第157話 戦い、終わって……
「これで、終わりだぁあああああああ!」
と、春風がそう叫び、振り下ろされた彼岸花の一撃によって、ループスとヘリアテス、そして爽子とクラスメイト達を苦しめた光のドームが、大きな音とラディウスらの悲鳴と共に消滅した。
その後、
「さぁ、おチビちゃん達の『力』を返してもらうわ!」
と、アマテラスがラディウスらに手を伸ばそうとしたが、
「チィ!」
ラディウスが「させるか!」と言わんばかりに自身の全身を発光させたので、
「うわ! 悪あがきを……!」
と、あまりの眩しさにアマテラスだけでなくツクヨミとスサノオまでもが腕で顔を覆った。
そして、光が弱まったので、アマテラス達はそーっと前を見たが、既にラディウス達の姿はなかったので、
「く、逃したか」
と、アマテラスは悔しそうな表情を浮かべた。
そんなアマテラス達を他所に、
(良かった。水音達は無事みたいだ……)
と、春風は苦しみから解放された爽子達を見てホッとしていると……。
ーーズキッ!
「うぐっ!」
不意に彼岸花を持つ右手に痛みが走り出して、
「う……あ……あああああっ!」
と、春風は悲鳴をあげながら、その場に片膝をついた。
そんな状態の春風が目に入ったのか、
「は、春風!」
「フーちゃん!」
「春風君!」
と、水音と歩夢、美羽はどうにか立ち上がって春風の傍へと駆け寄った。当然、
「春風ぁ!」
「春風殿!」
「オイ、大丈夫か!?」
それは、レナやウィルフレッド、ヴィンセントも、大急ぎで春風のもとへと駆け寄った。
そんな中、春風は痛みに苦しみながらもチラリと右腕を見ると、彼岸花から真っ赤な稲妻のような光が出ていたので、
(や、やばい……久しぶりに振るったから、力を使い過ぎたかも……)
と、心の中でそう呟いた。
その時だ。
「春風」
と、いつの間にか春風の傍にいた凛咲が声をかけてきたので、
「し、師匠……」
と、春風が返事すると、
「大丈夫、私も手伝うから」
と、凛咲はそう言って彼岸花の鞘を出してきたので、それを見た春風は無言でコクリと頷くと、凛咲と一緒に彼岸花を鞘に納めた。
すると、右腕に走ってた痛みが引いたのか、
「ありがとう……ございます」
と、春風は肩で息をしながら、凛咲に向かってお礼を言った。
それと同時に、水音達が春風のすぐに傍まで来ていて、
「春風、大丈夫!?」
と、水音が慌てた様子でそう尋ねると、
「あー、俺は大丈夫。それより、水音達は平気なの?」
と、春風は弱々しい笑みを浮かべながら尋ね返した。
その質問を聞いて、水音はカチンと来たのか、
「どうして……どうして彼岸花を抜いたんだよ!? 『やめろ』って言ったのに!」
と、水音は春風の両肩を掴みながら、怒鳴るように尋ねた。
その質問に対して、春風は「ごめん……」と申し訳なさそうに謝罪すると、
「お、オイ落ち着けよ水音」
「そうだよ、春風君のおかげで僕達は助かったんだから……」
と、水音の傍にいた進と耕が、「どーどー……」と水音を宥めてきたので、その言葉に水音はハッとなったのか、それ以上何も言えなくなった。
すると、
「っ! そうだ、ループス様達!」
と、春風は思い出したかのようにハッとなってループスとヘリアテスを見ると、2柱ともグッタリしていたので、
「お、お父さん! お母さん!」
と、レナはすぐに2柱のもとへと駆け出し、そんなレナに続くように、春風達もすぐに彼女を追った。
「お父さん! お母さん! 大丈夫!?」
と、先に着いたレナが、ループス達に話しかけると、
「うぅ……レナ、私は大丈夫……」
と、ヘリアテスは返事したが、その後すぐに、
「でも、ループスが……」
と、チラリとループスを見てそう言ったので、レナは「まさか!」と顔を真っ青にして、
「お父さん! お父さぁん!」
と、レナは何度もループスに話しかけた。
すると、
「……れ……レナ」
と、ループスは弱々しくそう返事したので、
「お父さん! しっかりして!」
と、レナは更にループスに声をかけた。
そして、そんなレナに続くように、
「ループス様!」
と、春風もループスに声をかけた。
次の瞬間……。
ーーパキッ!
という音と共に、ループスの体にヒビが入った。それも一ヶ所ではなく全身に、だ。
そのヒビを見て、
「な、何これ!?」
と、レナが驚いていると、
「どう……やら……限界のようだ」
と、ループスは弱々しい口調のままそう言った。