第拾肆話 「再来する闇」
この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
暗い部屋の一室の中、男は膝をつきながら頭を抱えていた。
男「ど、どうしよう…」
男は震えており、息を荒らげていた。
男の目の前には血溜まりの死体が転がっており、その近くには血痕が付着した包丁が落ちていた。
そう、男は初の殺人を犯したのだ。
その理由は揉め事で怒りが湧き上がってしまったというものであった。
そんな衝動に駆られた事で男は殺人を犯してしまった事に対して後悔していた。
そして、どうやってやり過ごそうかと不安になりながらも頭の中で思考を張り巡らせていた。
「何やら困っているみたいだな」
駆け寄る人物が現れ、語りかける声が聞こえた男は驚きながら振り向いた。
そこには紫色の髪と眼をした容姿に紫色の着物を身に付けた男がいた。
男「だ、誰だ!お前は!」
男は紫髪の人物を知らない故にそう訊ねた。
紫髪の人物 シャドーは死体へと目を遣る。
シャドー「ほぅ、初めての人殺しか…そして、お前は不安や恐怖に駆られ、後悔をしている。」
シャドーは一目見て、状況を把握した。
男「た、頼む!この事は誰にも言わないでくれ!」
男はシャドーの足元に寄りすがり、そう懇願した。
シャドー「何、気にするな。なんなら助けてやろう」
すると、シャドーは懐から黒い玉を取り出した。
シャドー「力を与えよう」
黒い玉から闇が溢れ出て、男の穴という穴から入っていく。
男「あ…あぁ…!」
男は苦しい声を上げながら、闇に包まれていく。
シャドー「同じ世界で二度目だとまぁまぁなものになるが…戦力としてはマシだろう」
シャドーは闇に飲まれ、形を変える男を眺めていた。
シャドー「さて、上手くやってくれよ。貴様に宿った闇は悪くないからな」
シャドーは顎をつまむようにかきながら微笑んだ。
その頃、クロノス社の隊長室にて
未来隊長はソファに座り、正面のテレビと向かい合いながらゲームをしていた。
それは難無くクリアしており、コンプリートするまで時間の問題であった。
未来(ヘリアデスの件に出てきた怪物、という事は…)
その中で未来隊長は3ヶ月前の出来事で起こった疑問について考えていた。
未来「お、やった!」
全クリして喜んだと同時、隊長室の扉が開いた。
結衣「隊長さん、お邪魔しますよー」
なんとそれは結衣であり、お茶が乗ったトレイを持っていた。
未来「ん?あぁ、大丈夫だよ」
未来隊長はすぐさまそう返した。
結衣「またゲームですか?程々にしてくださいね」
結衣は未来隊長の近くにお茶を置いた。
未来「ごめんね、好きなあまりやめようにもやめられないんだ」
未来隊長は苦笑いを浮かべながら、申し訳なく思う事を伝えた。
結衣「ところで隊長」
未来「ん?」
結衣の言葉に未来隊長は首を傾げ、疑問に思う。
結衣「隊長はどうして正義組織にいるんですか?」
すると、結衣はかなり無礼な事を訊いた。
未来「え?何?ここにいない方が良い感じ?」
未来隊長は冗談交じりにそう訊き返した。
結衣「ああ!そうじゃなくて、なんで正義組織の隊長になったのかが気になって」
慌てた様子で結衣は発言を訂正し、再度そう伝えた。
未来「あぁ、そういう事ね」
未来隊長は少し笑うと、思い出し始めた。
少しした後、未来隊長はこう答えた。
未来「単純な話、平和を創るといったところかな」
結衣「平和を創る?」
結衣は当たり前ながらも少し捻った答えに首を傾げた。
未来「今は平和と呼ぶにはまだ遠すぎるし、未だあの呪縛が続いているみたいだからね。その為にも僕達が平和を創るっていうのが理由かな」
結衣はその理由があまりにも単純な事な為、驚いた。
結衣「そういう理由で?」
未来「確かに当たり前すぎかもしれない。けれど、当たり前だからこそ大事」
未来隊長はその場から立ち上がり、隊長としての席へと移動した。
未来「当たり前って、出来て当然ってなるけど、そうするまでの道のりって大変でしょ?」
そして、椅子に再度座ると、手を組んで机に肘をつけた。
未来「だからこそ、そういう事は忘れてはいけない。大事にしていかないといけないんだ」
未来隊長は結衣にこう説いた。
結衣「成程、勉強になります」
