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ユニーク賢者物語  作者: ハヤテ
第2部第5章 「邪神」との戦い
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第146話 春風vsループス

本日2本目の投稿にして、いつもより短めの話になります。


 「オイオイ、どうなってんだありゃあ?」


 突然目の前が眩しくなって、それが収まったから目を見開くと、何と勇者達が全員透明な球体に閉じ込められていた。


 ただ1人、春風を除いて。


 このとんでもない状況に、ヴィンセントをはじめとした戦いを見守っている者達は、皆、ショックで口をあんぐりとさせていた。


 そして、


 「お、お父さん……春風……」


 それは、レナも同様だった。


 さて、ヴィンセント達が見守る中、


 「さぁ、春風。ここからが、本当の戦いだ」


 と、ループスが春風に向かってそう言い放ったので、


 「『本当の戦い』って……ループス様、一体先生達に何をしたのですか!?」


 と、春風は「戸惑い」と「怒り」が入り混じったような表情でループスに向かってそう尋ねた。


 その質問に対して、ループスが「ん?」と首を傾げると、


 「ああ、心配するな。()()だからちょいと閉じ込めさせてもらっただけだから」


 と、時に悪びれる事なくそう答えた。


 その答えを聞いて、春風は何かに気付いたのか、


 「ループス様。まさかとは思いますが、あなたの狙いは……」


 と、尋ねようとしたが、春風が言い切るよりも早く、


 「そうだ。最初からお前と戦う事が目的さ」


 と、ループスは再び悪びれる事なくそう答えた。


 その瞬間、透明な球体の1つから「な、何だとう!?」という声が聞こえたが、


 「あ、あなたは……」


 と、その表情から「戸惑い」が消え、「怒り」だけが残った状態の春風の耳には届かず、その場が一気に緊張に包まれた。


 拳をグッと握り締め、「怒り」で体を震わせながらループスを睨む春風。


 今にもループスに向かって駆け出しそうな様子だったが、次の瞬間……。


 ーーゴッ!


 『え!?』


 「お、オイ春風、何を!?」


 なんと春風は、その握り締めた拳で……()()()()()()()()()()()()()


 突然のとんでもない行動に、思わずループスと勇者達はギョッと目を大きく見開いた。


 そして彼らがオロオロしていると、


 「……ふぅ」


 と、春風は落ち着いた表情でループスを見つめた。


 そして、春風は自身の武器である杖を構えると、


 「待ってください、先生、みんな。俺が絶対助けますから」


 と、真っ直ぐループスを見つめながらそう言った。


 その言葉を聞いて、漸くハッとなったループスは、


 「は、はは……どうやら、やる気になったみてぇだな」


 と言うと、ゆっくりと目を閉じた。


 次の瞬間、ループスの体がボコボコと変化し始めた。


 それまで狼のように4つ足で立っていたのだが、まるで人間のようにゆっくりと立ち上がって、2本足で立てるようになった。


 更に左右の前足というと、こちらもまるで人間の手のように形を変えて、それを確認すると、ループスが手に変化したその左右の前足を動かした。


 そう、ここまで来ると、まさにループスは今、顔は狼のままだが、体は本当に人間のような見た目になっていた。


 その姿を見て、閉じ込められた勇者達だけでなく、見守っている者達までもが「こ、これは……」と言わんばかりに驚愕に満ちた表情になったが、


 「……」


 春風だけは、落ち着いた表情を崩す事はなかった。


 そんな春風を前に、


 「ほう、この姿を見ても何も思わない、か」


 と、ループスは挑発じみた口調でそう言うと、手となった右前足に意識を集中した。


 すると、ループスの手から黒い炎のようなエネルギーが噴き出してきて、


 「うわ! 何だ!?」


 と、球体の中にいる勇者の1人が驚いていると、その黒いエネルギーは1本の剣へと形を変えた。


 そして、ループスは出来上がったその黒い剣をブンブンと振り回すと、


 「うん、良い出来だ」


 と言って、黒い剣を両手で握り締めて構えた。


 それを見て、春風は杖を更にグッと握りしめると、


 「さぁ、どっからでもかかってきな」


 と、ループスは春風に向かって今度こそ本気で挑発した。


 それを聞いた春風は、


 「わかりました。では、遠慮なく……」


 と、返事すると、


 「『アクセラレート』! 『ヒートアップ』! 『プロテクション』!」


 と、爽子達にかけたのと同じ、風、炎、土の強化魔術を自身にかけた。


 そして、春風の全身が、緑、赤、オレンジ色の光に包まれた後、


 「行かせてもらいます!」


 と、春風はそう言って、ループスに突撃した。

 



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