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ユニーク賢者物語  作者: ハヤテ
第2部第1章 誕生、ユニークな「ハンター」?

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第7話 ヴァレリーvs「魔術師ハル」


 「ドーンとかかって来な」


 春風はヴァレリーのその言葉について少し考えた後、


 (じゃ、お言葉に甘えて()()()()いきますか)


 と、自身武器である杖を握る力をグッと強くした。


 その後、


 「それでは……両者、はじめ!」


 と、審判役の男性職員がそう叫んだ次の瞬間、


 「アクセラレート」


 と、春風は小さな声で、風魔術の「アクセラレート」を唱えた。


 その瞬間、春風の両足に「風」が集まると、


 「いきます」


 と、春風は小さな声でそう呟いて、杖を槍のように構えたまま、ヴァレリーに向かって突撃した。


 「!」


 いきなりの突撃に、ヴァレリーは目を大きく見開き、すぐにその場から離れようとしたが、春風はそれよりも早くヴァレリーの懐にまで近づくと、槍の穂先の形をした杖の握りによる突きを繰り出した。


 狙いは、ヴァレリーの胸……いや、()()と言うべきだろう。


 しかし、ヴァレリーは大剣を盾代わりにして、その突きを防いだ。


 「はっ! いきなり()()()()とはねぇ……!」


 と、ヴァレリーがニヤリとしながらそう言う中、


 「ウインドニードル」


 春風はもう1つの風魔術「ウインドニードル」を唱えた。


 今度はヴァレリーの顔面狙いだ。


 「ぬおっ!」


 思わぬ追撃に驚いたヴァレリーは、咄嗟にその場から横に飛び退いた。当然、目の前の「ウインドニードル」は、彼女の顔面を通り過ぎて背後の壁に突き刺さった後、スゥッと消えた。


 攻撃を回避したヴァレリーは、


 「ちぃっ! やってくれる……!」


 と、悪態を吐きながら攻撃態勢を整えようとしたが、


 「な!?」


 それよりも早く、春風はヴァレリーに向かって何度も攻撃を繰り出した。


 新たに加えたスキル[杖術]、[棒術]、そして[槍術]によって強化された杖による攻撃が、ヴァレリーに襲いかかる。


 ヴァレリーはそれを大剣でどうにか捌くが、次々と繰り出される攻撃に、彼女は少しずつ押されていった。


 更にその隙をついて、春風は杖による攻撃の他にも、時折「ウインドニードル」や、スキル[体術]で強化されたパンチ、キックなども混ぜがら、春風は容赦なくヴァレリーを攻めた。


 だが、


 「なめんじゃ……ないよ!」


 それらの攻撃を受け続ける事に耐えられなかったのか、頭に血が登ったヴァレリーは、春風に向かって力いっぱい大剣を振るった。


 「!」


 春風はすぐにそれを杖で防御したが、ヴァレリーの方が力が強かったのか、春風は後ろに吹っ飛ばされただけじゃなく、持っていた杖までもが、春風の手から離れてしまった。


 それを見て、


 『あぁっ!』


 と、周囲の人達が驚きの声をあげた。


 吹っ飛ばされた春風は体を回転させた後、どうにかその場に着地したが、


 「終わりだよ!」


 そこへヴァレリーが素早く近づき、春風に向かって大剣を振り下ろした。


 それを見て、


 「危ない!」


 と、レナが悲鳴をあげたが、次の瞬間、


 「……」


 春風は無言で、腰のホルダーに納めたもう1つの武器「鉄扇・彼岸花」を抜き、両手でそれを持つと、ヴァレリーの大剣を握る右手の指に思いっきりあてた。


 「ゴッ!」という鈍い音が、小闘技場内に響き渡り、


 「いってぇ!」


 相当痛かったのか、鉄扇があたったヴァレリーの右手が大剣の柄から離れた、次の瞬間、


 「っ」


 春風は素早くヴァレリーの背後にまわり、


 「えい」


 と、ヴァレリーに向かって「膝かっくん」をお見舞いした。


 「おふ!」


 と、なんとも間の抜けた声をあげて体勢を崩したヴァレリー。


 その彼女の首にかけるように、春風は両手で持った鉄扇をあてた。


 喉に()()を当てられて、


 「ぐえっ!」


 と、小さくそう悲鳴をあげながら、仰向けに地面に倒れたヴァレリー。


 そんな彼女を、春風は起き上がれないようにしっかりと押さえつけると、銀の籠手をつけた左の握り拳を、彼女の顔面……否、顔面の横の地面に突き出した。


 『……』


 あまりの事にヴァレリーやレナだけじゃなく、その場にいる者達全員が口を開けて呆然とした。


 そんな状況の中、


 「……まだ、やりますか?」


 と、春風がヴァレリーに尋ねると、ヴァレリーは「はは」と笑って、


 「いや、やめておくよ」


 と、両手を上げて「降参だ」と言った。


 その言葉を聞いて、


 「そ、それまで! 勝者、ハル!」


 と、男性職員が声高々にそう宣言した。


 その瞬間、周囲から「わぁああ!」と歓声があがり、


 「……」


 レナは喜びに満ちた表情になった。


 その後、春風に立たせてもらったヴァレリーは、


 「はぁ、負けちまったよ。お前、本当に『魔術師』なのかい?」


 と、春風に向かってそう尋ねると、


 「ええ、()()()()()()()()ですが、『魔術師』ですよ」


 と、春風は困ったような笑みを浮かべながらそう答えた。


 その答えを聞いて、


 「はぁ? なんじゃそりゃ……」

 

 と、ヴァレリーがつっこみを入れようとした、まさにその時、


 「いやぁ、中々素晴らしいものを見させてもらいましたよ」


 『っ!』


 ぱちぱちと拍手する音と共に、1人の人物が小闘技場内に現れた。


 

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