結衣はそう言った。
未来「大した事じゃないとは思うけどね、後でお茶は飲んでおくから。心配しないで」
未来隊長は結衣にそう伝える。
結衣「わかりました。では、失礼します。」
すると、結衣は頭を下げ、この場を去っていった。
いなくなった事を確認すると、未来隊長は結衣が置いたお茶へと目を遣る。
お茶からは湯気が立っており、熱そうなものだと見てわかる。
未来「僕、猫舌だから熱いの苦手なんだよなー…」
未来隊長はまた苦笑いを浮かべながら不甲斐ないと心の中で思った。
その頃市街地区にて、剣とブラックは二人の犯罪者を追跡していた。
剣「待て!」
「ええい!誰が待つものか!!」
黒髪に赤い瞳を持った反転目の容姿に反転した十字架の首飾りにスーツといった服装をした男 マルクスが剣に反論した。
その隣には白色の兜に鉤爪、ワイヤーに先端に刃の付いた鋼鉄が特徴の尻尾を兼ね備えた姿をした機械人形 メタルクロー・ワイヤーテイルがいた。
マルクス「二手に分かれるぞ!」
そう言うと、マルクスは一直線に進んでいき、頷いたメタルクローも明後日の方向へと跳んでいった。
剣「ブラック、メタルクローを頼んでもいいか?マルクスは俺が倒す」
剣はブラックに意志を伝えつつ、訊ねた。
ブラック「…了解した」
ブラックはそう返答した直後、進路を変更。跳んでメタルクローの後を追った。
剣「ありがとう」
剣はマルクスを追跡する為、そのまま突き進んだ。
建物を跳び移っていき、最終的にメタルクローは巨大なショッピングセンターに到着した。
メタルクローはガラスで造られた天井を踏んで破壊した。
「きゃあああ!!」
「な、なんだ!?」
「おいあれ!なんか落ちてきたぞ!!」
その場にいた多くの一般市民は当然、困惑していた。
メタルクローが着地した直後、彼のワイヤーが伸び始めた。
「ギィエッ…!」
刃を持った鉄の塊が近くにいた一般市民の心臓を貫いた。
「いやああああああ!!!」
殺されると気付いた他の一般市民は逃げ惑った。
メタルクロー「………」
「ぎゃああっ!」
「うわあああ!」
メタルクローは両手に武装された鉤爪で数人の一般市民を切り刻んだ。
ブラック「これ以上殺らせるか…!」
駆け付けたブラックは赤い瞳を持った反転目でメタルクローを捉え、弓に番える赤い矢を放った。
矢の威力は絶大であり、空間を震撼させ、突き進む中、何度も衝撃波が起こった。
メタルクローはそれを認識すると、すぐさま後ろに跳んで回避した。
メタルクロー「………」
メタルクローは獣のように、低い態勢で身構えた。
ブラック「…行くぞ、鋼鉄獣!」
ブラックは分離させた二つの太刀を構えた。
メタルクロー「………!」
メタルクローはブラックに接近し、鉤爪を振るった。
当然、ブラックはそれを片方の太刀で止めた。
だが、メタルクローの追撃が入る。
ワイヤーが伸び、尾の刃がブラックの心臓を突き刺そうと迫り来る。
ブラック「ゴフッ…!」
ブラックは心臓を突き刺され、吐血した。
メタルクロー「………」
メタルクローはブラックを見て、死んだと断定した。
ブラック「なんて…思ったか?」
次の刹那、ブラックの刃が尾としてのワイヤーを切断した。
メタルクロー「………!」
メタルクローはすぐさま後退し、ブラックから距離をとった。
ブラック「心の臓を突けば一撃で殺せるとでも?」
ブラックは二つの太刀を脇の下で挟み、空いた手で突き刺された刃を引き抜いた。
ブラック「かつての俺なら殺せた…」
その刃を投げ捨て、再度二つの太刀を手にし、持ち直した。
ブラック「だが、今は無意味だ…!」
ブラックは二つの太刀を構えた。
メタルクロー「………!」
メタルクローはブラックに接近する為、前進した。
すると、ブラックは二つの太刀の頭同士を連結させた。
刃の先端にある糸を繋げる事により、弓が完成した。
弦を引くと、そこから赤い矢が現れる。
だが、その中でメタルクローはブラックの懐に入り、鉤爪を交差する様に振るった。
ブラック「…易々と受けるものか!」
ブラックは跳ぶようにして後ろに下がり、攻撃を回避した。
ブラック「…ハァッ!」
ブラックが矢を放つ。
矢は衝撃波を放ちながら加速していき、メタルクローに接近する。
