第151話 「親玉」、現る
突如、春風達の上空に現れた5つの光の塊。
その光の塊は、5人の男女の姿へと変化した。
赤い光は真っ赤なタンクトップに黒い長ズボン姿をした、20代前半くらいの若い赤髪の男性に。
青い光は白い半袖シャツに青いロングスカート姿をした、赤髪の男性同じ年頃くらいの、眼鏡をかけた長い青髪の女性に。
緑の光は緑色のシャツの上に黒いフード付きの上着と黒い長ズボン姿をした、春風と同じ年頃くらいの緑髪の少年に。
オレンジ色の光は白いワンピースにオレンジ色のカーディガンを羽織った、オレンジ髪のぽっちゃりとした体付きをした大人の女性に。
そして、最後に白い光は、白い長袖シャツに黒いジーンズ姿をした、長い銀髪に銀色の瞳を持つイケメン男性になった。
そんな5人の男女を見て、その場にいる者達は緊張しているのか、誰もがタラリと汗を流していたが、
(あぁ、コイツらもしかして……)
と、春風だけは何となく男女の正体に気付いたのか、何処か冷めた目で彼らを見ていた。
その時、
「お、おぉ! 貴方様方は!」
と、春風達の背後でジェフリーがパァッと表情を明るくしていたので、
「あ、あのぉ。クラーク教主は、知ってるのですか?」
と、爽子が恐る恐るジェフリーに向かってそう尋ねると、
「お、おぉ、これは失礼した勇者爽子殿! この方々こそ、我ら五神教会が崇め奉る、偉大なる5柱の神々なのです! 順番に、赤髪の方が「炎の神カリドゥス」様! 青髪の方が「水の女神アムニス」様! 緑髪の方が「風の神ワポル」様! オレンジ髪の方が「土の女神カウム」様! そして、白銀の髪の方が神々を束ねるリーダー、「光の神ラディウス」様で御座います!」
と、ジェフリーはかなり興奮しながら、空中にいる5人の男女についてそう説明した。
その説明を聞いて、
(そうか。コイツらが敵の親玉って訳か)
と、春風は「やっぱりか」と言わんばかりの表情になった後、
(つまり……俺の敵って事か)
と、少しだけ「怒り」を込めた視線を、目の前にいる「敵の親玉」達に向けた。
すると、
「説明をありがとう。ジェフリー・クラーク教主」
と、長い銀髪のイケメン男性ーーラディウスはジェフリーに向かってそう口を開いたので、
「お、おぉ、ラディウス様! この私めになんと勿体なきお言葉をぉ!」
と、ジェフリーは更に興奮した様子でそう言ったので、そんな彼の姿を見て、
(う、うわあ。すっごい感激してるぅ……)
と、春風は冗談抜きでドン引きした。
春風だけではない。爽子ら勇者達だけでなく、ウィルフレッド達でさえも、興奮しながらラディウス達を紹介したジェフリーにドン引きしていた。
そんな春風達を前に、
「さて、我らが選びし『勇者』達よ」
と、ラディウスがそう口を開いたので、爽子ら勇者達が一斉にラディウス達に視線を向けると、
「少々アクシデントがあったが、皆、よく悪しき邪神を倒してくれた。おまけに、この場にもう1柱の邪神も誘き出してくれて……」
と、ラディウスはそう言って、地面に倒れふしてるループスと、そのループスに寄り添ってるヘリアテスをチラリと見た。
当然、その視線を受けて、ループスとヘリアテスはラディウス達をキッと睨みつけた。
それと同時に、ループスとヘリアテスを見るラディウス達のその目つきが、あまりにも邪悪に満ちてるのを感じたのか、春風はラディウス達に対して怒りと嫌悪感を持った。
そして、傍に立つレナもまた、「フー、フー……」と肩で息をしてブルブルと体を震わせながら、怒りに満ちた眼差しをラディウス達に向けた。
そんな春風とレナを、ラディウスは冷たい目で見返した後、
「さて、それでは最後の仕上げといこうか」
と言って、隣にいるカリドゥス、アムニス、ワポル、カウムに視線を向けた。
それにカリドゥス達はコクリと頷くと、それぞれ手を繋いで、
「「「「「神器よ、目覚めよ」」」」」
と、同時に言った。
次の瞬間、
「うわぁ!」
「な、何!?」
という声がしたので、春風は「何だ?」とすぐに声がした方へと視線を向けると、
「せ、先生! みんな! どうしたんですか!?」
声の主は爽子ら勇者達のようなのだが、何故か彼女達の手には、ループスと分身達との戦いで使っていた「神器」が握られていて、それぞれ赤、青、緑、オレンジ、そして白い光に包まれていたので、
「お、オイ何だ? 何が起きてんだ!?」
と、ヴィンセントが驚きに満ちた表情になっていると、
『うわっ!』
『きゃあっ!』
爽子ら勇者達の体が勝手に動き出し、ループスとヘリアテスを取り囲んだ。
それを見て、
「ど、どうしたんだ爽子殿……!?」
と、ウィルフレッドが爽子に近づこうとしたが、
「「「「「全員、そこを動くな」」」」」
と、ラディウス達が動こうとしているウィルフレッド達に向かってそう言った。
すると、ウィルフレッド達の体は、まるで金縛りにでもあったかのようにその場から動かなくなった。
そして、
(うお! お、俺もかよ!)
それは、春風も同様だった。
そして、動かなくなった春風達を見た後、
「さぁ勇者達よ。我々と共に、悪しき邪神どもを封印するぞ」
と、ラディウスは爽子達に向かってそう言った。
次の瞬間、
「あ、ああ!」
「か、体が……!」
「勝手に、動くよぉ!」
爽子達は、まるで操られているかのように手に持っている神器を空に向かって翳した。
そして、それぞれの神器から5色の光が放たれると、その光はまるでドームのようにループスとヘリアテス、そして勇者達を包んだ。
その瞬間、
「グアアアアアアア!」
「ああああああああ!」
ループスとヘリアテスが激しく苦しみ出した。