第拾壱話 「一つ目の鎧」
この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
今よりだいぶ前の出来事。
血の如く真っ赤な空、燃え盛る炎に包まれた荒廃した街。
その中で一人の隊員が一人の女に銃を向けていた。
「助けてぇ…!殺さないでぇ…!」
女は涙を流しながら命乞いをしていた。
「ごめんなさい…ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい…ッ!」
隊員は何度も謝罪の言葉を繰り返しながらその女に対して発砲した。
場面は変わり、H市街地区。
メビウスは紺色の兜と鎧 キュクロプスを装備したドレイクと対面し、戦闘態勢に入っていた。
メビウス「なんだよ、その鎧…随分と凄いデザインしてんなァ、おい」
メビウスはキュクロプスを奇妙に思いつつも、警戒する。
ドレイク「これはフェイトンが私に与えてくれた代物だ」
ドレイクはキュクロプスについてそう説明した。
ドレイク「この世界は間違えている。仕方が無いとは言え、大勢の市民を殺してきた。なのに、なんのお咎めも無く、のうのうと生きている。」
すると、ドレイクはそんな事を言い出した。
ドレイク「そんなヤツらが正義を掲げて悪を断つ。私はそれが許せない…だから、この世界の人類、全てを殺す…!」
ドレイクの両手を握りしめる。
すると、キュクロプスの装甲が展開、赤い蒸気が発生する。
メビウス「おいおい、なんかさっきより増してねぇか?殺気がよ」
メビウスはドレイクの異変に気が付いた。
ドレイク「行くぞ…!」
走り出そうと一歩踏み出した次の瞬間、ドレイクの姿が消えた。
メビウス「ッ!来るか!」
メビウスは両手両足が青く染まり、そこから同じ色に光るオーラが放たれる。
それだけでなく、ドレイクを目で捉えようと両眼にも青いオーラが発現する。
メビウス「うッ…!」
メビウスの腹部に激痛が走り、衝撃を受ける。
なんだと思い、下を向く。
メビウスの懐にはドレイクがおり、拳を突き出していた。
メビウス(速ぇッ…!)
そう思ったのも束の間、メビウスは勢いよく後ろへと吹き飛ばされる。
そうして、ビルの壁に身体を打ち付ける。
それにより窓ガラスが割れ、舞い散る。
メビウス「おいおい、明らかに化け物じみた力じゃねぇかよ…」
口から血を流すメビウスは正面へと目を遣る。
一歩、また一歩と踏み出しているドレイクの姿が見えた。
ドレイク「この程度で済むと思うなよ!」
またドレイクは一歩踏み出したその直後、姿を消した。
メビウス「あぁ!そうかよ!」
メビウスは瞬時に予測し、横に転がるように回避する。
すると、先程までメビウスがいた場所にドレイクの拳が叩き込まれる。
だが、それで終わるはずもなくドレイクもメビウスを追うようにして横に移動しながら連続で拳を突き出す。
それを回避するようにメビウスも横に転がる。
メビウス「いい加減に…!」
次の刹那、メビウスは姿を消した。
メビウス「しろよ!」
その直後、ドレイクの背後に現れ、彼の顔面に蹴りを入れた。
それを受けたドレイクはよろめくように後退する。
ドレイクは首をメビウスの方へと向ける。
メビウス「やっぱ、頑丈だよなァ…アンタ」
ニヤけるメビウスはまた姿を消した。
ドレイク「音速か、或いは…」
ドレイクは構えを取りながら五感を研ぎ澄ます。
メビウスの走るスピードがより増して、爆発音が周囲の空間を響かせた。
ドレイク「ソニックブームか…!」
ドレイクがそう思ったのも束の間、メビウスはドレイクの腹部に拳を一発ぶち込んだ。
ドレイク「ゴハッ…!」
その威力は絶大であり、ドレイクが声を上げた。
メビウス「オラオラオラオラオラ!!」
続けてメビウスは拳によるラッシュを繰り出した。
ドレイク「これがお前の強さか…!」
その攻撃をドレイクは腕をクロスさせて護りに徹した。
メビウス「オ”ォ”ラ”ァ”ァ”ァ”ッ!!」
