオ「バラバラじゃねぇか、なんでそれはわかんねぇんだ?」

曖昧な答えにレオは首を傾げた。

ランス「あくまで分離後の各世界について書いてあるだけであって、それ以前の事はわからないんだ。本当に申し訳ない」

レオ「なるほどなー…いや、大丈夫だ!」

ランスの返答に納得すると、レオはあっさりとした感じで彼の謝罪を許した。

剣「…もう一つ、訊いていいか?」

ランス「何かな?」

ランスが剣に目を遣る。

剣「仮面の男についてだ」

それを聞いたレオは剣を見た。

いつも通り真剣な顔だが、その眼差しは復讐のような怒りの炎が宿っていた。

ランス「斬希を殺した人物だっけ?」

剣「そうだ。ここ最近になって少し疑問に思う事があった。俺は創造世界のパラレルワールドに行った。そこでは親父が生きていて、俺達は幼くして亡くなっていた」

ランス「そうだね。それは記憶しているし、本にも記されている」

剣「だが、そこでは仮面の男によるものでは無く、悪魔の科学者 パズズが引き起こしたパンデミックによるものだった」

それを聞いたランスは静かになる。

剣「これは変だと思った。パラレルワールドだからかもしれないが、もしもの場合ならば、仮面の男が関与しているかもしれないはずだ」

ランス「成程…つまり、”なんであっちの世界に敵討ちとなる相手…つまりは仮面の男がいないのか?”という事で良い?」

剣「そうだな」

すると、ランスは顎に手を当てるようにして考えた。

ランス「二つ想定すると、パラレルワールドだからか、そもそも仮面の男は創造世界にいた人物じゃなかったという事になるんだよね」

レオ「書いてねぇのか?」

ランス「読んでいて、そこに興味があったから色んな書籍を調べたんだけど…」

レオ「だけど?」

ランス「全部、書き換えられているんだよね。というか、該当する箇所が全部空いていた」

剣「なんだと?」

それを証明する為にランスは暗黒世界について記された本の頁を剣に見せた。

黒いインクが文章を綴られているが、最初の10行が不自然に空白となっていた。

ランス「何度もテストして、メンテナンスをしているから不備がある訳じゃないし、それ自体が劣化していたという訳でもない。」

剣「…そうか」

あまりにも不可解な事実を告げられ、剣は困惑と唖然、数多の疑問が胸の中で渦巻いていた。

しかし、それでも一つの確信を得ていた。

剣(恐らくアイツの力は…)

過去の出来事…斬希と仮面の男との戦いを目の当たりにした際の事を思い出しながら思考を張り巡らせた。

ふと、ランスは机の上にある水晶玉に目を遣ると危機を感じたのか目を見開いた。

水晶玉は黒く染まり、赤い光が三つ現れた。

ランス「剣、レオ、すぐに他の仲間にも伝えといた方が良い」

唐突に出たその言葉に二人はそれが何を示し、意味するのかを瞬時に理解した。

ランス「暗黒の怪物達が来るみたいだ…!」

先程まで余裕があるような落ち着きがあったランスの表情は険しいものへとなっていた。


その頃、牙禅は心眼で周囲を感知しながら走っていた。

牙禅(激龍の欠片を探していたが、どうやら向こうから来てくれたようだな)

暗雲に覆われた空を見上げた牙禅は危機を覚えたのか両手に波動を纏わせるように発現させた。

その時、牙禅の足を伸びた何かに巻き付かれるようにして掴まれた。

牙禅「なんだ!?」

突然の事に驚き、足元に目を遣るとそこには触手があった。

抜け出そうとすぐに片方の掌を触手に向けて、波動弾を放とうとした。

「これは戦士の人、若くないのは残念だが…まぁ悪くは無い」

だが、それは不気味な声により遮られた。ふと、牙禅が触手が出てきた暗闇の奥へと顔を向けた。

触手の正体は路地裏にいた暗黒の怪物であり、イカの頭とタコの様な顔、そして無数の触手を持った人型の姿をしていた。

牙禅「貴様は何者だ?!悪鬼の名を問う!」

訊いた後、牙禅は波動弾を放った。

だが、それを怪物は容易く躱した。

「我はクラーケン、暗黒の海獣であーる!」

癖の強い口調で嘲笑うかのような目をした直後、掴んでいた触手を引っ張り、牙禅を引き寄せる。

牙禅は為す術なく、クラーケンに近付いてしまう。

牙禅「ぐっ…!」

このままではマズイと思い、牙禅は掴まれている足に波動を纏わせた。

クラーケン「あぁっ!」

すると、クラーケンはすぐさま手放した。

引きずられていた身体は止まり、急いで立ち上がると、警戒しながら戦闘態勢に入った。

クラーケン「良い…」

震えるような声がクラーケンから聞こえた。

牙禅「なんだと?」

微かに零した言葉を聞いて、牙禅は訝しむようにして目を細めた。

クラーケン「実に良いィッ!消えてしまいそうで!焼き尽くされそうなこの痛み…!あぁぁぁぁ…!実に快感んん……!」

すると、クラーケンは高揚し、快楽に浸ったような表情を浮かべた。

牙禅「なんだ?こいつ…」

クラーケンの言動に牙禅はドン引きし、更に警戒心を高めた。

クラーケン「さぁ、今度はこちらの番だ!!」

すると、クラーケンは無数の触手を牙禅に向けて伸ばしてきた。

その触手は全て牙禅に叩きつけてきた。まるで鞭で打つような動作で

牙禅「ぐっ…!」

両腕をクロスするように防御する。

顔が苦痛に歪む牙禅に対してクラーケンは変わらずに高揚していた。

クラーケン「良いっ!その苦痛な表情!奏でるように叩きつける肉の音!その全てが我の欲を高める!満たしてくれる!」

そのままクラーケンは口から墨汁を勢いよく吐き出す。

墨汁は一直線にスピードを落とす事無く飛んで行き、鋭利なモノへと形を変える。

牙禅(マズイ…!)

