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第拾捌話 「土神様之世界と映しの少年兵」

この物語はフィクションです。

実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

暗雲が立ち籠む昔の和風のような街並みにて、楽しそうな様子で鼻歌を歌う少年がいた。

灰色の髪に赤紫色の瞳を持ち、機械のような鋼色の肌と右前腕にある武器のような装置が特徴で小豆色のシャツの上にフード付きの黒のコートを羽織っていた。

明らかに場違いな風貌の少年は路地裏に入ると、その奥にある井戸へと辿り着いた。

少年「ここにいるかな?」

そして、気楽そうな様子で井戸の中を覗いた。

次の刹那、井戸の中から二つの影が這い上がった。

「おっと、どーやら本当みたいだね♪」

少年は笑みを浮かべながら後ろに反ると、そのまま三歩下がった。

そして、その影が少年の前に着地するようにして姿を現した。

「誰だ?テメェは」

そう訊ねる者は狐のような身体に蜘蛛のような模様と烏の翼が特徴の異形な容姿をしていた。

少年「申し遅れたね、僕はコピー。暗黒四天王の一人だよ」

名を問われたコピーは軽くお辞儀をしながら自己紹介をした。

コピー「で、そちらの事はなんて呼べばいい?」

「僕は鈷虐狼(コギャクロウ)、この方は貪暴(ドンボウ)と言います」

逆にコピーが名を訊ねると、二本の尾を持った二足歩行の狼 鈷虐狼がそれに答えた。

貪暴「なァ?コピー。金か酒、女はあんのか?」

奇怪な狐 貪暴はコピーに近付き、顔を覗くように睨んだ。

コピー「勿論♪君達の事は既に調べてあるからね♪」

コピーは態度を変えずに懐からありったけの硬貨が入った袋を出し、貪暴に渡した。

すると、貪暴は手にした袋を開けてその中を覗いた。

貪暴「金貨が大量だなァ…良いぜ、なんでも聞いてやる」

袋を片手に貪暴はその場であぐらをかいた。

コピー(貪暴、名の通り貪欲で暴力的な妖怪。金か酒か女を出せば望みを一つ叶えてくれるってあったけど、本当みたいだね)

そこでコピーは暗黒玉を取り出し、それを貪暴の身体に埋め込んだ。

貪暴「何を…!?」

コピー「僕の望みはただ一つ、君が本能で欲望のままに生きる事」

唐突な出来事故に愕然と唖然とした様子で貪暴は闇に呑まれて苦しんでいた。

それに対してコピーは不気味に微笑んでいた。

鈷虐狼「貪暴!」

当然、仲間にして相棒である鈷虐狼はなんとかしようと貪暴に近付くが、貪暴に纏わりつく闇に侵食された。

鈷虐狼「あぁ!?ああああああああぁぁぁ!!」

それにより鈷虐狼も闇に飲まれていく。

コピー「一石二鳥だね♪さて、破壊者様の為にも、この世界に住まうヤツらを滅ぼそう!」

楽しそうな様子で語るコピーを他所に二人は上空に向けて闇を放ったまま、その身が黒く染まった。


時は遡り、フレアとアクアは別世界に足を踏み入れていた。

青い亀裂から現れた数多の粒子が結合するようにして身体を構築していった。

アクア「ついたみたいだな、別世界に」

フレア「これだけでよくわかったな、おい」

二人は幅広い川を挟んだ砂利の道におり、その上にある橋のせいで陽を遮られていた。

アクアはその橋脚を見て判断した。

アクア「こういう材質の橋はあれど、この形状は見た事がない」

フレア「そーかよ、兎にも角にも欠片回収すんぞ」

説明するアクアをフレアは適当に一蹴した後、二人は橋から出て、砂利道から抜けようと草が生い茂った斜面を登った。

その先に広がっていたのは正に和の街であった。

瓦の屋根をし、木で造られた建物がある街並みで、地面は砂で覆われ、暖簾や大きな木の板などに店であろう名前が記されていた。

アクア「未だに信じられんが、驚きが隠せんな」

フレア「無理ねぇよ、こればっかりはさ…ま、それはそうとこんな広くてわかりづらそうなところどーやって欠片を探しゃいいんだ?」

二人はその中を歩き回り、フレアは辺りを見渡していた。

アクア「どうも何も一人ずつ一軒ずつ一店ずつと訊ねながらやるしかない」

対称的にアクアは正面を向きながら答えると、近くにいる人に話しかけた。

フレア「…マジで言ってんのかよ」

愕然とし呆然とした様子でフレアは小声で本心を吐露した。

しかし、このまま立ち止まっていてもどうしようもないと思い、フレアも行動に移す事にした。

二人は色んなところに訊ねてみるが、誰も彼も皆、知らないや見た事ないとしか返って来ず、何の成果も得られなかった。

アクア「困ったな…」

訊ねていく中でアクアは茶屋に寄り、座って団子とお茶を堪能しながらフレアと通信していた。

一方でフレアは辺りを見渡しながら走っていた。

フレア「そもそも無理があんだろ、もっと良い方法なかったのかよ」

アクア「仕方がないだろ、欠片についての情報があまりにも無さすぎる」

団子を一つ食らい、それをお茶で流した。

フレア「そもそもこれ自体が無茶だしな、んで兄貴はなんで飲み食いしてんだよ」

後者の事でフレアは地味にキレた。

自身は懸命に探しているのに 、なんでアクアだけは寛いでいるのかと

それを指摘されたアクアはむせて咳き込むが、お茶を飲んだ事で助かった。

アクア「違う!これは疲れたのと!サービスしてくれたからだ!」

恥ずかしくなりながらも言い訳をした。

フレア「あっそ、切るからな…」

本当なら近くに行ってぶん殴りたいところをフレアは堪えて、接続を切ろうとしたその時だった。

「うおー!やっぱスゲェよ!和尚さん!」

フレアの目の前から楽しそうに盛り上がっている子供の声が聞こえた。

フレア「なんだ?」

アクア「おい、どうした?フレ…」

何かと気になりながらアクアとの通信を切ったフレアはそこへ向かった。

「何も、お気になさらずに」

風格のある落ち着いた声が続けて聞こえた後、フレアはその光景を目の当たりにした。

そこには男女問わず周りの子供達に囲われた大男がいた。

男は長い後ろ髪を持った茶髪に黄色の眼をしており、筋骨隆々の巨体に白の着物に黒の袴、そして黒の羽織を着込んでいた。首には大きな数珠、背中には岩をも一刀両断するだろう身の丈程の斧を携えていた。

フレア「デッケェな、おい」

大男の風貌を見て、フレアは愕然と唖然としていた。

大男「おっと、そろそろ戻らなければなりません…では、皆様またお会いしましょう」

大男は礼儀正しく子供達に頭を下げた後、ゆっくりと一歩、また一歩と進み始めた。

フレア「…追ってみるか」

あの大男は他の人とは何か違う、そう思うとフレアはすぐに大男の後を追った。

しばらくすると、大男は山の中へと消えていくように入っていった。

フレアも追う形でその中を進んでいき、もう少し進むと寺が見えてきた。

フレア(アイツ、住職か?さっき和尚さんとか言われてたし)

先程の事を振り返りながらフレアはそう推測した。

大男が寺の中に入ると、すかさずフレアも近付き、扉の近くに隠れた。

そのまま寺の中を覗くと、大男は正座をしながら祠のようなモノにお祈りをしていた。

フレア(何かを祀っている?)