メビウスはありったけの拳の一撃をドレイクにぶち込んだ。
ドレイク「くっ…!」
それによりドレイクは激しく後ろへと吹き飛んだ。
ドレイクの周りに粉塵が広がる中、赤く光る何かが現れた。
ドレイク「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す…」
それはドレイクであり、獣のような体制や発する言葉などが大きくかけ離れていたものとなっていた。
メビウス「空気が変わった…?」
その変異をメビウスはすぐさま感知した。
ドレイク「ヴゥ”ゥ”ゥ”…グルゥア”ア”ア”ア”!!」
ドレイクが怪物のような雄叫びを上げた直後、メビウスに急接近した。
メビウス「マズいなァ…!」
危機を感じたメビウスは超音速で後ろに下がった。
ドレイクの叩き潰さんと言わんばかりの拳による一撃がメビウスに襲いかかる。
メビウス「うおっと!」
メビウスは首を傾げるようにして攻撃を回避した。
その威力は想像以上であり、打ち付けた場所である建物の壁にはクレーターが生じていた。
メビウス「アイツ!増々、人から乖離してやがる!」
メビウスはドレイクに戦慄していた。
ドレイク「ぐあああああ!!!」
ドレイクは雄叫びを上げながら、再度メビウスに急接近すると、荒々しく腕を振るって攻撃をした。
メビウス「そうか!こいつ暴走してる!!あの鎧に仕込まれたシステムか何かによって!」
メビウスも拳によるラッシュを繰り出して、なんとか攻撃を防ぐ。
だが、完全では無い故に至る所が傷つく。
メビウス「ぐぅぅぅぅ…!!」
メビウスは苦戦していた。
ドレイク「キシャアアア!!!」
ドレイクは最大の一撃である蹴りをメビウスに与えた。
メビウス「グハッ…!」
それを受けたメビウスは肋が折れて、見事に吹き飛んだ。
そうしてメビウスの身体は建物の壁に打ち付けられた。
メビウス(クッソ…意識が……)
運の悪い事に脳震盪を起こしたメビウスは立ち上がることすら出来なかった。
瞼を閉じ、そのままメビウスは気を失った。
『立て、クソカギ』
真っ暗な闇の中、一筋の光が見え、懐かしい声が聞こえる。
メビウス「誰が…クソガキだよ……つか、懐かしいな、おい……」
メビウスの肉体は手で土を掴むように握りしめた。
『うっせぇ、そんな事よりももっと優先する事があるだろ』
また、メビウスの頭に声が響いた。
メビウス「わかってる…だから、やるんだろ!」
謎の声によりメビウスの意識は完全に戻り、ドレイクに対して構えた。
ドレイク「…殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
ドレイクは呪われているかのように何度も繰り返して、唱えた。
メビウス「どうすればいい?」
『んな事は、自分で考えろ』
メビウスの考えに声が遮った。
メビウス「そーだけどさ…」
『…俺に教わっただろ』
メビウスの返答に声はアドバイスを提示した。
それを聞いたメビウスは微笑んだ。
メビウス「そうだね、志狼さん!」
声の正体 志狼により、メビウスは勇気づけられた。
ドレイク「殺す殺す殺す殺す…殺すッ!!」
ドレイクはメビウスに急接近し、爪を立てたその手を突き出した。
だが、メビウスは身体を反る様に回避した。
それに続けてメビウスは全身を使って、ドレイクの腕を捕らえた。
腕挫十字固を繰り出したメビウスはそのまま力を入れた。
すると、骨が軋みながらドレイクの腕は折れた。
ドレイク「ぐあああああ!!」
痛みのあまり叫ぶドレイクは全身を振り回し、メビウスを地面に叩き付けようとした。
だが、メビウスはそこから一旦、身体を離した直後、ドレイクの頭へと移った。
そしてそのままメビウスは脚に力を入れ、ドレイクの頭を締め付けた。
すると、ドレイクを纏うキュクロプスの仮面が軋み始め、亀裂が走った。
ドレイク「あ”あ”あ”あ”あ”あ”ッ!」
ドレイクは折れていない方の手でメビウスの脚を捕らえようとした。
