第17話 グラシア再び
今回は、いつもより短めの話だと思います。
それは、春風がヘリアテスのもとを発つ前日の夜の事だった。
「え、俺と一緒に行きたいって?」
「はい、そうです」
グラシアが春風と共に行きたいと言い出したので、春風は「どういう事?」と言わんばかりの表情で、頭上に幾つもの「?」を浮かべながら、
「あの、どうして急にそんな事を?」
と、恐る恐る尋ねた。
その質問に対して、グラシアは真面目な表情で答える。
「それは、私が死ぬ間際に遺した、あの『予言』が本当に起きるのかを見届ける為です。自分で言うのも変な話なのですが、正直に言いますとあの『予言』が本当に現実になるのか、私自身も疑っていました。何故なら、あの『予言』を遺した時、私の心は『怒り』と『悲しみ』に満ちていて、今思い出してもとても冷静とは思えないくらいの心境だったのです」
「え? それってつまり、思いっきり感情に身を任せた、その場の勢いで遺したものだったんですか?」
「はい、大変お恥ずかしながら」
頬を赤くしながらそう答えたグラシアを見て、春風は「えぇ、マジで?」とタラリと汗を流した。
「勢いとはいえ、『どんな事をしても絶対変えられない未来』などというものを見て、その時の私は『なんて事をしてしまったんだ』と後悔したのですが、ヘリアテス様達に育てられたレナ様と、異世界の神々と契約を交わした春風様を見て、もしかしたら、『予言』は本当に現実になるのかもしれないと考えるようになったのです」
そう説明し終えたグラシアに、春風は、
「それで、俺と一緒に行きたいと?」
と、尋ねた。
グラシアは答える。
「そうです。私が遺したあの『予言』が、現実になるのをすぐ近くで見たいのです。この事は既にヘリアテス様にも相談済みです」
というグラシアの言葉を聞いて、春風はチラッと彼女の隣のヘリアテスを見ると、ヘリアテスは無言で大きくこくりと頷いた。それを見て、
「なるほど、そういう訳ですか。しかし、連れてこうにも『幽霊』のあなたをそのまま連れてく訳にはいかないですよねぇ……」
と、春風は腕を組んで「どうしたものか」と悩んでいると、
「あ、そうだ!」
と言って、春風はズボンのポケットから、ある物を取り出した。
「それは、異世界の神様を召喚した魔導具ですか?」
「ええ。本来は違うものなんですが」
それは、春風が最初に作った魔導具……魔導スマホだった。
春風はその魔導スマホをグラシアに見せながら、
「グラシアさん、この中に入ってはどうですか?」
と、尋ねた。
「え、こ、これにですか!?」
と、驚いたグラシアがそう尋ね返すと、
「はい。これ、元々異世界……っていうか俺の故郷で作られた道具ですから、退屈はしないと思うんです」
と、春風は笑顔でそう答えた。
そして、レナと再会した現在、
「……という訳で、俺達と一緒に行動する事になりました」
「よろしくお願いします、レナ様」
と、説明し終えた春風とグラシア。その説明を聞いて、
「そ、そうだったんだ」
と、レナはたらりと汗をかきながら言った。
すると、
「ん? ちょっと待って、今、グラシアさんその籠手から出て来たよね? 例の魔導具はどうしたの?」
と、レナが春風に尋ねてきたので、
「ああ、それなら……」
と、春風はそう言うと、銀の籠手の装甲を、開くようにパカッと外した。
外した装甲の下には、
「あ、ちゃんとある」
と、レナがそう言ったように、装甲の下には魔導スマホがしっかりと組み込まれていた。
大きく目を見開いて驚いていたレナを前に、
「ま、そんな訳だからさ、レナ……」
と、春風はスッと彼女に右手を差し出すと、
「改めて、俺とグラシアさん共々、よろしくお願いします」
と、笑顔でそう言った。
その言葉に最初レナは戸惑っていたが、すぐに首をぶんぶんと横に振るって、
「うん。改めて、こちらこそよろしくね、ハル、グラシアさん」
と、その右手を掴んだ。その際、グラシアも「私もよろしくお願いします」と、2人の手の上にソッと自身の手を置いた。