メタルクローは回避しようと急いで跳ぼうとする。
だが間に合わず、赤い矢はメタルクローの下半身を消し炭にした。
ブラック「これで終わりだ…!」
一瞬の隙を逃さないと言わんばかりにブラックは一つの太刀を捻り、刃が真反対の方へと向いた。
ブラック「ハァッ…!!」
ブラックはそれを投擲した。
ブーメランの様に旋回しながら接近して、メタルクローの首を斬り裂いた。
メタルクローの残骸が地面に転がる。
機械だからか、残された頭部がまだ光り続ける。
逃げようとするが、頭だけで移動する事など出来なかった。
ブラック「頭だけで何が出来る…」
ブラックは帰って来た二つの太刀を組み直し、弓にしたその弦を引いた。
ブラック「これ以上は殺らせない…!」
生み出された赤い矢は放たれ、メタルクローの頭部を貫いた。
そうして、メタルクローの機能は完全に停止した。
その頃、剣はマルクスを追跡していた。
二手に分かれてから数分が経ち、マルクスは足を止めた。
剣「そこまでだ…!」
剣達は橋の上にいた。
落下防止として柵が設置され、その下には何台ものの車が止む様子がないと言わんばかりに行き交っていた。道路があった。
マルクス「貴方に問う、邪光 剣」
すると、マルクスは片腕を広げた。
その掌から青い粒子 コズミック・コアが現れ、直剣へと形を変えると、マルクスはその刃を剣に向けた。
マルクス「神はいると思うか?」
そして、マルクスは訊ねた。
剣「神か…考えた事が無かったな、そいつは」
剣は鞘から引き抜いた太刀を構えた。
マルクス「左様か…!」
マルクスは大地を蹴る様にして、剣に接近した。
剣はマルクスが振るった直剣を太刀で防いだ。
剣「何故、神の有無について訊く?」
剣はその刃を弾き返し、太刀を振るう。
マルクスもすかさず直剣を振るった。
何度も何度も刃同士がぶつかり合うが、苦戦を強いられたのはマルクスであった。
マルクス「チェリャァァァァ!!」
マルクスはもう片方の手で直剣を生成し、剣に突き出した。
だが、剣は腹に突き刺さるよりも先に蹴りを入れた。
それを受けたマルクスは後退るも、その動きを止めた。
マルクス「…流石は焔の剣士、No,1と言わんばかりの強さだ」
マルクスは直剣を向けながら跳んで、柵の上に立った。
剣「逃げる気か?」
マルクスが次に何をするのかを剣は先読みしていた。
マルクス「洞察力も予見力も素晴らしい。生き残る為だ、許してくれ」
マルクスは柵を飛び越えて、橋から降りた。
剣「させるものか!待て!」
剣は駆け出した直後、飛び降りてマルクスを追いかけた。
マルクスはトラックに飛び乗り、剣の様子を伺った。
一方で剣はバスの上に乗っており、一度太刀を納めた。
走行中の車に乗った二人は体勢を低くして、構えていた。
剣(さて、この状況をどう切り抜けるか…)
剣は周囲を見渡し、状況を把握する。
当然、剣が乗っているバスには多くの乗客がいる。その人達を巻き込む訳にも被害を出す訳にもいかない。
その時、剣の前から一つの直剣が襲いかかってきた。
剣はそれをすぐさま回避した。
マルクス「油断も隙も無いな!だが、術中にハマった貴様に最早為す術など無いだろう!」
そう言うとマルクスは両手から直剣を生成し、風と共に流れていった。
マルクスの能力は直剣を生成する事。そのまま創り出せるが、質量や性質などと言ったものも変える事が出来る。
それを剣はすぐさま抜刀し、全ての直剣を弾き返した。
剣「風で流せるように素材を軽くしているのか、厄介だな…」
剣は太刀を構えながら、頭の中で思考を巡らせる。
ふと、剣は下の方へと目を向けた。
「うわあああああ!!」
「いやあああああ!!」
創られていく直剣が道路に突き刺さったり、バスを傷つけ、窓ガラスを破ったりして乗客や運転手に危害を加えていた。
剣「焔技…!」
剣は刃を後ろに向ける様に構える。
剣「火斬翔!」
そして、太刀を振り下ろした直後、軌道から焔の斬撃が飛んだ。
斬撃はマルクスに近づいていく。
マルクス「ハァァァァァァッ!!」
マルクスは一度直剣を生成するのを止め、唐竹割りで斬撃を両断した。
正面へと向き直すが、そこに剣の姿は見えなかった。
剣「これで卑怯な事は出来ないな」
気が付けば剣はマルクスの背後に回り、太刀を向けていた。