不思議に思うフレアは沈黙したままその様子を見つめていた。

大男「先程からそこにいるのはわかっていますよ、外の世界より来られた御方」

それを聞いてフレアは愕然とした。

気配を察知するのはまだしも外の世界から来たという事を見抜かれるのは想定外であった。

フレア「…なんで、わかるんだよ?」

そう訊ねながらフレアは大男に姿を現し、敵意は無いと両手を上げた。

それを見て、大男は可笑しいと思ったのか微笑んだ。

大男「御安心なさい、私は敵ではございませんし、殺しも致しません。それに外の世界から来たのは服装からして一目瞭然でしたよ」

大男は起き上がり、フレアに歩み寄る。

フレア「うおっ」

大男を見上げて、フレアはあまりの大きさと迫力により目を見開いた。わかっていても驚くものは驚く。

大男「御上がりなさい、お茶でよろしいかな?」

大男は再度寺の中に入り、おもてなしの準備を始めた。

彼の言葉を信じたフレアは寺に上がり、その場で床に座った。

大男はお茶とお餅を差し出し、フレアと向かい合うように居座った。

大男「申し遅れました。私は地國(ツチクニ) 大和(ヤマト)、土神様の住職です」

大男 大和は自身について名乗った。

フレア「だろうな、服装はまだしも寺でお祈りしてりゃわかる。一目瞭然だ」

そう思いながらフレアはお出しされたお餅を一口食べる。

フレア「俺様はフレア…つか、なんで俺様が別世界から来た人だってわかんだよ?」

食しながらフレアも名乗った後、疑問に思っていた事を大和に訊いた。

その態度を見て、大和はあまり快く思っていなかった。

大和「食べながらだなんてお行儀が悪いですよ…土神様によるものです」

フレア「土神様?」

大和の知らない言葉を聞いたフレアは首を傾げた。

大和「土神様はこの世界に宿りし神様であり、我々人が住む現界と妖怪が住まう異界、この二つを分断させ、管理する守護神でございます」

大和が丁寧に説明する。

フレア「どういう仕組みかはわかんねぇけど、神様パワーで感知的なのをしたって事か」

残った餅を口に入れた後、お茶で流した。

大和「先程、服装で判断したとは言いましたが、それよりも土神様によって予見できました」

すると、祠の方へと顔を向けた。

自然とフレアもそれに目を遣る。

祠には紙が貼ってあり、墨汁を使って筆で書いたであろう円の中心に土という印が刻まれていた。

フレア「なぁ?他の世界にも神様っていたりすんのかな?」

ふと、フレアは大和にそんな思った事を訊ねた。

大和「あまりにも壮大過ぎるので私にはわかりかねますが、きっといると思いますよ。神様は我々を見守っておりますから」

大和はフレアの方へと顔を向き直す。

すると、彼の目が大きく変わった。

まるで何か嫌な予感或いは気配を察知したかのように

フレア「なぁ、もしかして来てんのか?」

それはフレアも察知しており、立ち上がった。

大和「今日の天気はあまり良くなさそうですね」

そう言いながら大和は背中に担いだ大きな斧を片手に取り出した。


その頃、アクアは街中を全力で走っていた。

アクア(言ってる最中に切られたが、あの山に入ってから行方が消えた。無事でいてくれ!フレア!)

フレア含め戦士達は座標、位置を特定する為に腕時計にGPSが付いていた。

通信を切られたアクアは何事かと腕時計のモニターを展開すると、山に向かっていてそこで途切れた。単純に電波の届かない場所なのが原因であった。

それを見たアクアは何かに襲われたと誤認し、急いで向かっていたのだ。

その時、青い空が暗雲の如く黒い闇に覆われた。

アクア「ヤツらが来たか!なんとも最悪なタイミングだ!」

走る足を急に止めて、空を見上げるアクア。

空からは黒い塵が降ってきて、それが固まってダークアイが生み出される。

それは一体だけでなく、二体、三体と増えていく。

完全に身体を構築した直後、ダークアイは周囲にいた人達に襲いかかる。

「うわっ!」

一人は赤く長い爪で切り裂かれ、血飛沫が舞う。

「いやああああああ!!」

「よ、妖怪だ!!」

「化け物だ!殺されるぞ!!」

それが始まりの合図かのように悲鳴が鳴り響き、逃げ惑う。

アクア「早く止めなければ!」

右手に水の刃を発生させると、瞬時にダークアイを斬る。

斬られたダークアイは無言のまま白目改め赤目をひん剥きながら塵となって消滅した。

同族を殺した事でアクアが敵だと察知した複数のダークアイは彼の方へと顔を向けた直後、接近して来る。

アクア「来るだろうな!!」

右手を振るうと刃は収まり、銃砲へと形を変えた。

それだけにとどまらず、もう片方の手にも銃砲が発現した。

両脚にも水を纏い、甲冑のような形を成した。

アクア「とっとと貴様らを倒し、欠片を手にしてから先に行かせてもらうぞ!」

構えるとそれに呼応するように両脚から水が噴射し、スラスターの如く加速した。

アクア「ハァッ!」

両手を前に掲げ、ダークアイの群れに砲口向けると、そこから水の球が放たれた。

水の球に直撃した数体のダークアイは後ろに倒れた直後、塵となって消滅する。

それは一発で終わる事無く、交互に連射されていき、続けてダークアイの大群を2、3割を討滅した。

しかし、それを補うかのように増援が現れる。

アクア「敵が多いな、ならば…!」

両手を広げ、水を噴射する。

それにとどまらず足からも水を噴射させ、横に旋回し始めた。

ビームの如く放たれるそれはダークアイを蹴散らして、一掃していく。

アクア(ヤツらは空から来る…という事はそこに何かいるのか?)

そう思いながら空を見上げると、黒い霧が降って来た。

それは空中で一箇所に集まり、数体のダークアイの姿が顕となる。

だが、そこでアクアが噴射した水に直撃した事により消滅する。

アクア「そういう事か…ならば!」

謎が解けると、両足の裏から水を噴射させて暗雲に向かって飛行する。

そのまま片方の銃砲を正面に向け、巨大な水の球を生成するように溜め始める。

そんなアクアに黒い霧で構築した触手が現れ、伸びてくる。

アクア「そう簡単にはやらせんか…!」

それらを視認したアクアは身体を逸らすようにして全ての攻撃を回避していった。

徐々に近付き、ある程度の距離になるとアクアを、この星を見つめる大きな赤い目が暗雲から現れた。

アクア(あれが本体か?!)

完全に溜まった水の球は巨大になっており、アクアは赤い目に向けて放った。

それは勢いよく直進し、暗雲の核であろう目に迫ってきた。

水の球が当たるとアクアが確信したその時だった。

突如現れた等身大の盾によりそれは防がれた。

アクア「…人を創れるのか」

驚く事はなく、何が起こったのかを瞬時に理解したアクアは言葉を零した。

その盾の裏にはニット帽を目元まで隠す程に深々と被ったロングコートの男がいた。

コピー「正解♪ちなみに君の敵は他にもいるよ」

アクア「なんだと!?」

知らない声に驚くのも束の間、アクアの横からコバルトで形成された拳が襲ってきた。

それに気付いたアクアは瞬時に水と化して、それを回避した。

アクア(コバルトか!)

