第49話 降り立ったのは……
第2部第2章、最終話です。
「これ以上手を出す気なら……私が許さない」
突如、春風達の前に降り立った謎の女性は、ルークと断罪官の隊員達に向かってそう言い放った。
肌にぴっちりと張り付いた黒衣に身を包んだその女性に睨まれ、ルーク達が「ぐ……」と動けずにいると、女性はくるっと後ろを振り向いて、レベッカに支えられている春風に近づくと、
「久しぶり、愛しい春風」
と、穏やかな笑みを浮かべてそう言った。
その言葉を聞いて、レナが「む!」と頬を膨らませたのが見えたが、春風はそれをスルーして、
「何でここに……師匠が?」
と、女性に向かってそう尋ねた。
その質問にレベッカやレナを含めた周囲の人達が「え?」とポカンとしていると、「師匠」と呼ばれた女性は「ふふ……」と笑って、右手で春風の左右の瞼に触れると、
「疲れてるでしょ? ゆっくり休んで」
と言って、ソッと春風の瞼を下ろした。その瞬間、
「し、ししょ……」
春風はまるで眠ったかのように動かなくなった。
その後、「師匠」は再びくるっと後ろを振り向くと、
「うーん。帰る気はないみたいねぇ」
未だ武器を構えて戦闘態勢に入っているルーク達を見て、「はぁ」と溜め息を吐きながら言った。
「仕方ないわね」
と、「師匠」はそう言うと、再び春風の方を向いて、
「ちょっとこれ、借りるね」
と言って、春風の腰のベルトに挿した「鉄扇・彼岸花」を引き抜いた。
それを見て、
「え、ちょ、それ……!」
と、レナが何か言おうとしたが、「師匠」はそれを無視して、
「さぁアンタ達、春風を殺したかったら、私に勝つ事ね!」
と、目の前のルーク達に向かってそう挑発した。
その言葉にカチンときたのか、
『き、貴様ぁあああああああ!』
と、ルーク達は一斉に「師匠」に襲いかかったので、
「危ない!」
と、アメリアはそう叫んだが、
「……やれやれ」
と、「師匠」がそう呟いた次の瞬間、
『ぐあああああああっ!』
なんと、ルーク達は一瞬のうちに……「師匠」によって全滅した。
どさどさとその場に倒れ伏したルーク達を見て、
(し、死んだのか!?)
と、誰もがそう思っていると、
『う、うう……』
と、全員微かに息をしているのが見えた。
そんな彼らを前に、
「安心して。私、無益な殺しはしない主義なの」
と、「師匠」は鉄扇で自身の肩をとんとんと叩きながらそう言った。
あまりの事にレナ達は口をあんぐり開けてポカンとしていると、「師匠」は倒れているルーク達に近づいて、
「あーよいしょっと!」
と言うと、なんと「師匠」は倒れているルーク達を全員片手で持ち上げた。
その後、「師匠」はルーク達を持ち上げたまま、ギデオンを手当てしている残りの隊員達に近づいて、
「返すね。でもって一緒に連れて帰ってね」
と言うと、ルーク達を彼らの前にドサッと置いた。
『っ!』
隊員達は「師匠」をキッと睨みつけた後、ルーク達を自分らのところに寄せた。
そして、隊員の1人が懐から拳ほどの大きさの綺麗な石を取り出すと、
「……本部に、帰還する」
と、小さな声でそう言った。
次の瞬間、石から白い光が出てきて、断罪官達を全員残らず包み込むと、何処かへと飛び去った。
それを見て、
「おー、凄いわねぇ!」
と、「師匠」はそう感心した後、またくるっと春風達の方へと振り向いて、
「あー、ちょっとすみません」
と言った。
その言葉に眠っている春風を除いた周囲の人達が「え?」と首を傾げていると、
「春風を手当てしたいから、この近くに病院ってありますかぁ?」
と、「師匠」は笑顔でそう尋ねた。
その質問を聞いて、レナをはじめとしたその場にいる者達は、
『え、えぇ?』
と、皆、何とも言えない表情をした。
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ここまでの春風のステータス
雪村春風(人間・17歳・男) レベル:25
職能:見習い賢者
所持スキル:[英知][鑑定][風魔術][炎魔術][水魔術][土魔術][錬金術][暗殺術][調理][隠密活動][体術][杖術][槍術][棒術][鎌術][弓術][鉄扇術][暗器術][鍛治][裁縫][細工][調合][嘘発見]
称号:「異世界(地球)人」「固有職保持者」「神(地球)と契約を結びし者」「神に鍛えられし者」「新米ハンター」
どうも、ハヤテです。
という訳で、以上で第2部の第2章は終了となります。
そして次回からですが、少し時間を置いた後、第2部新章か、久し振りに派生作品である「青の鬼人物語」の新章を書いていこうと考えていますので、どうぞよろしくお願いします。