マルクス「どうやってここまで来た?」
マルクスは背後にいる剣に目を向け、訊ねた。
剣「教官による訓練の成果だな、お陰様で凄い身体能力を得た」
剣は落ち着いた様子でそう答えた。
剣「そうだ、先程の問いについてだが…」
すると、剣はマルクスにこう言い出した。
剣「少なくとも俺はいると思っている」
マルクス「その理由は?」
剣の答えにマルクスは問いかけた。
剣「理由は無い。だが、この世は意外と勧善懲悪だ」
剣は話を続けた。
剣「恐らく見ているのだろう、お前が否定する神という存在に」
剣は冷たい眼差しを向けながらマルクスを煽るようにして言い放った。
マルクス「左様か…」
そう返すマルクス。
剣「それと、神がいるか否かは人によって考え方が違う。お前は自身とは考えが違うからという理由でその能力で大勢の人を殺めた。だから、お前の歪んだ思想、ここで断ち斬る!」
二人は静まり、聞こえるのはトラックの走行音と周囲の車が通り過ぎる音であった。
マルクス「この有神論者が!!」
先に手を打ったのはマルクスであり、直剣を振るって、剣の頸動脈を斬ろうとした。
だが、それよりも速い斬撃がマルクスの胴体を斬り裂いた。
マルクス「ゴハッ…!」
マルクスは吐血しながら後ろへと倒れていった。
剣は正面へと向き直し、深呼吸をしながらトラックの走行による風を受けていた。
剣「こちら邪光 剣、マルクスを討滅した」
その後、剣は腕時計を使って本部に報告した。
そうして剣とブラックはクロノス社の本拠地に帰還した。
メビウス「おー、おかえりー」
すると、そこにメビウスが現れた。
剣「あぁ、ただいま…」
剣はふとメビウスの手へと目を遣ると、青いガントレットが装備してあった。
剣「メビウス、それは?」
剣はその事について訊ねた。
メビウス「ん?あぁーこれ?」
メビウスはガントレットの話だと理解すると、すぐさま話し始めた。
メビウス「前にドレイクと戦った際、素手のまんまだと結構、苦戦した。」
メビウスは篭手を見つめた。
ブラック「それ、お前がズルけたのがデカいだろ…」
メビウス「あれ俺の知り合いである情報屋が殺られたからで…いや、それもそうなんだけどさ……」
至極当然な事を言うブラックにメビウスは理由を話そうとするが、言い訳であるし、事実には間違いないのでなんとも言えなかった。
メビウス「とはいえ、もっとそういうのが来るかもしれないって事を考慮した上で十六夜Projectに頼んだって感じかな」
メビウスの説明を聞いた剣は顔を顰めた。
剣「十六夜Projectか…」
剣はそう言葉を零した。
十六夜Projectとは製造企業である。
家電や文房具などといった日常に必要不可欠なものや武器や薬品といった戦闘の際に必要なものを製造している。
グリンのベルデゾロを製造したのもそこである。
だが、彼らには少し問題があった。
剣「敵か味方かわからないし、どちらにも属さないヤツらをそう信じていいのか?」
剣はメビウスにそう訊ねた。
十六夜Projectの問題、それはどちらの味方でも無いという事だ。
彼らは金の為、誰かの力になれる為ならばどちらにもつくし、何処にも属さない。
誰の敵にもなるし誰の味方にもなる。
その事に剣は嫌な印象を抱いていた、あまり信用していなかった。曖昧で得体の知れないその企業に嫌悪していた。
メビウス「信じるというよりは有難く使わせてもらうって言った方が正確かな」
剣の問いにメビウスはそう答えた。
メビウス「あの人達、まるで力のような存在だからさ」
剣はメビウスに近付いて、こう言った。
剣「これは起こり得ないだろうが、伝えておく。その力、使い方を間違えるなよ」
剣の真剣な表情にメビウスは驚くも、平然とする。
メビウス「そりゃあそーでしょ。安心しなよ、ドレイクのような事にはならないさ」
メビウスの返答を聞いた剣は目を閉じて、深く息をついた。
剣「そうか、わかった。申し訳ない事をした」
剣はメビウスを横切り、この場を去ろうとした。
だが、メビウスはそれを阻止すると言わんばかりに剣を引っ張り出した。
メビウス「少し一息つこうぜ」
剣「なんだ?」
メビウスは笑顔を浮かべると、剣を何処かへと連れて行った。
ブラック「…どういう風の吹き回しやら……」