それがなんなのかをアクアは瞬時に察知した。

目線を先にやると赤い目に黒い肉体を持った二足歩行の狼がそこにいた。

コピー「そいつはコボルト♪ついさっき僕の仲間になった者だよ♪」

コピーは狼 コボルトについて説明した直後、右腕の装置でもう一人生成した。

そいつは鎧を身に纏った姿に直剣を手にした騎士であった。

コピー「ジャスティスとザ・タワー、コボルトと共に青髪の子を殺しといて♪」

造られた二人 プレイヤーはその指示に応じると、すぐさまアクアに接近した。

アクア「こいつはマズイな…!」

すぐに感じ取ったアクアは足裏から水を噴射させながらこの場から離れるよう後退する。

すかさず三人はアクアの後を追った。


その頃、山中の寺ではフレアと大和に近付く黒い影が目の前までに現れていた。

「金と酒、女はいるか?」

その影は大きく、牛の角と身の丈程の斧を携えた暗黒の怪物が二人に訊ねた。

フレア「野郎!やっぱ来やがったか!」

そいつを見るやいなやフレアは臆する事無く、全身から高熱を発しながら構える。

だが、大和がフレアの前に手を出すようにして抑えた。

フレア「なんだ?!止めても無駄だぞ?!」

何かと思いながらもそのまま正面を向くフレア。

大和「そこのお方、争い事は此処から離れた場所でやりましょう。祟られますよ?」

だが、大和は落ち着いた様子で目の前の怪物にそう言った。

それを聞いたフレアは大和の意図を読み取った。

怪物「知った事か!我輩らには魔王がいる!神なんぞ屁でもない!」

怪物はそれを一蹴し、土神様を冒涜した。

フレア「魔王?やっぱテメェらにもいんのか!親玉が!」

大声で訊ねるフレア。

怪物「如何にも!我輩はミノタウロス!金、酒、女の何れかを渡してもらおうか!」

怪物 ミノタウロスがそう言いながら急接近し、斧を振りかざした。

フレア「なっ!?巨体に見合わずに、速ぇッ!!」

避ける隙すら無く動けなかったのでマズイと思った次の刹那、大和の斧がその攻撃を防いだ。

衝突した直後、周囲を轟かせ、振動させる程の金属音が鳴り響いた。

フレア「うおっ!?」

大和「なんとも罰当たりな事を…貴方のような悪鬼は、許せません!」

驚くフレアの横で大和はミノタウロスを物凄い形相で睨んでいた。

ミノタウロス「やるなァ!流石は神に仕えし選ばれた者!」

そのままミノタウロスは押し通そうとする。

大和「ハァッ!」

大和が喝を飛ばしながら押し飛ばすと、ミノタウロスは木々をなぎ倒すようにして後ろへと吹き飛んでいった。

フレア「なっ!?」

その強さを見たフレアは愕然とし、唖然としていた。

大和「土神様、どうか私に御加護を…」

祈りを唱えた大和は斧を構え、目に追えない速さでミノタウロスに急接近した。

ミノタウロス「流石だ!こいつは!」

斧の刃を大地に刻みながら吹き飛ぶ身体を止めた。

そうして面を上げると、斧を構えながら一直線に突っ込む大和がいた。

地國「悪逆非道の限りを尽くす魑魅魍魎よ!土に還りなさい!童冥土!」

すると、大和は手にした斧の名を叫びながらミノタウロスに向けてそれを振り下ろした。

ミノタウロスは鼻で笑うと、童冥土を斧で止めた。

ミノタウロス「土に還るだと?ならば、つまらん貴様は暗雲の中で散れ!」

斧を持たない方の拳を大和の心臓部に突き出す。

それは直撃し、確実にトドメを刺したとミノタウロスは確信していた。

大和「見た目に反して、意外と小癪な事をするのですね!」

しかし、大和は全く効かないと言わんばかりにミノタウロスを睨むように見ていた。

ミノタウロス「なんだと!!」

それを知るや否や愕然とした。

その時、大和が手に力を入れて、童冥土を勢いよく振り下ろした。

すると、ミノタウロスが持ち、童冥土を防いでいた斧は見事に砕け散った。

ミノタウロス「斧が!」

大和「これが土神様の御加護です…!」

そのまま童冥土の刃を地に刻むと、掌をミノタウロスの腹部に当てた。

大和「ハァッ!」

そのまま発勁を食らわせ、もろに受けたミノタウロスは白目改め赤目を向きながら吹き飛んでいく。

フレア「なんだアイツ!?スゲェ…!」

追い付いて来たフレアは目の前で起こった出来事を前に開いた口が塞がらなかった。

大和「その口から零れる欲望、もしや貴方は貪暴でございますか?」

地に突き刺さった童冥土を持ち上げながらミノタウロスである貪暴を睨んだ。

ミノタウロス「貪、暴?誰の事だ?俺は酒と金、女を欲する!故に貴様をこの手で殺める…!」

倒れた肉体を起こしながらその問いに答えた。

大和「何があったのかはわかりませんが、闇に穢れ、凶暴になっているのは確か…」

大和は童冥土を構えながら何があったのかを推測する。

フレア「暗黒世界の仕業だよ、大和さん」

大和の隣に立ち、戦闘態勢に入った。

大和「暗黒世界…生かしてはおけませんね」

それを知ったフレアは暗黒世界に対して、敵意を募らせた。それは大和も同じ気持ちであった。

その時だった。

コピー「お、面白そうな人がいるね♪」

突如としてミノタウロスの近くにコピーが現れた。

フレア「なんだこいつ!?」

大和「…どなたですか?!」

二人はミノタウロスからコピーへと対象を切り替え、警戒した。

幼く若々しい見た目に反して只者ではない気配を放っている事にフレアは驚いているのに対して大和は落ち着いていた。

コピー「僕は暗黒四天王の一人のコピーだよ♪」

二人を見て、微笑みながらそう名乗った。

ミノタウロス「こ、コピー様…!」

コピー「って、大丈夫ー?すっごいボロボロだけど」

ミノタウロスの状態に気付いたコピーは駆け寄った後、しゃがみながら訊ねた。

ミノタウロス「問題は無いですが…酒と金、女が欲しい!!」

その安否にミノタウロスは答えた。

コピー「あはは、大丈夫そうだね♪」

そう安心した直後、ミノタウロスの体内に黒い玉を埋め込んだ。

ミノタウロス「な、何を!?」

突然の事に驚いた後、大きく鳴り響いた鼓動と共に苦しみ悶え始め、すぐにその場でのたうち回った。

コピー「君の闇は貪欲、それをもっと解放させてみて♪」

ミノタウロスの耳元でそう囁いた。

フレア「なんなんだよ!その玉は!?」

大和「それに闇とはなんでしょうか?」

二人の問いを聞いたコピーは立ち上がりながら振り向いた。

コピー「そうだね♪折角だし教えてあげるよ♪」

すると、コピーは先程の黒い玉を出した。

コピー「これは暗黒玉と言ってね♪人やモノに宿る闇…つまりは最も強い負の感情を、そのエネルギーを解放させ、増大させる代物なんだー♪例えばこの人?だったら金や酒、女に貪欲で、手にする為ならどんな手段も厭わない。それで暗黒玉に触れたらより凶暴になり、殺戮とか破壊とかやるかもね♪」

説明を終えると、ミノタウロスの肉体は蠢くように大きく変化し、更に闇を纏った。

それは浮遊した巨大な牛の頭と胴体、幾つものの紐のような触手が斧を持ち、ぶら下げているといった風貌へと成り果てた。

コピー「さぁ、我欲のままに暴れていきなよ♪ミノタウロス♪」

そう微笑むコピー。

直後、ミノタウロスは汽笛のような咆哮をあげると、巨体が直進し始めた。


アクア「ハァッ!」

騎士が直剣を振るうに対してアクアは水と化してすり抜けた後、右手で生成した水の刃を振るった。

それは致命傷とはならずとも、鎧に傷跡を残した。

その隙にもう一人のプレイヤーがアクアに向けて等身大の盾を振り下ろした。

アクア「くっ…!」

まずいと思い、身体を水にさせて瞬時に距離をとる。

再構築した瞬間、コボルトがコバルト化した拳を突き出す。

アクア「やられるものか!」

それに対してアクアは迫り来る拳を両手で受け流した。

アクア「フッ!」

瞬時に流れるようにして腕を掴むと、そのまま投げ飛ばした。

コボルトは後ろに吹き飛ぶも、身体を旋回させて見事に着地した直後、バク転しながら距離をとった。

アクアは再度、構えを取る。

気が付けば周囲には二人のプレイヤーとコボルトがいた。

アクア(一対複数だと、厄介だ)

