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ユニーク賢者物語  作者: ハヤテ
第2部第2章 対決、「断罪官」

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第23話 「虐殺部隊」がやって来た


 それから春風は、フロントラルに戻った後、ギルド総本部で「仕事終わりました!」と報告して報酬を貰うと、いつものように資料室に籠って勉強し、宿屋「白い風見鶏」で夕食を済ませて、部屋に戻って就寝した。


 ただ、その際に、


 (それにしても、あの子達は一体何者なんだ?)


 と、昼間に出会った2人の少年達の姿が脳裏に浮かんだが、


 「ま、考えてもしょうがないか」


 と、気持ちを切り替える事にした。


 その出来事が、後に「厄介な事態」に巻き込まれるきっかけになる事も知らずに。


 翌日、朝起きて朝食を済ませた春風が、仕事を受けにギルド総本部へと向かおうとした、まさにその時、


 「待ちな!」


 「へ? うわぁ、何!?」


 出入り口でいきなりレベッカに肩を掴まれ、食堂の中へと戻されてしまった。


 突然の事に春風は、


 「ちょっとレベッカさん、一体なん……!?」


 と、レベッカに何事か尋ねようとしたが、


 「しぃっ!」


 「むが!?」


 と、最後まで言い終える前にレベッカに口を塞がれてしまった。


 (な、何!? 一体何なんだ!?)


 と、春風は訳がわからないと言わんばかりに、頭上に幾つもの「?」を浮かべていると、


 「……どうした?」


 と、厨房から出てきたデニスが、レベッカに向かってそう尋ねた。


 すると、レベッカは真剣な表情でデニスに答える。


 「『断罪官』が来てる」


 「っ!」


 その答えを聞いて、デニスは顔を真っ青にすると、すぐにウェンディと共に厨房へと身を隠した。


 デニス達だけではない、食堂にいる者達や、宿泊している者達も、大慌てで身を隠し始めた。


 あまりの事に春風は、


 「あの、『断罪官』って何ですか?」


 と、恐る恐る小声でレベッカにそう尋ねると、


 「っ!? アンタ、知らないのかい!?」


 と、レベッカは大きく目を見開いて、


 「ちょっと来な」


 と言うと、春風を食堂の窓へと誘い、


 「()()を見るんだ。ただし、静かにな」


 と、窓の外を見ろと言った。


 それを聞いて、春風は「ますます訳がわからない」と思いながらも、レベッカに従って、静かに窓の外を見た。


 すると、窓の外に馬に乗った黒い鎧を纏った集団が、ゾロゾロと通りを走っていくのが見えた。


 (な、何あれ?)


 その異様な雰囲気を纏った集団を見て、春風はタラリと汗を流した。


 その時だ。


 ーーむず。


 「っ?」


 左腕……というより銀の籠手に何やら()()()()を感じた春風は、思わず銀の籠手に触れたが、気持ちに余裕がないのか、春風はゆっくりと視線をレベッカに移して、


 「……もしかして、()()()()が?」


 と、恐る恐るそう尋ねると、


 「そうさ、あれが『断罪官』。五神教会お抱えの『異端者討伐部隊』で、別名『虐殺部隊』とも呼ばれているのさ」


 と、レベッカは真剣な表情でそう答えた。


 その答えを聞いて、


 「ぎゃ、虐殺部隊……ですか。随分と物騒な異名ですね」


 と、春風がゴクリと唾を飲みながらそう言うと、


 「そうさ。『偉大なる5柱の神々の名の下に異端者を討つ』という名目で、その名の通り神に背く存在ーー『異端者』を問答無用でぶっ殺しまくっている部隊さ。それだけでもやばいのに、少しでも『異端者』に関わる者が現れたら、そいつも問答無用でぶっ殺したりもしているのさ。それこそ、老若男女問わず、な」


 「え、す、少しでも関わるって、それってちょっと話すだけでもですか?」


 「ああ、そうとも。連中曰く、『異端者は世界の穢れ。その穢れに少しでも触れれば、その者も穢れの一部となるだろう』ってな。それ故に、少しでも異端者に関わったら、そいつも異端者としてぶっ殺されてしまうって訳さ」


 そう答えたレベッカに、春風は「そんな……」とデニスと同じように顔を真っ青にすると、


 「なぁ、ハル。所持金に余裕はあるかい?」


 と、レベッカがそう尋ねてきたので、春風は「は?」と首を傾げたが、


 「は、はい、大丈夫です。まだ余裕はあります」


 と、すぐにハッと我に返って、レベッカに向かってそう答えると、


 「なら、今日は仕事はよしてここにいな。何処であんな連中に目をつけられるかわからないからね。アンタ、連中の事知らないみたいだし」


 と、レベッカは春風の肩に手を置きながらそう言った。


 春風はそんなレベッカを見て、


 「……はい、そうします」


 と返すと、ゆっくりと立ち上がって静かに自分の部屋に戻った。


 その後、春風は部屋のベッドの上で膝を抱えて座りながら、


 「断罪官……か」


 と、先程見た「断罪官」という集団を思い出して、


 「ユメちゃん、美羽さん、水音、先生、みんな……」


 と、ルーセンティア王国にいる同郷の者達の事を考えだした。


 その時、


 「春風様」


 と、左腕の籠手からグラシアが出てきた。


 「あ、グラシアさん」


 その姿を見た時、春風は「断罪官」を見た時に感じた妙なものを思い出して、


 「あの、さっきは一体どうしたんですか? 何か妙なものを感じたんですが」


 と、グラシアに向かってそう尋ねた。


 すると、グラシアは「それは……」と答えるのを躊躇ったが、やがて意を決したのか、


 「実は、春風様に話さなきゃいけない事があるのです」


 と、真っ直ぐ春風を見ながらそう答えた。


 その答えに、春風は首を傾げながら「?」を浮かべていると、


 「先程見た断罪官達の、()()にいた男の事なのですが」


 と、グラシアはそう答えたので、


 「え? 先頭って……あぁ、あの凄く威厳に満ちてそうな男の人ですか?」


 と、春風は断罪官達の先頭にいた男性を思い出した。


 それにグラシアは無言でコクリと頷いたので、


 「グラシアさんは、あの男の人の事を知ってるんですか?」


 と、春風は恐る恐るそう尋ねると、グラシアは表情を暗くして、グッと自分自身を抱き締めながら答える。


 「あの男は……()()()()()()です」


 「……え?」

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