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ユニーク賢者物語  作者: ハヤテ
第1部第2章 「冒険」の始まり?
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第16話 春風、初めての戦い?

 ちょっと早い(?)かもしれませんが、投稿させてもらいます。


 それは1年前、春風が高校生になったばかりの事だった。


 春風の()()の我が家である喫茶店「風の家」の店内で、春風ともう1人、同じ年頃の少年が、1人の20代くらいの女性と向き合っていた。


 「春風。水音。2人共、高校入学おめでとう」


 女性が春風と、「水音」と呼んだ少年にそう言うと、


 「「ありがとうございます、師匠」」


 と、2人は女性を「師匠」と呼び、彼女に向かってそう言った。


 その後、「師匠」と呼ばれた女性は、春風と水音に、


 「はい、これ。私からの()()()()よ」


 と言って、2つの木製の箱を差し出した。


 2人はそれぞれ「師匠」からその箱を受け取ると、蓋を開けて中身を見た。


 「あの、師匠。()()って一体……」


 と、春風が箱から中身を取り出しながら、「師匠」に向かってそう尋ねると、


 「私が作った特製の『お守り』よ。もしもの時は、それがあなた達を守ってくれるわ」


 と、「師匠」はニコッと笑ってそう答えた。


 それから1年後、「エルード」という異世界にて、


 「ふ、ふざけるなぁあああああああっ!」


 1人の若い騎士が、春風に向かって突撃してきた。


 しかもよく見ると、若い騎士は既に腰に挿した剣を鞘から引き抜こうとしていたので、春風は「避けなければ!」と考えたが、傍に立っている正中を見て、


 (駄目だ、今ここで避けたら!)


 と、すぐにその考えを改めて、


 「ごめん!」


 と正中に向かってそう謝罪すると、彼を爽子の方へドンッと突き飛ばした。


 「「うわぁ!」」


 突然の事に驚く正中と爽子。そんな2人を見て、


 (よし!)


 と、春風がそう思っているうちに、


 「ウオオオオオオオッ!」


 と、若い騎士が春風のすぐ傍まで来ていて、鞘から抜いた剣を思いっきり振り上げていた。


 そして、剣が春風に向かって振り下ろされ、


 「()()!」


 春風から少し離れた位置にいる桜庭……否、水音が、


 「()()()!」


 「フーちゃん!」


 同じく少し離れた位置にいる天上……否、美羽と、海神が悲鳴をあげた次の瞬間……。


 ーーゴッ!


 『……え?』


 何やら鈍い音がその場に響き渡ったので、「何だろう?」と思ったその場にいる人達が、一斉にその音がした方へと視線を向けると、そこには今まさに、春風に向かって剣を振り下ろしていた若い騎士がいて、よく見ると、剣を握っている騎士の指に、春風が両手で握っている()()()のようなものあてていた。


 否、正確に言えば、振り下ろされた若い騎士の剣を、春風が短い棒のようなものでガード(防御)したのだ。


 「グッ!」


 あまりにも痛かったのか、若い騎士は持っていた剣を落とすと、その場に膝をついて短い棒のようなものにぶつけてしまった自身の指手を触れようとした、まさにその時、


 「てりゃあっ!」


 と、その隙をついて、春風は若い騎士の顔面に強烈な飛び蹴りをくらわせた。


 「ぐあああああっ!」


 春風からの()()を受けた若い騎士は、そのまま後ろへと吹っ飛ばされた。


 そして、床に何度も全身をバウンドさせると、そのまま意識を失った。


 誰もがその状況を見て呆然している中、


 『エヴァン!』


 と、他の騎士達が若い騎士に駆け寄った。


 一方、他の人達はというと、目の前で起きた事を誰も理解出来ないでいる中、春風の手に持っている短い棒ようなものを見て、


 「……あ、師匠に貰った『お守り』」


 と、水音はボソリと呟いた。


 さて、春風の方はというと、自身が吹っ飛ばした若い騎士を、じぃっと無表情で見ていたが、


 (や、やべぇ。普通に決まっちまったよ。し、死んだりしてないよな?)


