第3話 ジェフリー、異議を申し立てる?
それは、遡る事数時間前、春風達が「ストロザイア帝国」に行く事が決まった時の事だった。
「それじゃあみんな、早速魔導飛空船に……!」
と、ヴィンセントがその場を仕切ろうとしたその時、
「ちょっと待っていただきたい!」
という怒鳴り声が聞こえたので、それを聞いた春風が「ん?」と声がした方へと振り向くと、
(ジェフリー・クラーク教主?)
そこには、如何にも「怒ってます!」と言わんばかりの表情をしているジェフリーがいた。
そんなジェフリーに向かって、
「ど、どうしたのだクラーク教主?」
と、ウィルフレッドが恐る恐るそう尋ねると、
「どうしたもこうしたもありませんぞ! つい状況に流されてしまいましたが、ヴィンセント皇帝陛下、帝国で祝杯をあげようなど、勝手な事は許しませんぞ!」
と、ジェフリーはチラリとヴィンセントを見ながらそう答えたので、
「え〜? 良いじゃねぇかよぉ。何処で祝おうが変わんねぇじゃねえかよぉ」
と、ヴィンセントは不満そうな顔でそう返し、それに続くように、
「そうよそうよぉ。良いじゃないのよぉ」
と、キャロラインも不満そうな顔でジェフリーに向かってそう言った。
2人のために言葉を聞いて、
「な、何ですとぉ!?」
と、ジェフリーが更に怒りに満ちた表情でそう言うと、
「と、とにかくですウィルフレッド陛下! ストロザイア帝国で祝杯など、私は断固として反対ですぞ!」
と、ウィルフレッドに向かって怒鳴るようにストロザイア帝国行きを反対した。
するとその時、
「ジェフリー・クラーク教主」
と、ウィルフレッドが真剣な表情でジェフリーをフルネームで呼んだので、
「な、何でしょうかウィルフレッド陛下?」
と、それにジェフリーが警戒していると、
「其方の気持ちはなんとなくだがわかるつもりだ。だが、私も言わせてもらう」
と、ウィルフレッドが更に真剣な表情でそう言った。
そして、その言葉に春風をはじめとした周囲の人達が、
(な、なんだ? 何を言う気なんだ!?)
と、緊張のあまりタラリと汗を流していると、ウィルフレッドはカッと目を見開いて、
「その状態でそんな言葉を吐かれても、なんの説得力もないぞ!」
と、ジェフリーに向かってそう言うと、ジェフリーだけでなく春風達までもが、
『……え?』
と、首を傾げた。
そんなウィルフレッドの言葉を聞いて、
(『その状態』って……)
『あ』
と、春風達がジェフリーの今の状態を見てそう声をもらしたので、
「え、な、何を見ているのですか?」
と、ジェフリーが狼狽えていると、
「……ん?」
自身の右手が、とある方向に向かって伸びているのが見えたので、その手の先をよく見ると、
「あああああ! じゃ、邪神ループス!」
「ヤッホー」
そこには「邪神」ことループスの姿があった。そして、そんなループスに向かってジェフリーの右腕が伸びようとしていたので、
「うおおおおお! これは違う! 違うのですぞぉおおおおお!」
と、ジェフリーは必死になってその伸びようとしている右腕を戻そうとした。
そんな状態のジェフリーを見て、
(ああ、そういえばこの人、さっきまでループス様をモフモフしてたっけなぁ)
と、春風が心の中でそう呟いていると、
「クックック。さぁジェフリー・クラークよ、遠慮する事はないぞ! 貴様の気の済むまで、この俺を好きなだけモフモフするがいい! そしてひと通りモフモフし終えた時、貴様は人類が崇める5柱の神々からこの俺とヘリアテスに信仰が変わるのだぁあああああ!」
と、ループスは声高々にそう言い、最後に「アーッハッハッハァ!」と笑ったので、
「グオオオオオオオ! ひ、卑怯だぞ邪神め! 五神教会の教主であるこの私にぃ! 偉大なる5柱の神々を裏切れと言うのかぁあああああ!?」
と、ジェフリーは必死に抵抗しながら、ループスに向かってそう言った。
そんな1人と1柱のやり取りを見て、
(うわぁ、ループス様すっごい悪い顔してるなぁ)
と、春風が若干ドン引きしていると、
「それじゃあ、次は私達からも言わせてもらおうかしらねぇ」
と、何やら不穏な声が聞こえたので、その言葉に春風だけでなく周囲の人間達、更にはジェフリーまでもが「う!」と呻いたので、
(こ、この声は……まさか!?)
と、春風はギギギという音を出しながら、ゆっくりと声がした方へと振り向くと、
(あああああ! アマテラス様にツクヨミ様にスサノオ様ぁ!)
そこには、日本神話を代表する神である、アマテラス、ツクヨミ、そしてスサノオの姿があった。