第129話 彼女達との出会い・3
「とまぁ、これが俺と美羽さんとの出会いで……」
そう言って、春風が美羽との出会いについてそう締めくくろうとしたその時、
「ちょおっとぉおおおおおっ!」
と、傍聴席(?)にあたる場所から美羽の叫び声がしたので、春風は「ん?」と思わず彼女の方へと振り向くと、
「余計な事言わないでよぉおおおおおっ!」
と、美羽は顔を真っ赤にしながらそう怒鳴ってきた。よく見ると目に涙を浮かべていたので、
「あ、すみません」
と、春風はすぐに美羽に向かって謝罪した。
それを見た爽子は「はは……」と苦笑いした後、「コホン」と咳き込んで、
「そ、それで、その後お前と天上はどういう風に、その……付き合う事になったんだ?」
と、春風に向かって恐る恐る尋ねると、それに春風は「ふえ!?」と反応し、
「いや付き合うって、あの後俺は、美羽さんをなんとか立たせた後、事情を聞きながら彼女を家まで送り届けて、その日はそこで別れたんです」
と、「いやいや違いますから!」と言わんばかりに大袈裟に両手を振りながらそう答えた。その答えを聞いて、
「え、そうなのか?」
と、爽子が意外なものを見るかのような反応をすると、
「はい! その後は俺もちょっと疲れたから、すぐに家に帰りました!」
と、春風は必死になってそう言った。
(まぁその後オヤジにこっ酷く叱らるわ、何故かユメちゃんから浮気を疑われるわで散々なめにあったけどね)
と、春風が心の中でそう呟くと、
「それで、その話に続きはあるのか?」
と、爽子がまたそう尋ねてきたので、
「え? まぁ、ありますが……」
と春風はそう答えると、美羽との出会いの後について話を始めた。
春風曰く、あの夜に別れてから、2人が再び会う事はなかった。なんでもその頃の春風と美羽は通っている小学校が異なっているだけでなく、別れる間際に、
「あの、助けてくれてありがとう。何かお礼したいんだけど……」
と、美羽がそう言ってきたが、
「じゃあ……今日あった事、誰にも言わないでほしいんだ。出来れば、これっきりって事で」
と、春風は人差し指を自身の口に近づけてそう頼んだ。それに美羽が「でもそれじゃあ……」と食い下がろうとしたが、
「いやもう本当にお願い! 今日の事は、本当に誰にも言わないでください!」
と、春風に必死な形相でそうお願いされてしまったので、美羽は「う、うん。わかった」と渋々そのお願いを聞き入れた。
それから2人はそれぞれの場所で暮らしていて、春風自身はもう美羽に会う事はないだろうと思っていた。
だが、それから数ヶ月後、
「ああっ!」
「……え?」
なんと中学校の入学式で、2人はまさかの再会を果たす事になったのだ。
その話を聞いて、
「……え!? そこで再会したのか!?」
と、驚きながら尋ねてきた爽子に、
「はい。まさかの再会で、びっくりしました」
と、春風は「はは……」と苦笑いし、
「因み、ユメちゃんも一緒の中学です」
と、最後にそう付け加えたので、
『そ、そ、それって、修羅場の予感が!』
と、爽子だけでなくその場にいる者達全員が戦慄した。それと同時に、
「うぅ……」
ユメちゃんこと歩夢は恥ずかしそうに身を縮こませ、
「あはは……」
美羽は遠い目をしながら乾いた笑い声をこぼした。
そんな状況の中、
「まぁ、皆さんが考えてる通り、その頃のユメちゃんは、美羽さんの事すっごい警戒していまして……」
と、春風がそう話を続けたので、
「え、そうなのか?」
と、爽子が未だに身を縮こませている歩夢に向かってそう尋ねた。その質問に対して、
「……だって、あの時はフーちゃんを取られると思ったから」
と、歩夢は身を縮こませた状態のままそう答え、その答えを聞いた美羽は、
「うぐ! で、でも、私だって、また会えて少し嬉しかったし……」
と、顔を真っ赤にしながらそっぽを向いた。
そんな2人を、春風は頬を引き攣らせながら見た後、
「え、えぇっと、詳しく話すとかなり長くなってしまいますから、ざっくり言いますと、最初の頃はお互い気不味い雰囲気だったんですけど、少しづつ話をしながら過ごしていくうちに次第に仲良くなって、しまいには3人で遊びに行くくらいまで仲良くなっちゃいましたって感じです」
と、爽子に向かってそう説明した。
それを聞いて爽子は「そ、そうだったのか」と納得したが、他の人達はというと、
(あれ? 今……)
(さらりと凄い事言ったような……?)
と、今度は別の意味で戦慄していた。
しかし、そうとは知らない春風は、
「あのぉ、お話はこれでよろしいでしょうか?」
と、爽子に向かって恐る恐るそう尋ねると、
「……いや、まだだ。まだ大事な質問がある」
と、爽子が真剣な表情でそう答えたので、
「な、なんでしょうか?」
と、春風がそう尋ねると、
「海神と天上との出会いはわかった。だが、そちらにいる陸島さんとの出会いをまだ聞いてない」
と、爽子はチラッと凛咲を見ながらそう答え、
『あ、そういえば!』
と、歩夢と美羽、そして水音を除いたクラスメイト達がそう声をあげた。
一方、爽子の視線を受けた凛咲はというと、
「あらやだ! 先生ったら……」
と、恥ずかしそうに顔を真っ赤にした。
そんな状況の中、
「あー、やっぱりその話もしなきゃいけませんか?」
と、春風が苦笑いしながら恐る恐る尋ねると、
「当然だ」
と、爽子に鋭い視線を向けられ、それに続くように、
『うんうん!』
と、クラスメイト達も力強く頷いたので、
「わ、わかりました……」
と、春風は観念したかのように、凛咲との出会いについて話し始めた。