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ユニーク賢者物語  作者: ハヤテ
第1部第2章 「冒険」の始まり?
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第15話 春風、拒否する


 「すみません、やっぱ無理そうなので、ここを出て行く許可をください」


 『な、何ぃいいいいいいいっ!?』


 満面の笑みで「無理」と言っただけでなく、この場から出て行く許可を求めた春風と、それにショックを受けて絶叫したウィルフレッドや爽子、クラスメイト達を含めた周囲の人達。


 それから暫くの間、誰もが口をあんぐりとしていると、


 「……ちょ、ちょっと待ってくれ! い、今のは一体どういう意味だ!?」


 と、ハッと我に返ったウィルフレッドが大慌てで春風に尋ねると、春風はゆっくりとウィルフレッドの前へと歩きながら、


 「言葉の通りですよ。俺には無理そうですから、ここを出て行く許可をくださいと言ったんです」


 と、真面目な表情かつ冷静な口調でそう答えた後、ピタッとウィルフレッドの前で止まった。


 すると、


 「ま、待ってくれ雪村君!」


 と、近くにいた正中が、春風の肩を掴んだ。


 「何、正中君?」


 と、春風が静かに尋ねると、


 「ど、どうしたんだ一体!? ここへきて、どうして『無理』なんて言うんだ!? しかもここを出て行くなんて正気なのか!?」


 と、正中は春風の両肩を掴んで、ユッサユッサと揺すりながら問い詰めた。


 それに対して、春風は「正中君……」と申し訳なさそうな表情になると、


 「いきなりこんな事を言って、本当に申し訳ないとは思ってるよ。だけど、俺は()()()()()()()()()()()って事に気付いてしまったんだ。何故なら……」


 そう言って、春風は正中を含めた周囲の人達にも見えるように、()()()()を見せながら、


 「俺、『勇者』じゃないんだ」


 と言った。


 春風が周囲の人達に見せたもの、それは……。


 称号:「異世界人」「()()()()()」「()()()()()()()


 それは、自身の『称号』だった。それを見た瞬間、


 「ま、『巻き込まれた者』……だと? ど、どういう事だ!? 何故、そのような称号が!?」


 と、ウィルフレッドはショックで顔を真っ青にした。


 ウィルフレッドだけではない、隣に座る「勇者召喚」を行ったクラリッサも、同じく顔を真っ青にしていた。


 そして、爽子や正中らクラスメイト達、更には周囲の人達はというと、春風の称号を見て、


 『……ハァ?』


 と、首を傾げてポカンとしていた。


 そんな状況の中、春風はというと、


 (よ、よかった。()()、成功してる……よな?)


 と、表情にこそ出さなかったが、内心ではかなり緊張していた。


 実は「異世界人」以外の称号は、春風がスキル[隠密行動]の技術の1つ、「偽装」を使って作った()()()()()なのである。


 最初は騙せるか不安だった春風だが、こうして全員がショックを受けたりポカンとしているので、


 (よし、成功だ!)


 と思う事にした。


 その後、春風は「ふ……」と小さく笑うと、


 「いやぁ実はですね、先生やクラスのみんなが『勇者召喚』で出来た光に飲み込まれた時、俺、教室のカーテンにしがみついて、必死に抵抗してたんですよねぇ。でもって俺が思うに、多分その時何か()()()みたいなのが起きて、この称号を手に入れたんだと思います」


