第145話 春風と勇者達vsループス・4
春風と勇者達が、ループスの分身達によって分断されてしまった丁度その頃、
「ああ! は、春風達が!」
「ぶ、分断されてしまいましたぁ!」
と、その様子を見て、レナとイヴリーヌがショックを受けていた。
その後、
「た、大変です! すぐに助けに……!」
と、イヴリーヌが動こうとしたその時、
「待て!」
と、ウィルフレッドがイヴリーヌの肩を掴んだ。
肩を掴まれたイヴリーヌは、
「お、お父様、ですが……!」
と、ウィルフレッドに向かって文句を言おうとしたが、
「落ち着くんだイヴリーヌ。今動けば、彼らの戦いの邪魔になってしまうだろう」
と、ウィルフレッドは真剣な表情でそう諭した。
その言葉にイヴリーヌが「うぅ、それは……」と言葉を詰まらせていると、
「オイ、アレを見ろ!」
と、ヴィンセントが戦闘中の春風達を指差しながらそう叫んだので、ウィルフレッドとイヴリーヌが「え?」とその方向を見ると、
『[神器召喚]!』
と、勇者達がそう叫び、次の瞬間、勇者達の手に純白の武器が現れたのが見えた。
それを見て、
「おお! アレぞまさに神に選ばれし勇者の武器『神器』! 邪神と戦う為の武器ですぞ!」
と、ジェフリーが興奮した様子でそう叫んだ。
その叫びを聞いて、周囲の人達はゴクリと唾を飲みながら、春風達の方へと視線を戻した。
さて、そんな事になってるとは知らない春風と勇者達はというと、今、それぞれの「神器」を手に目の前の相手に突撃を開始した。
当然、それは、ループスを相手にしている春風と4人の勇者達も同様だ。
その4人の勇者達、即ち、水音、爽子、純輝、煌良の手には、それぞれの武器が変化した「神器」が握られている。
水音の手には身の丈程ある大剣型の神器。
爽子と純輝の手には長剣型の神器。
最後に煌良の手には斧の刃がついた槍ーーハルバート型の神器。
春風の強化魔術を受けて、4人はその神器を手にループスに突撃し、同時にループスに向かって振り下ろした。
それに対して、ループスはその場から1歩も動かず、
「フン」
と、鼻を鳴らすと、自身の尻尾を大きくして、それを軽く振るった。
すると、ガキィンという音と共に水音達の攻撃を弾いた。
それだけじゃない。軽く振るっただけだというのに、そこから凄まじい衝撃波が放たれて、攻撃を弾かれた水音達は、それをもろにくらって思いっきり吹っ飛ばされた。
『うわぁあ!』
と、悲鳴をあげる水音達に、
「みんな……!」
と、春風はすぐに行動しようとしたが、
「おっと、そうはいかねぇよ」
「っ!」
いつの間にかループスがすぐ傍まで来ていたので、春風は驚いてその場から飛び退こうとしたが、それよりも早く、ループスは自身の右の前足を振り上げて、それを大きくした。
そしてそこから鋭い爪を生やすと、それを春風目掛けて振り下ろしてきた。
それを見た春風は、咄嗟に持っていた愛用の杖で、その振り下ろされた鋭い爪付きの右前足を受け止めた。
「くぅ!」
「お、やるじゃねぇか」
攻撃を受け止めた春風に向かって、ループスがそう言うと、
「春風から、離れろぉ!」
と、体勢を立て直していた水音が、ループスに向かって神器を振り下ろした。
だが、
「嫌だね」
と、ループスはそう返事すると、再び尻尾を振るってその攻撃を防いだ。
「な! また止められた!?」
と、驚く水音に、
「オイオイ。この程度かよ勇者様よぉ」
と、ループスが呆れ顔でそう言うと、
「まだだ!」
と、今度は爽子がループスに攻撃を仕掛けてきた。
爽子だけではない、純輝と煌良も一緒に、だ。
しかし、
「甘い」
と、ループスはそう呟くと、全身を思いっきり回転させて、爽子達の攻撃を再び弾いた。
そこから生まれた隙をついて、ループスは尻尾による攻撃だけでなく体当たりを使って再び爽子達を吹っ飛ばした。
その後、どうにかして地面に着地した水音達を見て、
「フーン。この程度かよ」
と、ループスはそう呟いた後、
「で、お前はいつまでコイツらのサポート役に徹するつもりだ?」
と、春風に向かってそう尋ねた。
その質問に春風は、
「え? それは……」
と、そこから先は言葉に詰まらせていたので、
「ほほう。だったら……」
と、ループスはそう呟くと、ピカッと第3の目を輝かせた。
突然の眩い光に、春風と水音達は思わず目を閉じた。
そして光が弱くなったので、
(い、一体、何が起きたんだ?)
春風が目を開けると、
「み、水音! 先生! 正中君! 力石君!」
そこには、透明な球体に閉じ込められた、水音、爽子、純輝、煌良の姿があった。
しかもよく見ると、
「な、何だよこれ!?」
「で、出られないよ!」
と、水音達だけじゃなく、分身達と戦っていたクラスメイト達も、全員透明な球体に閉じ込められていた。
それと同時に、
「……って、あれ? 何で俺だけ自由!?」
と、春風自身は自由なままだという事に気がついた。
「な、何だよこれ!? どうして俺だけ!?」
と、春風があまりの事に戸惑っていると、そんな春風に向かって、
「さぁ、春風。ここからが、本当の戦いだ」
と、ループスはニヤリと笑いながらそう言い放った。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。この話の流れを考えていたら、その日のうちに終わらせる事が出来ませんでした。
本当にすみません。