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ユニーク賢者物語  作者: ハヤテ
第3部第1章 開幕、祝勝会
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第1話 「帰り」を待つ者達

 お待たせしました、本編第3部、第1章の始まりです。


 エルードに存在する2つの大国の1つ、ルーセンティア王国。


 その王国の中心である王城内執務室では、現在、王妃マーガレットとその娘である王女クラリッサが、国王であるウィルフレッドに代わって王族としての仕事をこなしていた。


 忙しそうに仕事をしている2人だが、彼女達の表情は暗かった。


 何故なら、2人とも「国王」であると同時にマーガレットの夫にしてクラリッサの父親でもあるウィルフレッドと、もう1人の娘にしてクラリッサの妹である第2王女のイヴリーヌ、そして、自分達が異世界から召喚した「勇者」である爽子達の事をとても心配しているからだ。


 彼らは現在、ここルーセンティア王国を離れて、「中立都市フロントラル」にいる。


 目的は、その都市に接近しているという「邪神」を討伐する為だ。


 勿論、マーガレットもクラリッサも、自分達が崇める「偉大なる5柱の神々」に選ばれた「勇者」こと爽子達の勝利を信じているが、万が一、敗北してしまったらと考えると、残されたウィルフレッドとイヴリーヌに()()()()()が起こったらどうしようと不安に思い、それが、彼女達の表情を暗くしているのだ。


 そんな中、仕事中にも関わらず、


 「はぁ……」


 と、クラリッサが深い溜め息を吐いていると、


 「クラリッサ。溜め息ばかりしていると、幸せが逃げてしまいますよ?」


 と、マーガレットが「ふふ」と笑いながら注意してきたので、


 「あ、すみませんお母様」


 と、クラリッサはハッとなってマーガレットに向かってそう謝罪した。


 恥ずかしそうに顔を赤くしたクラリッサを見て、マーガレットは再び「ふふ」と笑いながら、目の前に置かれた書類の山に目を通す。


 ところが、それからすぐに、


 「はぁ……」


 と、マーガレットまでもが溜め息を吐いたので、


 「お、お母様! 溜め息出てます! 幸せ逃げてしまいます!」


 と、それを見たクラリッサはギョッとなってマーガレットに注意した。それを聞いてマーガレットもハッとなって、


 「あ、あら! ごめんなさいクラリッサ!」


 と、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら、クラリッサに向かって謝罪した。


 そして、また目の前の書類に目を通す2人だが、


 「「はぁ」」


 と、今度は2人同時に溜め息を吐いた。


 その時、執務室の扉がトントンと叩かれて、


 「王妃様、クラリッサ様」


 と、扉の向こうからマーガレットとクラリッサを呼ぶ男性の聞こえたので、それを聞いた2人はビクッとなったが、すぐに真面目な表情になると、


 「どうぞ」


 と、マーガレットは扉の向こう側に向かって静かにそう言った。


 その声が届いたのか、


 「失礼します」


 と、扉の向こうからそう返事がした後、ガチャリと扉が開かれて、1人の男性騎士が、ゆっくりと執務室に入ってきた。


 「歴戦の猛者」を思わせるその男性騎士は、マーガレットの近くまで歩くと、その場に片膝をついて顔を下に向けた。それを見て、


 「どうかなさいましたか、ロルフ?」


 と、マーガレットが男性騎士をそう呼ぶと、


 「王妃様、クラリッサ様。見張りの兵士達より、ストロザイア帝国の魔導飛空船がこちらに向かって飛んできていると報告がありました」


 と、ロルフと呼ばれた男性騎士ーー以下、ロルフは、顔を下に向けたままそう答えた。


 その答えを聞いて、


 「何ですって?」


 と、マーガレットがそう呟くと、クラリッサと顔を見合わせて、


 「わかりました、すぐに行きます!」


 と、ロルフに向かってそう言った。


 その後、仕事中であるにも関わらず、マーガレットとクラリッサはすぐに執務室を出ると、ロルフに案内されるように廊下をスタスタと歩き出した。


 暫く歩いた後、3人は王城前に出た。


 そこには既に何人もの騎士や兵士達が集まっていて、皆、空を見上げていた。


 そして、


 「あ、王妃様達が来たぞ!」


 と、マーガレット達に気付いた騎士の1人がそう言うと、他の騎士や兵士達は一斉にマーガレット達に跪いたので、


 「皆様、ご苦労様です。それで、肝心の魔導飛空船はどちらに?」


 と、マーガレットが騎士の1人にそう尋ねると、


 「は! あちらに御座います!」


 と、騎士はそう言って、マーガレット達に「ご覧ください」と言わんばかりに自身の両手の先を空に向けた。


 それに従うように、マーガレット達が空を見上げると、


 「「あ……」」


 そこには、見覚えのある一隻の船があった。


 左右に2枚ずつ翼を取り付けたその船が、ゆっくりと王城前に降りてくる。


 その様子をマーガレット達がジッと眺めていると、その魔導飛空船からひょっこりと少女らしき人影が顔を出してきて、


 「おかーさまー! おねーさまー!」


 と、笑顔で右腕を大きく振りながら、マーガレット達に向かってそう叫んできた。


 その叫びを聞いて、マーガレットとクラリッサは同時に「あ……」と声をもらすと、


 「「イヴリーヌ!」」


 と、目に涙を浮かべながら、笑顔でその少女の名前を呼んだ。

 


 


 


 

 どうも、ハヤテです。


 長い間書いていた外伝がひと段落ついたので、今日から久しぶりの本編の執筆と投稿を開始します。


 中立都市フロントラルでの数多くの出来事を経験してきた主人公の春風。


 いよいよ物語が大きく動き出した中、果たして彼と仲間達にどんな運命が待ち受けるのか?


 彼らの次の活躍に、ご期待ください。

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