 と、心の中では自身がやってしまった事に対して、かなり不安になっていた。


 しかし、そうとは知らない他の騎士達はというと、


 「き、貴様ぁ!」


 「よくもエヴァンを!」


 「許さん!」


 と、皆、怒りの形相で春風を睨みつけると、一斉に剣を抜いて襲いかかってきた。


 そこで漸くハッと我に返ったウィルフレッドは、


 「ま、待つんだ騎士達よ……!」


 と、大慌てで騎士達を止めようとしたが、仲間をやられた怒りで我を忘れている騎士達にその声が届く事はなく、誰1人攻撃の手を止めなかった。


 それを見た爽子は、


 「に、逃げろ雪村!」


 と、春風に向かってそう叫んだが、それよりも早く、


 「フッ!」


 と、持っていた短い棒のようなものーー「お守り」によるカウンターに加えて、パンチやキック、時には投げ技と、様々な攻撃方法で騎士達を返り討ちにした。


 『ぐあああああっ!』


 と、春風の反撃を受けた騎士達は、1人、また1人とその場に倒れ伏し、残っている者達は恐怖で握っていた剣を落としそうになったが、それでも春風を睨む事をやめなかった。


 そんな彼らを、春風は冷たい目で見ていたが、


 (うおおおおおい! だ、大丈夫か騎士の皆さん!? 何レベル1の人間にやられてんだよぉ! そんなんで国を守れると思ってんの!?)


 と、心の中では本気で騎士達を心配していた。


 しかし、


 「お、おお! おのれおのれおのれぇえええええっ!」


 と、そんな春風の気持ちを知らないクラーク教主は、怒りで顔を真っ赤にしながら春風を睨むと、


 「何をしているのです神官達よ! あなた達も攻撃に参加しなさい!」


 と、怒鳴り散らしながら、壁際にいるローブ姿の人物達にそう命令した。


 命令を受けたローブ姿の人物ーー神官達は、すぐにその場から騎士達と共に春風の前に立つと、ギロリと春風を睨みながら戦闘態勢に入った。


 そんな彼らを見て、


 「ま、待て、やめるんだ騎士達よ! クラーク教主も落ち着いてくれ、そして神官達を止めてくれ!」


 と、ウィルフレッドはすぐに騎士達とクラーク教主に向かってそう命令したが、


 「陛下は黙って頂きたい! さぁ騎士達よ、神官達よ! 五神教会教主、ジェフリー・クラークが命ずる! 今すぐその男(?)を殺せ! 殺すのだ! そこにいる、『勇者』になれなかった不届な()()()()()を抹殺するのだぁ!」


 と、クラーク……否、ジェフリーはウィルフレッドの命令を拒否しただけじゃなく、騎士と神官達に向かって春風を殺すよう命令した。


 命令を受けた騎士と神官達は、


 『ハッ!』


 と、皆、春風を睨みながら攻撃に入ろうとし、


 「な! や、やめろ! やめてくれ!」


 「くっ!」


 「フーちゃん!」


 と、爽子、水音、海神は春風を庇おうと動き出した。


 そして春風も、


 (こんちくしょうが!)


 と、騎士と神官達を睨みながら「お守り」を構えた。


 その時、


 「コラァアアアアアッ!」


 と、何処からともなく聞こえた、少女のものと思われる叫び声に、春風をはじめとしたその場にいる人達が、


 『え?』


 と、そこから動けないでいると……。


 ーードゴン!


 「ふぐぅ!」


 なんと神官の1人が、上から来た()()に一撃をくらってしまい、その場に倒れ伏したのだ。


 その光景を見て、誰もが「え?」と口を開けて呆然としている中、その()()は倒れ伏した神官を踏み台代わりにしてその場からジャンプし、空中で全身を回転させながら春風の目の前に降り立った。


 突然現れたその()()の正体。それは、


 「え、女の……子?」


 そう、その正体は、炎のように真っ赤な動きやすそうな衣服を身に纏い、腰のベルトに剣を納めた白い鞘を挿した、白銀のショートヘアを持つ春風やクラスメイト達と同じ年頃の少女だった。


 ポカンとしている春風達を前に、白銀の髪の少女は腰のベルトに挿した鞘から剣を引き抜くと、目の前の騎士と神官達に向かってそれを構えながら叫んだ。


 「突然ですが、私、レナと申します! 助太刀させてください!」


 長くなってしまったが、これが後に「白き悪魔」として、春風と共に世界の命運をかけた戦いに挑む事になる少女・レナとの「運命の出会い」だった。


 


 


 

 


 




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