第128話 彼女達との出会い・2
「……とまぁ、俺とユメちゃんとの出会いはこんな感じですが」
と言って、歩夢との出会いを説明し終えた春風。
その説明から数秒の沈黙後、
「海神、よく雪村の家わかったな」
と、爽子が歩夢に向かってそう尋ねてきたので、
「えっと……ちょっと調べ物が得意な知り合いがいまして、あの後フーちゃんが置いてった玩具に書いてあった名前をもとにその知り合いに調べてもらったんです。それで、結構すぐに家がわかって、翌日お母さん達と一緒に……」
と、歩夢は恥ずかしそうに顔を赤くしながらそう答えた。
その答えを聞いて、爽子が「そ、そうなんだ……」と頬を引き攣らせながら呟くと、
「じゃ、じゃあ雪村。天上とはどんな風に出会ったんだ?」
と、強引に話題を変えるように春風に向かってそう尋ねた。
それに春風が「ああ、それですけど……」と反応すると、
「美羽さんとの出会いは、俺が『今の家族』に引き取られた後になりまして……」
と言って、次に美羽との出会いを話した。
それは、歩夢と友達になって5年後、10歳になった春風はとある出来事で両親を亡くし、現在の家族である涼司に引き取られ、「光国」から「雪村」に苗字が変わった後の事だった。
因みに、両親を失ったそのとある出来事に関しては、
「すみません、語ると長くなりますし、俺自身も辛いので、ここは一先ず置いといてという事にしてください」
と、そう春風はお願いしたので、
「ああ、わかった」
と、爽子はそう了承した。
話を戻して、春風が美羽に出会ったのは、春風が涼司に引き取られてから2年後が経った、12歳の時の事だった。
その頃から春風は凛咲の弟子として、涼司と共に現在の実家である喫茶店「風の家」を経営しつつ、凛咲と共に世界中を飛び回っていた。
春風はそんな中で様々な出来事に遭遇し、そこで様々なガラクタを入手しては、それらを組み合わせて色んなものを作っていた。
ただ、作っていたと言っても歩夢の時と同じように手作りの玩具を作る感覚で、殆ど趣味みたいなものなのだが。
まぁそれはさておき、ある日の夜、春風はその作ったものを持ってこっそりと家を出ると、いつものように「実験場」と称している空き地で、その性能実験を始めた。
この日持っていったのは、飛行機能を備えたバックパックで、春風は周囲に誰もいないのを確認すると、そのバックパックを背負って早速実験を始めた。その結果、
「や、やった、成功だ!」
見事、実験は成功し、春風は空を飛ぶ事が出来た。
その時点で実験を終了するべきだったのだが、
「もっと上まで行きたい!」
と、春風は調子に乗って更に上空を目指した。
そして、ある程度の高さまで達したその時、バックパックからバスンッという音がして、その後すぐにボンッと爆発した。そして、
「え? う、うわぁ!」
と、春風が驚いたように、空に上がっていた春風体が地面に向かって落下し始めた。
「お、お、落ちる! 落ちる落ちる落ちるぅ!」
と、悲鳴をあげながら落ちている間、春風は大慌てでバックパックを動かそうとしたが、元々ガラクタを寄せ集めて作ったものなので、動くどころかどんどん音を立てて壊れていった。
「ああ、そりゃないよぉ!」
そして、地面が近くなると、春風が落ちようとしている場所に、
(え? ひ、人がいる!?)
なんと、数人程人が集まっていたので、
「うわぁあああっ! どいてどいてどいてぇえええええっ!」
と、春風はその人集りに向かってそう叫んだが、
『え?』
残念な事にその人集りがどく事はなく、
「うわあああああっ!」
『ぎゃあああああっ!』
結局、春風はその人集りに落ちてしまった。
「あいたたたたたぁ……」
と、落下した後、春風はゆっくりと体を起こすと、
「ん?」
目の前に春風と同じ年頃の、眼鏡をかけた少女が地面にへたり込んでいたので、
「あ、こんばんは。あの、怪我とかないですか?」
と、春風が少女に向かってそう尋ねると、
「は、はい、大丈夫……です」
と、少女は激しく頷きながらそう答えたので、
「ああ、そうですか。良かったぁ……」
と、春風はホッと胸を撫で下ろしたが、
『いや、良くねぇよ!』
と、お尻の下からそうツッコミが聞こえたので、春風が「ん?」と下を見ると、
「あ、やっべ」
自分が、先程見た人集りを下敷きにしていた事に気付き、慌ててそこから降りて、
「す、すみません……」
と、その人集りに向かって謝罪したが、春風が降りてすぐに立ち上がった人集りの中の1人が、
「こ、この女ぁ! いきなり何しやがる!?」
と、春風に向かって怒鳴るようにそう尋ねてきたので、
「……あ?」
その質問に春風はピキッとなって、
「オイお前、今俺の事なんて言った?」
と、その1人に向かって低い声でそう尋ねた。
その質問を受けて、
「え、え?」
と、1人がキョトンとなると、今度は別の1人が、
「へ、へへ、こいつ、よく見たら可愛い顔してるじゃねぇか」
と、春風を見てジュルリといやらしそうに涎を垂らしながらそう言ったので、その言葉にブチッとなった春風は、
「俺は男だぁあああああっ!」
と、そう叫ぶと、その人集りを思いっきりぶっ飛ばした。その時の人数は4、5人だったが、春風はそれらを一撃でぶっ飛ばしたのだ。
春風の一撃をくらったその人集りは、
『ぎゃあああああああっ!』
と、悲鳴をあげた後、ボトボトと地面に落ちて、そのまま意識を失った。
それを見た後、
「ふぅ。やっちまったぜ」
と、春風はひと息入れながら言うと、未だにへたり込んでる少女に向かって、
「じゃ、じゃあそういう事で……」
と、その場から立ち去ろうとしたが、
「ま、待って!」
と、少女に呼び止められてしまったので、春風は思わずビクッとなって、
「な、何でしょうか?」
と、恐る恐る少女に尋ねると、
「こ……」
少女は目に涙を浮かべながら、
「腰が抜けて動けないのぉ!」
と、春風に向かって手を伸ばしながら助けを求めた。
「え、えぇ?」
とまぁ長くなってしまったが、これが、春風と美羽のファーストコンタクトだった。