視認した牙禅は退こうとするが、周囲から襲いかかる触手が叩きつけてくるが故に防ぐしかなく、身動きが取れなかった。

巨大な針となった墨汁は牙禅の左肩を貫いた。

牙禅「ぐあっ…!」

そこから血飛沫が舞い、腕が飛ぶようにして胴体と分離してしまった。

牙禅「ああああああぁぁぁぁぁっ!!」

切断された箇所を片手で抑え、想像以上の激痛により叫ぶ。

だが、休む間もなく触手が攻撃してくる。

クラーケン「ンンンンンッ…!良い響だァァァ…ッ!至高の味だァ!」

牙禅は叩きつけながらクラーケンはより興奮し、感極まっていた。

牙禅「ぐあっ…!がっ…!クソッ…!」

どうしようも無いこの状況に牙禅はただ耐えるしか無かった。


同時刻、高速道路にて誰かがブラックの胴体を切り裂いた。

ブラック「ぐっ…!」

そこから血を垂らして後ろによろけるが、傷口は瞬時に再生して元通りになる。

「なんだァ?殺した事も食った事もねぇ珍しいのがいやがるな」

首の骨を鳴らしながらブラックに近付いて来る人影が姿を現した。

それは紅色の毛並みと両肩にある狼の頭の装飾に鋭い爪を持った獣の手が特徴の男であった。

「つか、勝手に治るんなら良いな…殺り甲斐もありゃ、腹一杯になる程に満たせそうだァ!」

楽しめそうだと言わんばかりに狂気じみた笑みを浮かべる。

ブラック「…いきなり襲いかかってきて……なんなんだ、お前?」

目の前にいる男を睨みながらブラックは双剣を構えた。

「俺様はケルベロス!暗黒の番犬だ!」

男 ケルベロスは自身に親指を向けてそう名乗った。

ブラック「…そういう事じゃないんだがな!」

大地を蹴り上げ、ケルベロスに接近した直後、そのまま瞬時に一つの太刀を振り下ろす。

だが、その刃はケルベロスの鋭い爪により防がれ、命脈を断てなかった。

ケルベロス「あぁぁ!殺してぇぇ!!食いてぇぇ!!!」

ケルベロスの肩にある狼の頭が自我に目覚めたかのようにして動き出す。

ブラック「ただの飾りでは無いか…!」

嫌な予感がしたブラックが瞬時に後ろに飛ぶ。

その時、突如として目の前に現れた黒い顎が喰らおうと襲いかかる。

並ぶ牙は空を切り、ブラックはその顎の正体を知る。

人より大きく、闇より黒い狼が唸り声を鳴らす。

ケルベロス「悪いな!俺が一人じゃないって言わなくてな!」

鼓膜を震わせるような声でケルベロスは喋る。

だが、その態度からは反省の色などなかった。

ブラック「一人と一匹…という事か」

ケルベロスの他、狼にも警戒しながらブラックは再度、双剣を構えた。

ケルベロス「食わせろ!殺させろ!」

ケルベロスが走り出すと、狼も後を追うように走り出す。

そのまま接近して来るが、ブラックは屈さずにその双剣を振り上げる。


その頃、剣はメルクリオ家の屋敷から飛び出し、アトランティスの中を走っていった。

剣「急がなければ…!」(レオに『訊きたい事があるから先に行ってくれ』と言われたが…一体何を?)

先に告げられたレオの発言に剣は疑念を抱くが、迷わず暗黒世界の討滅と欠片の回収に専念した。

その時、剣はどす黒い殺気を感じ取った。

剣(何か来る…!)

瞬時に足を止めて、跳ぶように後退した。

すると、先程まで剣がいたところに明らかに大きい羽根が突き刺さる。

空から降ってきた事から剣は敵が飛行していると察知したので見上げる。

「流石は邪光 剣。だが、この程度なら当然と言ったところか」

剣は降下してくる人物を目で追いながら太刀を構える。

瞳に映るのは白髪に黄色い瞳を持つ反転眼の容姿に両翼にマフラー、茶色のコートを羽織った男であった。

剣「誰だ?明らかに人では無いな」

その人物に対して剣は身構えるように訊ねた。

「如何にも、私は暗黒の鷲獅子 グリフォン…暗黒の住民の中で最強と言われている」

その問いに男 グリフォンは剣を見つめながら翼から 一枚の羽根をつまむように取る。

それを勢いよく尚且つ素早く振るうと、不思議な事に直剣へと形を成した。

剣「随分と自信があるな」(嘘では無いな、過信している訳でも無い)

そう確信した剣は警戒心に応じて、全身から焔が燃え盛った。

グリフォン「当然だ。私は次期四天王候補と評価されているからな!」

覇気のある声を上げた直後、急加速しながら剣に近付く。

剣「ハァッ!」

グリフォンが振るった直剣をすかさず剣は太刀で防いだ。

互いの刃がぶつかり合い、その度に金属音が鳴り響く。

グリフォン「甘い!」

鍔迫り合いに入ったところでグリフォンは翼を羽ばたかせながら数枚の羽根を剣に飛ばした。

だが、それらは届く事なくして、剣から燃え盛る焔に触れて塵と化した。

剣「焔技…!」

即座に太刀を握る手に力を込める。

そして、グリフォンが直剣を持ったまま距離をとると、剣は太刀を振り上げた。

剣「緋焔(ヒエン)!」

焔の刃は空を切り、後ろに飛ぶグリフォンには届かなかった。

グリフォン「これが(ホノオ)か…確かに焼けるような熱さだ!」

剣の兼ね備える力に深く感銘を受けた後、グリフォンは両翼を広げながら直剣を掲げた。

すると、そこから数枚の羽根が飛んで行き、自身を囲うようにして隊列を組んだ。

剣「なんだ…?」

目の前の状況に、グリフォンの行動に剣は警戒のあまり太刀を構えた。

グリフォン「貴様に恐怖を刻もう…!」

すばやく直剣を振り下ろし、全ての羽根は剣に狙いを定める。

グリフォン「フェザートレイン!」

そして、集った羽根は飛行しながら大蛇の如く剣に襲いかかる。

剣「焔技 紅蓮斬(グレンザン)!」

焔を纏った刃を振るい続け、迫り来る羽根を何度も焼き斬る。

斬撃から掻い潜った羽根が躊躇いなく迫るが、直撃せず擦る程度のものであった。

グリフォン「これで終わりでは無い…」

直剣を構えると、刀身に無数の羽根が渦巻くように纏う。

グリフォン「羽々斬(ハバキリ)!」

そして、長くなった羽の刃を薙ぎ払うようにして振るった。

瞬時に迫るそれを剣はすぐに見切り、跳んで回避した。

剣「火斬翔!」

素早く太刀を振るい、焔の斬撃を飛ばした。

加速する弧状の焔は宙を翔るようにしてグリフォンに迫る。

グリフォンは両翼で斬撃を防ぐが、直撃して全身が燃え上がりながら落下していく。

グリフォン「ナメるな!!」

だが、グリフォンは直剣で両翼を斬った直後、瞬時に再生させた。

復活した翼を羽ばたかせた事で落下死は免れた。

剣「やはり、思っていた通りだな」

浮く身体を着地した後、剣はグリフォンを賞賛しながら切先を向けて構える。

剣(こいつ、想像よりも強い)

