第15話 食事が終わって
「「ご馳走様でした!」」
運ばれてきた料理を平らげると、春風とレナは同時にそう言った。
あまりの綺麗な食べっぷりに、デニスは嬉しそうに顔を綻ばせると、空になった皿を持って奥の方へと消えた。
その後、
「レベッカさん、お会計お願いします……」
と、レナは懐から自身の財布を取り出して、レベッカに会計をお願いしようとしたその時、
「おっと、ここは僕が払いましょう」
と、タイラーがレナに「待った」をかけた。
「え、どうして……?」
突然のタイラーの言葉に、レナがそう尋ねると、
「面白い話を聞かせてくれたお礼ですよ」
と、タイラーはチラリと春風を見ながらそう答えた。
その答えに春風は「え、あの……」と何か言おうとしたが、
「……それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます」
と、レナは「ふぅ」とひと息入れてから言うと、財布を懐に戻しながら、
「ハル、行こう。次はハルの泊まる所を確保しなくちゃ」
と、春風に向かってそう言った。
それに対して、
「え、でも……」
と、春風はタイラーを見たが、
「ほら!」
と、椅子から立ち上がったレナは、春風の手をグイッと引いた。
「すみませんレベッカさん。今日、部屋空いてませんか?」
と、レナはレベッカに向かってそう尋ねると、
「ああ、ちょっと待ってな」
と、レベッカはそう言って、
「ウェンディ! まだ部屋空いてるかい!?」
と、食堂の外の宿屋受け付けにいるウェンディに向かってそう叫んだ。
その叫びに対して、
「大丈夫! まだ1つ空いてるよ!」
と、ウェンディも受け付けからそう叫んだので、
「だってさ。泊まるんなら、急いだ方がいいよ」
と、レベッカはレナに向かって早く行けと促した。
「ありがとうございます」
と、レナはレベッカにお礼を言うと、
「じゃ、行こっか」
と、レナは春風の手を引いたまま、一緒に食堂を出た。その際に、
「あ、ありがとうございます! それとご馳走様でした!」
と、春風はタイラーに向かってお礼を言った。それを聞いて、タイラーは穏やかな笑みを浮かべながら、春風に向かって軽く手を振った。
2人が食堂から出て行った後、
「ハル、か。中々良い子がハンターになったじゃないか。なぁ」
と、レベッカが残されたタイラーとヴァレリーに向かってそう言うと、
「ああ、それは間違いない。だが……」
と、ヴァレリーは深く考え込んでいるかのように表情を曇らせると、
「話の所々に、『嘘』と『本当』が絶妙に混じり合って、どれが『真実』なのかがわからん。今日まで色んなハンターに会ったが、あんな奴は初めてだ」
と、「参ったな」と言わんばかりの表情で言い、そんなヴァレリーに続くように、
「そうですね。ただ、悪い人間じゃなさそうだというのも感じられるんですが」
と、タイラーもヴァレリーと同じように、「参ったな」と言わんばかりに表情を曇らせながら言った。
そんなヴァレリー達の様子を見て、
「へぇ、大手レギオンのリーダーのアンタ達でも、わからない事ってあるもんだねぇ」
と、レベッカが揶揄い気味にそう言うと、ヴァレリーなムッとなって、
「そういうあんたはどうなんだい?」
と、レベッカをギロリと睨みながらそう尋ねると、
「アタシかい? アタシも悪い子じゃないって思ってるよ。デニスの料理、とても美味しそうに食べてたし、あれを見たら、『ああ、この子は悪い子じゃないな』って、なんとなくだけどそう感じちまうのさ」
と、レベッカはわざとらしく「うーん」と唸りながら答えた。
すると、その答えに対して、
「それは、『宿屋の女将』としての意見ですか? それとも……元・白金級ハンターとしての意見ですか?」
と、タイラーがかなり真剣な表情でレベッカに向かってそう尋ねたが、本人はまるで特に気にする様子もなく、
「そいつは……ご想像にお任せするよ」
と、「あはは」と笑いながら言った。
その答えを聞いて、
「やれやれ、まともに答えてはくれませんか」
と、タイラー呆れ顔になり、
「……チッ!」
と、ヴァレリーはチラッとレベッカを見ながら、大きく舌打ちをした。




