第165話 その後の「神々」
今章最終話です。
そして、後書に重要な話があります。
見渡す限りの真っ白な空間。
そこに、白いワイシャツと青いジーンズ姿の男女が数人いる。
勿論、その中にはギリシャ神話の最高神ゼウスの姿も。
そう、彼らは全員、春風と勇者達の故郷「地球」の神々なのだが、今日の彼らは何処か様子がおかしかった。
まるで、予期せぬ出来事に遭遇してしまったかのように、皆「どうしよう! どうしよう!」と言わんばかりの困った表情で、あっちに行ったりこっちに行ったりしているのだ。
そんな状況の中、
「みんなー、ただいまー!」
と、元気良くそう叫びながら、春風と勇者達の祖国「日本」の神々である、アマテラス、ツクヨミ、スサノオの3柱が現れた。
「あ、あれ? みんな、どうしたの?」
目の前で様子がおかしくなってるゼウス達を見てアマテラスがそう尋ねると、
「あぁ? おお、アマテラスにツクヨミにスサノオ! 帰ってたのか!」
と、アマテラス達の存在に気付いたゼウスが、彼女達を見て表情を明るくした。そして、そんなゼウスに続くように、他の神々もアマテラス達を見て表情を明るくしながら「おかえりぃ!」と言った。
その様子にアマテラス達は目をパチクリさせた後、
「ちょっとぉ、どうしたのみんな? 何か変な事があったの?」
と、アマテラスがゼウス達に向かってそう尋ねると、ゼウスは気まずそうな表情で、
「アレだよ。アレ」
と、とある方向を指差しながらそう答えたので、アマテラスは「アレ?」と言ってゼウスが指差した方向を見ると、
「ん? オーディン?」
そこには、アマテラス達と同じ「地球の神々」の1柱であるオーディンがいたので、
「オーイ、オーディン! ただいまぁ……」
と、アマテラスがそう声をかけると、
「やぁ、アマテラス! おかえりぃ!」
と、オーディンはそう返事したが、
「アレ!? オーディン、なんかいつもと雰囲気違くない!?」
彼の雰囲気が何処か違うものを感じてので、アマテラスは戸惑いながらもオーディンに向かってそう尋ねた。
その質問に対して、オーディンは「フッフッフ……」と不敵な笑みを浮かべると、
「アマテラス。春風君が『ランクアップ』したのは知ってるよね?」
と、今度はオーディンがアマテラスに向かってそう尋ねてきたので、アマテラスは戸惑いながらも、
「え、ええ。私達もその場に居合わせていたからね、しっかりと見てきたけど……」
と、答えた。
そんなアマテラスの答えを聞いたオーディンは、再び「フッフッフ……」と笑うと、
「どうやら……僕もそれに巻き込まれてしまったようなんだ」
と、不敵な笑みを崩さずにそう答えた。
その答えを聞いて、
「「「……なんですと?」」」
と、アマテラス、ツクヨミ、スサノオがそう声をもらすと、
「見よ! この輝きを!」
と、オーディンはそう叫んで、自身の全身を七色に輝かせた。
その眩い輝きに、思わずアマテラス達が「うわ!」と腕で顔を覆うと、
「ふふふ! どうやら春風君がランクアップすると、契約神である僕も一緒にランクアップしてしまうみたいだね! いやぁ、実に素晴らしい!」
と、オーディンは嬉しそうに笑いながらそう言った。
アマテラスはそんなオーディンを見た後、
「……マジ?」
と、チラッとゼウスを見ながらそう尋ねると、ゼウスは無言でコクリと頷いたので、
「うわぁ、マジか」
と、アマテラスは表情を暗くした。
すると、
「ところでアマテラス。あの連中、どうだった?」
と、オーディンは急に真面目な表情でそう尋ねてきた。
その質問を受けて、
「確かに、持ってる『力』は私達と同じ『神』のものだけど、アレらは駄目ね。力を持ってるってだけで、その力の本質を何も理解してない。おまけに、沢山奪いすぎてそろそろ限界が来るって感じね」
と、アマテラスも真面目でその連中ーーラディウス達をそう評価し、
「全く、あんなのが『神』を名乗ってるなんて、絶対に許せないわ」
と、最後に忌々しいものを見るかのような表情でそう付け加えた。当然、ツクヨミとスサノオも、アマテラスに同意見のようだ。
それを聞いて、オーディンやゼウス達も「やっぱそう思うよな」と言わんばかりの表情でウンウンと頷くと、
「それと、コレが1番重要な事なんだけど」
と、アマテラスがそう口を開いたので、オーディン達が「ん?」と首を傾げると、
「あいつらの中に、とんでもない大嘘つきが1人いたの」
と、アマテラスはもの凄く真剣な表情でそう言ったので、
「何!? 誰だそいつは!?」
と、ゼウスがそう尋ねた。
その質問を聞いて、
「それは……」
アマテラスは、その「とんでもない大嘘つき」の名前を言った。
さて、ところ変わって同時刻。
見渡す限りの真っ暗な空間に、アマテラス達によって苦しい思いをさせられた、ラディウス、カリドゥス、カウムがいる。
「「「……」」」
辛そうな表情で黙り込むラディウス達の前に、
「お待たせ」
と、かなり深刻そうな表情のアムニスが現れたので、
「アムニス。ワポルの様子は?」
と、ラディウスがアムニスに向かってそう尋ねた。
その質問に対して、
「漸く落ち着いたけど、まだ精神へのダメージはあるみたい。暫くは安静にさせないと」
と、アムニスは更に深刻そうな表情でそう答えたので、
「……そうか」
と、ラディウスが表情を曇らせると、
「ちっくしょう、アイツらぁ!」
と、カリドゥスが怒りに満ちた表情で拳を床(?)に叩きつけた。
それを見て、カウムが「どうどう……」とカリドゥスを落ち着かせていると、
「落ち着けカリドゥス。『異世界の神々』の連中は後回しだ。それよりも、我々には倒すべき相手がいるだろ?」
と、ラディウスがそう口を開いた。
その言葉を聞いた瞬間、カリドゥス、アムニス、カウムの脳裏に、
「雪村……春風」
その相手ーー春風の姿が浮かび上がったので、
「確かに……最優先は奴ね」
「本当に、許せませんねぇ」
と、アムニスとカウムまた、怒りに満ちた表情になった。
その後、ラディウス達はワポルの様子を見ようとその場を後にした。
それと同時に、
(……ふふ)
その中の1人が、不気味な笑みを浮かべたのだが、それに気付いた者はいなかった。
〜第2部「中立都市のハンター生活編」・完〜
どうも、ハヤテです。
という訳で、以上で今章……というより、第2部は終了となり、次回からは第3部となります。
と言いましても、この後は少し日を置いた後、本編の投稿はお休みして、久しぶりの外伝を書いていきますので、皆様、何卒よろしくお願いします。