第137話 ループスとの決戦前
お待たせしました、1日遅れの投稿です。
夜が明けてから暫くすると、フロントラルの門の前では、多くの人達が集まっていた。
そう、春風と仲間達、爽子ら地球から召喚された「勇者」達、ルーセンティア王国の王族とその騎士達に、ストロザイア帝国の皇族とその騎士達、そして、フロントラルを守るハンター達だ。
集まっている者達は皆、目の前にいるループスとその眷属を見て緊張していた。特に春風と勇者達はループス本人に指名されているので、他の人達以上に緊張していた。
そんな時、
「春風……」
と、すぐ傍で名前を呼ぶ声がしたので、春風が「ん?」と振り向くと、
「レナ」
そこには、暗い表情でシュンとなっているレナがいた。
レナは昨日の一件があってから元気がなかった。当然だろう、なにせ、相手は「神様」であると同時にレナの大切な「お父さん」なのだから。
(まぁ、そりゃそうなるよな……)
と、春風はそんな事を考えていると、レナは無言で春風に近づき、春風が着ているローブの裾をギュッと掴んだ。
それを見て歩夢と美羽が「む!」と反応すると、春風はスッと右手を上げて「待った」をかけた。
そして、
「春風……あの……」
と、レナは震えた声で何か言おうとしたが、
「あ……あ……」
と、レナはそう声をもらすばかりで、それ以上何も言えないでいた。よく見ると、その表情は今にも泣き出しそうなっていて、ローブの袖を掴んでいる手もブルブルと震えていた。
「……レナ」
と、春風はそう口を開くと、ソッとレナの手に触れて、
「大丈夫だよ。俺は絶対に勝つし、レナからお父さんを奪うような事も絶対にしないから」
と、穏やかな笑みを浮かべながら、優しい口調でそう言った。
その言葉にレナが「う……」と本気で泣き出しそうになると、春風の横に立っていた水音が、
「ちょっと春風。そこは『俺は』じゃなくて『俺達は』だろう?」
と、ポンと春風の肩に手を置きながらそうツッコミを入れてきた。
そのツッコミに春風が「あ……」となると、
「レナさん……」
と、春風から少し離れた位置にいた爽子が、レナの傍に歩み寄ってきた。
そして、レナのすぐ傍まで近づくと、爽子はレナの両肩に手を置いて、
「私達も、雪村と同じ気持ちだ。私達は、レナさんのお父さんとの勝負に勝つし、レナさんからお父さんを奪う事はしない。だから、ほんの少しだけで良いから、私達の事を信じてほしい」
と、真っ直ぐレナを見つめながら言った。そんな爽子に続くように、
「そうだぜ! 俺ら、一応『勇者』なんだからな! 簡単にやられたりしねぇよ!」
「そうそう! オマケに24人もいるし、未熟な見習いとはいえ『賢者』だっているしね!」
「それに、同い年の女の子に『親の仇』って思われたくねぇしな」
「いやそれ、この場で言う事!?」
と、先にフロントラルに来ていた春風のクラスメイト達が元気良くそう言ってきた。
春風はそんな彼らを見て「はは……」と苦笑いすると、すぐにレナに向き直って、
「ね? みんなもこう言ってる訳だからさ、俺達の事、信じて待っててよ。絶対に最高の結末にするからさ」
と、笑顔で言った。
その言葉を聞いて限界になったのか、レナはボロボロと大粒の涙を流すと、
「っ」
「うわ! レナ!?」
『あーっ!』
ガバッと春風の胸飛び込んで、
「……うん」
と頷いた。
普通ならここで春風が優しくレナを抱き締めるところなのだが、
『ジトーーーーー』
と、爽子とクラメイト達全員にジト目で睨まれてしまい、
(ご、誤解、誤解なんですよ! そんな目で見ないでください! そしてすみません!)
と、春風は心の中でそう悲鳴をあげながら、滝のように汗を流していた。更に、
(ど、どうしよう! これ、どうすれば良いんだ!?)
と、春風はあたふたしながら周囲を見回すと、
『ジトーーーーー』
なんと爽子達だけでなくヘリアテスや凛咲、そして何故かイヴリーヌやアデレードまでもが春風をジト目で睨んできたので、
(ちょおっとぉ! ここには俺の味方はいないのぉ!?)
と、春風は心の中で更に悲鳴をあげた。
結局、周りから睨まれた春風は、レナを抱き締める代わりに「よしよし……」と彼女の頭を優しく撫でるに事にした。ただその際、
「むぅ……」
と、レナからそんな声が聞こえたような気がしたが、春風はそれを全力でスルーした。
さて、そんな様子の春風達を、ウィルフレッド、ヴィンセント、キャロラインがほっこりとした表情で見守っていると、
「ウィルフレッド陛下!」
と、1人の王国騎士が何やら慌てた様子で駆け寄ってきたので、
「む、どうした?」
と、ウィルフレッドがそう尋ねると、騎士はウィルフレッド達を前に跪いて、
「大変です! たった今、数台の馬車が邪神達の横を通り過ぎて、こちらに向かっていると報告がありました!」
と、報告した。
それを聞いて、
「はぁ? 馬車だぁ?」
と、ヴィンセントがそう反応し、
「何処の馬車かわかるか?」
と、ウィルフレッドが再び王国騎士に向かってそう尋ねると、王国騎士は「そ、それが……」と答え難そうに声を震わせた後、
「馬車は全てルーセンティア王国のもので、その中の1台に、五神教会の旗が立っていたそうです」
と、報告したので、
「……なんだと?」
と、ウィルフレッドは大きく目を見開き、
「おい、ウィルフ……」
「……」
ヴィンセントとキャロラインは険しい表情になった。
更にその報告が聞こえたのか、
(オイオイ。マジかよ……)
と、春風はもの凄く嫌な予感を感じた。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。この話の流れを考えていたら、その日のうちに終わらせる事が出来ず、1日遅れの投稿となってしまいました。
本当にすみません。