第158話 ループス、消滅?
今回はいつもより短めの話です。
「どう……やら……限界のようだ」
と、弱々しい口調でそう言ったループスの全身が、ピキピキと音を立ててひび割れ出した。
その様子を見て、
(な、何だよこれ? どうなってんだ!?)
と、春風が戸惑いの表情になると、
「……私達が閉じ込められていた中、ループスはずっと、私を守ってたんです」
と、傍でヘリアテスが悲しげにそう言った。
その言葉を聞いて、
「ちょ、ちょっと待ってよ。お父さん、春風との戦いのダメージがあったんだよ!」
と、レナが顔を真っ青にしながらループスに向かってそう言うと、
「……あはは」
と、ループスはフイッとレナから目を逸らしながら苦笑いしたので、
「そ、そんな……!」
と、春風も顔を真っ青にした。
すると、ループスはそんな春風に、
「はは、そんな顔するなって。こうなったのは、俺自身が決めた事の結果なんだからよ」
と言うと、最後に「だから気にすんなって」と付け加えた。
その言葉に春風は本当に申し訳なさそうな表情をしたが、ループスはそれを無視して、
「それと、爽子殿」
と、今度は爽子に視線を向けた。その視線を受けて、
「ふあ! は、はい、何ですか!?」
と、ビクッとしながらもそう返事すると、
「爽子殿が俺に放った最後のパンチ。アレ、結構効いたぞ」
と、ループスはニコッと笑顔でそう言った。
その言葉を聞いて、爽子が「え、あ、ありがとうございます!」とカチコチになりながらお礼を言うと、
「あ、そろそろやべぇかな」
と、ループスがそう言った後、全身に出来たひび割れが更に大きくなった。
そして、そのひび割れが出来たところから、ボロボロと体が崩れ出したので、
『あ、ああ!』
と、春風をはじめとした周囲の人達が驚きの声をあげ、
「あーあ。この体、カッコ良くて気に入ってたんだけどなぁ」
と、ループスは穏やかな笑みを浮かべながら、ゆっくりと目を閉じた。
その後すぐに、体が崩れていくのが早くなり、やがて崩れた部分が光の粒子となって、周囲に溶け込むように消えていった。
それを見て、最悪の結末が脳裏に浮かんだのか、
「いや……嫌だよ……お父さぁあああああん!」
と、レナはループスに縋り付きながらそう叫んだ。それを見て、春風達も「く!」と悲しみに満ちた表情を浮かべながら視線をループスからずらした。
すると、
「何だいレナ?」
と、ループスは体が崩れていくのにも関わらず、何食わぬ顔でムクッと上半身を起こしたので、レナだけでなく春風達も思わず、
『うわぁあ!』
と、皆、一斉に驚いた。
ループスはキョロキョロとしながらそんな様子の春風達を見ると、
「オイオイ、何だよその顔は。『力』は奪われても俺『神様』だから、そう簡単には死なねぇよ」
と、「アッハッハ……」と笑いながら言った。
それを聞いて、
「いや、でもループス様、体が……!」
と、春風はループスを見て慌ててそう言うと、
「ああ、大丈夫大丈夫。この体は言ってみれば『魔力で作った鎧』みたいなもんだ。つまり、作り物なんだよ」
と、ループスはまだ笑いながらそう説明した。
その説明を聞いて、
『は、はぁ!?』
と、春風達が頭上に幾つもの「?」を浮かべていると、
「でもって……」
と、ループスがそう言った瞬間、とうとう全身が崩れ終わって、全てが光の粒子となった。
そして、ループスが倒れていたその場所には、先程まで春風達を相手に戦っていた禍々しい姿のループスの代わりに、
「これが、俺の本当の姿だ」
と、何やら小さな可愛らしい生き物がちょこんと座り込んでいた。
その姿を見て、一部を除いた周囲の人達が目をパチクリとさせる中、
「……豆柴?」
と、春風は思わずボソリとそう呟き、
『か……可愛いいいいいいいっ!』
と、歩夢、美羽を含めた女子クラスメイト達全員の叫びが、その場に響き渡った。