第121 話 「全て」を知った時
遅くなりました、1日遅れの投稿です。
「そ……そんな……」
ゼウスとヘリアテスから、文字通り全ての事実を聞かされて、爽子はショックで顔を真っ青にした。
否、爽子だけではなく、
「それが……今、この世界……いや、春風殿達の世界にまで起きてしまった危機なのですか?」
「オイオイ、冗談じゃねぇんだよな?」
当然、ウィルフレッドとヴィンセントも、全ての事実を知ってタラリと汗を流しながら表情を強張らせていた。
そして、そんな様子の爽子達を前に、ゼウスが口を開く。
「信じたくねぇ気持ちはわかるぜ。だが、残念な事に全部事実だ」
真剣な表情でそう話すゼウスは、チラリとウィルフレッドに視線を向けると、
「なぁ、ウィルフレッド王よぉ。俺からも幾つか尋ねてぇんだが良いかい?」
と、言ってきたので、それにウィルフレッドはビクッとなった後、
「……はい、構いません」
と、どうにか気持ちを落ち着かせながら返事すると、
「お前さん、今回の『勇者召喚』に関しては、本当に何も知らなかったのか?」
と、ゼウスが鋭い視線を向けながらそう尋ねてきたので、
「はい。それは間違いありません。私自身、そのような『ルール』があった事すら知らなかったのです。あの時は世界を、国を、そして家族を守る事を第一に考えてまして、神々より『勇者召喚』の秘術を授かった時は、『これで、大切なものを守れる』と心から喜びました」
と、ウィルフレッドは真っ直ぐゼウスを見ながらそう答えた。その彼の答えを聞いて、ゼウスは「そうかい」と言うと、
「じゃあ、質問を変えるが……お前さんは、自分達が知ってる歴史が『嘘』だったってのは知ってたのか?」
と、再びウィルフレッドに鋭い視線向けながらそう尋ねた。
その質問に対して、ウィルフレッドは「それは……」と下を向いたが、すぐに首を横に振るった後、再び真っ直ぐゼウスを見て、
「知っていました。我々ルーセンティア王国の王族は、代々王位継承者のみが『本当の歴史』を知る事を許されるのです」
と答えた。
その答えに反応したのか、
「そ、そんな! それではお父様は知ってたのですか!?」
と、隣で聞いていたイヴリーヌが、ウィルフレッドの服の袖を掴みながら問い詰めてきたので、ウィルフレッドはチラリとイヴリーヌを見た後、
「……すまない、イヴリーヌ」
と、謝罪した。
その謝罪にイヴリーヌが「そんな……」とショックで顔を真っ青にすると、
「そして、先程も言ったが、この事実を知る事が許されるのは、王位継承者のみ。即ち……」
と、ウィルフレッドが話を続けたので、それにイヴリーヌが「まさか!」と反応すると、
「そうだ。今はまだ伝えてはいないが……いずれクラリッサが知る事になる」
と、ウィルフレッドは最後に「すまない」と再び謝罪したので、
「ああ、そんな……」
と、イヴリーヌはショックが大き過ぎたのかその場に膝から崩れ落ちそうになったが、
「イヴりんちゃん」
と、そうなる前にキャロラインに支えられた。
それから少しの間、部屋全体が重苦しい空気に包まれていると、
「どうして……」
と、爽子がそう口を開いたので、その場にいる者達全員が爽子に視線を向けると、
「どうして……こんな……」
と、爽子は暗い表情でそう呟き、その後すぐにキッと春風を睨み付けると、ズカズカと近づき、
「どうして教えてくれなかった。あの日……『勇者召喚』があったあの日に、教える事が出来たんじゃないのか!? 私達のもとから去る必要なんてなかったんじゃないのか!?」
と、春風の肩を掴んで怒鳴るように問い詰めた。
それに対して「それは……」と春風が答えようとすると、
「やめてよ! 何で春風を責めてるの!? 春風だって、凄く辛い思いしたんだよ! 普通に過ごしてたのに、いきなりこの世界に召喚なんてされそうになって、助かったって思ったら、まさかの『世界消滅』の危機を聞かされた時の春風の気持ち、考えた事ある!? そんで、神様と契約して『力』を手に入れたと思ったら、それが『悪魔の力』と呼ばれてるものだって知った時の気持ち、考えた事あるの!?」
と、逆にレナに問い詰められてしまい、爽子がそれに「う、それは……」と反応すると、
「彼女の言う通りだ爽子殿」
と、ウィルフレッドがそう口を開いたので、爽子だけでなく春風達もウィルフレッドを見ると、
「彼は責められる人間ではない。彼もまた、大切なものを守ろうとしたのだから。そして責められるべきは、『勇者召喚』を授けた神々と、それを実行に移すよう命令したこの私だけだ。だから、責めるなら春風殿ではなく、私と神々だけにしてほしい」
と、ウィルフレッドはそう言って、最後に「頼む」と付け加えると、爽子に向かって深々と頭を下げた。
それを見て、爽子は春風の肩から手を離すと、その場に膝から崩れ落ちて、
「……ゼウス様」
と、顔を下に向けた状態でゼウスに話しかけた。
それにゼウスが「何だい?」と返事すると、
「どうしてあの時、私ではなく雪村を助けたのですか?」
と、爽子は顔を下に向けたまま尋ねた。
それを聞いて、
「それは……」
と、ゼウスは表情を暗くしたが、その後は顔を伏せるだけで、何も答えようとしなかった。
そんなゼウスに向かって、爽子は更に口を開く。
「私は、教師なんです」
「……そうだな」
「私は、大人なんです」
「……知ってるさ」
「彼は、私の大切な生徒なんです」
「……ああ、それも知ってる」
「まだ、高校生なんです」
「……わかってるよ」
「まだ、17歳なんです」
「……それも、わかってる」
「まだ、子供なんです」
「……」
ゼウスとのその問答の後、爽子は顔を床に擦り付けて、
「17歳の子供に、なんてものを背負わせたんですかぁあああああああ!?」
と、大声で叫んだ。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。
この話の流れを考えていたら、その日のうちに終わらせる事が出来ず、結果1日遅れの投稿となってしまいました。
本当にすみません。