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ユニーク賢者物語  作者: ハヤテ
第1部第3章 異世界エルードの「真実」

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第28話 「これから」について


 その後、リビング内で1つのテーブルを囲む形で、春風、レナ、ヘリアテス、グラシア、そしてゼウスによる話し合いが始まった。


 「よし、それじゃあ今後の活動についてなんだが、まずは春風」


 「は、はい!」


 「()()あった結果、お前さんは『地球』だけじゃなくヘリアの嬢ちゃん達も助けるって事でいいんだよな?」


 と、ゼウスにそう尋ねられると、春風はチラッとヘリアテスを見た後、すぐにゼウスを見て、


 「はい。もう、決めましたから」


 と、真剣な表情でそう答えた。


 その答えを聞いて、ヘリアテスが「ありがとうございます」とお礼を言うと、


 「そうなると、お前さんは()()()()()()()って事になる。それでも良いんだな?」


 と、ゼウスが更にそう尋ねてきた。その瞬間、春風の脳裏にルーセンティア王国が浮かび上がり、ゼウスはその事についても尋ねてきたんだなと理解した。


 春風は一旦目を閉じて、ゆっくりと深呼吸すると、真っ直ぐゼウスを見て、


 「はい」


 と、はっきりと答えたので、


 「オーケイ、わかった。となると、『力』に目覚めたばかりの今のお前さんじゃ、敵の足元にも及ばないだろうな。『力』を使いこなせるようにするのは勿論、知識も身につけて装備の方も充実させなきゃ……」


 と、ゼウスがそう言いながら考え込んでいると、


 「あ、そういえば!」


 と、それまで黙ってたレナが、何かを思う出したかのように口を開いたので、


 「れ、レナ、どうしたの?」


 と、驚いたヘリアテスがそう尋ねると、レナは春風を見て、


 「ところで春風。今日、王城で騎士達を相手に使ってたあの棒みたいな武器、あれ一体何なの?」


 と尋ねてきたので、春風は「ああ、そういえば」と言って上着の内ポケットにしまってた「お守り」を取り出した。


 漆黒に塗られた、ナイフと同じくらいの長さをもつその短い棒のような「お守り」を見て、


 「……それ、棒じゃありませんよね?」


 と、ヘリアテスがそう尋ねてきたので、春風は「ええ」と返事すると、その短い棒のようなお守りを()()()()()()


 そして、広げた後のその形状を見て、


 「え、それ()だったの!?」


 と、驚いたレナがそう尋ねてきた。


 そう、それは、薄い板を重ね合わせて作られた扇だったのだ。


 春風はその扇を見せながら答える。


 「はい。これ、『鉄扇』と言いまして、1枚1枚が薄い金属の板で出来てるんです」


 「金属……重くないですか?」


 と、ヘリアテスが尋ねると、春風は「お守り」ーー鉄扇を閉じて、


 「どうぞ」


 と、それをヘリアテスに差し出した。


 ヘリアテスは「あ、どうも……」とそれを受け取ると、


 「うわっ!」


 と、まるで重いものを持たされたかのような感覚に襲われて、


 「ど、どうしたのお母さん!?」


 と、また驚いたレナがヘリアテスから鉄扇を取ると、


 「うえ!? 何これ凄く重いんだけど!?」


 と、レナもヘリアテスと同じように、何か重いものを持たされたかのような感覚に襲われたので、


 「俺には『師匠』と呼ぶ人がいまして、その鉄扇は、その師匠が俺の為に作ってくれた『お守り』なんです。ただ、何か()()()()()的なものが込められているのか、作った師匠と俺以外が持つと、何故かそんな反応をするんですけどね」


 と、春風はレナとヘリアテスに向かってそう説明した。その説明を聞いて、


 「そ、それを早く言ってよぉ」


 と、レナは文句を言いながらも、どうにかその鉄扇を春風に返した。その際に、


 (でも、一体これ何なんだろう? 後で[鑑定]で調べてみるか)


