第124話 「邪神」、現る
お待たせしました、1日遅れの投稿です。
「いやぁ、良いものを見させてもらいましたわぁ」
という声を聞いて、驚いた春風達はその声がした方へと振り向いた。
そこは、オードリーのデスク近くの大きな窓で、開かれたその窓の向こうには、1匹の狼がいた。
だが、
(狼……? いや、違う!)
と、春風はタラリと冷や汗を流しながら、それがただの狼ではないと感じた。春風だけではない、一部を除いた他の人達も、皆、同じように感じていた。
そう。目の前にいるのは、見た目は狼なのだが、全身は最早「漆黒」と言って良い程に真っ黒で、左右の瞳はまるで血のように赤く輝いていた。それだけでも充分不気味なのだが、もっと言えばその赤い両目の間には、更に真っ赤に輝く第3の目があり、それが更にその狼ようなものを不気味にさせていた。
そんな狼のようなものを睨みながら、春風達が警戒していると、
「やぁ、はじめまして。ルーセンティア王国国王ウィルフレッド殿に、その娘イヴリーヌ姫。ストロザイア帝国皇帝ヴィンセント殿と、皇妃キャロライン殿、皇子レオナルド殿に皇女アデレード殿。フロントラルのオードリー市長殿とフレデリック総本部長殿。それと、レギオン『紅蓮猛牛』リーダーのヴァレリー殿に、レギオン『黄金の両手』リーダーのタイラー殿。異世界『地球』のから召喚されし『勇者』の爽子殿に……雪村春風」
と、狼のようなものがそう挨拶をしてきたので、
『しゃ、喋ったぁ!』
と、春風達が驚きに声をあげた。
ただ、
(え、待って。なんで俺だけ『殿』が入ってないの?)
と、春風は心の中で「?」を浮かべていた。
まぁそれはさておき、そんな春風達を見て、狼のようなものは「ははは」と笑った後、
「俺の名はループス。この世界エルードの、『月光』と『牙』を司りし神。といっても、今は『邪神』って呼ばれてるがな」
と、その狼のようなもの……否、ループスはそう自己紹介した。
その自己紹介を聞いて、春風達が無言で更に冷や汗をタラリと流すと、ゼウスがズイッと春風達の前に出て、
「よう、チビ助。久しぶりだなぁ、オイ」
と、普通にループスに向かってそう挨拶したので、
「ああ、お久しぶりですゼウス殿……ってコラァ! 久しぶりに会ったのにチビ助はやめてくださいよ!」
と、ループスはプンスカと怒鳴った。
そして、そんなループスに向かって、
「ガッハッハ! 元気そうでなによりだわ! まぁ、ちょいと妙な姿をしてはいるがな!」
と、ゼウスが笑いながらそう言うと、
「ループス……」
「お父さん……」
と、ヘリアテスとレナがそう口を開いたので、それにループスが「ん?」と反応した後、
「やぁ、ヘリア。そして、愛しい我が娘レナ」
と、ループスはヘリアテスとレナに向かってそう言った。よく見ると、顔付きは不気味だが何処か穏やかで優しい雰囲気を出していた。
それからすぐに、
「で、チビ助。お前、何しにここに来たんだ? ただ挨拶をしに来た訳じゃねぇんだろ?」
と、ゼウスがループスに向かってそう尋ねてきたので、それにループスが再び「ん?」と反応すると、先程までの穏やかな雰囲気からガラリと変わって、
「決まってるだろ。あの連中が選んだっていう異世界の勇者達と……」
と、鋭い目付きでそう言った後、
「『神』と契約を結びし者、雪村春風。お前達に勝負を挑みに来た」
と、最後に春風を見てそう答えた。
その答えに、
「な! ループス!?」
「お父さん、何を言ってるの!?」
と、ヘリアテスとレナが驚きの声をあげたが、
「ほう、勝負とな」
と、逆にゼウスは落ち着いて表情でそう言い、ゼウスに続くように、
「……わかりました。それで、いつやる予定ですか?」
と、春風も落ち着いた口調でループスに向かってそう尋ねた。
それを聞いて、周囲が「え、ちょっと!?」と言わんばかりの驚きに満ちた表情になっていると、ループスは「ふっふっふ……」と笑って、
「明日、このフロントラルの外でやる」
と、春風に向かってそう答えたので、
「……わかりました」
と、春風はコクリと頷きながらそう返した。
ループスはそれを聞くと、
「要件は以上だ。じゃあな」
と言って窓の外へとて飛び出し、そこでハッとなったのか、
「る、ループス!」
「待って! お父さん!」
と、ヘリアテスとレナがそう叫んだが、その叫びがループス届く事はなく、あっという間にループスの姿は見えなくなってしまった。
その後、
「ふむふむ、こりゃあ何とも言えない状況になったなぁ」
と、落ち着いた様子のゼウスを除いて、誰もが呆然となると、
「あの、ウィルフレッド陛下」
と、春風がそう口を開いたので、それにウィルフレッドが無言で反応すると、
「こんな時に言うのもなんですが、神様ボコる許可をください」
と、春風はウィルフレッドに向かってそうお願いしてきたので、
「雪村! こんな時に何言ってるんだ!?」
と、爽子はハッとなって春風にそうツッコミを入れたが、
「ああ、許可しよう」
と、ウィルフレッドがコクリと頷きながらそう言ったので、
「いや、お前も許可出すのかよ!?」
と、今度はヴィンセントがウィルフレッドに向かってそうツッコミを入れた。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。この話の流れを考えていたら、その日のうちに終わらせる事が出来ず、結局1日遅れの投稿となってしまいました。
また、誠に勝手ながら、前回の話に一部文章を加えさせてもらいました。
本当にすみません。