正面にいるコボルトへと目を遣る。

アクア(まずコボルト、アイツは特にスピードに優れている。両腕をコバルト化しての攻撃…)

左斜め前に目を遣ると、直剣を手にし、先程傷を負わせた騎士がいた。

アクア(次にアイツは攻撃に特化、剣術は邪光 剣に劣るが、負けていない。更にコボルトとの連携でかなりやりにくい…)

それとは反対の方へと向けると、巨大な盾を持ったプレイヤーがいた。

アクア(そして、あっちは防御に特化、他を攻撃しても主体的にヤツが動くから厄介だが、巨大な盾を使うという事は恐らく…!)

身体を巨大な盾を持つプレイヤーに向き、走り出す。

狙われているプレイヤーは巨大な盾を構え、その他二人はアクアに接近する。

アクア「想定している!」

振り返りながら手を振るうと、そこから水が放たれた。

その水はアクアに似た人の姿へと変わる。

アクア「水人形(ミーアドール)!ヤツらを足止めしてくれ!」

二つの水分身はコボルトと騎士のプレイヤーの身体にまとわりつくようにして拘束する。

二人の身動きが取れないうちにアクアは先に進む。

プレイヤーは巨大な盾を構えたままでいた。

アクア「やはりお前は…!」

何か確信を得たアクアは身体を水飛沫のように分離すると、プレイヤーの背後に現れた。

プレイヤーがアクアの存在に気付いた直後、水の刃が心の臓を突き刺した。

アクア「どれだけ盾がデカくとも、それが強かろうと当の本人は大した事では無いと見た!」

そして、そのまま振るって斬り裂いた。

致命傷を負ったが故に消えそうになるプレイヤーだが、アクアが掴んだ。

アクア「生憎だが、使わせてもらうぞ」

そしてプレイヤーを盾にするようにしてアクアが突き進んだ。

その先には騎士のプレイヤーがいた。

アクア(コボルトではあの俊敏性から避けられる可能性が高いし、他と比べて手強い。だが、ヤツならばいける)

そして、両脚から水が噴射される。

それにより加速する。

アクア(ならべく数を減らす…!)

騎士のプレイヤーは狼狽えながらも直剣を構える。

だがなんと、アクアは盾のプレイヤーを押すようにして手放した。

巨大な盾は騎士のプレイヤーを押し潰した。

そしてアクアは右手に発現した水で構築された銃砲を前に構えると、水の球を撃った。

それが直撃し、水飛沫を上げるように爆発する。

水蒸気が晴れると、二人のプレイヤーは消滅していた。

視認したアクアはコボルトの方へと身体を向けた。

アクア「残るはお前だけだ」

そして、銃砲を水の刃に形を変えて、それを向ける。

コボルトは静かにアクアを睨みながら腰を低くして構えた。

辺りが静寂に包まれる中、二人は見つめ合いながら公転するようにゆっくりと回る。

そして互いに地を踏んだ次の刹那、接近してアクアは水の刃を、コボルトはコバルト化したその拳を振るった。

結果として、水の刃が拳を切断した。

それを見て沈黙ながらも愕然するコボルトは瞬時に後ろに退いた。

アクア「教官のおかげで能力の精密動作がより洗練された。おかげで斬れ味も細かい動きもより可能となった」

水の刃を解き、右手を動かしながら見つめていた。

コボルトはアクアを睨みつつ、その内心で焦りを見せた。

その時、隣に暗黒玉が浮遊しながら迫るようにして現れた。

アクア「あれは…マズイ!」

見覚えのあるアクアはマズいと水の刃を生成させ、急接近する。

しかし、それよりも早くコボルトは片手で暗黒玉に触れる。

すると、闇はコボルトの全身を包んだ。

アクア「くそっ!遅かったか!」

マズいと判断したアクアは両手から水を噴射させながら後退する。

コボルトも姿形を変化させていた。

その見た目は人より大きな狼であり、顔には複数の赤い眼、そして鋭い牙を兼ね備えた大きな口を持っていた。

四足の指先には鋭い爪がある上に大きくなっていた。

コボルト「殺し、テェナァァァ…!!殺しテェぜェェェ!!」

巨大なコボルトは突如として人語を発し、狂ったかのようにしてケタケタと笑う。

アクア「なんだ…!?」

その豹変っぷりに驚愕するアクア。

しかし、彼はそれだけでなくコボルトに宿っていた闇、それ故の尋常ではない程の殺気を感じ取っていた。

コボルト「アァ?そういや、テメェはさっき俺をめちゃくちゃに傷付けてたよなァ?まさか俺が嬲られるとはなァ…」

コボルトは後ろ足で頭を搔く。

コボルト「気に入らねぇなぁ、気に入らねぇなァ…!やるならまだしもやられる側に回っちまうとか癪だよなァ!!」

すると、先程搔いたところから灰色のような粉末が噴き出した。

アクア(粉?ヤツの能力からして、まさか!)

何かを察したアクアは片腕で口元を塞ぎ、目を閉じた。

粉末の正体はコバルトである。

それは気道を軽度に刺激し、吸入すると咳や息切れ、咽頭痛、喘鳴、経口摂取すると腹痛や嘔吐、眼に入ると発赤を生じるというもの。

コボルト「流石は人間!頭が良いなァ!!」

その隙をついてコボルトはアクアに突進して来る。

アクア(マズイ…!)

掌をすかさずコボルトに向けると、そこから水を噴射する。

複数ある目を狙っていると察知したコボルトは瞬時に瞑るようにして一直線に来る水を防いだ。

アクア「フッ!」

その隙にアクアはコボルトの頭に蹴りを入れ、吹き飛ばした。

コボルト「んな調子で良いのかァ?糞餓鬼ィ!」

体制を立て直したコボルトは不気味に笑う。

どういう事だと思うアクアだが、目に違和感を感じたので瞬時に瞑る。

そして、その目を開けると赤く充血していた。

コボルト「俺のコバルトでやられたなァ!」

コバルトが目に入った事により、発赤してしまったのだ。

更にそれだけにとどまらず、アクアの身体がコバルトで固められ始めた。

アクア「くっ…!」

どうやらコボルトが放たれているコバルトは対象を像として固める事もできるのだとアクアは瞬時に理解した。

このままではコバルトの像となってしまうのも時間の問題だ。

コボルト「どうするさ?待ってやんないけどなァッ!」

四足で地を駆けながらアクアに接近すると、飛びかかるようにして鋭い爪を振り下ろした。

回避しようと急いで後退するもコバルト化した腕を切り裂かれてしまった。

アクア「ぐっ…!」(このままではマズイ…!)

そう判断した直後、アクアは走り出して、コボルトから距離を取ろうと逃げ出した。

コボルト「逃がさねぇよ!ジワジワと殺ってやる!!」

すかさずコボルトは追いかけた。

アクアは小道を駆使して、走り出す。

コボルトは躊躇無く、建物を壊しながら突進する。

アクア(今だ…!)