そう痛感した剣は警戒しながらグリフォンに敵意を向けながら睨む。

グリフォン「賞賛するか、感謝しよう」

平然としながらも満更でもない様子でグリフォンを翼を展開しながら直剣を構えた。

グリフォン(やはり邪光 剣…あのお方がお気に召すのも納得だ)

グリフォンも目の前にいる剣を賞賛する。

しかし、自分と対等或いはそれより上がいるという事実が気に入らないと言わんばかりに睨みつけ、敵意を向ける。

グリフォン「だが、貴様程度、私の手には及ばない。故に此処で死ぬがいい…!」

その言葉は出任せなどでは無かった。

グリフォンは刃を剣に翳して、羽根を数枚飛ばす。

自我を持って飛行する羽は剣に襲い掛かる。

剣「焔技 守!」

すぐに片手を翳すと、渦巻く焔が剣を護る盾へと変わった。

数枚の羽根が焔に溶けて消えるも、他の羽根はその横を掻い潜り、剣を狙ってくる。

剣「追尾式か!」

羽根の性質を察知した剣は瞬時に後退すると、地を駆けて羽根から距離を取ろうとする。

だが、羽根はしつこく追跡していき、距離が縮まっていく。

グリフォン「世の中、上手くいくとは限らんぞ」

すると、剣の前にグリフォンが現れた。

グリフォンは両翼を広げて逃さんと言わんばかりに阻む。

剣「そうか…!」

視認して微かに焦りをみせるが、どかそうとすぐに太刀を振るう。

だが、予見していたと言わんばかりにグリフォンは直剣で刃を受け止めた。

同時に襲い掛かる羽根が剣の背中に突き刺さった。

剣「ゴフッ…!」

それにより吐血する。まるで矢に刺さったかのような鋭い痛みが剣に襲いかかり、力が少し弱まる。

剣「ぐっ…!」

それでも諦めないと耐えて、歯を食いしばりながらグリフォンを睨みつける。

グリフォン「いくら戦士で実力はあれど、所詮は人間。私達、暗黒の者達には断じて勝てない」

剣の目が気に入らないと吐き捨てると、片手で剣の髪を掴んだ。

そのまま持ち上げると、顔面に膝蹴りを入れた。

もろに受けた剣の鼻が折れて、微かに血が吹き出る。

剣「ハァッ!」

だが、剣はその痛みを堪えて、勢いよく太刀を振るった。

既に想定していたグリフォンは後ろに飛んで、距離をとる。

剣もグリフォンから離れると、片手で折れた鼻を治し、焔纏う太刀の刃先を変えた。

剣「火斬翔・乱舞無連(ランブムレン)!」

勢いよくそして素早く振るい続けて、複数の焔の斬撃を飛ばした。

グリフォン「鋼鉄の翼(アイゼンフリューゲル)!」

鋼鉄と化した両翼で自身を包むように隠れ、迫り来る全ての焔の斬撃を防いだ。

だが、その隙に剣はグリフォンの背後に回った。

剣「がら空きだ!」

グリフォン「なんだと…!」

剣の策略に引っかかったグリフォン。

自身にとって想定外の事だったので愕然のあまり瞬時に動けなかった。

剣「灯火の太刀!」

そして、会心の一撃と言わんばかりの一振がグリフォンの背中を斬り裂いた。

グリフォン「ゴハッ…!」

見事に貰ったグリフォンは目を見開き、吐血しながら落下していく。

剣「倒して…いや、まだか」

自身も落下していく中で剣はグリフォンが死んでいないと考え直し、一度刃を納めて居合の構えに入った。

すると、グリフォンの背中に負った傷から等身大の黒い玉が生えた。

それが割れると、新たなグリフォンが現れた。

グリフォン「チェリャァァァァァ!!」

勢いよく翼を羽ばたかせると、瞬時に上昇していく。

手に持った切先を剣に突き出す。

剣「焔技…!」

そう唱えると、あまりの速さにより剣は姿を消した。

次の刹那、グリフォンに焔を纏った斬撃が浴びせられた。

グリフォン「キシャァァァァァ!!」

そのままグリフォンは断末魔を上げながら塵となって消えた。

再び姿を現した剣は着地した直後、立っていた。

剣「蓄積した痛みを具現化させて生み出した分身か」

襲ってきたグリフォンの正体を見抜いていた剣は振り返った。

そこには全回復したグリフォンがおり、剣に対して微笑みを向けた。

グリフォン「その通りだ」

剣「成程、時間稼ぎという訳か」

回復薬を飲んだ事で背中や顔に負った傷が癒える。

そのまま剣は刃先を向けて太刀を構えた。


その頃、牙禅はクラーケンの触手に打たれていた。

更に切断された箇所から大量の血液が流れているので貧血状態に陥っていた。

牙禅(何とかしなければ…!)

