第149話 春風vsループス・決着
「化身顕現! 羽ばたけ、フェニックスゥ!」
そう叫んだ春風の体は、緑、赤、青の3つの光に包まれた。
そして、その光が弾けたかのように消えた時、その姿は真紅の体と翼を持つ、1羽の大きな美しい鳥へと変身していた。
そんな春風の姿に、戦いを見守っていた者達はというと、
「あ、あれが……雪村?」
「ま、マジかよ」
「すっごーい……」
と、球体内の勇者達は呆然とし、
「あれが……化身顕現」
「あれが……春風様……ですか?」
「そしてあれが、フェニックス。ギデオン・シンクレアをぶっ倒した、春風オリジナルの魔術にして伝説の生き物ってか?」
「きゃあああああ! 春風ちゃーんすごーい!」
「は、母上、落ち着いてください! ちょっとアーデ! 見てないで一緒に母上を止めてくれ!」
「……」
「て、聞いてないし!」
と、王族、皇族達は一部がかなり興奮している様子だった。
そんな様子の周囲の人達を他所に、
「ほう、ソイツがお前の奥の手って奴か?」
と、ループスは春風の姿を見てそう尋ねると、春風はそれに答えず、
「行きます」
と、ただ一言だけそう言うと、翼を羽ばたかせて空へと舞い上がった。
その後、空中で一回転すると、ループスに向かって地面すれすれの位置で突っ込んだ。
それを見たループスは、
「正面だと!? 上等だぁ!」
と言うと、その場に踏ん張って『力』を溜め始めた。
そして、溜めたその『力』を口の中へと移動させた。
それを見て、レナは何かを感じたのか、
「お、お父さん! やめて! もうやめてよ!」
と、王族達やジェフリーがいるにも関わらず、ループスに向かってそう叫んだが、その声はループスには届かず、
「受けろ! 春風ぁあああああっ!」
と、ループスは突撃してきた春風に向かってそう叫ぶと、咆哮する形で溜めたその『力』をぶっ放した。
口から放たれた強大なエネルギーによる攻撃。誰もが春風はその攻撃を避けると思っていたが、
「っ」
何と、春風は一向に突撃するスピードを緩めず、寧ろどんどん加速していった。
そして、春風と強大なエネルギーがぶつかり、ドォンと大きな音を立てて爆発した。
激しい爆風が起こり、周囲の人達は飛ばされまいと必死になってその場に踏ん張る。
その後、春風はどうなったのかと全員が目の前を見ると。
ーーブワァ!
「なぁにぃいいいいい!?」
「は、春風!」
「スゲェ! 生きてた!」
春風はまだ、生きていた。生きていて、引き続きループスに向かって突っ込んできたのだ。
しかもよく見ると、更に強くなっているの感じたループスは、
「……そうか。わかったぞ、ソイツの秘密が!」
と、何かに気付いたかのようにそう呟いた。
その後、
「来やがれ! 受け止めてやる!」
ループスは突っ込んでくる春風を止めようと身構えたが、
「無駄ですよ」
「何!?」
春風の方が強かったのか、ループスは攻撃を受け止める事が出来ず、思いっきりくらってしまった。
それを見て、
『や、やった!』
「お父さん!」
と、ショックを受けたレナを除いた周囲の人達がそう声をあげる中、春風の姿がフェニックスからもとへと戻った。
そして春風の攻撃を受けたループスは、そのまま倒れるのかと誰もが思っていたが、
「……まだだ」
ループスは倒れる事なくその場に踏ん張って、
「まだ、終わってねぇぞ!」
と、春風の方へと振り向こうとした。
だが、春風はループスの方へと振り向く事はなく、代わりに、
「いいえ、終わりですよループス様」
と、不敵な笑みを浮かべながらそう言ったので、ループスはそれに「何だと?」と返事すると、
「……っ! しまった!」
と、ハッとなって後ろを向いた。
そこにいたのは、
『ウオオオオオオオッ!』
いつの間にか、球体から解放されて自由になった勇者達がいた。
(ちぃ! ダメージを受けた所為で、結界が解除されてしまったのか!)
と、そうなった理由を理解したループスはすぐに行動しようとしたが、
『させるかぁあああああっ!』
前衛型の勇者達による物理攻撃と、
『させるかぁあああああっ!』
後衛型の勇者達による魔術や遠距離攻撃がループスに襲いかかってきた。
「ちくしょうがあああああああ!」
ループスはダメージを受けながらもその全てを回避したが、
『ウオオオオオオオッ!』
「うげ!」
前衛型の勇者達にガシッと全身にしがみつかれて、ループスは身動きが取れなくなった。
「こ、この、離せ……!」
と、ループスは勇者達を引き剥がそうとしたが、それよりも早く、
『先生!』
と、しがみついていた勇者達がそう叫んだので、ループスは「え?」と、ふと正面を見ると、
「私の生徒に、何してくれてんだあああああああ!?」
そこには怒りの形相の爽子がいて、ループスに向かって思いっきり右ストレートをかました。
「グフアアアアアアアッ!」
爽子に殴られ、吹っ飛ばされたループスは、体を何度もバウンドさせると、
「ぐ……うぐ」
と、そのままピクリとも動かなくなった。