すると、アクアは後ろに回し蹴りを繰り出し、水の斬撃を飛ばした。

コボルト「そんなものが効くと思うかァ?!」

だが、コボルトは跳んで回避した。

アクア「想定済みだ!」

脚を振り回しながら水の斬撃を複数飛ばし続けた。

コボルト「何が想定済みだ?!馬鹿じゃねぇの!!」

水の斬撃に当たらず、そのまま突進する。

そして、コボルトは片手で押さえつけるようにしてアクアを捕らえた。

アクア「ぐっ…!」

あまりの重量に押し潰されるあまり、顔が苦痛で歪む。

コボルト「良いなァ…その顔、愉悦に浸れる!!」

そのまま押す力を入れる。すると、アクアの身体が軋むように鳴り始める。

アクア「ぐあああああっ!!」

片腕で口を抑えながら叫ぶ。

肋が折れようと音が鳴り、内臓が圧迫されそうになる。

もう片方の腕で攻撃をしようにも踏まれている足に巻き込まれているので不可能であった。

コボルト「見せてみろ!てか、もう片方の腕どかせば反撃できるよな?けどそれじゃ吸っちまうか!」

アクアを見下ろしながら、嘲り笑う。

コボルト「けどよ…どれが一番リスクが少ないかって考えたら、前者だと思うなァ…!」

再度、力を入れるとアクアの肋が折れた。

アクア「あああああああああっ!!」

痛みのあまりまた叫ぶと、抑えていた腕を口から離してしまった。

コボルト(吸った!良いぜェ!このままジワジワとなぶり殺して…)

そう確信し、次の行動に移そうとした瞬間、アクアは歯を見せるような笑みを浮かべた。

アクア「お前のような怪物でも、夢中故に油断するのだな!」

離した腕をコボルトに向けると、水の刃でコボルトの頭を突き刺した。

コボルト「なんだと…!?何故、吸っても害が及ばない!?コバルト化にならない!?」

突然の出来事にコボルトは困惑していた。

アクア「先程の水は空気中に漂うコバルトを吸い取り、清浄する為のモノ!それに暗黒世界の怪物は再生能力に優れていると察した!その証拠としてお前の頭から出ていたコバルトの飛沫は既に収まっている!」

そして、片腕を薙ぎ払うかの如く勢いよく振るい、コボルトを斬り裂いた。

コボルト「や、野郎…!頭が良いんだなぁ!この餓鬼!!」

目がひん剥くように気絶するが、再度片腕でアクアを圧死させようと押し潰す。

だが、それは見事に切り刻まれ、崩れ去った。

コボルト「んだとォ!?」

それにより支えれなくなったコボルトは前から横になるようにして倒れる。

その頭部をアクアは蹴り上げ、ヤツを飛ばした。

コボルトがアクアを視認すると、彼の周りで旋回する水の刃が幾つもあった。

そう、コボルトの片腕を粉々に切り刻んだのは水の刃だったのだ。

アクア「頭を殺ったとしても再生能力で無意味になるだろう…ならば!」

すると、アクアは両腕を掲げてクロスした後、胴体の後ろに行こうと引いた。

アクア「スプラッシュカッター!」

技名を叫ぶと共に両手を正面に突き出すと、旋回する水の刃が加速し、宙に舞うコボルトに接近した。

コボルト「そんなものが効くか!すぐにコバルトをばらまいてお前を!」

体勢を立て直すと同時、泡沫が現れ、コボルトを包んだ。

コボルト「なんだ!?こいつは!!」

アクア「バブルフロートだ!」

困惑するように驚くコボルトを他所にアクアは技名を口にして答えた。

そして、旋回する水の刃は泡沫の中に入り、コボルトを切り刻み始めた。

コボルト「畜生!お前ェ…!俺をハメやがった…な……」

怨恨を唱え、アクアを睨みながらコボルトは消滅した。

アクア「…漸く、倒せた……」

それを見届けた後、身体がふらつき始める。

押し潰された身体に発赤した目、更に先程コバルト化した箇所が刺激していた。

アクア「早く、行かなければ…待っていろ、フレア……」

苦しいながらもフレア達のところへ向かおうと歩を進める。

その時、アクアの身体を何かが貫いた。

アクア「あ…?」

何かと思い、ふと下へと目を遣る。

そこには赤紫色に光る刃があり、アクアの心臓部から、背後から刺されたのだと理解した。

「凄いボロボロだけど、まぁ安心して眠りなよ♪」

何処か楽しそうな声を聞いて、アクアはコピーであると理解した。

アクア「ゴフッ…」

そのまま吐血し、アクアは前に倒れた。

コピー「やっぱ、人の死って呆気ないね…最後の言葉さえ言えないから」

そうして光る刃で何かを断った。


その頃、フレアと大和は巨大となるように進化したミノタウロスと交戦していた。

斧持つ触手がありえない動きで旋回しながら建物や地面を削るように破壊し、人々を惨殺した。

その中で大和は童冥土を振るい、出来る限りに人々を護っていた。

その頃、フレアは斧による攻撃を回避しつつ、触手の上を乗りながら胴体の方へと駆けつけていた。

フレア(被害が尋常じゃねぇ!早く止めてねぇと!)

ある程度の距離にまで近付くと、フレアら跳んでミノタウロスの背中に乗った。

それは大きくて長い、まるで戦艦の甲板のようであった。

フレア「ヒート…!」

膝をつきながら下に顔を向けると片方の拳を引き上げる。

フレア「フィストショック!」

そして、高熱を帯びた拳を勢いよく突き出し、ミノタウロスを叩き込んだ。

すると、ヤツは少しずつ降下していく。

フレア「うおっ!?」

かなりの振動故にふらつくも、なんとか体勢を立て直した。

フレア「どうやら見た目に反して、案外効いてるみたいだな…!」

そう思ったのも束の間、ミノタウロスの巨体から顔は無いが、二本角を生やした頭に等身大程の斧を持った人型の化け物が現れた。

フレア「なんだ?ミニタウロスか?」

全身から高熱を発し、周囲を見渡すように警戒しながらフレアは構える。

そして、フレアが呼称したミニタウロス全員が一気にフレアに向かって襲いかかる。

フレア「ヒートシャット!」

高熱を纏った手を地面にやり、発勁を喰らわせる。

すると、周囲に熱発が発生し、ミノタウロスを焼き払った。

それに続くようにミニタウロスのような増援が現れた。

フレアの目の前には巨大な二本角を持った真っ黒な闘牛がいた。

フレア「なんでもありかよ、暗黒世界」(まぁ、普通の生態してますだなんて思ってねぇけどな)