意識が朧げとなる中で牙禅は一呼吸すると同時、瞼を閉じた。

それにより深い意識へと潜り込んだ。

クラーケン「おのれ、音色が聞こえん…!ならば、別の刺激を与えてあげよう!」

思い通りにならない事に快感が得られない事に苛立ちを覚えたクラーケンはまた口から墨汁を吹き出した。

勢いよく飛行する黒いそれは形状が鋭く変化して、牙禅の腹部を貫こうと迫り来る。

クラーケン「さぁ!私に聞かせろ!私を喜ばせろ!」

先端が触れようとした次の刹那、牙禅の身体がその場から消えた。

クラーケン「消えた…」

表には出さなかったが、目の前の出来事に愕然とするクラーケン。

地面に付着した血を視認し、道標と言わんばかりに出来た血痕を目で追う。

振り返るとそこには息を切らした牙禅がいた。

牙禅は切断された箇所に触れながら波動である青い炎で焼いていた。

それにより止血した牙禅は息を整えると、クラーケンを睨んだ。

まるでこれまで受けた痛みを全て返してやると言わんばかりの様子で

クラーケン「どうした?たかが逃げただけでは我の手からは逃れられんぞ!」

牙禅は肉体的にも精神的にも限界が来ていた。

それを理解していたクラーケンは嘲笑う目を向けながら無数の触手を素早く伸ばしてきた。

クラーケン「私に見せてくれ!その苦痛に歪んだ表情と心の奥底から鳴る慟哭で私を魅せてくれ!喜ばせろ!!」

想像しただけで興奮し、愉悦に浸っていたクラーケン。

触手が牙禅に当たった次の刹那、素早く彼の姿が消えた。

クラーケン「また逃げるか…!」

そう思ったのも束の間、クラーケンの背後から何かが直撃した。

それは波動を纏わせた牙禅の足であり、クラーケンに回し蹴りを食らわせたのだ。

牙禅「よくもやってくれたな、この受けた痛みと屈辱…全て倍にして返してやるぞ!イカレ野郎!」

受けたが、流れるように起き上がるクラーケンに向けて牙禅の攻撃が繰り出された。

それは主に蹴りであり、振り回したり突き出したりしていた。

クラーケン「良い!良い!もっとやってくれ!やらせてくれ!」

反撃に出ようとクラーケンは触手を伸ばすが、牙禅は舞うようにして後ろに飛んで回避した。

そのまま牙禅はクラーケンに対して残った片腕を翳して、掌から波動弾を連射する。

クラーケン「ぐぬぅぅぅぅ…!」

無数の触手で自身を守る。

だが、何発も放たれた波動弾は触手を貫通し、クラーケンに迫る。

波動弾がクラーケンに直撃すると、青い炎が全身に燃え移った。

クラーケン「おのれぇッ!これは!!」

のたうち回り、唸り声を上げながら悶絶するクラーケン。

自身が危機的状態だと瞬時に理解すると、牙禅から逃れようと走り出す。

牙禅「逃がすか…!」

すかさず牙禅は片手で波動弾を撃ちながらクラーケンを追いかけた。

少しすると、クラーケンは近くにあった噴水に飛び込んだ。

牙禅「くっ!遅かったか…」

それを目にした牙禅は間に合わないと足を止めて、悔しい声を零した。

次の瞬間、噴水からクラーケンが飛び出し、地面に着地する。

クラーケン「これで万全…」

焼かれていた身体が何事も無かったかのように回復していた。

好調な様子で愉悦の笑みを浮かべるクラーケンに対して牙禅は身構えた。

クラーケン「だが…一つ妙だ」

すると、唐突と言わんばかりにクラーケンの口から疑問が出た。

牙禅「何がだ?」

当然、牙禅は訳がわからないので訊ねる。

クラーケン「貴方の能力は一体?」

牙禅「…波動だ」

クラーケンの問いに牙禅は困惑しながらそう返した。

クラーケン「波動か…貴方の力はまるで我らが天敵の持つ力とそっくり…いや、似ているのか?疑問だ」

返答を聞いたクラーケンは俯きながら考え込む。

牙禅「その天敵は激龍の事か?」

クラーケン「如何にも…元より波動は波の動きであり、青い炎などではない。実に異常だ、奇妙だ」

しゃがんで牙禅の方へと顔を向けながら首を傾げる。

牙禅「何かするつもりだろ、貴様」

既に予測していた牙禅はクラーケンに片手を向ける。

クラーケン「おかしいのだ。つまり、貴方の力は波動ではなく、激龍に近いモノだと推察しよう!」

その予測は見事に的中し、クラーケンは牙禅を捕らえて拘束しようと無数の触手を伸ばした。

それよりも早く牙禅は波動弾を放ち、クラーケンの頭を吹き飛ばした。

だが、触手は牙禅の身体に巻きついた。

クラーケン「馬鹿め、我ら暗黒世界には再生能力が…」

消し炭となった頭を再生しよう念じる。

しかし、出来なかった。

クラーケン「なん...だと?」

そう疑問に思うと、クラーケンの身体が崩壊しようと塵が浮上し始め、至る所に亀裂が生じた。

クラーケン「馬鹿な…身体が……」

どうしてこうなるのか、クラーケン自身にも理解出来なかった。

だが、瞬時にその原因を察した。

クラーケン「そうか…!それガ、貴様ノ、チカラ……」

何かを言いかける前に肉体は崩壊、それらの破片は浮上していきながら消滅した。

牙禅「一体何が…?」

突然の出来事に驚きのあまり目を見開く。

牙禅は片手へと目を遣ると、青い炎である波動が燃え続けていた。

牙禅「あの時、シャドーに対しては効かなかった。だが、ヤツに対しては効果があった…」

手を握り締め、振るうと青い炎が消えた。

牙禅「いや、今はやるべき事があるはずだ…早く行かなければ」

そう言うと牙禅は仲間達のところへと向かおうとこの場を走り去った。

だが、この戦いで負った傷は深いものであり、知らず知らずのうちに限界が迫ってきていた。


ケルベロスと交戦する中で、ブラックは人より大きな二匹の狼に追われていた。

当の本人は腕を組んで立ったまま寝ていた。

両肩にあった狼の装飾は無くなっていた。

ブラック(今のヤツには隙がある…ならば!)

チャンスと捉えると、双剣を合わせて弓へと形を変える。

それに掌から発現した赤い矢を番えると、後ろに飛び跳ねながら弦を引っ張る。

手放した次の刹那、赤い矢が目にも止まらぬ速さで飛行していく。

赤い矢がケルベロスの脳天を貫こうとした。

しかし、ケルベロスは力強く且つ素早く瞼を開けると、瞬時に後ろへと仰け反った。

矢は通り過ぎていき、向こう側の建物に突き刺さった瞬間、壁に亀裂が大きく広がった。

二匹のうちの一匹が影に溶け込むようにして消えると、ケルベロスの左肩に狼の頭が戻ってきた。

ブラック(成程、三体の内二体は活動し、残りの一体は眠るか戻るかのどちらという訳か…)

双剣を分離させて、ケルベロスと一体の狼に警戒しながら構えた。

ケルベロス「残念だったな、テメェに俺は殺せねぇよ!」

思いっきり息を吸った直後、口から火の息吹が伸びてブラックに急接近した。

それはブラックに当たってしまい、全身を燃やした。

彼はのたうち回る事無く、直立したままであった。

ケルベロス「戻れ!兄弟!」

掛け声と共にもう一体の狼も溶けて、もう片方の肩にその頭が現れた。

ケルベロス「ザマァねぇな…!クソッ、もうちょい眠るから頼むぜ、兄弟」

のたうち回る事無く死んだのだと勝利を確信したケルベロスは立ったまま二度の眠りについた。

燃え盛る炎に身を包んだブラック、痛いや熱いといった苦しみは感じなかった。

その中で双剣を合わせて弓に変えて、赤い矢を番える。

この身に宿るエネルギーを溜めていると、身を焦がす炎が矢に吸収されるように集まる。

ブラック(…今!)

