第8話 第2皇女との初顔合わせ
水音達とストロザイア帝国第2皇女エレクトラの再会を見て、春風はジーンと感動していると、
「あ、そうそうエレン」
と、ヴィンセントがそう口を開いたので、それを聞いたエレクトラが「ん?」と頭上に「?」を浮かべていると、
「久しぶりだな、エレクトラ皇女」
と、いつの間にヴィンセントの近くにいたウィルフレッドが、エレクトラに向かってそう言ったので、
「え、ウィルフレッド陛下!?」
と、エレクトラは大きく目を見開きながら驚きの声をあげた。
そんなエレクトラを見て、ウィルフレッドが「ああ、驚かせてすまない」と謝罪すると、
「い、いえ、お気になさらず! 私の方こそ気付かずに申し訳ありませんでした!」
と、エレクトラもウィルフレッドに向かって頭を下げながら謝罪した。
ただその後、
「……って、よく見たらジェフリー・クラーク教主殿まで……あれ?」
と、エレクトラはウィルフレッドの隣に立つジェフリーを見たのだが、その様子が明らかにおかしかったので、
「あの、父様。教主殿の身に何が起きたんですか?」
と、恐る恐るヴィンセントに尋ねると、
「ああ、気にすんな。教主殿は水音達の故郷の神様から『神の裁き』を受けていたんだ」
と、ヴィンセントは笑顔でそう答えたので、
「何があったんですか一体!? なんかやつれているのに嬉しそうな顔色してるんですが!?」
と、エレクトラは驚きのあまり目を大きく見開きながら、更にヴィンセントに尋ねた。
確かにエレクトラの言うように、今のジェフリーは全身で疲れを表しているが、その表情は何処か満足気に見えたので、それを見た春風も、
(うわぁ、ジェフリー教主どんだけモフモフしてたんだよ)
と、ドン引きしていた。
すると、
「おっとエレン、お前に紹介したい奴がいるんだ」
と、ヴィンセントがそう言った瞬間、
(あれ? なんか嫌な予感がするぞ)
と、春風がそう感じていると、
「ちょっと失礼」
と、そう言ったヴィンセントが軽い足取りで春風に近づき、
「来てくれ」
と言って、春風の手を取ると、その手を引っ張りながら再び軽い足取りでエレクトラのもとへと戻った。
そして、
「紹介するぜエレン、もう1人の異世界人、雪村春風だ」
と、ヴィンセントは笑顔でそう言うと、エレクトラの前に春風を差し出した。
「えぇ! ちょ、ヴィンセント陛下!?」
と、それに春風が驚いていると、
「何、彼が!?」
と、エレクトラはそう驚いた後、「失礼する」と言って春風の顔をペタペタと触り出したので、
「え、えぇっと……」
と、春風が戸惑っていると、
「うむ、実際に見ると結構かわい……ゲフンゲフン! 失礼、良い顔付きだな」
と、エレクトラは春風の顔をマジマジと見ながらそう言った。
その言葉を聞いて、
(オイコラ! 今、『可愛い』って言おうとしたのか!?)
と、春風はピキッとなったが、傍に立っていた水音に「春風、落ち着いて!」と肩を掴まれたので、春風は「ふぅ……」とひと息入れて気持ちを落ち着かせると、
「お初にお目にかかります、自分は雪村春風と申します。水音達が大変お世話になったと聞きました」
と、エレクトラに向かって丁寧な口調でそう自己紹介した。
それを聞いてエレクトラは「おお!」と目を大きく見開いた後、
「はじめまして、雪村春風。私はストロザイア帝国第2皇女、エレクトラ・リース・ストロザイアだ。先程は失礼な事を言って、申し訳なかった」
と、エレクトラも真面目な表情で春風に向かって自己紹介し、最後に頭を下げながら謝罪した。
その謝罪に春風は、
「いえ、自分は大丈夫ですので、どうか気にしないでください」
と言うと、最後に「頭を上げてください」と頼んだ。
その言葉に従って、エレクトラが「では……」と頭を上げると、
「その、失礼ついでに尋ねたいのだが……」
と、気まずそうに口を開いたので、
「? 何ですか?」
と、春風が首を傾げると、
「『見習い賢者の固有職保持者』と聞いたのだが……」
と、エレクトラは更に気まずそうにそう言ってきたので、
「はい、少し前まで未熟な『見習い賢者』でしたが、この度、半人前の『半熟賢者』にランクアップしました」
と、春風は真っ直ぐエレクトラを見ながらそう言った。
その言葉を聞いて、
「は、半熟賢者!? いや、ちょっと待て、ランクアップって何だ!?」
と、エレクトラが驚きに満ちた表情でそう言ったので、
「コホン! あーちょっと失礼!」
と、ヴィンセントがそう口を挟んできた。
それに春風とエレクトラが「ん?」と反応すると、
「悪いがエレクトラ。その辺りを説明する為に場所を変えようと思うが、構わねぇか?」
と、ヴィンセントがかなり真剣な表情でそう尋ねてきたので、
「わかりました」
と、エレクトラはコクリと頷きながら、ただ一言そう言った。
それを聞いて、ヴィンセントが「悪いな」と言うと、
「じゃあみんな! 帝城の中に入るぞ!」
と、春風達だけでなくレナや歩夢ら春風の仲間達と、爽子や他の勇者達に向かってそう言ったので、その言葉を聞いて、皆、
『わかりました』
と、コクリと頷きながらそう返事した後、ヴィンセントに連れられる形でその場から移動した。