第11話 「看板娘」と「女将」
今回はいつもより短めの話かもしれません。
タイラーにかなり強引に押された感じで、レナと共に彼女が拠点にしているという宿屋「白い風見鶏」に入った春風。
中に入ると、宿屋の受け付けの辺りで、
「あ、レナおかえり!」
と、シンプルなシャツとズボンの上にエプロンをつけている、春風とレナと同じ年頃ぐらいの少女が、レナに向かって声をかけてきたので、それを聞いたレナは、
「うん、ただいまウェンディ」
と、その少女に向かってそう返した後、
「紹介するねハル。彼女はここの看板娘のウェンディ。ウェンディ、彼はハル。今日からハンターになった新人さんだよ」
と、春風にその少女ーーウェンディを、ウェンディに春風を紹介した。
ウェンディを紹介された春風は、
「はじめまして、今日からハンターになりました、ハルと言います」
と、ウェンディに向かってそう挨拶したが、
「『彼』って……え、嘘、お、男ぉ!? こんなに可愛い顔してるのに!?」
と、ウェンディは『美少女』を思わせる顔付きをした春風を見て驚きの声をあげた。
春風はそれを聞いて、
「ええ、男で……」
と、若干怒りを含んだ笑みを浮かべて「男です」と言おうとしたが、
「こぉらウェンディ!」
と、それを遮るかのように、怒鳴り声ともう1つ、ゴンッという鈍い音が鳴った。
その音に驚いた春風は、
(え、な、何が起きたんだ?)
と、目をパチクリとさせていると、
「いったぁい!」
と、ウェンディはそう言いながら自身の頭頂部を痛そうに押さえた。
よく見ると、ウェンディの背後には、彼女と同じようにシンプルなシャツとズボンの上にエプロンをつけた1人の大柄の女性が、右の拳をぐっと握りしめながら立っていた。
それを見た瞬間、春風はウェンディがその大柄の女性に拳骨を落とされたのだと理解した。
ウェンディは殴られた頭頂部を押さえながら、
「何すんの、お母さん……!?」
と、拳骨を落とした大柄の女性に向かって文句を言おうとしたが、
「お黙り! お客さんに向かって失礼な事言ってんじゃないよ!」
と、それを遮るかのように、大柄の女性はウェンディに向かってそう怒鳴った。
その後、涙目になりながら何か文句を言いたそうなウェンディを無視して、
「うちの娘が悪かったね」
と、大柄の女性は春風達に向かってそう謝罪すると、
「いえ……って、それよりも……」
「?」
「ただいま戻りました、レベッカさん」
と、レナは大柄の女性に向かってそう言った。
そんなレナに対して、
「ああ、レナ、おかえり。それと、いらっしゃいタイラーさん」
と、「レベッカ」と呼ばれた大柄の女性は、レナとタイラーに向かってそう言うと、
「お、そっちのあんたは……」
と、春風の方を見て、
「はじめまして、だね。あたしはレベッカ。この『白い風見鶏』の女将をしている者さ。で、こっちは実の娘であり従業員のウェンディさ」
と、自身とウェンディについてそう自己紹介したので、
「ああ、女将さんでしたか。はじめまして、自分は……」
と、春風も自己紹介しようとすると、
「ああ、知ってるよ。『ハル』ってんだろ? 昼間、小闘技場でヴァレリーと戦ってた」
と、また遮るかのように、レベッカが春風に向かってそう尋ねてきたので、
「え、あ、あれ、見てたんですか?」
と、春風は動揺しながらもレベッカに向かってそう尋ね返した。
レベッカはその質問にたいして、
「ああ、知ってるよ。そして、あんたが『男』だってのも知ってるさ」
と、不敵な笑みを浮かべながら答えたので、
「あぁ、参りましたねぇ……」
と、春風は恥ずかしそうに顔を真っ赤にした。
次の瞬間……。
ーーぐぅうう。
「……あ」
と、春風のお腹から凄い大きな音がしたので、
「あはは、なんだいアンタお腹がすいてたのかい?」
と、レベッカが笑いながらそう言った。
「す、すみません」
と、春風は恥ずかしそうに顔を赤くしながらそう謝罪すると、
「気にすんなって。じゃ、みんなアタシについてきな。食堂に案内してやるよ」
と言って、レベッカは春風達を食堂へと案内を開始した。
謝罪)
大変申し訳ありません。前回は1日遅れの投稿なうえに、読んでてちょっとおかしな部分がありましたので、修正させてもらいました。
本当にすみません。