メビウス「引き剥がさせねぇよ!」
だが、メビウスの化身であるソニック・スターがそれを阻止した。
ソニック・スターはその腕を捕らえ、後ろに回した。
それに続けて逃さまいと彼の片足を蹴り、強制的に跪かせた。
ドレイク「ク、クソ…!」
ドレイクの自我が確実に戻っていく。
メビウス「ドレイク!アンタの考えだけど、間違ってないと思うぜ」
突然、メビウスがそんな事を言い始めた。
ドレイク「何を、同情などいらな…」
ドレイクの言葉をメビウスは遮り、話を続けた。
メビウス「正義組織は多くの人を殺しかもしれない、償えきれない程の大きな罪かもしれない。けど、何のお咎めもないって訳じゃない」
メビウスの言葉にドレイクは沈黙した。
メビウス「死んで償うんじゃない、生きて償う。だから、俺達がこの世界を護る。例え批判されようとな」
ドレイクはその言葉を静かに聞いていた。
そして、キュクロプスの仮面が崩壊した。
その直後、ドレイクは何かから解放されたかのように倒れた。
ふと、ドレイクの脳裏にある記憶が過ぎった。
それは幼い頃の自分であり、かつて警察に憧れていた幼少期。
それに続けて現れたのは警察になる為に努力していた学生の頃。
警察となって活躍する自分。
そして、警察から正義組織の特殊部隊になった自分。
記憶が紙芝居のように流れていく。
ドレイク(私は…何処で……間違えたんだろう……)
その思いを最後にドレイクの意識は途切れた。
ドレイクを見下ろすメビウスは能力を解除した。
それによってソニック・スターの姿が消えた。
メビウス「褒められないし、いけないだろうけど、よく頑張ったと思うよ。アンタは」
その言葉を最後にメビウスは先を急いだ。
時を遡り、場面はL市街地区。
その中を剣は走っていた。
一切呼吸が乱れる事無く、素早く駆けていた。
そこは他の市街地区とは異なり、何の被害も無かった。
そんなところに何故、剣が駆けつけていたのか?
それは緊急事態のアラートが鳴り響く中のクロノス社にいた頃へと遡る。
剣「ヘリアデスのアジトが判明したと?」
アルドラス「そうだ。ロイドから得た情報によると場所はL市街地区にある廃工場だと言っていた。」
アルドラスは剣に地図と住所が記された紙切れを見せた。
剣「了解した。すぐにそこへ向かう」
剣はそれを見て、頭の中に記憶すると、アルドラスにそう伝えた。
場面は戻り、剣は足を止めた。
剣「ここか!」
その先には地図と手紙に記されていた廃工場があった。
剣は廃工場に足を踏み入れると、一本道の通路を走り出した。
剣「ここにヘリアデスの首領が…!」
そうして通路を抜けると、広々とした一室に辿り着いた。
そして、剣はその先にいる…椅子に居座る人物に目を遣った。
剣「そこまでだ!フェイトン!!」
剣は鞘から太刀を引き抜き、構えた。
フェイトン「おや、来ましたか…焔の剣士」
その人物 フェイトンは椅子に座ったまま剣を見下ろしていた。
だが、この時のフェイトンの身体は何処か厳つくて、異様であった。
剣「ヘリアデス首領、フェイトン!数人の凶悪犯を脱獄させ、大勢の市民を虐殺した罪!ここで断ち斬る!」
剣はフェイトンにそう宣言した。
フェイトン「そうですか…困りましたね」
フェイトンは近くにある筒状の金属を手にし、椅子から立ち上がる。
フェイトン「生憎、私はヘリオスの信念を受け継いでいるのでね、まだ死ねやしないんだ。」
そうして一歩、また一歩と椅子から遠ざかっていく代わりに剣に近づいて来る。
フェイトン「すまないね、偉大なるアザトース様の妨げとなるのならば…」
そうして、フェイトンは筒状の金属を起動させる。
すると、その先端から光の刀身が発生した。
フェイトン「大人しく死んでくれたまえ!」
その武器 サンビムをフェイトンは構えた。
剣「フェイトン!お前の野望、ここで断ち斬る!!」
剣は太刀をフェイトンに向けるように構えると、全身から焔を発現させた。
次回 第拾弐話 「認識は事実よりも歪なり」




