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ユニーク賢者物語  作者: ハヤテ
第2部第3章 そして、「世界」は動き出す

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第63話 そして、「神」降臨・2


 「俺はゼウス。ここにいる春風の故郷、異世界『地球』の神の1柱だ」


 と、堂々とした態度でそう名乗ったゼウス。


 しかし、


 『……』


 春風、レナ、凛咲を除いた周囲の人達は、皆、口を開けて呆然とした表情のまま固まっていた。


 そんな状況の中、


 「なぁ、春風。なんか、皆さんの反応が薄いんだが……」


 と、頭上に「?」を浮かべたゼウスが、春風に向かって小声で話しかけてきたので、


 「あー。多分、そんな事はないと思うのですが……」


 と、春風は「あはは」と苦笑いしながらそう返事すると、


 「……はっ! お、おい、春風! どうなってるんだ!? なんか()()()が出てきたと思ったら、いきなり自分の事を『神』と名乗ったぞ!?」


 「そ、そうですよ春風君! 一体彼は何なのですか!? というか、君の持ってる()()は、魔導具なのですか!?」


 「あー春風、前々から思ってたんだけど、アンタ本当に何者なんだい?」


 「は、は、春風君! 一体これはどういう事なんだ!? 彼は本当に『神』なのか!?」


 と、我に返ったヴァレリー、タイラー、レベッカ、そしてアメリアが怒涛の勢いで詰め寄ってきた。


 その勢いに呑まれたのか、


 「え、あ、ちょ……!」


 と、春風が戸惑っていると、両者の間に割って入るように、


 「はいはい、皆さんそこまで! ハニーが困ってんでしょうが」


 と、凛咲がヴァレリー達に向かって注意するようにそう言ったので、彼女達は再び我に返って、申し訳なさそうに春風から離れた。


 するとそこで、


 「……そうですね。私も驚きのあまり固まってしまいました」


 と、漸くオードリーも我に返ったので、オードリーはスッとソファーから立ち上がって、


 「ゼウス様……で、よろしいでしょうか? お見苦しいところを見せてしまい、申し訳ありませんでした。そして、はじめまして、私はこのフロントラルの市長を務めております、オードリー・クロフォードと申します。以後お見知り置きを」


 と、ゼウスに向かって深々と頭を下げて謝罪しながらそう自己紹介した。


 それを見たゼウスは、


 「いや、気にしないでくれ。いきなり『神』なんてもんが目の前に現れたんだ、仕方ないさ。で、改めてはじめましてだな。さっきも言ったが、俺はゼウス、異世界『地球』の神の1柱だ。ここにいる雪村春風が、随分と世話になった。神々を代表して、礼を言う」


 と、オードリーに向かって改めてそう自己紹介すると、最後に、


 「ありがとう」


 と、付け加えた。


 それ聞いて、オードリーは「そんな……」と顔を真っ赤にすると、すぐにハッとなって「いけないいけない」と首をブンブンと横に振るい、


 「それでゼウス様、早速ですが、そちらの彼は一体何者なのでしょうか? ここまでの流れ的に、只者ではないと思うのですが」


 と、チラリと春風を見ながら、ゼウスに向かってそう尋ねた。


 その質問に対して、ゼウスは真剣な表情になると、春風の肩にポンと手を置いて、


 「もう大体察しはついてんのかもしれねぇが、こいつは『勇者召喚』に巻き込まれてこの世界に来たんじゃねぇ。俺達『地球の神々』がこの世界に送り込んだ、まぁ言ってみれば『異世界の神の使徒』ってところだな」


 と、周りを見回しながらそう答えた。


 その答えを聞いて、レナと凛咲を除いた周囲が再び呆然としていると、


 「え、ちょっと待ってくださいゼウス様、俺ってそんな大袈裟な立場なんですか!?」


 と、頭上に幾つもの「?」を浮かべた春風が、ゼウスに向かってそう尋ねてきたので、


 「おいおい事実だろ。お前、俺らの1柱と『契約』してここにいる訳だし……」


 と、ゼウスは「何言ってんだお前?」と言わんばかりの呆れ顔でそう答えた。


 その答えに反応したのか、


 「え、おいちょっとま……!」


 と、再び我に返ったヴァレリーが春風に詰め寄ろうとしたが、それを遮るように、


 「ゴホン!」


 と、それまで黙っていたフレデリックがそう咳き込んだので、ヴァレリーはピタッと動きを止めて、春風達と共にフレデリックの方へと振り向くと、


 「ゼウス様、無礼を承知で失礼します。彼の……いえ、彼とあなた方『神々』の『本当の目的』を教えてほしいのですが、よろしいでしょうか?」


 と、フレデリックはゼウスに向かってそう尋ねた。


 すると、ゼウスはまた真剣な表情になって、


 「その話をする為に、ここに来る前に()()1()()を呼んだんだ。多分そろそろ来る頃だと思うんだが……」


 と答えた。


 その答えに誰もが「え?」と首を傾げていると、突然眩い光と共に、今、春風達がいる部屋の中に、白い「扉」が現れた。


 突然の事に「え? え?」と誰もが混乱し、レナは扉を見て「あ……」と小さく呟いていると、ゆっくりと白い「扉」が開かれて、その向こうから金色の長い髪と瞳を持つ10歳くらいの少女が現れた。


 その少女を見て、


 「お、お母さん!」


 と、驚いたレナがそう叫んで少女の傍まで駆け寄り、


 『え、お、お母さん!?』


 と、春風と凛咲を除いた誰もが戸惑っていると、


 「よぉ、来たかヘリアの嬢ちゃん」


 と、ゼウスが少女に向かってそう挨拶し、


 「出来る事なら、こうして現れたくはなかったのですが……」


 と、「ヘリアの嬢ちゃん」と呼ばれた少女は、本気で「来たくなかった」と言わんばかりの嫌そうな表情でそう返した。


 それに対して、


 「仕方ねぇだろ、俺だけじゃなくて嬢ちゃんの話も聞かせなきゃいけねぇんだから」


 と、ゼウスは頭を掻きながら更にそう返したので、少女は「まぁ、そうなんですが」と溜め息を吐きながら更にそう返した。


 そんなゼウス達のやり取りに、


 『え、何なになに!? 何なの一体!?』


 と、ヴァレリー達が一斉に混乱し出すと、少女は再び溜め息を吐いて、


 「はじめまして、フロントラルの皆様。私の名は、ヘリアテス。血は繋がっていませんが、こちらにいるレナ・ヒューズの『母』で、『長い封印から目覚めた邪神』の1柱……と言えばいいでしょうね」


 と、穏やかな笑みを浮かべて、周囲を見回しながらそう自己紹介した。


 そして最後に、


 「娘が大変お世話になってます」


 と付け加えて。


 

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