闘牛に対して、フレアは警戒して戦闘態勢に入った。

黒い闘牛は前掻きをした後、そのまま一直線に突進し始めた。

フレア「オラァッ!来いよッ!!」

闘牛だけを一点に見つめながらフレアは腰を低くして、捕らえてやると言わんばかりに両腕を広げた。

そして、闘牛の角をフレアは捕らえた。

だが、当然止まる訳無く、そのまま押されていく。

フレア「とんでもねぇ馬鹿力…!けどよ!!」

すると、足場を強く蹴り、闘牛の動きを止める。

そしてそのままフレアは闘牛を持ち上げながら空高く投げた。

フレア「こんなんで俺様は負けねぇッ!」

そして、フレアも高く跳んで闘牛の上に移動する。

フレア「ヒートスタンプ!!」

高熱を放つ片足を突き出して、そのまま闘牛を踏むようにして蹴った。

そのまま降下していき、浮遊する巨大なミノタウロスを貫いた。

フレアはそのまま綺麗に着地する。

フレア「どうだ?!」

立ち上がり、振り返った。

だが、フレアはそこで想定外な出来事に愕然し、目を見開いた。

倒したはずのミノタウロスは消滅する事無く、そのまま山の方へと向かって不時着していくではないか。

そして、その先には大和が祀っていた土神様の祠があったのを同時に思い出した。

フレア「なんで消えねぇんだよ!?どうなっていやがる!?」

フレアは急いでミノタウロスを追っかけた。

しかし、その速さはあまりにも差がありすぎた。

ただの人が飛行機を追っかける。一言でこの状況を表すとそんな感じだ。

大和「マズイ、このままでは…!」

当然、大和もその事に気が付いていた。

大地を強く蹴り、空高く跳ぶとあまりの速さにより大和の姿が消えた。

直後、ミノタウロスと土神様が眠る山の間に姿を現した。

大和「土神様、土神様や…どうか私に御加護を…貴方様とこの地を護る力を……」

念仏を唱えると、山から…正確には祀られている祠から土神様のものであろう黄金のオーラが大和に集束するようにして与えられる。

大和「心より、感謝致します…!」

土神様の御加護を受けながら大和は感謝すると、童冥土を後ろへと振りかざした。

すると、送られていたオーラが巨大な斧刃を形成した。

大和「鯰起(ナマズオコシ)!!」

童冥土を勢いよく振り下ろすと、それに応じるかのようにしてオーラで創った斧刃も動き、ミノタウロスを両断した。

ミノタウロスは真っ二つに分かれ、山の両端へと突っ込むように不時着した。祠が破壊される事は阻止できた。

オーラが途切れると、大和は童冥土を下ろして直立した。

その中で微かにだが、彼は肩で息をしていた。

次の瞬間、ミノタウロスの残骸が塵となって降りていくと、ダークアイの群れが形成された。

大和「なんと…!」

大和はその事に気が付くと、瞬時に祠の方へと移動して、童冥土を両手に構えた。

すぐに辿り着くと、大和の周囲にはダークアイの群れがいた。

大和「ここから先には行かせません…!現界と異界を結ばせる訳には…!」

大和が決意を言葉にすると、それを否定しようと言わんばかりにダークアイの群れが襲いかかる。

その時、フレアは山の方へと向かっていた。

フレア「あのデカイのは大和さんがなんとかしてくれたけど、それで終わるわけねぇよな。急がねぇと…!つか、兄貴は何やってんだ!」

頭の中で考えていた事、思っていた事を口にしつつも、急いで大和のところへと突き進んだ。

だがその時、何かを感じ取ったフレアは瞬時に回避した。

避けたモノである赤紫色のエネルギー弾は通り過ぎ、砂に覆われた道に穴を開けた。

コピー「あんなに煩く喋ってるのに、避けれるんだねぇー♪」

愉快そうな声で語りかけてくる。

それが誰なのかをフレアは理解した。

フレア「テメェ、何しに来た…」

フレアは振り返りながらコピーに要件を訊こうとした。

だが、それは衝撃的なモノを目にした事で言葉が止まった。

そこにいたのはコピーであり、その手にはアクアの生首を持っていた。

フレア「兄、貴…?」

見ればすぐにわかる事だが、あまりにも唐突で非現実的だったので受け入れたくなかった。

白くなった肌に虚ろな目により明らかに死んでいるという事を理解してしまった。そうせざるを得なかった。

首から血が滴ってきていないという事は焼かれたのだと嫌な事もわかっていく。

コピー「そう♪これ君のお兄ちゃん、さっき死んだよ♪」

変わらず愉快そうに答えると、アクアの生首をフレアに投げ渡した。

その言葉は唖然とするフレアには届かず、生首が転がっていく。

俯きながらフレアは膝をつき、アクアの頭を手に持ち上げた。

フレア「なんでだよ、兄貴…」

堪らず、フレアは涙を流した。

フレア「まだ母さんが治ってねぇんだぞ…!まだ父ちゃんも見つかってねぇんだぞ!!」

死んだ事、アクアに対して何も出来なかった事、まだやり残している事、そういった悔いや苦しみが徐々に声を荒らげていく。フレアは続けてアクアに語りかける。

だが、アクアは何も答えてくれない。

いや、死人となったアクアは何も帰ってくる事は無かった。

フレア「何とか…言えよ……!」

フレアは蹲りながらアクアの頭を抱えた。

コピー「やっぱ悲しいよね、そりゃそうだ。死んじゃったら二度と言葉を交わせないどころか会えないもんね」

コピーは空を見上げた。

コピー「でも安心してよ。もうこの世界も終わる…何も残らず、ただ無情に残酷に死んで、破壊されて、それでお終い」

暗雲を見つめながら、淡々とそう言った。

彼から出る言葉はどれも冷たく、心や倫理観など無かった。

フレア「兄ちゃん…兄ちゃん…!」

目の前の事を受け入れたくないからか、もう一度会いたい、言葉を交わしたいからかフレアはアクアの事を何度も呼んだ。

コピー「安心しときなよ、独りで死ぬにしても再び会えるからさ…」

右手の装置が起動し、赤紫色の光刃が展開される。

そのままコピーはフレアに近付いてくる。

フレア「ふざけんなよ…」

ドスの効いた声がフレアから聞こえた。

コピー「んー?」

それを聞いたコピーは足を止め、なんだと言わんばかりの表情で首を傾げた。

フレア「兄ちゃんを…兄貴を…!」

ゆっくりと立ち上がるフレアの全身から高熱が発せられる。

だが、それはいつもとは違って、明らかに大きく、辺りを焼き尽くすと言わんばかりに熱いものであった。

コピー(何?この熱さ…?なんかさっきと違…)

コピーが違和感を感じ取った次の刹那、フレアの片手がコピーの頭を掴んだ。

コピー「ぎぃやあぁぁぁぁ!!あ、熱いいいいい!!あ、ああああああ!!熱いよおおおおお!!」

焼かれる程の熱さに堪えきれずコピーは喚く。

フレア「返せよぉぉおおおお!」

腹の底から出た怒声をあげながら、コピーを地面に叩きつけた。

コピー(何が、起こって…?)

それを受けたコピーはあまりの威力に白目を剥きながら気を失う。

フレア「…潰す、全部ぶっ壊す……!」

怒りで我を忘れたフレアは片手をコピーの頭を離した後、山の方へと重い一歩を踏み出しながら進んだ。


その頃、大和はダークアイを一体、また一体と童冥土で薙ぎ払うようにして葬っていた。

大和(かなりの数!いくら土神様の御加護があったとしてもどれくらい保つか…!)

