第5話 女リーダー、ヴァレリー登場
春風のハンターの登録が終わった後、突如、背後に現れた1人の女性。
その登場の所為なのか、周囲の人達が何やらざわめき出す中、
(え、な、何? この人どちらさん?)
と、戸惑っている春風がチラッと隣りのレナを見ると、
「うわぁ、めんどくさい人が来ちゃったよ」
と、レナは女性を見て、もの凄く嫌そうな表情をしていた。
そんなレナを見て、
「おいおい、レナ。久しぶりに会ったっていうのに酷い言い草だな」
と、女性は「はっはっは」と美しい見た目に似合わず豪快に笑いながら言った。
(え、レナ、知り合いなの?)
2人の間に流れる空気に、春風は「うーん」と考え込んだ後、意を決したかのようにズイッと1歩前に出て、
「あの、自分は今日ハンターになりました、ハルと申します。失礼を承知でお尋ねしますが、どちら様でしょうか?」
と、女性に向かって丁寧な口調でそう名乗った。
そんな春風の姿に、女性は一瞬目を大きく見開いたが、すぐに元の表情に戻って、
「ああ、すまない、まだ名乗ってなかったな。私はハンターレギオン『紅蓮の猛牛』のリーダーをしている、ヴァレリー・マルティネスだ。今、長期の遠征から戻ってきたところに、お前達の姿が見えたって訳さ」
と、謝罪しながら自己紹介した後、
「なぁ、レナ」
と、チラッとレナを見た。
すると、レナは「ふん」と鼻を鳴らしながらそっぽを向いたので、春風は頭上に「?」を浮かべながら、
(レギオン。それって確か、複数のハンター達が組む『チーム』の事だよな)
と、心の中で思い出しながらそう呟いた。
実はレナと別れてから、春風はこの世界の常識の他にも、自分がこれからなる「ハンター」というものについても勉強していたのだ。当然、その中には複数のハンターが組むチームを意味する「レギオン」についても含まれていた。
とまぁ、それはさておき、春風は「レギオン」について思い出した後、
「あー、レナさん。もしかして、知り合いか何かですか?」
と、レナに近づいて小声でそう尋ねると、レナはそっぽを向いたまま答える。
「……前にあの人の仲間を何人かぶちのめして、以来ずっとレギオンに入らないかって勧誘されてるの。こっちは嫌だって言ってるのに」
その答えが聞こえたのか、
「いやぁ、だからあの時はすまなかったって。それにいつも言ってるが……って、自分で言うのもなんだが、うちは結構大手のレギオンなんだ。名を上げたいなら入って損はないと思うが?」
と、女性ーーヴァレリーはレナに向かってそう言うと、
「言った筈よ。私はレギオンにはこれっぽっちも興味ないから。だから、何度勧誘したって無駄だからね」
と、レナは嫌悪感剥き出しな態度でそう言い返した。
その後、
「ほら、もう行こう」
と言って、レナは春風の手を引いてその場から歩き出そうとすると、
「ちょっと待て」
と、一瞬で近づいてきたヴァレリーに阻まれてしまい、
「何?」
と、レナは更に嫌悪感を募らせた眼差しでヴァレリーを見ると、
「……」
何故か、ヴァレリーはジッと春風を見つめてきたので、
「えっと、何でしょうか?」
と、春風は冷や汗を流しながら、ヴァレリーに向かってそう尋ねた。
そんな春風を、ヴァレリーは更にジッと見つめながら、
「いや、随分と可愛いお嬢さんだなって思ってな」
と言ってきたので、
「俺、男です」
と、春風はレナ以上に嫌悪感剥き出しな態度でそう言った。
それに対して、
「……え、嘘だろ?」
と、ヴァレリーは目を大きく見開いたが、
「こんな顔付きですが、俺、男です」
と、そんな彼女に構わず、春風ははっきりとそう言った。
その言葉を聞いて、ヴァレリーは「そ、そうなのか」と呟いた後、再び春風をジィッと見つめて、「うん」と頷き、
「ちょっと失礼!」
「え……って、うわ!」
と、いきなり春風の手を掴んで、すたすたとその場から歩き出した。
「ちょっと、どこ行くのよ!」
勿論、春風と手を繋いでいたレナ諸共だ。
それから暫くの間、3人は総本部内を歩いていると、とある場所に着いた。
その際、
「あぁ、レナはここで待ってもらおうか」
と言って、ヴァレリーはレナを春風から引き剥がすと、春風と共にその場所の中心に立った。
あまりの事に「訳がわからない」と言わんばかりの表情になった春風は、
「……あの、ここって何処なんですか?」
と、恐る恐るヴァレリーに向かってそう尋ねると、
「ここは総本部内にある『小闘技場』って言ってな、主にハンター同士の戦いっていうか、模擬試合っていうか、腕試し的な事をする為の場所だ」
と、ヴァレリーは大袈裟に両腕を広げながら、今自分達が立っている場所について説明した。
春風はその説明を聞いて、
「はぁ、そうなんですか……って、え、何でそんな場所に俺を連れてきたんですか?」
と、再び恐る恐るそう尋ねると、
「決まってるだろ……」
と、ヴァレリーはそう言って、背中に背負っている大剣を手に取り、
「私と戦ってもらうからだよ」
と、その切先を春風に向けた。
それに対して、
「はぁ……」
と、春風は呆けた表情になった後、
「はぁあああああああっ!?」
と、驚きに満ちた叫びをあげた。
謝罪)
大変申し訳ありません。前回の話を一部修正しました。