直後、赤い矢を放ち、瞬速で空中を駆け抜けた。

矢は超音波を幾度も放ちながら通った地面を切り裂きながらケルベロスに接近する。

圧倒的でありったけの力を宿した矢はケルベロスの心臓を貫いた。

ブラック「…」

緊迫した様子でブラックは再度、赤い矢を番えた。

まだ気が抜けなかったのだ。殺した実感が無かった。

その時、ケルベロスの胸にあった孔から大きく赤い一つ目が現れ、ブラックを一点に見た。

ブラック「嫌な予感がする…!」

そう直感が働くとすぐに赤い矢を放った。

矢は先程と変わらず、空間と大地を揺るがす程の威力で飛びながらケルベロスの脳天を貫こうとした。

だが、ケルベロスは口を大きく開けて、矢を食らった。

味わうように何度も噛み砕き、一気に飲み込む。

ケルベロス「マサカ…コノ俺を…殺せるとでも思ったかァ!?この莫迦ガァァァ!!」

ブラックを滑稽と嘲笑いながらケルベロスの全身が黒く染まる。

暗黒に染った肉体は不規則に肥大化しながら変化する。

ブラック「…進化、というヤツか?」

絶望と戦慄が襲い、微かに焦りを見せるもブラックは双剣を構えながら睨む。

先程まで人の姿だったものが人より大きい黒い身体に三つ首を持った犬の姿へと変貌し、至る所にある赤い目が現れた。

その姿は正に伝承や神話に出てくるケルベロスそのものであった。

ケルベロス「ハハハ!如何にも!俺様は暗黒の番犬!ケルベロスだ!!」

中央の頭が笑みを浮かべながらブラックを見た。

ブラック「…そうか……!」

ブラックは瞬時に片方の太刀をケルベロスに向けて投げる。

太刀は回転しながら飛行してケルベロスの頭を切断しようとした。

その隙にブラックは残った太刀を手にしてケルベロスに接近した。

ケルベロス「ハンッ!くだらねぇ!」

鼻で笑うと、飛んでくる太刀を食らおうとする。

次の刹那、ブラックは近くにあった車の上に乗り、蹴り上げるように跳んでケルベロスの間合いに入る。

ブラック「ハァッ!」

そして、勢いよく太刀を振るう。

ケルベロス「舐めんじゃねぇよ!!」

一つの頭がブラックの方を向き、口を大きく開ける。

だが、ブラックが手にする刃は斬るのでは無く、もう一つの太刀の方へと投げていた。

よく見ると、刃はブラックの方を向いていて、そこからブラックの手に向けて糸が伸びていた。

そうして互いの柄が連結し、双刃刀へと形を成した。

ブラック「侮ったな…!」

ブラックは双刃刀に繋がれた糸を振り回した。

それに応じて、双刃刀はケルベロスの肉体を斬り裂いた。

ケルベロス「おいおい!んなのが効くかよ!!」

ケルベロスは鰐の如く太く長い尻尾を振り回し、双刃刀を払い落とした。

双刃刀からブラックへと目を向けると、その空間には誰もいなかった。

ケルベロス「あぁん?あの野郎は何処に行きやがった!?」

三つの頭と複数の赤い目で辺りを見渡すが、何処にもいなかった。

その中でブラックはケルベロスの背中の上に立っていた。

ブラック(カオス、力を…!)

右手を後ろに引く。

それは鋭い爪を持った禍々しい…まるで悪魔のような黒い手へと変化した。

ブラック「…喰らえ!!」

そして、爪を突き立てた手刀でケルベロスを突き刺した。

ケルベロス「あぁん!?」

突然の出来事に驚き、声を上げたケルベロスは暴れ始めた。

ブラック「大人しくしていろ…!」

そうして片手に力を入れると、片目にある亀裂が広がる。

突き刺した箇所から黒い闇が溢れ出て、ブラックに吸収されていく。

ブラック「ぐっ…!」

ケルベロス「野郎!呑まれるぜ!?」

ケルベロスが抱く闇は悪魔を宿したブラックでさえも耐え難いものであった。

その証拠にブラックは身体が重く、心臓を握りめられながら精神が蝕まれていた。

ブラック(マズイ…!ヤツの核を探って壊すつもりが、下手すりゃ崩れる…!)