その様子をブラックは見送っていた。
クロノス社の屋上にて、剣とメビウスは途中で自販機で購入した飲料水を飲んでいた。
剣は水を、メビウスはオレンジジュースを
メビウス「なぁ、剣。アンタ一人で背負い込み過ぎじゃない?」
すると、メビウスがこんな事を言い出した。
剣「そうか?変わっていない気がするが…」
それを聞いた剣は疑問に思う。
メビウス「なんとなくだけど、力を借りるのも悪い事じゃないと思う。一人で、しかも今のままで事が上手く運ぶなんて事は厳しいだろうからさ」
メビウスはオレンジジュースを再度口にした。
剣「俺からしたらお前の方が余程、背負い込んでいる気がするけどな」
メビウス「なんで?」
剣の反論にメビウスは口を離し、鳩が豆鉄砲を食らったような顔で訊いた。
剣「そのガントレットが何よりの証拠だ。ドレイクの件で装備したのならば、少し説明不足だ。ガロンやクヴェレさんを失ったからだろ?」
剣は持論を述べていった。
静かになるメビウスを他所に剣は説明を続けた。
剣「俺も同じだ、もう二度と失いたくは無いからな。これ以上…」
剣は拳を握り、力を入れた。
メビウス「なーんか、あれだね。やっぱ俺達似た者同士だ」
それを聞いたメビウスは微笑みながらオレンジジュースを飲んだ。
剣も微笑んでいたが、空を見てそれは一気に消えた。
笑顔は真剣にして緊迫したものへと変わった。
剣「…メビウス、この空は」
剣の言葉でメビウスも空を見て、剣と同じ心境を抱いた。
メビウス「おいおい…あれってまだ終わってなかったのかよ」
空は闇に覆われていた。
ヘリアデスの件と、フェイトンが黒い怪物になったあの出来事と同じだった。
先程まで静かであったクロノス社が騒然とし始めた。
CSFの隊員達は本部から出ると、早急に市民達に対して避難を呼びかけた。
戦士達もすぐに出て、各々戦闘態勢に入っていた。
「どうしよう…怖い」
すると、戦士達の前から声が聞こえた。
それを聞いた剣達はその方へと向きながら警戒した。
剣「あれが元凶か?」
剣は目の前にいる人物を見て、そう判断した。
その人物は鋭い耳に大きな鼻、全体的に黒く、至る所に赤い目を持った人型の容姿をしていた。
牙禅「前のフェイトンと比べて大きくは無いか…」
牙禅は以前の出来事を思い出しながら怪物の姿を見て、そう呟いた。
レオ「けど、倒した方が良いな!」
そう言うとレオはすぐさま駆け出し、怪物に急接近した。
怪物は自身の肉体から直剣を取り出した直後、それを勢いよく振るった。
レオ「おっと!」
レオはすぐさましゃがんで避けた。
レオ「くらえよ!」
その直後、炎を纏った拳を怪物の腹部目掛けて撃ち込んだ。
レオ「ッ!痛ってぇ!!」
すると、レオは痛そうな様子で手を振った。
怪物の腹部には鋼鉄の盾があり、攻撃を防いでいた。
グリン「レオ!」
グリンは怪物に対してベルデゾロを撃った。
怪物は直剣を振るって、迫り来る弾丸を全て斬った。
その隙を逃さず、レオは後退した。
ブラック「…嫌なタイプだな」
ブラックは怪物を見て、ガロンを殺したベローナを想起してしまい、不快に思った。
その直後、戦士達の周りを闇が覆った。
フレア「おいおい、今度はなんだよ…!」
闇が晴れた直後、ダークアイの軍勢に覆われていた。
ライト「これって、ウィングドホースの方々が倒していた…」
牙禅「間違いない、ダークアイだ」
戦士達が警戒する中、ダークアイの赤い目が彼らを見ていた。
剣「俺がアイツを断ち斬る、皆はダークアイを頼んだ」
剣は自身以外の戦士にそう指示を飛ばすと、彼らはすぐさま「了解!」と返した。
そうして皆、バラバラになるようにして走り出した。
ブラックは弓となった双剣で赤い矢を番え、ダークアイの大群に向けて放った。
衝撃波や赤い矢が貫いた威力によりダークアイは塵となって浮上する様に消えた。
そんなブラックの背後にダークアイが二体、襲いかかる。
その事を瞬時に察知すると、ブラックは素早く双剣の糸を解き、その一方を捻った。
そしてそれをブーメランの如く投げた。
双剣は襲いかかるダークアイを斬り裂いた。
それだけにとどまらず、数十体のダークアイをも巻き込んだ。
ライト「グリント!」
ライトの放った光が周囲を照らした。
