第134話 ループスとの決戦前夜
「学級裁判」が終わってから少し時が過ぎた、その日の夜、
「あ〜、疲れたぁ……」
春風は居住区の拠点内にある自室のベッドの上でグッタリしていた。
(マジで今日は色々あり過ぎた。まさか学級裁判以上に疲れるイベントがあったなんて……)
と、心の中でそう呟いた春風は、学級裁判が終わってすぐに起きた出来事を思い出していた。
時を遡る事少し前、「学級裁判」が終わった後の事。
「あ、そういえば!」
と、キャロラインが何かを思い出したかのようにハッとなると、
「おーい、春風ちゃーん! 大事な事言うの忘れてるわよぉ!」
と、春風に向かってそう言った。
それに春風が「え?」と反応すると、少し考え込んで、
「あ、そうでした!」
と、春風も思い出したかのようにハッとなったので、
「ん? 春風、どうかしたの?」
と、水音は「何だろう?」と思って春風に尋ねた。
それに対して、
「あー、実は……」
と、春風は気まずそうにそう言うと、先程オードリーの部屋でループスに「戦い」を申し込まれた事を説明した。
その結果、
『……そ』
「ん?」
『それを先に言えええええええっ!』
「え、えぇ!? 何で俺怒られてるのぉ!?」
クラスメイト達に、思いっきり怒られてしまった。
その後、時刻はもう夕方になっていたので、何故か春風が爽子やクラスメイト達、そして王族と皇族達に料理を振る舞う事になってしまい、春風は全員に、特製おにぎりと特製豚汁を用意した。
勿論、爽子とクラスメイト達は全員、久しぶりの日本食を大変喜んだ。
食事が終わると、今度はとあるイベントが起きて、それが終わった後は、その日は全員フロントラル内の宿屋に泊まる事になり、その場は解散という事になった。
因みに、何が起きたかについては別の形で語るので、ここでは語らない事にしよう。
そして、春風と仲間達が居住区にある自分達の拠点に戻ると、春風はすぐに自室に戻ってベッドにダイブし、現在に至る。
「うぅ、本当に疲れたよぉ」
と、春風が枕に顔を埋めながらそう呟くと、トントンと部屋の扉を叩く音が聞こえたので、
「開いてますよー」
と、春風はやる気のなさそうな口調でその音に応えると、ガチャリと扉が開かれて、
「ハニー、入るよぉ」
と、凛咲がゆっくりと扉を開けながら入ってきた。
「ん? 師匠、どうかしたんですか?」
と、春風が凛咲に向かってそう尋ねると、凛咲は無言で春風に近づき、
「よいしょっと」
と、春風のベッドに座り込んだ。
そんな凛咲を見て、
「……あの、本当にどうしたんですか?」
と、春風が恐る恐る尋ねると、凛咲は春風の頭を撫でながら、
「今日は色々とお疲れ様」
と、穏やかな口調でそう言った。
その言葉に、春風は恥ずかしそうに顔を赤くすると、
「あ、ありがとうございます。ですが師匠、勝手に俺と師匠の事、みんなに話しちゃってごめんなさい」
と、お礼を言いながら、凛咲に向かってそう謝罪した。
それを聞いて、凛咲は「ああ、アレね……」と、苦笑いすると、
「そんなに気にする事はないわ。どのみちいずれ話さなきゃならないし。寧ろ……」
「?」
「私と、ユメちゃんと、美羽ちゃんの事、大切に思ってくれて、ありがとう」
と、凛咲は最後にニコッと笑った。
その笑顔を見て、
「……ど、どういたしまして」
と、春風は恥ずかしそうに更に顔を真っ赤にした。
その後、
「うふふ。それじゃあ……」
と、凛咲はそう言うと、ガバッと春風に覆い被さるようにベッドに入った。
「あ、あの……師匠?」
と、突然の事に春風がそう戸惑っていると、凛咲は更にニヤッと笑って、
「さぁ、今日も『師匠』と『弟子』のスキンシップといこうじゃない」
と言って、ゆっくりと自身の顔を春風の顔に近づけた。
それに対して、
「え、ちょ、師匠待って……」
と、春風が抵抗しようとした、正にその時、
「「コラァアアアアアアア!」」
という怒声と共に、歩夢と美羽が部屋に入ってきた。
突然の2人の登場に、
「ふえ!? ユメちゃんに美羽さん!?」
と、春風が戸惑いの表情になると、
「フーちゃんにセクハラしちゃ駄目ぇー!」
「そうですよ! 幾ら『師匠』と『弟子』の関係と言えど、このような事は許しません!」
と、2人はそう言って春風から凛咲を引き剥がそうとしたが、
「えー!? 良いじゃない良いじゃない!」
と、凛咲は子供のようにそう喚きながら、必死になって抵抗した。
そんな3人に向かって、
「あのー、本当に休みたいんですけどぉ」
と、春風は必死になって抵抗したが、残念な事にその言葉は、彼女達耳には届かなかった。
そして、部屋の外ではというと、
「うぅ、私もあそこに行きたい」
「レナ、駄目ですよ」
と、羨ましそうに春風達を見つめるレナと、そんなレナ呆れ顔で見るヘリアテスがいた。