表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユニーク賢者物語  作者: ハヤテ
第2部第3章 そして、「世界」は動き出す

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/220

第56話 断罪官の帰還


 時は少し前まで遡る。

 

 それは、春風が宿屋「白い風見鶏」に担ぎ込まれた、丁度その頃の事だった。


 ルーセンティア王国王都内のとある施設。ここは、エルードの宗教組織である「五神教会」の本部で、その中の一室では、


 「……以上で、報告は終わりです」


 「そうですか」


 と、五神教会の現教主であるジェフリー・クラークが、いつものように教会幹部の神官からの報告を受けていた。


 「ふむ、『勇者』達は順調に育っているようですね」


 と、ジェフリー・クラーク……以下、ジェフリーがそう呟いたように、報告の内容は、「勇者召喚」によってこの世界に召喚された「勇者」達こと爽子達の近況についてだった。


 その後、報告を終えた幹部の神官が部屋を出ていくと、


 「まったく、ストロザイア帝国の()()()()め! 大切な『勇者』達を6()()も連れて行くとは!」


 と、1ヶ月と少し前に起きた()()()()()()を思い出して、ジェフリーは怒りで顔を歪めたが、すぐに落ち着きを取り戻して、


 「だが、まあいいでしょう。残りの『勇者』達は特に問題を起こす事なく育っているのですから」


 と、報告にあがった勇者達の事を考えて、「ふふ」と小さく笑った。


 するとその時、ドンドンドンッと激しく部屋の扉を叩く音が聞こえたので、


 「どうかしましたか?」


 と、ジェフリーが穏やか口調でそう言うと、


 「きょ、教主様! ご報告があります!」


 と、扉の向こうから何やら焦った口調でそう言う声がしたので、


 「? 入ってください」


 と、ジェフリーは首を傾げながら、その声の主に向かってそう言った。


 その後、「失礼します!」という返事と共に扉が開かれて、その向こうから先程報告していた幹部の神官とは別の神官が、顔を真っ青にしながら何やら焦った様子で部屋に入ってきた。


 そんな神官の様子を見て、


 「おやおや、そんなに慌てて一体どうしたのですか?」


 と、ジェフリーが尋ねると、神官は真っ青な表情のまま、


 「ほ、報告します! たった今、『断罪官』のギデオン・シンクレア大隊長の部隊が帰還しました!」


 と、背筋をぴんと伸ばして、ジェフリーに向かってそう報告した。


 その報告を聞いて、


 「おお、そうでしたか! しかし、何故そんなに顔を青くしているのですか?」


 と、ジェフリーが再び尋ねると、神官は体を震わせながら、


 「じ……実は……」


 と、更に報告してきた。


 その報告を聞いた次の瞬間、


 「な……何ですってぇえええええええっ!?」


 と、ジェフリーは神官と同じように顔を真っ青にして絶叫した。


 そして、


 「そ、それで、ギデオン大隊長達は何処に!?」


 と、ジェフリーが神官の肩を掴んでそう問い詰めると、


 「あ、案内します! こちらです!」


 と、神官はそう答えて、ジェフリーを連れてとある場所へと向かった。


 暫くの間本部の廊下を走っていると、ジェフリーと神官はとある部屋の前に着いた。


 そこは、五神教会本部内にある治療室で、


 「こちらになります!」


 と、神官がそう言うと、大急ぎで治療室の扉を開けた。


 「こ、これは……!」


 と、ジェフリーが驚いたように、そこでは多くの断罪官の隊員達が、それぞれ治療を受けていた。


 そのあまりの光景に、ジェフリーは絶望したのか更に顔を真っ青にしたが、すぐに首をブンブンと横に振るって、


 「ぎ、ギデオンは……ギデオン大隊長は何処に……?」


 と、治療室内のあちこちに視線を向けた。


 そして、とある方向を見て


 「……あ」


 と、ジェフリーはそう声をもらした。


 その視線の先にあったのは、治療室に備え付けられたベッドの上で数人の神官から回復魔術を受けている、真っ黒コゲの状態になってる1人の人物の姿だった。


 ジェフリーはその人物にゆっくりと近づくと、


 「ぎ……ギデオン大隊長」


 と、その人物の名を呼んだ。


 その後、


 (ど、どうして……彼程の人物がこんな……)


 と、ジェフリーは絶望したかのような表情でギデオンの全身を見つめると、


 (ん? 何か手に持って……)


 と、ギデオンの()()()()()()()()()を見て、


 「ひ、ひぃいいいいいいいっ!」


 と、悲鳴をあげた。


 「す、スパークルが、聖剣スパークルが折られてるぅううううううう!」


 そう、ギデオンの手に握られていたのは、刀身が途中でぽっきりと折れ、切先を失った「聖剣スパークル」だった。


 その折れた聖剣スパークルを見て、


 「ど、どうして……どうして、こんな……」


 と、ジェフリーは更に顔を真っ青にしながらそう言うと、白目をむいて、バタリとその場に倒れた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