第24話 バレちゃいました!
今回は、いつもより短めの話かもしれません。
「あの男は……私を殺した男です」
そう言ったグラシアからの言葉の意味を、
「……え?」
春風は、理解出来ないでいた。
その後すぐに、
「そ、それは……どういう事ですか……?」
と、ハッとなった春風が、恐る恐るグラシアに尋ねようとしたが、まさにその時、
「その話、私にも詳しく教えてもらおうか」
「「っ!」」
突然のその声に、春風とグラシアが驚いていると、部屋の扉がギィッと開かれて、真剣な表情をしたレベッカが部屋の中へと入ってきた。
それを見て、春風とグラシアは一瞬凍りついたように固まったが、すぐに2人ともハッとなって、
「あ、いや、レベッカさん! これは、その……」
「あ、あの! あのあのぉ……!」
と、大慌てで何か言おうとしたが、思うように言葉が出ず、2人ともアワアワするだけだった。
そんな様子の2人を見て、レベッカは「はぁ」と溜め息を吐くと、
「落ち着きなハル。前々からアンタがただの一般人じゃないって事は、なんとなくわかってたさ」
と春風に向かってそう言ってきたので、春風とグラシアは大きく目を見開いて「え、マジで!?」と言わんばかりの驚きに満ちた表情になり、その後すぐに、
「ど、どうしようグラシアさん!」
「ど、どうしましょう春風様!」
と、2人はお互い顔を見合わせてそう言い合うと、ガタガタと体を震わせた。
そんな2人の姿を見て、レベッカは「やれやれ……」と小さく呟くと、
「安心しな、アンタが良い奴だって事はわかってるし、別にアンタ達をどうこうする気もないよ」
と、2人を安心させるように優しくそう言った。
その言葉を聞いて、春風とグラシアは「ぐぬぬ……」と最初は警戒したが、すぐに深呼吸して気持ちを落ち着かせると、
「黙ってて、すみませんでした」
「私も、大変申し訳ありませんでした」
と、レベッカに向かって深々と頭を下げて謝罪した。
レベッカはそんな2人を見て「気にするんじゃないよ」と再び優しく言うと、
「で、さっきの続きなんだけど、グラシアさんだったかい? 断罪官に殺されたって事は、アンタ『異端者』って事でいいんだな?」
と、グラシアに向かってそう尋ねてきたので、
「……そうです、私はグラシア・ブルーム。生前は、連中の言う『異端者』……固有職能『時読み師』の固有職保持者でした」
と、グラシアはレベッカに向かってそう自己紹介した。
その紹介を聞いて、レベッカは「ほぉ」と大きく目を見開きながら
「固有職保持者。『神々』の加護を持たない異端の職能保持者だったな。噂だけの存在と思ってたけど、本当にいたんだねぇ。で、『時読み師』って事は、もしかして『過去』も『未来』見えちまう……とか?」
と、再びそう尋ねた。
その質問に対して、グラシアはコクリと頷きながら、
「そうです。死んでこうして幽霊となった今ではもうその力はありませんが、『時読み師』とはその名の通り、時間の流れを読み取る者の事で、主に物や人が持つ『過去の記憶』を読み取ったり、ほんの僅かではありますが、その人がどのような『未来』を迎えるのかを視る事が出来るのです」
と、自身がかつて持っていた「時読み師」の固有職能について説明した。
その説明を聞いて、
「ほほう、そりゃ凄いね! それが本当なら、まさに『異端』の力じゃないか!」
と、レベッカが驚きながらそう言うと、
「……そうですね。この『力』はまさに異端……『悪魔』の力ですよ。実際、この力の所為で……私は家族を失ってしまいましたから」
と、グラシアは悲しみに満ちた表情でそう返した。
それを聞いて、レベッカだけでなく春風までもが、
「「……え?」」
と、驚いたように大きく目を見開きながら固まっていると、グラシアは「ふふ」と小さく笑って、
「少し、生前の話をしてもよろしいでしょうか? と言いましても、あまり良い話ではありませんし、レベッカさん、あなたにとって、凄く辛い話になってしまいますが……」
と、レベッカを見ながら尋ねるように言うと、
「……ああ、構わないよ。全部話してくれ」
と、レベッカは真剣な表情でそう答えた。そんな彼女の横で、春風も「うんうん」と激しく頷いた。
それを見たグラシアは、再び深呼吸すると、
「わかりました。全てをお話しします」
そう言って、自身の「過去」を話し始めた。