それを受けたダークアイが跡形も無く、消滅した。
ライト「やっぱり!この怪物は光に弱い!」
ライトは今の攻撃で確信を得た。
牙禅「故に闇で空を覆っていたという訳か」
牙禅は波動で生成した槍を振り回し、ダークアイを討滅した。
グリン「という事は、こいつらの行動にも訳があるみたいですね」
グリンはベルデゾロを撃ちながら繋げて推察した。
アクア「光に弱いと言えど、他の攻撃でも効くらしいな」
アクアは水の刃でダークアイを斬り裂いた直後、水纏う脚で蹴りを入れた。
フレア「単純なのは良いけど、クッソ多いなァ…!」
全身から高熱を放ちながらフレアはダークアイに特攻して倒す。
メビウス「オラァッ!」
高速で鉄拳を振るい、ダークアイを殴るメビウス。
そんな彼にダークアイの爪が振り下ろされる。
その攻撃をメビウスは武装したガントレットで防御した。
レオ「くらえッ!」
そんなダークアイに対して横から現れたレオは炎の拳を撃ち込んだ。
殴られたダークアイは消滅した。
レオ「大丈夫か!?」
心配しながら駆け寄るレオ。
メビウス「あぁ!これのおかげでなんとかなったよ」
メビウスはガントレットを見せて伝えた。
レオ「かっけぇな!それ!」
レオはそれを見るや否や、目を輝かやかせながら興奮した。
メビウス「でしょ?てか、今はそうしてる場合じゃあねぇ!」
そう言うとメビウスは腰を低くして構えた。
レオも同じであり、メビウスに背中を向けた。
その周囲にはダークアイがいた。
戦士達がダークアイを倒している中、剣は太刀を片手に先程の怪物 ゴブリンと睨み合っていた。
剣「誰なのかは知らないが、何が目的だ?」
剣は太刀を構えながらゴブリンに訊ねた。
ゴブリン「嫌だ…捕まりたくない……」
すると、ゴブリンは不安の言葉を呟きながら両手で大剣を生成した。
剣「フェイトンと同様、負の言葉を零すだけか…面倒だな」
敵意と判断した剣は太刀を手に歩み始めた。
ゴブリン「来るな…!」
弱々しい言葉と声色とは裏腹にゴブリンはいつの間にか生み出した大剣を振り下ろした。
剣は瞬時にそれを避け、懐に入るとすぐに太刀を振るう。
ゴブリン「終わりたくない…!」
すると、ゴブリンは大剣を手放してその攻撃を回避した。
それと同時、太刀が振るわれ、大剣は消滅した。
転げた身体を起き上がらせる様に体勢を立て直すと矢を番えたボウガンが生成された。
ゴブリン「怖い…!」
ゴブリンの持つボウガンから矢が放たれる。
剣は掲げた太刀を勢いよく振り下ろし、矢を一刀両断した。
剣「暗黒の怪物!不安に駆られ、恐怖するお前の闇、ここで断ち斬る!」
剣はゴブリンへと目を遣ると、全身から焔が現れた。
その刹那、太刀を構えた剣はゴブリンに接近しようと駆け出した。
ゴブリン「ヤバい…!」
ゴブリンはボウガンを捨て、ナマクラの双剣を生成した。
目の先にいる剣に対して、ナマクラを振るった。
剣はそれを防ぐと言わんばかりに太刀を向けた。
ナマクラと刀身がぶつかり、金属音を鳴り響かせた。
ゴブリン「捕まりたくない…!死ね…!」
ゴブリンは片方のナマクラを叩きつけた。
このままではマズいと思った剣は太刀でそのナマクラを押し返した。
ゴブリン「しまった…!」
そう思うのも束の間、剣は焔を纏うその太刀を振り上げた。
ゴブリン「ギィヤァァァァァァ!!」
縦に両断されたゴブリンは断末魔を上げながら身体が塵となって消えた。
それと同時に空を覆っていた闇が晴れた。
結果、ダークアイは陽の光に照らされ、塵が空に帰るように消えた。
レオ「やった!剣が倒した!!」
レオは歯を見せるように笑みを浮かべた。
剣は消滅したゴブリンを見ていた。
剣「ん?」
すると、その中で何かを目にした。
剣「なんだ?これは…」
すぐさま駆け寄り、落としたモノを手にした。
それはゴブリンの体内にあっただろう水色に光る宝石の欠片であった。
剣「宝石?にしては何か…」
剣はその欠片を見ると、同じ色に光っていた。
ふと、ゴブリンが消滅したところへと目を遣る。
剣「これから先、一体何が起こると言うんだ?」
剣はこの先に待っているだろう運命に嫌な予感がした。
メビウス「剣ー!大丈夫か?」
その中でメビウスが叫びながら駆け寄ってきた。
剣「問題無い、それよりこれ」