 と、春風はふざけた感じで「アハハ」と笑いながらそう言うと、未だ顔を真っ青にしているクラリッサに向かって、


 「ですからクラリッサ様……で、よろしいでしょうか。こうなってしまったのは俺に原因がある訳でして、あなたは何も悪くないんです、どうか気にしないでください」


 と言うと、最後に「すみません」と頭を下げて謝罪した。


 その姿勢にクラリッサが「え、あ……」と戸惑っていると、


 「ふ、ふざけるなぁ!」


 と、ウィルフレッドら王族達の斜め後ろに立っていた、『偉い神官』を思わせる白と青の法衣のような衣服を着た男性が、怒りの形相でウィルフレッドの前に出た。


 突然の事に「え?」と呆けていたウィルフレッドだったが、


 「ま、待ってくれクラーク教主……」


 と、すぐハッとなって「クラーク教主」と呼んだ男性を止めようとしたが、それに構わず、


 「貴様ぁ、神聖な『勇者召喚』に抵抗しただと!? なんという、なんという罰当たりなのだ!」


 と、その男性ーークラークは春風に向かってそう怒鳴り散らした。そしてそれに反応したかのように、


 「そ、そうだそうだ!」


 「この無礼者が!」


 と、周囲の騎士達も春風に向かって怒鳴り散らした。


 あまりの状況に、爽子はクラスメイト達を庇うように彼らを自身のもとへと寄せて、ウィルフレッドはというと、


 「や、やめるんだ騎士達よ! 落ち着け!」


 と、春風に罵声を浴びせている騎士達を止めていた。


 そんな彼らを見て、春風は「ハァ」と溜め息を吐くと、周囲を見回して、


 「申し訳ありませんが、皆さんが幾ら怒鳴ろうと、俺は『勇者』じゃありませんので、『勇者』を求めているあなた方を手助けする事は出来ません。いや、例え『勇者』の称号を持ってたとしても、俺はここを出て行きますし、あなた方を助ける気はありません」


 と、真剣な表情でハッキリと言った。

 

 その言葉に反応したのか、


 「ど、どうしたんだ雪村君! 国王様……この世界の人達はこんなにも困っているのに、どうしてここまであの人達の『願い』を拒否するんだ!?」


 と、正中は再び春風の両肩をユッサユッサと揺すりながら尋ねた。よく見ると、他のクラスメイト達も皆、「何故?」と言わんばかりの視線を春風に向けていた。


 春風はその視線を受けて、


 (うう。みんな、本当にごめん)

 

 と本気で申し訳なさそうな表情をしたが、すぐに真面目な表情になって口を開く。


 「正中君。先生。そして、みんな。勝手な事を言って本当にごめんなさい。だけど、俺はこの人達を信じる事が出来ません。さっきも言いましたけど、例え『勇者』の称号を持ってたとしても、この人達を救うなんて無理ですよ」


 その言葉を聞いて、爽子は「ゆ、雪村?」と頭上に「?」を浮かべ、クラスメイト達は「そんな!」とショックを受けた。それは、春風の両肩を掴む正中も同様だったが、


 「ど、どうしてだ? どうして!?」


 と、納得出来なかった正中は何度も春風に向かって尋ねてきたので、春風は何処か悲しそうな表情になると、


 「俺さ、今日まで色んな人に……まぁ、数えるくらいしかいないけど、とにかく、色んな人達に言われてきた『言葉』があるんだ」


 と、答えた。


 その答えを聞いて、正中は尋ねる。


 「そ、その『言葉』って?」


 その問いに対して、春風は答える。


 「『生きろ』、『生きて幸せになってくれ』」


 『!』


 春風の口から出たその言葉に、爽子やクラスメイト達、そしてウィルフレッド達も『あ……』と悲しそうな表情になったが、そんな彼らに構わず、


 「俺は、この言葉を送ってくれた人達の事がとても大切で、俺はその人達に応えたいって思ってる。そして、この言葉のおかげで、俺には叶えたい『夢』が出来たんだ。でも、それは故郷である『地球』でないと叶える事が出来ないんだ。だから、その『夢』を奪ったこの人達を、俺は絶対に許す事が出来ないんだよ」


 と、静かにそう言い放った。その言葉に「怒り」と「悲しみ」を感じたのか、正中は勿論、爽子とクラスメイト達、そしてウィルフレッドら王族達も何も言えないでいた。


 その後、春風は両肩を掴む正中の手を優しく剥がすと、ウィルフレッドに向き直って、


 「そういう訳で申し訳ありませんが、俺はあなた方に力を貸す事は出来ませんので、ここを出て行く許可をください」


 と言うと、春風はウィルフレッドに向かって深々と頭を下げた。


 その姿勢を見てウィルフレッドは、


 「そ、其方は……」


 と、何か言おうとした、まさにその時、


 「ふ、ふざけるなぁあああああああっ!」


 1人の若い騎士(?)が、春風に向かって突撃してきた。


 


 

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