 と、春風はその鉄扇を見てそう決めた。


 そんな春風を見て、ゼウスが「ふーむ」と考え込むと、


 「じゃ、気を取り直して、続きを話し合おうか」


 と、提案してきたので、


 「わかりました」


 「「わ、わかりました」」


 と、春風達は話し合いの続きを始めた。


 それから数時間して、


 「じゃ、まとめに入るぞ」


 と、ゼウスがそう仕切ると、春風を見て、


 「まずは春風。お前さんは今日から1週間、ここでこの世界に関する知識を身につけつつ、『見習い賢者』の力を使いこなせるように訓練しながら、装備の方も整えるって事でいいな?」


 と、尋ねてきたので、


 「はい」


 と、春風はコクリと頷きながら返事した。


 それを見た後、ゼウスはヘリアテスとグラシア、そして精霊達を見て、


 「じゃ、ヘリアの嬢ちゃんや、グラシアさんに精霊さんとやら、春風のサポート、よろしくな」


 と言うと、


 「は、はい!」


 「わかりました」


 と、ヘリアテスとグラシアはそう答え、精霊達も、


 『わかりました』


 と、皆、一斉に返事した。


 ゼウスはそれを見て「ふむ、よしよし」と呟くと、最後にレナを見て、


 「で、レナの嬢ちゃんはその間、ハンター……だったな? そっちの方に勤しんでもらう。くれぐれも、周囲に怪しまれないようにな」


 と、真剣な表情でそう言ってきたので、


 「はい、わかりました!」


 と、レナも真剣な表情でそう返事した。


 その後、ゼウスは「うむ、それじゃあ」と春風達を見回すと、


 「全員納得したって事で、これで話し合いは終了な」

 

 と言ったので、


 『お疲れ様でした!』


 と、春風達はゼウスに向かって深々と頭を下げた。


 そして、


 「じゃ、そういうわけで、俺はこれで失礼するわ」


 とゼウスはそう言うと、春風の魔導スマホをゲートにして、元いた場所へと帰った。


 その後、春風は「終わったぁ」と疲れた感じでその場にぐったりしていると、


 「春風」


 と、レナが話しかけてきたので、


 「ん、何ですかレナさん?」


 と、春風がそう尋ねると、


 「ごめんね、いきなり別行動って形になっちゃって」


 と、レナは申し訳なさそうに謝罪したので、


 「ああ、気にしないでください。レナさんには、ハンターとしての仕事があるんですから」


 と、春風は大袈裟に手を振りながら言った。


 すると、レナは今度は気まずそうに、


 「……あのさ、春風。春風にお願いしたい事があるんだけど」


 と、口を開いた。


 「え、何でしょうか?」


 と、春風が首を傾げると、


 「これから私達、一緒に『世界』を救う『仲間』になる訳だからさ、その『さん』付けと敬語、やめてほしいんだけど……いいかな?」


 と、レナは更に気まずそうにそう頼んできたので、


 「え、いや、それは……」


 と、春風は困った顔になった。何故なら、春風は()()()()()を除いた同い年くらいの女子は、皆「さん」付けで呼び、全員に敬語を使っていたからだ。


 (ど、どうすればいいんだ?)


 と、困った春風はヘリアテスに助けを求めようとチラッと彼女をみると、


 「構いませんよ、私は」


 と、「むぅ」と頬をすこし膨らませて若干拗ねた表情になっていたので、


 (うーん、駄目か……って)


 と、春風は再びレナを見ると、


 「……」


 と、レナは「お願い」と言わんばかりに目をうるうるとさせながらジッと春風を見つめていたので、春風は「え、えーっと……」とかなり躊躇ったが、やがて諦めたのか、


 「あーもう! ()()()()()()()()()()()()! ほら、これでいいんだろ!?」


 と、かなり投げやりな感じでそう言うと、


 「うん! ありがとう春風!」


 と、レナは満面の笑みを浮かべ、


 (うぅ。ご、ごめんなさい)


 と、春風はこの場にいないとある2人の少女達を思い浮かべて、心の中で謝罪した。


 その後、


 「じゃあ、春風。改めて……」


 と、レナがそう言うと、春風に向かって、


 「私、レナ・ヒューズ。固有職能『妖獣士』の固有職保持者で、ハンターやってます」


 と言うと、スッと右手を差し出した。


 春風はそれを見て、「やれやれ」と小さく呟くと、


 「俺は雪村春風。固有職能『見習い賢者』の固有職保持者で……」


 と言って、


 「ちょっとユニークな、一般人だ」


 差し出された彼女の手を握った。


 

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