剣はメビウスに欠片を見せた。
メビウス「ん?何これ?」
メビウスは眉を顰めるように欠片を見た。
剣「わからない。だが、あの怪物の中にあったらしい」
メビウス「はぇー…光に弱いのになんで……」
メビウスが欠片を手にして、それをよく眺める。
しかし、欠片が発していた光は途絶えていた。
剣(ん?なんで…)
その事に対して剣は疑問に思った。
その時、戦士達が身につける腕時計が鳴り響いた。
メビウス「未来隊長?」
腕時計を操作し、送られてきた内容に目を通した。
『総員、組織に帰還。全戦士は隊長室へと集合せよ』
クロノス社から離れた建物の上にはシャドーがいた。
シャドーの頭上には天使の輪を想起させる黒い渦があり、太陽の光から身を守っていた。
シャドー「やはりか…まぁ、一先ずは順調とでも言うべきか」
シャドーは顎を撫でながらそう述べた。
「なんだ?失敗したのか?」
そんなシャドーの近くに一人の男が現れた。
それは黒のシャツに黒のズボン黒い角を生やした緑のフード付きロングコートを羽織った紅い瞳を持った姿をしており、彼も頭上に黒い渦があった。
シャドー「ガザールか、同じ暗黒四天王が此処へ何しに来た?」
シャドーは振り返り、男 ガザールを見ながら訊ねた。
ガザール「拝みに来たんだよ!戦士で面白ぇヤツがいるかどうかがよ」
ガザールはシャドーの隣に座り、遠くにいる戦士達を見た。
シャドー「相変わらず闘い好きだな、貴様は」
シャドーは呆れながらも微笑んでそう呟いた。
ガザール「当然だ!んで、丁度良さそうなのがいたな!」
ガザールは戦士の一人 レオに目をつけた。
シャドー「…兎にも角にも去ろう、もう此処に用は無い」
シャドーが歩を進めると、その前に闇のゲートが現れた。
ガザール「それもそうだなぁ、これからが楽しみだ」
ガザールは楽しみにしている様子を見せながらシャドーの後を追った。
その中でシャドーはゲートに入り、姿を消した。
ガザール「期待してるぜ!戦士共!」
ガザールもゲートの中へと入っていった。
そうしてゲートは消え、この場は静寂に包まれた。
その頃、戦士達は隊長室に集まり、未来隊長から説明を受けていた。
剣「暗黒世界?」
そこで剣が疑問に思いながら怪物達の総称であろう名を言った。
未来「あぁ、現段階での呼称としてそう呼ぶ事にした。ヤツらは二度もこの世界を闇で覆い、襲撃を仕掛けてきた。」
未来は机に両肘を立てて寄りかかり、両手を口元に持ってくる体勢でいた。
牙禅「それで、ヤツらの目的はわかるのか?」
牙禅が未来隊長に訊ねた。
未来「申し訳ないけど、それは僕にもまだわからない。だけど、言える事が二つある」
すると、未来隊長はリモコンでテレビを起動させた。
当然、それにより戦士達はそこに視線を集中する。
テレビに映ってあるのは宇宙空間であった。
剣達がいる世界と似たモノが幾つもあり、その中には真っ黒くなったモノもあった。
メビウス「何さ?こんな時にフィクションの話でもする感じ?」
メビウスはテレビについて冗談かと思い、信じていなかった。
未来「違う、これは現実だよ」
だが、未来隊長はそう答えた。
メビウス「は?何言って…いや、マジで言ってるみたいだね…」
ありえない回答にメビウスは唖然とするが、真剣な眼差しを見て、発言の中に嘘は無いという事がわかった。
すると、未来隊長は懐にあった本を手にして、開いた。
未来「かつて世界は一つだった。しかし、ある出来事をきっかけに世界は分離、複数存在する事になった。当然、それぞれの住民達はそんな事も知らないまま過ごしている。」
その中に記してある一文を読み上げた。
アクア「ちょっと待て!この事は仮に理解するとしても!俺達は現実世界にいるのでは無いのか?!」
アクアは声を張り上げて問いかけた。
未来「現実ではあるが、ここの世界は現実世界という名では無い」
未来隊長は瞳を閉じながらそう返した。
膨大な話のあまりアクアは戸惑った。
剣「訊くが、俺達がいる世界の名は?」
内心、困惑しながらも剣はそう訊いた。
未来隊長は一息つくと、目を開けてこう答えた。
未来隊長「創造世界、それがこの世界の名前だ」
それを聞いた戦士達はただ唖然とするしか無かった。
未来「さて、ここからもう一つ」