すぐにそう判断し、ケルベロスから離れようと手を引き抜こうとした。

だが、離れるどころか引き抜く事すら許されなかった。

ケルベロス「このまま食らってやるから大人しく死ね!」

なんとそれはケルベロスによるものであり、身体を引き締めるように力を入れていたのだ。

ブラック「クソッ…!」

それにより動けなかったブラックの顔が苦痛で歪みながら今の状況に危機を感じ、焦りを見せていた。


剣、ブラック、牙禅の三人が交戦している中、メルクリオ家の屋敷にてレオはランスと向き合っていた。

ランス「それで、訊きたい事って何かな?」

ランスは自室の机に腰掛けてレオを真っ直ぐ見ていた。

一方でレオは真剣な眼差しでランスを見ていた。

レオ「俺の両親についてだ!誰なのか、何処にいるのか、今何してるのか…全部知りてぇんだ!」

大きな声を上げるようにしてその事について答えた。

レオは前々から両親について疑念を抱いていた。

何故自分は捨てられたのか、捨てた二人はどんな人物像でどんな心境だったのか

そんな事を考えていてもどうしようも無かったので今を生きる事に、戦士として戦う事にした。

だが、今目の前で完全じゃなくてもほとんどの事を知れる機会があるならとランスに問いかけた。

ランス「わかった。けど、その前に…」

そう言うと、ランスは机から降りて、至近距離でレオの目を見た。

ランス「覚悟はある?理解を拒み、目を背けたくなるような事実を前にして、受け止めれる覚悟が」

真剣な表情で、圧倒的な威圧を放ちながら訊ねた。

そんなランスにレオは微かに戦慄し、恐怖する。

だが、拳が強く握りしめられ、そんなランスに真っ直ぐな目を向けた。

レオ「…あぁ!」

ここで退く訳にはいかないと意を決した。

既にどんな事実でも受け止めようと聞く姿勢に入っていた。

ランス「…わかった、君の両親について話をしよう」

レオの意志を把握した上で判断すると、ランスは本棚に近付き、本を手に取って頁を開いた。

ランス「父親はライオス、母親はアイネ…これが二人の名前、そして君の生みの親だ」

そして、レオを背に向けて語り始めた。

レオ「それが俺の父ちゃんと母ちゃん…」

初めて知ったのか落ち着くが、まだぎこちない感覚に襲われた。

ランス「二人は悪人では無く、真逆の良い人格者だ。今も何気ない日常を送っている」

頁をめくりながらランスは淡々とその事を述べた。

何に務めているのか、人物像の詳細、付き合った経緯など語られていく度に両親について知っていく。

どの情報も世間一般的に普通で幸せな家庭であった。ただ父親が科学者であるという点を除いて

レオ「んじゃあ、なんで父ちゃんと母ちゃんは俺の事捨てたんだ?」

ふと、疑問に思ったレオは訊いた。

何で自分を捨てたのかという問いにランスが口を開いた。

ランス「そうだね…君を守る為とでも言っておこうかな」

レオ「俺を、守る為…?」

ランスの返答にレオは眉を顰めた。

ランス「元々、グリンの父親であるスプルスはとある男の指示で子供を連れ去り、被験体として利用していた。父親のライオスもスプルスと同じ科学者でその事を知り…」

すると、ランスは振り返った後、レオに指をさした。

ランス「君が狙われるとわかった」

その言葉を聞いたレオは驚きのあまり目を見開いた。

ランス「そこには確かに葛藤があった。だが、苦渋な決断としてライオスとアイネはレオを遠い場所へ逃がしたんだ。捨てたという形でね」

そして、ランスはその本を閉じ、本棚に戻した。

レオ「…それが、俺を捨てた理由……」

レオにとってそれは衝撃だった。

物心がつく前に複雑な経緯でなんとも言えない事実を前に唖然としていた。

ランス「こういうのはだいぶデリケートだ、それに仲間であるグリンとの関係に亀裂が生じる可能性があった。だから、覚悟はしてくれという事だったんだ」

そんなレオを目の当たりにしてランスが先程の問いに理由を述べた。

ランス「とはいえ、申し訳ない事を…」

ショックを受けたと解釈し、レオに謝罪しようとしたその時だった。

レオ「なーんだ!父ちゃんと母ちゃんは無事なのか!」

明るい声色で安堵した笑みを浮かべながらレオは声を張り上げた。

そんなレオを前にランスは鳩が豆鉄砲を食らったような反応をした。

ランス「何も思わないのか?そもそも子を捨てる自体どうかと思うし、訳もわからずに捨てられ、挙句の果てにこんな運命に巻き込まれて…」

内心、困惑していた。

何故両親を責めないのか、何故そこまで前向きなのか

そんな疑問を抱きながらランスはレオに訊いた。

レオ「いや、何も思わないってのは嘘にはなるな。辛かったのは事実ではあったし…けど、そういう理由で無事に過ごせれてるなら俺は大丈夫だ!それに悪いのはスプルスであってグリンじゃねぇだろ?それで亀裂出来る程、俺とグリンの絆は脆くも薄くもねぇよ!」

そんなランスにレオは満面な笑みでそう返答した。

彼の表情には、その心には迷いも怒りも憎しみも無かった。

レオ「あんがとな!ランス!おかげで引きずらなくて済むぜ!」

サムズアップを向けながら踵を返す。

ランス「待ってくれ」

そのまま部屋を出ようとするが、ランスの掛け声により引き止められた。

レオは疑問に思いながら振り返った。

ランス「僕も行こう、トップが動かなければ面目が立たなくなってしまうからね」

愉快な笑みを浮かべながらランスはレオを追い越した。

レオ「おう!って、先行くなよ!」

すかさずレオはランスの後を追いかけた。


そうして屋敷を出ると、目の前には複数のダークアイがおり、包囲されていた。

ランス「成程、頭さえ潰せば終わらせれると考えたか…」(戦い=チェスじゃないんだけどな)

ガザール「そういう訳だ!」

ランスが口を開くと、ガザールの大声が空間に木霊した。

直後、ランス達の前にガザールが闇と共に姿を現した。

レオ「ガザール!」

すかさずレオは両手足に炎を纏わせると、ガザールに敵意の目を向けた。

ガザール「さっきぶりだな!レオ!また殺ろうぜ!」

レオを見るや否やガザールは腰を低くしながら開いた手を降ろして、狂気的な笑みを浮かべた。

「待て、ガザール」

だが、誰かが後ろからガザールに声をかけてきた。

ガザール「あ?んだよ、デュラハン」

ガザールは不機嫌な表情を浮かべながら振り返った。

そこには甲冑を纏った人の上半身と甲冑を装備した馬が一体化した姿で、頭が無い巨躯な化け物 デュラハンがいた。

デュラハン「五体満足の貴様に出る理由は無い…魔王の指示だったはずだぞ?」

頭の無いデュラハンの代わりに馬が喋り出した。

それを聞いたガザールは舌打ちをした。

ガザール「…めんどくせぇな、お前」

そして、気に入らないと言わんばかりに文句を口にした。

デュラハン「好きに言え、我は貴様ら全員が憎いし妬ましい」

ガザールの言葉はデュラハンには届かず、胸の中で抱く闇を放出していた。

ガザールが闇に包まれて消えた直後、デュラハンは大剣を構えた。

ランス「成程、貴様の闇は嫉妬か」

すると、ランスは片手を突き出した。

その掌から水が発現すると、渦巻きながら大きくなって槍を生成した。

ランスは手に取ると、それを振り回した。

ランス「深淵に眠る槍(アビスランサ)

