第29話 残された者達
お待たせしました、1日遅れの投稿です。
さて、春風達が今後について話し合っていた丁度その頃、春風が去った後のルーセンティア王国王城内は、暗い雰囲気に包まれていた。
当然だろう、世界を救う為に神々(偽物)から授かった「勇者召喚」を使って召喚した「勇者」達の中に、「巻き込まれた者」などという訳のわからない称号を持つ者がいたうえに、その本人は騎士や神官達を相手にひと暴れした挙句、共に召喚された仲間達を置いて外の世界へと出ていってしまったのだから。
因みに、その「巻き込まれた者」ーー春風を外の世界に出してしまった門番らは、後で五神教会の偉い人達にお叱りを受けたそうだ。
まぁそれはさておき、そんな春風がいなくなった後の王城内のとある一室では、
「……」
1人の女性が下着姿でベッドの上でうつ伏せになっていた。
彼女の名前は、朝霧|爽子。「勇者」として召喚された者達の1人で、元の世界『地球』では、春風のクラスの担任教師をしている。
性格は気の強い方ではあるのだが、今の爽子は酷く落ち込んでいた。
何故なら、今日まで普通に「教師」として過ごしてきたのに、いきなり「勇者」としてこのエルードに召喚されたうえに、大切な生徒の1人である春風が、自分達のもとを去っていってしまったからだ。
「雪村……どうして?」
その時の事を思い出して、爽子はボソッとそう呟いたのだが、残念な事にそれに答える者はいなかった。
一方、爽子がいる部屋から少し離れた位置にある別の部屋では、2人の少女がベッドの上で寝転がっていた。
1人は自身の腕に抱かれているもう1人の少女の背中を摩りながら、
「大丈夫だよ、歩夢ちゃん。春風君なら、きっと大丈夫だから」
と、優しく励ましている。
そして、彼女に「歩夢ちゃん」と呼ばれたもう1人の少女の方はというと、自身を抱いている少女をギュッと抱きしめて、
「うぅ、美羽ちゃん。でも、フーちゃんが……」
と、呟きながら涙を流していた。
もうわかっていると思うが、彼女を抱いている少女の名は、天上美羽。
そして、美羽の腕の中で泣いている少女の名は、海神歩夢。
2人も咲和子と同じくこのエルードに召喚された「勇者」であると同時に、自分達のもとを去った少年、春風のクラスメイトであり、春風を知っている者達だ。彼女達と春風の関係については後に語る事になるので、今は伏せておこう。
ともあれ、2人は出て行った春風を思い出して、
「ぐす。フーちゃん、何で出ていっちゃったのぉ?」
と、歩夢は更に涙を流し、
(何やってるのよ、馬鹿!)
と、美羽はこの場にいない春風に向かって、心の中でそう叫んだ。
さて、そんな彼女達の部屋から離れた位置にある別の部屋では、1人の少年がベッドに腰掛けていた。
彼が現在考えているのは、
(……春風)
そう、咲和子、美羽、歩夢と同じく、自分達のもとを去った少年、春風の事だった。
「……何でだよ、春風」
と、悲痛な表情でそう呟いた少年の名は、桜庭水音。
彼もまた、春風のクラスメイトの1人にして、このエルードに召喚された「勇者」の1人だ。
そして、美羽と歩夢と同じく春風を知っている者の1人だが、詳しい関係は今は伏せておこう。
さてさて、そんな桜庭水音ーー以下、水音の部屋から少し離れた位置ある別の部屋では、4人の少年と2人の少女が集まっていて、
「なんで雪村を止めなかった!?」
と、その中の1人の少年が、もう1人の少年の胸ぐらを掴み、怒りの形相で彼を責めていた。
2人の様子を見て、残りの2人の少年と2人の少女がオロオロしていると、胸ぐらを掴まれているもう1人の少年が、
「……す、すまない。雪村君の雰囲気に呑まれて……」
と、辛そうな表情で謝罪したが、それがカチンと来たのか、
「ふざけるな……!」
と、掴んでいる少年が拳をグッと握りしめて、もう1人の少年に殴りかかろうとすると、
「まぁまぁ待ちなって裏見君! 正中君だって今日の事は凄くショックを受けてるんだしさぁ!」
と、様子を見ていた小年の1人が、裏見と呼んだ少年を止めに入ってきたので、裏見と呼ばれた少年はその手を止めて、もう1人の少年ーー正中の胸ぐらから手を離すと、
「……ふん」
と言って、部屋を出て行った。
そんな裏見に続くように、4人の少年少女達も、呆然としている正中を置いて部屋を出て行った。
そして、残された正中はというと、
「……何故だ。何故なんだ、雪村君」
と、この場にいない少年、春風の事を思い出して、ぼそりとそう呟いた。
一方、部屋を出て行った裏見はというと、「ま、待ってよぉ」と追いかけてきた4人の少年少女達を無視して、
「許さないぞ雪村ぁ! あの裏切り者がぁ!」
と、怒りと憎しみに満ちた声をあげながら廊下を歩いていた。
更に一方、「勇者召喚」を行ったルーセンティア王国側の人間達はというと、まずは召喚を行った第1王女のクラリッサは、自室で妹である第2王女のイヴリーヌの髪をとかしながら、「はぁ」と溜め息を吐いていた。
そんなクラリッサを心配してか、
「お姉様、大丈夫ですか?」
と、イヴリーヌが尋ねると、
「え? ああ、大丈夫よイヴ。私の事なら、心配いらないわ」
と、ハッとなったクラリッサが、イヴリーヌを愛称で呼びながら、笑顔でそう答えた。
しかし、イヴリーヌはそれが「嘘」であると一目で見抜いていたが、今ここでそれをいうのは酷だと思い、そのまま黙っている事にした。
そして、国王ウィルフレッドとその妻マーガレットはというと、ウィルフレッドの自室で、今日の事を思い出して沈んだ表情をしていた。
「はぁ。これから一体どうしたものか……」
と、ウィルフレッドが溜め息を吐きながらそう呟き、
「あなた……」
と、そんなウィルフレッドを、マーガレットは心配そうに見つめていた。
すると、
「ああ、そうだ」
と言って、ウィルフレッドは腰掛けていたベッドから立ち上がると、近くにある大鏡の前に立ったので、
「どうかしたのですか?」
と、マーガレットが尋ねると、
「いや、今日遭った事をヴィンスに相談しようと思ってな」
と言って、ウィルフレッドがその大鏡にに取り付けられた青い宝石に触れた瞬間、大鏡が眩い光を放った。
次の瞬間、
「よぉ、ウィルフ! どうしたんだぁ?」
と、大鏡から男性の声がした。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。この話の流れを考えていたら、その日のうちに終える事が出来なくて、結局1日遅れの投稿となってしまいました。
本当にすみません。