未来隊長は先程の欠片を戦士達に見せた。
グリン「それは?」
グリンはそれが何なのかを訊ねた。
未来「これは激龍の欠片、アイツら怪物を倒せる力の一つにして、必要不可欠なものだ」
未来隊長はそう説明を述べた。
フレア「待てよ。別にそれが無くても、光とかに弱かったとしても、普通に倒せたからいらないんじゃねぇのか?」
フレアは疑問に思った事を口にした。
アクア「おい!隊長にその口答えは…!」
アクアはフレアの無礼な言動を咎めようとした。
だが、それは未来隊長の待てと手で合図をした事により止められた。
そして、目的の内容について説明し、話を続けた。
未来「激龍というのはこの宇宙の守護神が持つ力の一つだ。そしてその神は光として存在し、その宝石に宿る。だが、激龍神が暗黒世界に敗れ、欠片として各世界に散らばった。それにより暗黒世界は好き勝手に暴れられ、止める事が出来ない」
未来隊長の説明を聞いて、剣はある出来事を思い出した。
それはゴブリンを倒した時に出た欠片の事であった。
剣「もしかして、その欠片が暗黒世界と関係していて、それが暗黒世界を或いはそれを率いる親玉を倒す策と?」
剣の問いに未来隊長は頷いた。
レオ「どういう事だよ?」
剣「確かにダークアイや先のゴブリンなどには光に関するモノに弱いが、怪物…フェイトンの時はどうだ?」
メビウス「まさか…効かないヤツもいるとか?」
剣「その可能性も有り得るという事だ」
そう言うと、戦士達は再度未来隊長の方へと向き直した。
未来「いきなりで申し訳ないが、皆には各世界に向かい、暗黒世界の討滅と欠片の回収を願いたい。頼んでいいか?」
未来隊長は戦士達に訊ねると、「了解」という声が聞こえた。
グリン「とは言えど、どうするんですか?別の世界に行くといってもかなり難題なのでは?ロケットかシロノス社の宇宙船でも使うんですか?」
グリンは任務の内容対して疑問に思っていた。
未来「いや、そうじゃない方法で向かってもらう。そしてそれは既に完成してある」
すると、未来隊長は席から離れ、戦士達についてくるよう指示した。
そうして、戦士達はクロノス社の地下にある一室へと足を踏み入れた。
剣「これは…」
そこは広々としたところで、戦士達の前には机があり、その上には剣達が身につけている腕時計があった。
更にその奥には縦長いオブジェが五つ並んでいた。
未来「秘密裏に進めていたモノだよ、その腕時計には新たなシステムが加わっている。そして、あのオブジェには世界を行き来する際に必要なモノ」
未来隊長は既に身につけている新たな腕時計を一つのオブジェにかざした。
すると、腕時計のから一直線の青い光が放たれた。
光はオブジェに当たると、同じ色の亀裂が現れた。
未来「オブジェじゃなくても壁とか数十メートル先の空間でも創り出せるよ」
未来隊長は光を消して、戦士達の方へと振り返る。
未来「正直、いきなり難しい話をして申し訳ない。だけど、これはやらなければならない事なんだ。頼めるか?」
未来隊長は不安を隠しながら戦士達に訊ねた。
剣「何を今更、それが護る事なら俺はやります。戦士として俺自身として」
剣はそう答えた。
メビウス「まぁ、信じ難いけどもやるしかないよね。それに面白そうだし」
メビウスは微笑みながらそう言った。
その他の戦士達も賛同していた。
未来「心より感謝するよ。では、健闘を祈る」
未来は戦士達にそう伝えた。
戦士達が別の腕時計を装着してくなど準備をしていく中で一人 メビウスは未来隊長に近付いてきた。
メビウス「隊長、一つ訊くんだけどなんで世界の名前なんてのがわかったの?何時から考えてた感じ?」
すると、小声で訊ねてきた。
未来「何時も何も…思い付きでだよ」
メビウス「あぁー…そうなのね」
微笑みながら平然と答える未来隊長にメビウスは少し損したと言わんばかりの様子を見せながらオブジェに近付いた。
そうして先程のやり方同様に青い亀裂の形をした次元の穴へと入り、各世界に向かった。
未来「…いるかどうかはまだ定かじゃないし、関わっているのかもわからないけど、君の思い通りにはさせないよ」
静寂に包まれたこの空間で未来隊長は緊迫した表情でこう呟いた。
次回 第拾伍話 「並行する別世界」