矛先をデュラハンに向けると、構えた槍の名を口にした。

その中でランスの瞳孔が青く光る。

デュラハン「如何にも!行け!我らがダークアイよ!」

デュラハンの指示に応じて、ダークアイはランスとレオに接近し始めた。

レオ「行くぞ!」

ランス「待て、ここは僕に任せて」

レオはダークアイの群れに突っ込もうとしたが、ランスにより阻止された。

レオ「大丈夫なのか?」

ランス「問題無い。だから、仲間のところに向かって」

心配故に訊くレオにランスはそう返し、指示した。

レオ「…わかった!ランスを信じる!」

ランス「感謝するよ!」

手に持った槍と同じものがレオとランスの周りに数個現れ、浮遊していた。

すると、矛先から水が生成され、泡沫を作るように溜まっていく。

ランス「集い、全てを射抜け!」

ランスの意志通りに浮遊する数個の槍がランスとレオの前に移動し、観覧車のように周り始める。

ランス「海よ裂け(モーセ・ヤム・ネス)!」

すると、槍の先端から勢いよく放水した。

それは尋常ではない程の水圧であり、最早光線に等しかった。

ダークアイはその水を受けると一瞬にして消滅した。

すると、この場から脱する為の道が切り開かれた。

ランス「進め!」

レオ「おう!」

ランスの言葉にレオは走り出し、その道を突き進む。

当然、ダークアイは阻もうとレオに襲いかかるが、浮遊する槍がヤツらを突き刺した。

ランス「何でもかんでも自分の思い通りになると思うな」

すると、ランスはダークアイの群れに突っ込むと舞うように槍を振り回した。

何とかしようと、生きようとダークアイは集まり、人より大きい怪物 ダークアイズへと姿を変えた。

ダークアイズはランスに立ちはだかる。

ランス「踊る魚(ナダルコ・モ ウペズ)!」

そう唱えると、浮遊する槍がダークアイズを切り刻み、突き刺し、放水で射抜いた。

すると、ダークアイズは消滅し、他のダークアイズも尽くやられていった。

デュラハン「なんだよアイツ…あの美しさが妬ましいし、あの強さが腹ただしい…!」

無駄なく尚且つ美しく敵を葬る姿にデュラハンは妬ましく思っていた。

ランス「残るは貴様だけだ、デュラハン」

一分もしないうちにダークアイは殲滅され、目の前にいるのはデュラハンだけだった。

デュラハン「おのれ…なんという強さと余裕さ、妬ましい…!」

嫉妬と怒りを湧き上がらせたデュラハンは大剣を片手にランスの方へと走り出た。

ランス「行け!海の刃(エスパーダ)!」

浮遊する槍 エスパーダはランスの思考を読み取ると、彼の意のままに動いた。

複数のエスパーダはデュラハンに近づくと、斬ったり、貫いたり、放水で撃ち抜く。

デュラハン「無駄だ!我ら暗黒世界にそんな攻撃…」

だが、デュラハンはビクともせず、進み続けた。

次の刹那、デュラハンの背後にあったエスパーダの放った水がヤツの心臓と馬の頭を貫いた。

すると、デュラハンの身体は黒い塵を出しながら崩壊を始めた。

デュラハン「な、何故…?暗黒世界は…」

ランス「普通に殺せないなら全て試すまでだ。どうやら貴様の心臓と頭にある二つの核を同時に破壊すれば良かったみたいだな」

複数のエスパーダがランスの元に集うと、それら全ては泡沫が弾けるようにして消えた。

デュラハン「何処までも、妬ましいヤツだ…」

デュラハンはランスに対して嫉妬と憎悪を向けたまま塵となって消滅した。

ランス「妬むんなら少しは変わる努力をすれば良かったのにな」

手に持った槍を握りしめながら正面へと目を遣る。

その先にはダークアイの群れが囲っており、その中にはダークアイズが何体かいた。

ランス「しかし、暗黒世界とは随分と面倒臭いな。本当に生き物なのか?」

非現実的な事を前に疑問を抱きながら目を据え、槍を構えた。


その頃、邪光 剣は飛行するグリフォンから距離を取る為に街中を走っていた。

道の上を駆ける足は時々踵を返して、曲がり角を曲がったりしていた。

グリフォン「逃げるか!焔の戦士!!」

剣を煽るような口調で語りかけるグリフォンは両翼を羽ばたかせて、数枚の羽根を飛ばした。

剣「陽炎!」

当然、その攻撃は予測していた。

剣はすぐに焔を身に纏うと姿を消した。

襲いかかる羽根は剣の身体を通り抜けてしまった。

グリフォン「逃げるか!何処へ行った?!」

グリフォンは微かに苛立ちを覚えながら辺りを見渡す。

剣「焔技…!」

そんなグリフォンの背後に剣が焔と共に現れ、力いっぱい込めるように握りしめた太刀を振るった。

グリフォン「既に読んでいるぞ…!」

二度は無いと言わんばかりに振り返り、グリフォンも片手の刃を振るう。

剣「灯火の太刀!」

グリフォン「堕天斬(ダテンザン)!」

焔纏う片刃とただの両刃がぶつかり、金属音が周囲に鳴り響いた。

グリフォン「戦士である貴様に問う!何故、私らの邪魔をする!?」

その中でグリフォンが怒り混じりの瞳で剣を睨んだ。

剣「単純だ!侵略し、破壊するお前らを止める為だ!」

互いの刃が振るわれ、何度もぶつかって音を鳴らす。

グリフォン「此処は!貴様ら戦士が住まう世界にとって無関係でもか!?」

剣「当たり前だ!」

迷いの無い意志で声を張り上げるように答える。

剣がグリフォンの刃を弾き飛ばした事で優勢となった。

剣「例え無関係だろうと!感謝や労いが無くとも!護るという事に変わりは無い!」

そして、焔を纏った刃がグリフォンの胴体を断ち斬った。

グリフォン「それが…貴様の正義か?!」

深い傷から黒い霧が浮上するように舞う。

苦痛で顔を歪めたままグリフォンは落下していく。

剣「そうだ、これが俺の意志だ!」

決意の言葉を顕にした直後、剣の胸辺りが水色に光り始めた。

それ故か落ちていく身体が空中で止まり、その場に留まっていた。

剣「なんだ?」

突然の事に気付き、自然と懐から取り出す。

まるで運命に通りに、神聖なる未知に導かれるように

そんな剣の掌には激龍の欠片が光を帯びていた。

剣「これは…?」

何故、欠片が光っているのか?

その光が意味するものが何か?

