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ユニーク賢者物語  作者: ハヤテ
第2部第3章 そして、「世界」は動き出す

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第57話 「市長」からの招待


 時は戻って、中立都市フロントラル、宿屋「白い風見鶏」での「宴会」の翌日。

 

 以前にも語ったが、フロントラルという都市は中央の広場を中心に幾つかの区画に分けられている。


 そして現在、春風、レナ、アメリア、エステル、ディック、ピート、凛咲の7人は、その区画の1つである「行政区」内のとある建物の前にいる。


 因みに、グラシアも一緒にいるのだが、幽霊なのでここではカウントしないという事で。


 都市の法律や政治などの部分を司る「行政区」には、他の区画にはない立派な建物が幾つかあるのだが、その中でも特に大きくて立派なその建物を前に、


 「……」


 と、春風がかなり緊張していると言わんばかりの表情になっていると、


 「春風、大丈夫?」


 と、隣に立っているレナが心配そうに尋ねてきたので、


 「え? ああ、うん。大丈夫、大丈夫だよ」


 と、春風はレナを見て笑顔でそう答えた。


 そして、春風は再びその建物に向き直ると、


 「じゃあ、行こうか」


 と言って、レナ達と共に建物の中へと入っていった。


 その最中、


 (ああ、やっぱり緊張するなぁ)


 と、春風はそう思いながら、昨日の「宴会」での事を思い出した。


 時は、昨日へと遡る。


 「はじめまして皆さん。私は、この『中立都市フロントラル』の『市長』を務めてる、オードリー・クロフォードです。以後、お見知り置きを」


 と穏やかな笑みを浮かべてそう自己紹介した女性、オードリーを前に、


 (あ、そういえば俺、この人を見かけた事あったな)


 と、春風は思い出したかのように心の中でそう呟いた。


 実は春風は、このフロントラルでハンター活動をしていた時に行政区に足を運んだ事があった。


 そしてその時に、遠くで目の前にいるオードリーを見かけた事があったが、


 (おっと、今は仕事仕事!)


 と、その時は自身の活動を優先していた為、次第に彼女の事を忘れていたのだが、それが今、こうして目の前に現れた事で、春風は彼女の事を思い出す事が出来たのだ。


 とまぁそれはさておき、


 「こんばんはオードリーさん」


 と、レベッカがオードリーに向かってそう挨拶すると、


 「ああ、こんばんはレベッカさん。今日はいつもより凄く賑わってますね」


 と、オードリーは穏やかな笑みを崩さずにそう返した。


 「ああ、ありがとね。で、市長さんがわざわざうちに何の用事だい?」


 と、レベッカがお礼を言いながら、オードリーに向かってそう尋ねると、


 「仕事が終わりましたので、半分は食事に。そしてもう半分は……」


 と、オードリーは春風は春風を見て、


 「断罪官のギデオン・シンクレア大隊長を倒した彼に会いに来た、と言えば良いでしょうね」


 と、そう答えたので、春風はビクッとなって、


 「ど、どうもこんばんは! ハンターのハル……いえ、雪村春風といいます!」


 と、緊張した様子でそう答えた。因みに、「ハル」ではなく「雪村春風(本名)」を名乗ったのは、ここにいる全員がその名を知っているので、今更偽名は必要ないだろうと考えていたらからだ。


 さて、春風から挨拶されたオードリーは、「あらあら……」と小さな声でそう呟くと、


 「そんなに緊張しないでください。何もあなたを責めにきたのではありませんから」


 と、春風に向かって優しくそう言った。


 その後、


 (いや、ほんとに何しに来たんだ!?)


 と、春風が心の中で焦っていると、


 「うーん。あなたには色々と聞きたい事がありますが、ここは少し騒がしいので、明日、行政区にある『市役所』に来てください。勿論、そこにいる()()()()と、『異端者』さん達、そして、そちらの女性の方も一緒に、ですよ」


 と、オードリーはちらりとレナとアメリア達、そして凛咲を見てそう言ったので、レナ達もびくっとなって警戒心を強くしたが、


 「さて、それでは食事といきましょうか」


 と、オードリーはそんなレナ達を無視して、テーブル席に移動し、


 「すみませーん……」


 と、自分の食事を注文した。


 そんなオードリーを前に、


 (いや、『市役所』って……あれ? これって、『一難去ってまた一難』ってやつなんじゃ……)


 と、春風は緊張したのか、額からたらりと冷や汗を流し、そんな春風を、


 「は、春風……」

 

 「ハニー……」


 と、レナと凛咲は心配そうに見つめた。


 


 

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