大和とて人間、必ず限界がある。まして言えばその御加護は神のものであり、そう易々と人が扱えれるものではない。

更にダークアイを倒したとしても数を埋めるようにして増援が出てくる。はっきり言ってキリがない。

大和「やむを得ません…!使わせてもらいますよ!」

そうして、大和は童冥土を両手で握りしめるようにして構えた。

大和「天地空昇(テンチクウショウ)!!」

そして、周囲を薙ぎ払うように振るうと、大地を抉るようにして圧倒的な風圧が渦巻くようにして発生した。

それらは数体のダークアイを吹き飛ばし、尽く蹴散らしていった。

竜巻に巻き込まれて消滅する者、高く投げ飛ばされて落下した者などがいた。

しかし、その中で一体のダークアイが寺の中に入ろうと大和を横切った。

大和「マズイ…!」

童冥土で振るおうとするが、間に合わない。

そう思った次の刹那、不意に現れた黒い人陰がダークアイの頭部を片手で掴んだ。

大和「貴方様は…!」

それを見て大和は自身にとって見知った人物であるのを理解した。

「久しいのぅ、大和」

人影が晴れると、耳を生やした白髪に目元を包帯で隠している男の姿が顕となった。

後ろにまで伸びている包帯が風によりなびいていた。

大和「鈴狼殿…!」

愕然とし、感極まった様子で大和は妖怪の長である彼の名を呼んだ。

鈴狼「こんな状況じゃなからな、手を貸そう」

そう言うと鈴狼が捕らえていた掌から紫色の炎が発現し、ダークアイを灰燼と化すまでに焼き尽くした。

大和「感謝いたします!」

襲いかかるダークアイに童冥土を振るい、その一撃で葬りながら鈴狼に感謝を述べた。

鈴狼「案ずるな、それよりも…」

満更でもないのか微笑む鈴狼だが、すぐに真剣な様子で明後日の方へと顔を向ける。

なんだと思った大和だが、それを見るやいなや大和の目が見開いた。

そこには激しい怒りに飲まれながら高熱を発するフレアがおり、こちらに近付いていた。

大和「フレアさん!?」

異様で危険な雰囲気を感じ取った大和は彼を見て、愕然としていた。

鈴狼「恐らく、怒りで我を忘れおるな」

対して冷静な態度でいる鈴狼は一目でその要因を見抜いた。

フレア「暗黒世界はッ、全員殺すゥッ…!跡形もなくッ…!容赦無くッ…!兄貴の敵ィッ…!!」

一種の暴走状態に陥っているフレアは目の前にいるダークアイの群れに対して殺意を向けていた。

それは低能なダークアイをも戦慄させる程のもので、大和と鈴狼に危機を感じさせる程でもあった。

鈴狼「大和、そのフレアを無理にでも落ち着かせとくれ。この場はワシに任せろ」

そう指示すると鈴狼はダークアイの群れに対して構えた。

大和「…わかりました!」

鈴狼を信じた大和は指示通りにフレアの方へと走り、抱えるように取り押さえてこの場から離れた。

周りにいるダークアイは殺害の対象を鈴狼一人に絞り、真っ直ぐ見るようにしながら警戒していた。

鈴狼「お初お目にかかるじゃろう。まぁ安心せい、その空っぽな脳でワシを恐れよ!」

そう言いながら鈴狼は包帯を解いて、赤い瞳を見せた。

そして瞬時に両手から紫色の炎が燃え盛り、戦闘態勢に入った。

ダークアイが一気に鈴狼に襲いかかる。

鈴狼は身体を旋回させながら炎で円を描くと、周囲にいたダークアイの胴体を削った直後、ヤツらを燃やした。

鈴狼「灼火(シャッカ)!」

炎が燃え盛る両手をぶら下げ、猫背となりながら腰を低く構えた。

そして次の刹那、目に追えない速さで全てのダークアイに触れていった。

鈴狼「鬼擬(オニモドキ)!」

技の名を言葉にした直後、触られたダークアイが全焼した。

鈴狼「…全て倒したものの、これで終わる程甘くはなかろう?」

姿勢を正す為に身体を起こした後で顔を横へと向ける。

そこにはダークアイの群れがおり、どうやら増援として立ちはだかってきた。

鈴狼「これではキリが無いな…」

焦る様な危機とした言葉とは裏腹に余裕のある冷静さを持っていた鈴狼は再度、戦闘態勢に入った。


時を同じくして、大和はフレアを抑えながら街の方へと移動した。

大和「落ち着きなさい、フレアさん!」

大和は両手をフレアの肩に置き、真剣な表情をしながらも必死に訴えかける。

フレア「黙れ…!兄貴を殺されて平然としていられるか!!そんな奴、いるわけねぇだろ!!」

だが、フレアは喚き散らしながらそう返した。

至極真っ当な意見で、喪失感ゆえの悲しさを感じ、それを聞いて大和は理解する。

大和「貴方の気持ちは痛い程わかります!しかし、怒りに呑まれている場合ではありませんでしょう!?我を忘れては…!」

だが、それでもフレアを止めなければならなく、彼を落ち着かせようと説得しようとした。

直後、大和の背後に誰かが音もなくして現れた。

その人物を見るやいなやフレアは大和を払い除けて、瞬時にそいつに襲いかかる。

フレア「テメェェェェェェ!!!」

フレアは復讐心と激しい憤怒を乗せた拳を振るうが、そいつは左手だけでそれを容易く受け止めた。

コピー「五月蝿いなー…てか、普通に痛かったよ」

フレアの拳を突き出した先にはコピーがおり、不機嫌そうな表情を浮かべながら右手を振るう。

すると、コピーは装置から赤紫色の光刃が展開させて、それを何の躊躇いも無くフレアに対して勢いよく振るった。

だが、傷を負ったのはフレアでは無く、彼を引き剥がした際に身代わりとなった大和であった。

大和「ぐっ…!」

伸ばした左腕を斬られた事で大和の顔が苦痛に歪むも、片手で握りしめた童冥土を瞬時にコピーに向けて勢いよく振るった。

コピー「おっと…♪」

だが、先に察知していたコピーは瞬時に後退して、二人から距離を取った。

フレア「なっ!?大和さん!!」

今起こった事を目の当たりにした事でフレアは我に返った。

その事に愕然したと同時に自分のせいで片腕を無くした事に自責した。

大和「…大丈夫ですか?フレアさん…」

背後にいるフレアを振り返り、平然を装いながら微笑みながら大和は語りかける。

フレア「…ごめん、俺様のせいで……」

フレアは大和に謝った。

自分がもっと冷静になっていれば、込み上げてくる怒りを堪えていれば大和の腕は失わずに済んだはずだと己を責めた。

大和「自分を責める必要はありません、誰しも過ちは犯します。」

だが、大和はそんなフレアを赦した。

優しい声色で話をするので、フレアは黙って聞いた。

大和「まして言えば、大切な人を失っているのです。仕方がない事です。泣いても怒ってもいいです。」

そして、目の前にいるコピーへと顔を向けて、童冥土を構える。

大和「大事なのは、そこから立ち上がれるかどうかです!」

それを聞いたフレアは気付かされたので目を見開いた。

コピー「どっちにしても無駄だよ…全部滅んで終わるんだからさ」

コピーは退屈で気に入らないといった様子で後頭部を掻いた後、装置を前にかざした。

すると、銃口から赤紫色の光が人より大きな何かを形成した。

それは下半身は戦車で上半身は甲冑と兜を纏った鎧騎士のような容姿をしており、幾つものの砲台と両手と合体している刃を兼ね備えている。

コピー「チャリオッツ、まとめてこの二人を始末しといて…なんか飽きてきた」

鎧戦車 チャリオッツはコピーに指示に首を縦に振ると、キャタピラを走らせてフレア達に襲ってきた。

大和「くっ…!」

片腕を失い、まして言えば御加護により体力を消耗している大和はこの状況をマズいと思った。

このまま殺されると思ったその時、大和の横をフレアが走り、彼の正面に立った。

チャリオッツ「叛逆者…!裁断する…!」

その様子を視認したチャリオッツは更に加速して、そのままフレアを轢き殺そうと突っ込む。

だが、フレアは全身に高熱を発しながらその両手でチャリオッツの動きを止めた。