幾つものの疑問が剣の脳裏に過ぎる。

次の刹那、欠片はより強い光を放ち、無数の光線が周囲に散らばった。

剣「くっ…!」

グリフォン「この光は…!?」

眩しいがあまり剣は片腕で目を塞いだ。

グリフォンは理解し難い危機を感じ、すぐにその場から離れた。


同時刻、ブラックはケルベロスに呑まれそうになっていた。

ブラック「クソッ…!」

ケルベロス「そろそろ楽になりな!悪魔!!」

苦しむブラックを他所にケルベロスは弄ぶかのようにして嘲笑っていた。

牙禅「助けに来たぞ!ブラック!」

レオ「って、なんだ!?あのデケェ三つ首犬!?」

そこに二人が駆けつけた。

まだ完治していないので牙禅は死にかけそうな程に青ざめた表情で肩で息をしていた。

対してレオはケルベロスを見て、愕然と唖然としていた。

ブラック「レオ、牙禅…!」

顔を向けて視認した事で二人の存在に気付く。

ケルベロス「なんだ、お仲間か?んじゃあ殺して食らってやる!」

ケルベロスが迷いなくレオ達に向かっていく。

次の刹那、空から降ってきた水色の光がケルベロスに直撃した。

ケルベロス「な!?これは…!!」

それを受けたケルベロスは瞬時に光に包まれ、断末魔をあげながら消滅した。

ブラック「ぐっ…!ひ、光?」

それによりブラックは落下するも、無事で済んだ。

レオ「あれ欠片の力か!?」

牙禅「恐らく…いや、間違いない」

二人はそれが何なのかを瞬時に理解した。

圧倒的で神々しい光を前に三人は立ち尽くすしかなかった。


また、別のところでは激龍の光によりダークアイが塵となって消滅していく様をランスは見届けていた。

ランス「これは…」

あまりの威力に、その神々しさにランスは開いた口が塞がらなかった。

ランス「これが、激龍…!宇宙の守護者にして希望の象徴…!」

それが激龍のものであると本能的に理解すると、感銘を受けた。

まるで誰も足を踏み入れた事の無い綺麗な光景をその身をもって知ったかのようだった


場面は戻り、グリフォンは路地裏に身を潜めていた。

グリフォン「あれが激龍…!私達の天敵にして、この宇宙全ての守護神…!」

欠片から激龍の光が放たれた事を理由に剣が激龍に選ばれたという事を知り、グリフォンは絶望していた。

そうしていると、光は止んだ。

剣「今、のは…?」

欠片が光ったのかわからず、剣は掌の上にある欠片を眺めるだけであった。

グリフォン「邪光 剣!貴様は此処で迅速に殺さねばならなくなった!」

グリフォンは今までに無い焦りを見せ、剣を殺しにかかるように接近して、刃を振るった。

そして振るわれたそれを剣は太刀で防いだ。

剣「何を言っているんだ?!」

冷静さを欠いたグリフォンの言動に理解が出来ていなかったので、困惑した様子で剣はその発言の真意を訊ねた。

「もういい、グリフォン」

その時、何処からか声が木霊した。

剣「なんだ?」

グリフォン「破壊者様!?」

声の主が誰なのか知らない剣とは対称的にグリフォンは怖気ながら愕然としていた。

暗雲から大きな目が顕となり、剣達へと目を遣る。

「すぐに退け、もうお前では勝てない相手だ」

何処か偉そうな喋り方で、そんな命令口調で破壊者と呼ばれる目はグリフォンに指示をした。

グリフォン「何を言いますか!?私ならばこんなヤツ、一秒もしないで殺せます!」

だが、グリフォンは破壊者の言う事を無視し、そのまま剣に攻撃を続けた。

身を守るように剣は手にする太刀で両刃を防ぐ。

すると、剣とグリフォンの間に黒いゲートが現れた。

黒影「ダルい事しないでよ、グリフォン」

そこから黒影が現れると、グリフォンに向けて手を伸ばした。

グリフォン「破壊者様!」

黒影に気が付くが、時すでに遅し。

彼の手はグリフォンの首を掴んでいた。

黒影「殺せる殺せないじゃないんだよ…」

苛立ちのあまり手に力を入れる。

それによりグリフォンは蛙が潰れたような声を出して、涎と涙を流した。

まるでこれから何が起こるかを既に理解しているみたいに

黒影「言う事聞かないし、面倒を起こすのなら、邪魔だからここで消すね」

その発言の直後、グリフォンの肉体は崩壊し、黒い塵となって浮上するように消滅した。

剣「なっ…!?」

破壊者と呼ばれる黒影の強さに剣は愕然とした。

苦戦していたグリフォンが一瞬にして死んだ、その事実はあまりにも受け入れ難いものであった。

他に仲間を平然と殺めた事に微かながらも怒りが湧いた。

それを他所に黒影は剣の方へと顔を向ける。

黒影「初めまして。僕は黒影、暗黒の破壊者…」

気だるそうな様子で自己紹介をする黒影。

そんな彼を前に剣は黒影が放っているオーラから空っぽのようで底無しの闇を感じ取った。

剣「…黒影、お前に抱く闇はなんだ?」

剣は睨みながら刃先を向けて、構える。

黒影「ん?こう言うのって目的とか訊かないの?」

剣の問いを聞いた黒影は不思議そうに首を傾げた。

だが、その表情は死人のように無表情であった。

剣「…お前らがしてきた事は全て、己の恨みの為に破壊をし、暗黒の創造主に献上するというものだろ?」

剣の言葉を聞いた黒影は呆れた感じで溜息を吐いた。

黒影「それが全てって、随分と情けないね…」

すると、懐から携帯ゲーム機を取り出し、開いた画面を見つめた。

剣「違うのか?」

疑問に思った剣は黒影に訊ねた。

黒影「いいや、正解。だけどね、目先にあるものが全てと信じるのは危ういよって話。そればっかりが正しいとは限らないからさ」

黒影は至近距離でゲーム機のボタンなどを弄って遊びながら淡々と語る。

剣「…それはすまなかった」

剣は何処か違和感を覚えながらも黒影に謝罪の言葉をかけた。

黒影「いいよ…あ、さっきの質問についてだけど、特に無いよ」

液晶画面から剣へと目を向けると、先程の問いに黒影は意外な言葉で答えた。

剣「無い?どういう事だ?」

当然、剣は疑問に思った。

特に無い…その言葉にある意味が何なのか

黒影「さぁね、教えるつもりは無いよ」

すると、黒影のゲーム機からクリアしたであろう音楽が鳴り響いた。

黒影「まぁ、僕からして破壊するというのはただゲームをクリアするというのと似てるのかもね」

そして、黒影はゲーム機を懐に入れた。

剣「ゲームだと?」

結局語るのかと思いながらも敢えて口にはしなかった。

読めない言動に剣は警戒を更に深めて、続けて訊いた。

黒影「いいや、別に教えちゃっても…ゲームって買ったらクリアする為に進めたりと、まぁ…色々やる。そこには色んな理由や心情はあるけど、僕には無い。ただやる事をやるべき事をやってるだけ」

黒影は剣に背を向けると、手を前に翳して空間に黒いゲートを創り出した。

剣「待て!」

逃がさないと言わんばかりに剣は黒影に近づく。

だが、黒影が剣に待てと言わんばかりに手を出し、ハンドサインをした。

触れたら破壊される、つまり死ぬと読んだ剣は身体を止める。

黒影「追うのはやめようよ、また会えるからさ…じゃあね」

そして、剣に目を遣ったまま黒影はゲートに入ってこの場から姿を消した。

剣「また会える、か…」

先程から嫌な感覚が渦巻いていたが、いなくなった今では落ち着いてきた。

そんな心境を抱きながら剣は黒影がいたところを見ていた。

突然として腕時計から着信音が鳴り響いた。

剣「隊長?」

瞬時に剣は顔に腕時計を近付け、応答した。

未来「戦士全員に告げる。直ちに基地に帰還して」

そこから真剣な声色で指示が飛び、応じるようにすぐさま駆け出し、この場を去った。


一方、黒影は自身の住処に戻っていた。

黒影「まさか、激龍に選ばれる存在がいたとはね…」

そのまま玉座の上に乗って体育座りすると、懐から取り出したゲーム機を開いた。

その画面には勇者らしきキャラがおり、よく見ると主人公にしては禍々しい風貌であった。

画面に映る勇者を黒影はボタンを操作して勇者を動かした。

黒影「創造主からしたら面倒だから消すべきだろうけど、あのお方の望みを叶えるとでもしておくかな」

画面が移り変わり、勇者と暗黒四天王に似た仲間達の前にはラスボスであろう神様がいた。

神様は水色の龍を模したを鎧を纏った人の姿をしていた。

黒影「さて、ラストゲームでもしよう」

そして、黒影はその遊び始めた。

自身の手で神を殺めようとする為に

次回 第弐拾話 「暗黒四天王」

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