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ユニーク賢者物語  作者: ハヤテ
第1部第3章 異世界エルードの「真実」

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第26話 「感謝」


 (……ま、マジっすか?)


 ヘリアテスから告げられたその事実に、春風はショックを隠せないでいた。


 (『最初の固有職保持者』の職能が、『賢者』?)


 顔を真っ青にして呆然としている春風を、隣のアマテラスは心配そうに見つめ、レナとグラシアは「ど、ど、どうしよう」と言わんばかりにオロオロしだした。


 リビング内がなんとも言えない雰囲気に包まれていると、アマテラスが両手をパンッと鳴らして、


 「ごめん! 一旦休憩しよう!」


 と、謝罪しながらそう提案してきたので、春風、レナ、ヘリアテス、グラシアは一斉に、


 『あー、はい。そうしましょう』


 と、コクリと頷きながら、その提案を受け入れた。


 その後、


 「じゃ、ちょっとみんなと話し合いしてくるわ」


 と言って、アマテラスは春風の魔導スマホをゲート代わりにして元いた場所へと帰り、春風自身も、


 「……外の空気を吸ってきます」


 と言って、家の外に出て、その近くにある湖の畔に腰掛けて、現在に至る。


 「参ったなぁ……」


 と呟くと、春風は月を眺めながら一連の話を思い出して、


 「ホントにもう、俺は一体どうすりゃあいいんだよ……」


 と、夜空を見上げながらそんな事を呟いていると、


 「春風」


 と、不意に名前を呼ばれたので、春風が「ん?」と声がした方へと振り向くと、


 「あ、レナさん」


 そこには、何処か元気のなさそうな様子のレナがいたので、


 「えっと、どうしたんですか?」


 と、春風は恐る恐るレナに向かって声をかけた。


 すると、レナは意を決したかのような表情になって、


 「私、春風に()()()()()()()()()()()があるの」


 と言うと、自身の左手首を掴んだ。


 よく見ると、そこには銀色に輝く腕輪があり、レナはゆっくりとその腕輪を外した。


 次の瞬間、レナの全身が白い輝きを放ったので、


 「うわ、眩しい!」


 と、春風は思わず両腕で顔を覆った。


 やがて光が弱くなったので、春風はゆっくりと顔から両腕を離すと、


 「うわぁ」


 そこには、髪と髪の間からピョコンと白い狐の耳を生やし、お尻からはフサフサとした白い狐の尻尾を生やしたレナがいた。


 あまりの事に春風が口をあんぐりしていると、


 「これが、私の()()()姿()。どう、春風? 変じゃ、ないかな?」


 と、レナが恐る恐る尋ねてきたので、


 「いや、全然変じゃないです。寧ろ、凄く綺麗です。ヘリアテス様の話を聞いて『ん?』ってなってましたから、こうして見ると本当の事だったんだなって、改めてわかりました」


 と、春風は真っ直ぐレナを見てそう答えた。


 それを聞いて、レナは顔を真っ赤にしながら、


 「あ、ありがとう」


 と、恥ずかしそうにお礼を言った。


 その後、


 「あの……隣、座っていいかな?」


 と、レナが再び恐る恐る尋ねてきたので、


 「あ、はい、どうぞ」


 と、春風はすぐにそう答えると、レナは「じゃあ」と言いながら春風の隣にポンと座った。


 それから暫くの間、2人は恥ずかしいのかもしくは気まずいのか、お互い何も言えずにいると、


 「あ、あのね、春風」


 と、レナが口を開いたので、


 「は、はい、何でしょうか?」


 と、春風は何処かぎこちない態度で返事すると、


 「実はその、私のこの見た目の他にも、春風に言ってない事があるんだ」


 と、レナは申し訳なさそうに言った。


 「な、何でしょうか?」


 と、春風が尋ねると、


 「今日の王城での事なんだけど、私があの場にいたの、偶然じゃないんだ」


 と、レナは更に申し訳なさそうに答えた。


 「え、そうなんですか?」


 「うん。あの時から少し前、ルーセンティアの王都の近くでハンターとしての仕事をしていた時に、精霊達が来て……」


 ーー女神様が、「『王城』でよくない事が起きてる」って!


 「って言ってたの。とてもただ事じゃない様子だったから、私はすぐに王城に向かって、誰にも気付かれないように中に侵入して……」


 「で、騎士達との一悶着に繋がった、と?」


 と、春風がそう尋ねると、レナはコクリと頷いて、


 「ウィルフレッド王の話を聞いて、私、凄く腹が立った。だってあいつ、大好きなお父さんとお母さんの事『邪神』って言ったから!」


 と言うと、レナは今度は「怒り」で顔を赤くして、「ぜぇ……はぁ……」と肩で息をしたので、春風は「どうどう……」とレナ落ち着かせた。


 その後、レナは「ごめん」と春風に向かってそう謝罪すると、真面目な表情で話を続けた。


 「そしてウィルフレッド王に質問する春風を見て、なんとなくだけど感じたの。『あ、もしかしてこの人、お母さんとお父さんに会いたいんじゃ?』って」


 「だから、『一緒に来てくれ』って?」


 と、春風がまた尋ねると、レナは黙ってこくりと頷き、それを見た春風は、


 「そう……だったんですか」


 と、小さく言った。


 それからまた暫くの間、2人がお互い何も言えないでいると、


 「ねぇ、春風」


 と、またレナが口を開いた。


 「何でしょうか?」


 「春風は、『故郷』を守る為にこの世界に来たんだよね?」


 「はい」


 「じゃあ、その『故郷』を危険に晒したこの世界を許せない?」


 「……はい。世界()()はまだ何とも言えませんが、『勇者召喚』を実行したルーセンティア王国を許せませんし、それを行わせた『神』を名乗る敵の親玉達も、絶対に許せません。だから連中には、いつか絶対にその『償い』をさせます」


 と、強い想いを込めてそう答えた春風を見て、レナは「そう……だよね」と言ってシュンとなった。


 そして、少しの間重苦しい空気に包まれていると、


 「ですが……」


 と、今度は春風が口を開いた。


 「?」


 「正直に言いますと、俺、ルーセンティア王国を出た後の事、何にも考えてないんですよねぇ」


 「……え?」


 「ついでに言いますと、騎士達とやり合った時なんか、『あ、これやっべぇ!』って、内心びびりまくってましたぁ」


 と、春風が「いやぁ、参ったわ」と言わんばかりに笑いながらそう言ったので、レナは思わず「えぇ!?」と驚きの声をあげた。


 そんな彼女を他所に、春風は話を続ける。


 「ですから、あの時レナさんが助太刀に現れた時、すっげぇ助かりましたし、レナさんに『一緒に来て』って言われた時もすっげぇ助かったんですよ。そのおかげで、俺はヘリアテス様に会う事が出来たんですから」


 「春風……」


 春風の話を聞いて、レナは恥ずかしそうにポッと顔を真っ赤にしていると、


 「レナさん」


 と春風はそう言いながら、レナの正面に移動して、


 「俺を連れ出してくれて、ありがとうございます」


 と言って、レナに向かって深々と頭を下げた。


 その言葉を聞いた瞬間、レナは両目からポロポロと大粒の涙を流しながら、


 「わ……私、も……私を……信じて……くれて……ありがとう」


 と言って、レナも春風に向かって深々と頭を下げた。


 


 


 


 

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