第140話 春風、怒る・2
お待たせしました、1日遅れの投稿です。
「どういう事だ貴様ぁ! 説明しろぉ!」
「ひ、ひぃ!」
ジェフリーに向かってそう怒声を浴びせるウィルフレッド。そんなウィルフレッドを見て、
(お、おぅ。ウィルフレッド陛下、スッゲェ怒ってる)
と、春風は表情にこそ出さないが、内心ではかなりビビっていた。
勿論、ジェフリーに対する怒りはあるのだが、明らかに春風以上に怒っているウィルフレッドを見て、僅かに驚きが勝っていたのだ。
まぁそれはさておき、怒りの形相ウィルフレッドを見て、
「う、あぁ、そ、それはですな陛下……」
と、ジェフリーはガクガクと体を震わせていたが、すぐに「落ち着け、落ち着くんだ」と言わんばかりに深呼吸しまくると、
「し、失礼しましたウィルフレッド陛下。そして、勇者様方。どうやら、我々の方で何か手違いがあったようですね」
と、穏やかな笑み浮かべながら、最後に、
「偉大なる神々が素晴らしきものを用意してくださったというのに、大変申し訳ありませんでした」
と、付け加えると、深々と頭を下げて謝罪した。
ただ、その謝罪を見ても、
「……」
「ケッ! ホントかよ……」
ウィルフレッドもヴィンセントも、ジェフリーに対する疑いを捨てる事は出来なかった。
当然、
(スッゴイわざとらしい……)
それは、春風も同じだった。
すると、
「ま、まぁそれよりも……」
と、ジェフリーがそう口を開くと、
「雪村春風ぁ!」
と、春風をギロリと睨みつけてきたので、
「あ、テメェ誤魔化す気か!?」
と、ヴィンセントがそう尋ねてきたが、ジェフリーはそれを無視して春風を睨み続けていたので、
「あぁ、そういえばお久しぶりでしたね、ジェフリー・クラーク教主殿?」
と、春風は不敵な笑みを浮かべながら、ジェフリーに向かって挨拶(?)したが、
「黙れこの悪魔め! 貴様、よくも我々を騙してくれたな!」
と、ジェフリーは怒りの形相で春風をそう罵った。
それを聞いて、
「あ、テメェ何て事言いやがる!」
と、ヴィンセントが怒鳴りながらジェフリーに詰め寄ろうとしたが、春風はスッと右手を上げて「待った」をかけると、
「おやおやぁ? 『騙す』とは一体何の事を言ってるのですかぁ?」
と、ジェフリーに向かってまるで小馬鹿にするかのように笑いながらそう尋ねた。
その質問を聞いて、
「な、何の事だと!? 貴様、自分が固有職保持者だという事を我々に隠してたではないか! しかも、『始まりの悪魔』と同じ、『賢者』の職能を、だ! それを『騙す』と呼ばずしてなんと呼ぶ!」
と、ジェフリーは顔を真っ赤にしながら、怒鳴るようにそう答えた。
その答えを聞いて、春風は「アッハッハ……!」と笑いながら、
「ああ、その事ですか? ま、確かにそれだけ見れば、『騙す』って事になるでしょうけど、全て嘘って訳じゃないですよぉ。ほら、俺、『勇者』じゃないですし」
と、言い返した。
その言葉を聞いて、
「き、貴様ぁ! 私をこれ以上怒らせたいのかぁ!?」
と、ジェフリーは更に顔を真っ赤にしながらそう尋ねると、春風はスッと表情を変えて、
「それはこっちのセリフだ! 手違いだかなんだか知らねぇけど、よくも先生やクラスのみんなに変なものそつけさせようとしやがって! こちとら怒りではらわた煮えくりかえってんだよ!」
と、地面に落ちてる爆散の腕輪をチラッと見ながら、怒りを込めてそう怒鳴った。
その言葉に対して、
「だ、黙れ黙れ黙れ! 仲間を置いて去った貴様に、そんなセリフを吐く資格などない!」
と、ジェフリーはそう怒鳴り返したが、春風は怯む事なく、
「確かに事情はどうであれ、俺はみんなを置いてルーセンティア王国を飛び出した。その事については本当に申し訳ないって思ってるよ。だからこそ、こうして再会した今、俺はもう、みんなのところから離れる気はない。まぁ、離れる時はその前にキチンとみんなと相談し合うさ。そして、無事に世界を救ったら、俺はみんなを連れて故郷に帰る。当然、この世界と俺達の故郷『地球』、どちらも幸せになるようにしてからな!」
と、ジェフリーに向かって毅然とした態度でそう言い切った。
その言葉が響いたのか、周囲から『おぉ!』と歓声があがる中、
「き、貴様。やはり貴様は、ここで滅ぼさねばならないようだな! 断罪官大隊長ギデオン・シンクレアを傷付けた罪、死んで償ってもらうぞ!」
と、ギデオンはそう言うと、春風を睨みながら戦闘態勢に入った。当然、五神教会の神官達も一緒だ。
するとその時、
「待て! ジェフリー・クラーク!」
と、ウィルフレッドが両者の間に割って入ってきた。
その姿を見て、
「へ、陛下! 何故ソイツを庇うような事をするのですか!? ソイツは我々を騙していたのですぞ!」
と、ジェフリーがそう問い詰めると、
「確かに、春風殿には『悪魔』の力が宿っている。しかし、彼は異世界『地球』の神々がこの世界に遣わした、いわば『異世界の神の使徒』だ。その使徒に手を出す事は、たとえ5柱の神々が許しても、私が絶対に許さん!」
と、ウィルフレッドも春風と同じように毅然とした態度でそう言った。
更に、
「そうだぜ! コイツはいずれ、俺達『ストロザイア帝国』がもらうんだ! 勝手な事はさせねぇよ!」
「そうですよぉ。春風ちゃんを傷つけるなんて、絶対に許しませんからぁ」
と、いつの間にか春風の傍に来ていたヴィンセントとキャロラインが、ウィルフレッド続くようにジェフリーに向かってそう言った。
また更に、
「ちょっとそこのお二方、あなた達も勝手な事を言ってはいけませんよ」
「そうだ! 春風は大事なレギオンメンバーなんだから……!」
「僕達に話をつけてからにしてほしいですね」
と、フレデリック、ヴァレリー、タイラーも春風の傍に立つと、ジィッとジェフリーを見つめた。いや、この場合は睨みつけたと言った方が正しいのだろう。
そして最後に、
『……』
爽子ら勇者達と春風の仲間達も、春風の傍に立ってジェフリーを睨んだ。
状況が一気に不利になったのか、
「こ、こんな……こんな事が……!」
と。ジェフリーがショックで顔を真っ青にしていると、
「いやー、良いもの見させてもらったわぁ!」
という声がしたので、春風達は思わずその声がした方へと振り向くと、
「あ、ループス様!」
と、春風が驚いたように、
「よぉ!」
そこには、楽しそうに右の前足を振る大きな黒い狼ーーループスがいた。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。この話の流れを考えていたら、その日のうちに終わらせる事が出来ず、結局1日遅れの投稿となってしまいました。
本当にすみません。