第125話 そして、学級裁判へ?
(えー皆さんこんにちは、雪村春風、本名・光国春風です。現在俺は……学級裁判の真っ只中にいます。因みに、被告人は俺です)
と、心の中でそう呟いた春風は今……本当に学級裁判の真っ只中にいた。しかも、「被告人」としてだ。
(どうしてこうなった!?)
何故そのような事になっているのかというと、話は少し前に遡る。
ループスによる「勝負の申し込み(?)」から少しして、春風達は仲間達と情報を共有しようとオードリーの部屋を出た。
そして、仲間達がいる別室に着くと、
「あ、師匠」
「ヤッホー、ハニー」
その扉の前で、春風達が来るのを待っていたかのように立っている凛咲が、春風に向かってそう挨拶した。
「どうやら、話し合いは終わったみたいね?」
と、凛咲がそう尋ねると、
「はい。ただ、最後ちょっと面倒な事が起きましたけど」
と、春風は「あはは……」と困ったように笑いながらそう答えた。
すると、春風は「あ、そうだ」とハッとなって、
「先生。ウィルフレッド陛下。ヴィンセント陛下。こちらは俺の師匠の凛咲さんです」
と、爽子、ウィルフレッド、ヴィンセントに凛咲を紹介した。そして、それに続くように、凛咲も「む……」と真面目な表情になると、
「はじめまして、春風の師匠の、陸島凛咲といいます。以後、お見知り置きを」
と、爽子、ウィルフレッド、ヴィンセントに向かってそう自己紹介した。
その自己紹介を聞いて、3人は大きく目を見開いた後、
「え? あ、どうも、朝霧爽子です。担任教師をしております」
「おお、これはご丁寧に。私はルーセンティア王国国王、ウィルフレッド・バート・ルーセンティアという」
「ストロザイア帝国皇帝、ヴィンセント・リアム・ストロザイアだ。よろしくな」
と、それぞれ凛咲に向かってそう自己紹介した。
その後、
「それで、師匠。みんなは……?」
と、今度は春風が凛咲にそう尋ねると、凛咲は親指の先を別室の扉に向けて、
「水音達が全部説明したわ」
と、答えたので、春風は表情を曇らせながら「そうですか……」と呟くと、扉のノブを握って、ゆっくりと扉を開けた。
部屋の中には、歩夢や水音をはじめとした春風の仲間達の他に、爽子とウィルフレッドと共にフロントラルに来た残りのクラスメイト達の姿があり、扉を開けた春風の存在に気付いたのか、その中の1人が、
「あ……」
と、声をもらしたので、それに続くように全員が春風に視線を向けた。
彼らのその視線を受けて、
(うぐ! み、皆さん、そんな急にこっちを見ないで!)
と、春風が心の中で悲鳴をあげると、
「フーちゃん!」
と、歩夢が春風に駆け寄ってきた。当然、美羽や水音といった仲間達も、だ。
するとその時、
「雪村君!」
という声がしたので、春風は「ん?」と声がした方へと向くと、
「あ、正中君」
そこにはクラスメイトの1人である少年が、春風に鋭い視線を向けてきた。
その後、「正中君」と呼ばれたその少年が、
「桜庭君達から、全部聞いたよ」
と言いながら、明らかに怒っている様子で春風に近づいてきた。
そして、正中は春風のすぐ傍で止まると、ガシッと両肩を掴んで顔を下に向けて、
「君は……君って奴はぁ!」
と、震えた声で怒鳴るようにそう叫んだ。
それを見たレナが、
「ちょっとあんた……!」
と、正中に文句を言おうとしたが、それを遮るかのように春風がスッと右手をあげたので、レナはそれを見て「う!」と呻き、それからすぐに黙った。
春風はそれを横目で見た後、
「正中君、それにみんな。事情があったとはいえ、何も言わずにみんなのもとを去って、ごめんなさい」
と、正中と他のクラスメイト達に向かって謝罪した。
それを聞いて、他のクラスメイト達が「う……」とたじろいでいると、
「俺がルーセンティアを飛び出した後の事は、ユメちゃん達から聞かせてもらいました。俺の事、『許せない』と、『裏切り者』と思うなら、そう思ってくれて構いません。それだけの事を、俺はしてしまったのですから……」
と、春風は申し訳なさそうな表情でそう話を続けた。
ところが、
「そうじゃない!」
と、正中が春風の両肩を掴んだままそう叫んだので、
「……え?」
と、春風はポカンとなった後、
「ま、正中君。今、なんと?」
と、正中に向かって恐る恐る尋ねると、
「君が僕達のもとから去った理由は理解出来た! それもまぁ許せないけど、それ以上に僕達は……」
と、正中は春風の両肩を掴む力を強くしながら、
「君が僕達に黙って、立派なマイホームと可愛い弟&妹と美人のお姉さんをゲットした事に怒ってるんだぁ!」
と、最後にガバッと顔を上げて春風を見ながらそう怒鳴った。
それから数秒後。
「そっちかよぉおおおおおっ!?」
と、春風は正中に向かってそうツッコミを入れると、正中はそれを無視して、
「先生!」
と、爽子を呼んだので、
「な、何だ正中……?」
と、爽子がギョッとしながらそう返事すると、
「今すぐ学級裁判をしましょう! 被告人は雪村君で!」
と、正中は爽子に向かってそう提案した。
こうして、あれよあれよという間に、
「これより、学級裁判を開始する」
と、そう爽子が宣言したように、本当に学級裁判が行われる事になった。