フレア「大和さん、俺様…いや!俺は十分に泣いたし!ブチギレた!」

真っ直ぐな目でフレアは大和に伝える。

フレア「だから!立ち上がって、突き進む!!」

勢いよくチャリオッツを押し飛ばした直後、フレアの全身からコズミック・コアが溢れ出る。

フレア「これ、兄貴のか?」

それが亡くなったアクアのものだと瞬時に察すると、フレアの姿が変わっていった。

朱色の髪にアクアの水色が加わり、ツートンヘアーに、目も朱色と水色のオッドアイへとなった。

コピー「え…何、あれ…?」

突然の出来事に唖然とするコピー。

フレア「感じる…!俺様の中に兄貴がいる…力を貸してくれるのか!!」

確信したその時、フレアの脳裏に声が響いた。

『あぁ!力なんぞくれてやる!だから、共に護る(戦う)ぞ!』

二重となった声がフレアに語りかけてくる。

フレア「おう!兄貴!!」

そして、決意したフレアはチャリオッツに対して戦闘態勢に入った。

チャリオッツ「拒絶者、再度殲滅する!」

「早く仕留めなければ」と言わんばかりに複数の砲台がフレアに照準を合わせて、巨大な弾を撃った。

それら全てを視認し、把握するとフレアは右手で水の刃を形成し、それを横に薙ぎ払うようにして両断した。

すると、砲弾は水の刃がなぞったままに、順番通りに爆発を起こした。

その隙にフレアは大地を勢いよく蹴って、瞬時にチャリオッツに接近した。

フレア「ヒートナックル!」

高熱を帯びた拳が素早く突き出された。

それをもろに受けたチャリオッツの胴体は貫かれ、大きな穴ができた。

フレア「まだだ!アクアロケット!!」

フレアは攻撃を続けて、水纏う足でチャリオッツの頭を蹴り上げた。

兜のような頭部は酷く窪み、そこから闇の粒子が漏れた。

チャリオッツ「拒絶者、殲滅殲滅殲滅…!」

仰け反りながらもなんとか体勢を立て直したチャリオッツは怒りで我を忘れた様子で殺意を口にする。

暴走しながらも一直線にフレアへと接近すると、切り裂こうと両手の刃を振るった。

しかし、刃が通った箇所は水となって通り抜けた。

フレア「ヒートウォーター!」

一度片手を引いて、その掌から蒸気が出る程の熱湯を纏った。

フレア「ショックインパクト!」

瞬時に張り手のように突き出すと、掌はチャリオッツに当たると同時に勢いよく吹き飛ばした。

そのままチャリオッツは崩れながら鉄屑となって、全ての機能を停止させた。

コピー「驚いた。あれ(チャリオッツ)、街を破壊できる程のモノなんだけど、かなりの強さだね…」

今のフレアを見て、圧倒的な殺気を前に愕然とし、戦慄するも面白くなってきたコピーは舌舐めずりながら微笑んだ。

フレア「後はテメェだけだ!コピー!!」

フレアは顰めるように睨みつけながらコピーに指をさした。

コピー「まだだよ、まだ僕は…」

死んでたまるかとコピーは右手の装置を前に掲げて、光弾を撃つつもりで構えた。

「お待ちなさい、コピー」

だが、それは誰かが肩に手を置いて制した事で、阻止された。

コピー「ゼノ?何しに来たの?」

コピーはその人物がゼノだとひと目でわかると、要件を訊いた。

フレア「なんだ?見た感じ野郎の味方っぽいけど…」

大和「気を付けてください!只者では無いのは確かです!」

フレアと大和は構えながらゼノに警戒していた。

ゼノ「破壊者様より伝令です。直ちにこの世界を去り、我が元に集えとの事」

二人を他所にゼノは落ち着いた様子でコピーにそう伝えた。

コピー「…わかった、行くよ」

コピーは俯くように考え込むが、フレア達を見てゼノの言う通りにしようと思いながら踵を返そうとした。

フレア「おい!誰が逃がすか!!」

逃がさんとフレアはコピーに走り出すが、その前を複数の黒い球体が横切った。

ゼノ「させません。破壊者様の命令は絶対、邪魔するのであれば…」

コピー「良いよ、殺さなくて」

無表情で淡々と言葉にするが、コピーに止められた事でゼノは両手を叩いて、横切った何かを消した。

大和はそれを見て、何かの正体がゼノの能力により生み出されたものだと理解した。

コピー「ねぇ、フレア…」

すると、コピーはフレアを真っ直ぐに見つめながら声をかけた。

フレアが抱いていた警戒心を強めると、コピーは微笑みながらこう言った。

コピー「次会う時は全戦力(本気)で殺ってあげるから♪」

笑みを浮かべるも底無しの殺意が渦巻いたような真っ黒な目を向けた。

異様とも言えるその様子にフレアは戦慄するも、怯える事も退く事も無かった。

コピーが「じゃあね♪」と手を振りながら告げると、二人は黒いゲートの中に入って消えた。

それと同時に暗雲も晴れて、元の青空へと戻っていった。


ゲートを通った二人はトンネルのような道のりで渦巻く暗い闇の中を横に並びながら歩いていた。

コピー「ねぇ、ゼノ。他の二人はどうだったの?」

すると、コピーは他の四天王であるシャドーとガザールについて訊ねた。

ゼノ「はい。失敗に終わり、欠片も破壊出来ずに戦士達に回収されたとの事です。」

それを聞いたコピーは頭の後ろで手を組み、先の見えない天井を見上げた。

コピー「なんかダメダメだなー…まぁでも、だからってどうにかなるという訳では無いけどさ」

コピーは自身を責め、ゼノを除いた四天王に失望していたが、仕方がないと思い、溜息を吐いた。

ゼノ「そうですね。しかし、危険且つ脅威になりうる存在 激龍…何としてでも阻止しなければなりません。あの朱色の人が選ばれる可能性も…」

今、自身らが置かれている状況にゼノは困ったと言わんばかりに悩み、考え込んでいた。

その中で最悪な想定も浮かんでおり、覚醒した者が激龍を使うというものであった。

コピー「あの子が?無い無い、そんな風には見えなかったからね」

ゼノが示していた人物がフレアだとわかると、ありえないと言わんばかりに軽い雰囲気でそれを否定した。

ゼノ「左様ですか」

コピー「ゼノだったら誰がなると思うの?可能性を抜きにしてさ♪」

その問いにゼノは顎に手を当てながら再び考え込んだ。

ゼノ「予測は出来ませんが、もしかしたら…」

ゼノはある人物を睨んでいた。

激龍に選ばれる可能性のある者を、邪光 剣と呼ばれる者に対して


その頃、少し時が経ってフレアは大和の了承を得て、死んだアクアを山中にある墓場に埋める事にした。

そこでフレアは黙祷していた。

フレア「…兄貴、敵は討つし母ちゃんの事は任せてくれ。だから、安らかに……」

己の無念さに、コピーに対する怒りによりフレアは拳を握り締めた。

アクア『何を言ってるんだ。確かに俺は死んだが、魂はお前と共にある。とはいえ、もうじき消えてしまうがな…』

フレアの中でアクアの声が響き、言葉に引っかかったのか唖然としながら驚いた。

フレア「どういう、事だよ…!?消えるって!?」

誰もいない空間でフレアは焦るようにして問いかけた。

アクア『コズミック・コアには、ほんの少しだが、自らの意志でこうして宿る事はある。それは時間と共に消えていく…』

それを表すかのようにアクアの声が徐々に音量が下がっていくようにして弱まっていく。

フレア「兄ちゃん……」

アクアの発言が事実であると知ると、フレアに悲しみが再来する。

アクア『悲しむな、強く生きろ…それが俺の最後の願い…だ……』

その言葉を最後にアクアの声は消えた。

フレアは自分の中にいたアクアが消えたという事であるとすぐさま理解した。

ふと、懐にしまっていた激龍の欠片を持っていた手を見つめた後、改めて決意した。

フレア「…わかった。兄貴の想い、確かに受け取ったぜ……!」

青い空を見上げるフレア、彼はこの場を後にした。

次回 第拾玖話 「水都市の当主と暗黒の破壊者」

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