第144話 春風と勇者達vsループス・3
ループスの分身達によって、それぞれ分断されてしまった春風と勇者達。
今、その4体の分身達の前に、勇者ことクラスメイト達が5人づつ配置されている形となっている。
そして、春風の前にはというと、
「る、ループス様……」
「フッフッフ……」
ループス本人が目の前にいる状態で、そんな春風と共にいるのは、水音、爽子、正中、そして「力石君」と呼ばれていたクールそうな印象の少年の4人だ。彼らも今、目の前にいるループスを見て、緊張のあまりタラリと冷や汗を流していた。
そんな春風達を前に、ループスはキラリと目を輝かせると、
「ええっと。俺の前にいるのは、雪村春風と桜庭水音。そして、朝霧爽子に、正中純輝と力石煌良、か」
と言ってきたので、
「ど、どうして、僕達の名前を……!?」
と、正中は自身の名前を呼ばれた事に思わずビクッとなった。
そんな正中……いや、以降は純輝と呼ぶ事にしよう。そんな純輝とは対照的に、
「流石は『神』……といったところか」
と、同じく名前を呼ばれた「力石煌良」という少年……こちらも以降は煌良と呼ぶ事にしよう。とにかく、驚く純輝とは対照的に、煌良はタラリと汗を流しながらも、落ち着いた口調でそう呟いた。
そんな煌良や純輝、そして春風、水音、爽子を前に、
「ほほう、勇者達の中でもかなり高い能力を持った者達か。まさにこの俺の相手に相応しいって訳だな」
と、ループスはまるで分析するかのような表情でそう言うと、
「あ、あれ? 俺は? 勇者じゃないですけど俺は?」
と、春風が「ちょっと待って」と言わんばかりにそう尋ねてきたので、それにループスは「ん?」と反応すると、
「お前か? お前は……ノーコメントで」
と、申し訳なさそうにそう答えた。
それに春風が「え、ちょっと!?」1歩前に出ようとしたが、
「春風、取り敢えず落ち着いて」
と、水音にガシッと肩を掴まれてしまい、春風はその場に踏みとどまった。
その後、春風は水音が言うように気持ちを落ち着かせようと深呼吸すると、
「先生、この状況どうしますか? 俺と違って先生達は『勇者』ですから、簡単にやられたりはしないでしょうけど……」
と、爽子に向かってそう尋ねた。
その質問に対して、爽子は「それは……」と呟くと、手に持ってる長剣を翳して、
「みんな、『神器』を使うぞ!」
と、叫んだ。
その叫びを聞いて、水音、純輝、煌良だけじゃなく、分身達の前にいるクラスメイト達が、
『はい!』
と、返事すると、爽子と同じように自分達の武器を翳して、
『[神器召喚]!』
と、爽子と一緒になってそう叫んだ。
次の瞬間、持っている武器が白い光に包まれて、別の形へと姿を変えた。
それは、「天使の翼」を思わせる装飾が施された、何処か神々しいものを感じさせる純白の武器だった。
爽子達のその武器を見て、
「おお、あいつらの力を感じるな。全く、腹立たしい事このうえないぜ」
と、ループスは忌々しいものを見るかのような表情になった。
そんなループスを前に、
「雪村」
と、爽子が声をかけてきたので、
「何ですか先生?」
と、春風がそう返事すると、
「強化系の魔術は持ってるか?」
と、爽子はそう尋ねてきた。
その質問に春風は、
「はい。風、炎、土の強化魔術を持ってます」
と、真面目な表情でそう答えると、爽子は「そうか」と言って、
「私が合図したら、すぐにそれをかけてくれ」
と、真っ直ぐループスを見つめたままそう言ったので、
「わかりました」
と、春風はそれを了承した。
すると、
「春風、それなら僕にもかけてくれ」
と、水音も爽子と同じようにそう言い、更に、
「ぼ、僕にも頼む!」
「俺にもだ」
と、純輝や煌良までもがそう言ったので、
「オッケー。それじゃあ全員にかけるよ」
と言って、春風は持っている愛用の杖をグッと握り締めた。
それと同時に、爽子達は神器を構え直して戦闘準備に入り、ループスまでも、
「フン。来るなら来い。返り討ちにしてやるぜ」
と、爽子達と同じように戦闘準備に入った。
そして、お互い睨み合う両者の間をヒュウッと風が吹き抜けると、
「雪村、頼む!」
と、爽子がそう叫んだので、
「『アクセラレート』! 『ヒートアップ』! 『プロテクション』!」
と、春風は爽子、水音、純輝、煌良の4人に、風、炎、土属性の強化魔術をかけた。
その瞬間、4人の体が、緑、赤、オレンジの光に包まれた。
その光を受けて、
「す、凄い、力が漲ってくる!」
と、純輝がそう感じていると、
「みんな、行くぞ!」
と、爽子がまたそう叫び、それを聞いて、
「「「はい!」」」
と、魔術を受けた3人が返事すると、一斉にループスに突撃した。