第122話 「全て」を知った時・2
お待たせしました、連続して1日遅れの投稿です。
ゼウスとヘリアテスから「全て」を聞かされた爽子があげた、「怒り」と「悲しみ」に満ちた叫び。
その叫びを聞いて、ウィルフレッドをはじめとした周囲の人達も、皆、辛そうに表情を暗くした。
そして、
(先生……)
当然、春風も同じく辛そうな表情になった。いや、もしかしたらこの場にいる者達以上に辛いのかもしれない。
実を言うと、春風も爽子があげた叫びに関して思う所があった。
そう、春風も「ルール無視の勇者召喚」が行われた時の事を思い出して、
(どうしてあの日、俺だけアマテラス様達に助けられたんだろう?)
と考えていたのだ。
勿論、その事に関しては特に「恨み」とか「怒り」といった感情はない。何せ「地球消滅の危機」などというとんでもない話を聞かされたのだから、その時は「故郷を、大切な人達を守る!」という強い想いがあったので、それ以外は考える余裕がなかった。
しかし、今日の爽子の叫びを聞いて、
(確かに、先生の言う事も一理あるかもしれない。でも……)
春風はそれまで考えないようにしていた疑問について、改めて考えるようになった。それどころか、
(もしも、全てが『嘘でした!』とかだったらどうしよう)
などという考えも頭をよぎってしまい、不安になってしまったのだ。
(……駄目だ。全然考えが纏まらない)
まぁだからといって、考えた所で答えが出る訳でもないが。
それから暫くすると、
「うぅ。みっともない所を見せてしまってすみません」
と、漸く落ち着いた爽子は、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら、周囲の人達に向かって謝罪した。
そして、そんな爽子を、
「いやいや気にすんなって。お前さんの気持ちは痛い程わかってるからよ」
「そうです。あなたが怒りと悲しみを抱くのは当然ですので、そんなに気にしないでください」
と、ゼウスとヘリアテスは優しい口調で慰めた。特にゼウスは爽子が叫んでいた事に思う所があったのか、その表情は何処か申し訳なさそうだった。
そんな風に慰めてきた2柱の神々に、
「うぅ、ありがとう……ございます」
と、爽子は震えた声でそうお礼を言った。
するとその時、
「そうだ。爽子殿が気にする事はない」
と、ウィルフレッドが辛そうな表情でそう言った後、
「異世界の神ゼウス様、そして女神ヘリアテス様」
と、ゼウスとヘリアテスに向かって、
「この度は、私を含めたルーセンティア王国の者達がとんでもない事をしでかしてしまい、真に申し訳ありませんでした」
と、深々と頭を下げながらそう謝罪すると、
「爽子殿。そして、春風殿」
と、今度は爽子と春風を見て、
「其方達を巻き込んだだけでなく、其方達の故郷までも危険に晒してしまい、本当にすまなかった」
と、ゼウスとヘリアテスと同じように、深々と頭下げて謝罪した。
「え、そんな、ウィルフレッド陛下!」
と、爽子が大慌てでウィルフレッド傍まで駆け寄ると、
「ウィルフレッド陛下、どうか顔を上げてください!」
と、ウィルフレッドに頭を上げてほしいとお願いしたが、
「そうはいかない。先程も言ったが、全ては私に責任がある。だから、責めるのであればこの私と、私達が崇める神々にしてほしい」
と、ウィルフレッドは顔を下げたままそれを拒否した。
その後も何とか顔を上げさせようとしている爽子と、それに抵抗しているウィルフレッドの姿を見て、ゼウスとヘリアテスが仲裁に入ろうとした、まさにその時、
「あー、ちょいと良いっすか?」
と、ヴィンセントが「はい」と手を上げながらそう尋ねてきたので、周囲の人達が「ん?」と首を傾げると、
「なぁ、雪村春風」
と、ヴィンセントは春風に向かって話しかけた。
それに春風が、
「はい、何でしょうか?」
と、反応すると、ヴィンセントは真剣な表情且つ鋭い視線を春風に向けると、
「ゼウス様達の話を聞いて、お前の事情と目的は理解出来た。その上で尋ねたい」
と、ヴィンセントは更に真剣な表情でそう言った後、
「お前、ウィルフ達やこの世界の人々が信じてる『神々』に、どんな償いを求めているんだ?」
と、春風に向かってそう尋ねてきた。
その質問を聞いて、春風は「うぐ!」とまるで痛い所を突かれたかのように呻いたが、すぐにハッとなって、
「そうですね。この世界の今の神々は絶対に許せませんし、『勇者召喚』を実行したルーセンティア王国の人達を許せません」
と、そう答えると、ヴィンセントは「まぁ、そうだよな」と言って自身の顔を手で覆った。そして、その答えにウィルフレッドとイヴリーヌも、納得と悲しさが入り混じったかのような表情になった。
しかしその後、春風はニコッと笑って、
「ですので、ウィルフレッド陛下」
と、ウィルフレッドに向かってそう話しかけたので、それにウィルフレッドが「な、何だろうか?」と反応すると、
「あなた方が信じてる神様を、思いっきりボコる許可をください」
と、春風は更に満面の笑みでそう言った。
それを聞いた瞬間、
『……え?』
と、周囲の人達は一斉に首を傾げた。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。この話の流れを考えていたら、その日のうちに終わらせる事が出来ませんでした。
本当にすみません。